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(出会い目的の書込は法律で罰せられます→ルール)

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「A(エース)社の新グループ、『アイオライト』の取材に来ました。ミーランリオーネのハスバです」
「はい、ハスバさまですね。お取り次いたします」
私はハスバ。ミーランリオーネという雑誌の編集に携わるうら若き乙女だ。
今回なんと、人気急上昇中のアイドルユニット「アイオライト」へのインタビューを担当することになった。滅茶苦茶緊張している。
「アイオライト」ってだけでもかなり雲上人みたいなのに、彼らの所属事務所はアイドル戦国時代と称される現代でトップランカーと呼ばれる「A社」なのだ。あんな大御所やこんな人気俳優とばったり出くわしてしまってもおかしくない。
「ハスバさま」
「はい!」
「こちらの者が案内いたしますので、どうぞごゆるりと。アイオライト以外への撮影はなさらないようお願いいたします」
「かしこまりました」
と、私は受付に挨拶して、案内役を見た。
でっっっか!!
長身にも程があるだろう。え、これ二メートルある?滅茶苦茶背が高い手足が長いひょろっとしてるけどさすがA社の人間、滅茶苦茶重心がしっかりしてらっしゃる……
「こちらへ、どうぞ」
「あ、はい」
喋り声が滅茶苦茶ぼそぼそしてるな……まだ世に出てない新人かしら。や、なんか黒いマスクと濃い目のサングラスで怪しい感じがするけど。スタイルいいのに裏方の子なの?
「この辺は色んなメンバーの部屋が入り組んでいるので、迷子にならないように。あと、メンバーと会っても写真は撮らないように。サインくらいはいいですけど」
「はい、肝に銘じます」
「……緊張してます?」
私は苦笑した。
「そりゃあ、まあ。大きな仕事は初めてなもので」
「ハスバさんは初めていらした方ですので、そうでしょうね」
ほえー、もしかしてこの子がいつも案内している感じなのだろうか。
「あの、あなたは?」
「おれは……ええと、バイトみたいなもんです。あまり深く聞かない方が身のためですよ。社長の方針なんで」
「あ、ハイ」
社長の方針というパワー(権力)ワードに私は怖じ気づいた。もしかしなくてもなんかあるなこの子……
気になりはするが、触らぬ神である。私の編集者人生はやっといい感じになってきたところなのだ。身を滅ぼすような真似は避けよう。
「ここにアイオライトの三人がいます。おれは外で待機しているんで、何かあったら声かけてください」
「はい、ありがとうございます」
私はどきどきしながら、ドアをノックした。

(^ー^) (プロフ) [2022年12月20日 16時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

「はーい」
がちゃ、とドアが開いて、私は飛び上がらんばかりに驚いた。この朗らかな声は……
「どちらさま?」
「セイム、名乗るの待ってから開けなよ」
顔は万人受けというには童顔の気があるアイオライトのセイムくん、セイムくんではないですか!?天然キャラで売ってると聞いたけど、無茶苦茶な天真爛漫笑顔に並みのファンなら昇天しまっせ……
しかし私は編集者!そんなことでは倒れたりしません。
「まったく、事務所のセキュリティはしっかりしてるけど、こう、防犯意識が低くて駄目だよ」
こ、これは……!やれやれ系お兄さん(セイムに対してのみ)のアオイくんじゃあないですかっ。ああ、今日も顔面がすごくいい。
セイムは変なファンがつきやすいんだから、とか言ってるけど、アオイくんのファンも大概だからな、と私は知っている。シュリンプ砲でなんか変なこと書かれてた過去を持つ。ファンの愛が重いことで有名なアオイくん。セイムくんとは幼馴染みなんですって。
顔面国宝と言われるくらいの顔面偏差値の高さを誇るアオイくん。これで俳優業もしているから、大変なんだろうな。SNSも更新すると十分以内に「炎上か?」と思うくらいバズるらしい。
「ミーランリオーネのハスバさんですよね?いらっしゃいませ」
奥からまだ変声期を迎えていない少年の声がする。その少し高めの声はエンジェルボイスと呼んで然るべき。アイオライトは少年ユニットでありながら、センターを務める彼を「姫」と呼ぶ。
名をシリン。若いながら物腰が柔らかくて丁寧。老若男女問わず人気を誇るトップアイドルだ。
「中へどうぞ」
「は、はい、失礼します!」
うおー、紫髪、初めて見た。本物だ……
いつの間にかアオイくんがセイムくんを連れてきていて、三対一の対談構図になる。
「改めまして、本日のインタビューを担当します、ハスバと申します。本日はアイオライトの皆さん、お時間を割いてくださり、ありがとうございます」
「えへへ、綺麗なお姉さんが来るって聞いてたからね」
「セイム、言い方。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
あーーーーーーーっ、仕事とはいえ、とうとう始まる。

(^ー^) (プロフ) [2022年12月20日 17時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

「では、インタビューを始めていきますね」
はーい、と和やかな返事をするセイムくん。対してアオイくんとシリンくんはぴん、と背筋を伸ばしている。
「緊張してますか?」
「ぜーんっぜん!」
安定のセイムくん。アオイくんとシリンくんは苦笑いする。
「セイムくんはいつもリラックスしている感じですよね」
「ぼくは自然体の方がいいって言わえてゆかやね」
出た。セイムくんのふにゃふにゃ言葉。
「セイム、きちんと喋って」
「ちゃんと喋ってるよお」
「アオイくんとセイムくんは幼馴染みなのですよね。ではお二人はシリンくんのことをどう思っていますか?」
「え、それ本人の前で言うんですか?」
「アオイ照れてるー」
アオイくんを茶化すセイムくん。アオイくんはじろりと睨んだ。
そんな傍らで、シリンくんは緊張しつつ、二人の反応が気になっているようだ。あからさまに二人を見はしないものの、時折二人の方に向きそうな視線を自分で矯正している。すごい精神力だ。
アオイくんは柔らかな表情で答えた。
「弟みたいって思います。この一言だけだと言葉が足りないんですけど、不思議な感じで……兄弟はいたことがないので、弟がいたらこんな感じなのかなーっていう想像に過ぎないんですけど……ただ、完全に家族っていう枠組みに入れると何か違うなって思うこともあって。弟みたいな友達?が一番しっくりきますね」
「わかるー。シリンはなんか守ってあげたくなるよねー」
セイムくんがのんびり続いた。
「年下だからとかそういうんじゃなくて、なんだろう、宝塚に入れておきたい感じ?」
「宝箱な。勝手にシリンの性別変えるな」
「あてっ」
うーん、このコンビは熟年の夫婦のような安定感と安心感があるな……

(^ー^) (プロフ) [2022年12月20日 19時] 3番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

私は話の矛先をシリンくんに向ける。
「シリンくんは二人のことどう思……」
泣っ!?
シリンくんぼろぼろ泣いてるんですけど!?これ私何かした!?私悪い!?私悪いの!?
「あ、あの、ごめんなさい……」
泣いてしまうシリンくんに大丈夫?とハンカチを握らせるセイムくん。アオイくんが少し寂しそうに笑った。
「今から話すことは、シリンのプライベートな話なので、吹聴しないでもらえるとありがたいです」
「え、はい」
私は慌てて録音を切った。
「シリンの両親は才能のあるシリンに過剰な期待を押しつけていました。シリンはなりたくてアイドルになったわけじゃないです。特にシリンのお母さんはステージママって感じで……監督だろうがディレクターだろうが顎で使うような迷惑な方でした。それでいて、シリン自身に優しいわけでもなく……」
こ、これ聞いていいタイプの話!?私消されない!?
私が内心でびびり散らす中、アオイくんが続ける。
「シリンはアイオライト結成まで、家族なんていていないようなものだったんです。おれとセイムでシリンに害しかない両親を追い払って、事務所の力や大人の力を借りて、なんとかシリンを両親から遠ざけました」
「そ、そんな大変なことに……」
「だから、家族や兄弟に強い思い入れがあるんですかね。そういうこともあって、おれとセイムはシリンを守りたいって気持ちがいっそう強いんです」
それは知らなかった……アオイくんの言葉選びはふんわりしていたけど、下手したら警察沙汰になりそうなレベルの話だ。
「どうしてそれを私に?」
私は雑誌の編集者だ。その気になればそういう裏話をネタにできてしまう。しかも世に出回っていない特大スクープだろう。いや、私はネタにする気ないけどね。
子役時代から俳優としても人気だったアオイくんがそういうリスクをわかっていないわけがない。そもそも私も今日は雑誌のインタビューで来ているのだし、事務所からも口止めされているはずだ。
「ちょっとシリンが落ち着くまでに休憩を取らせてほしいというお願いと謝罪の代わりです」
なんて礼儀正しくてメンバー思いな子。
「それと、万一記事にされた場合には相応の対処をさせていただきますのて」
ぼかしてるけど裁判沙汰(そういうこと)だね!?
さすが……子役時代から換算して十年以上この道にいるだけはある……したたか。

(^ー^) (プロフ) [2022年12月20日 20時] 4番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

まだぼろぼろと泣いているシリンくんが部屋から出ていくと、背筋が凍る程度では生ぬるいような殺気が部屋の外から飛んできた。例えるなら心臓をつまみ上げられたよう。命が心許ない気がしたのはこれが初めてである。やのつくお仕事の方かな?
「大丈夫ですよー、セッカさん。シリンは目にごみが入っただけですって」
シリンくんを連れてったセイムくんのフォローの声が聞こえて、殺気が私から離れていった。
セッカサン?聞いたことがない名前だけれど。
私の疑問に気づいたのか、アオイくんが教えてくれる。
「セッカさんは大々的には活動していないですけど、A社の振付師なんです。社長のお気に入りで、背丈が二メートル近くあるんですよ」
背丈が二メートル……?まさか。
「あの案内役の方ですか?」
「そうです。色々理由があって、表舞台に出られないんですけど、ダンスがキレッキレで、この事務所で一番上手いと思います。……黄昏事務所やタルデス事務所と張り合えるとおれは思ってますよ」
黄昏とタルデスとは大きく出たな。
黄昏は芸能界でも老舗の事務所。歌って踊ってが主流のアイドル界で歌に重きを置いていて、年末の歌特番では出演アーティストを八割埋めた伝説が残っている。現社長のユウヒさんは昔誰もが知るバラードの申し子だったという。今は時流に合わせた曲風で攻めていて、斬新でいて基本という評判だ。
タルデス事務所は前の社長が不祥事起こして辞任させられてから流れで社長になったイリクさんが前社長の負債分を補って余りあるほどの業績を叩き出している。社長のイリクさんは現役で、子役時代から活躍していたこともあり、そろそろ活動二十周年を迎えるとか。イリクさんのセンスというセンスがヤバくて、A社、黄昏事務所と並んで御三家と並び称されるレベルのアイドルを輩出している。
「さすがにタルデスのイリクさんと並ぶのは厳しいのでは?」
「そんなことありません!セッカさんは背が高いので手足が長いでしょう?その長さを生かしきるダンスができる人なんです」
た、確かにひょろっとしてて手足は長く見えた。ただ、それよりも今気になるのはアオイくんのこの熱量。
アオイくんはクールで売ってるところがあるし、セイムくんの天然やシリンくんの愛らしさで相対的にそう見えるのかもしれないけど、スマートというか……シリンくんが姫なら、アオイくんは王子だよねって巷でも評判である。
俳優業も、感情をあまり表に出さないミステリアスでかっこいい役が多いので、アオイくんが何かに熱くなっている姿というのは初めて見た。
「おれは元々俳優業でごはんを食べていたので、アイドルなんてやるつもりなかったんです」
「……そうでしょうね。初出演の『ウィルバードの』の時点からアオイくんの人気は確かなものでしたし、その後いくつかの役を経て演じた初主演の『朝陽が落ちる』でもアニメーションに迫る異次元の美しさとか、すごい評判でしたもんね」
俳優業だけで食べていけるだろう、この子は。顔がいいので。
アオイくんは私の分析にさすが編集さんですね、と微笑んだあと、真剣な眼差しで告げる。
「社長には『やられた』って思いましたよ。それくらいセッカさんのダンスはすごかったんです。形容するだけじゃなくて、本当なら見てほしいくらい。……セッカさんのダンスに魂を揺さぶられたから、今おれはここにいるといっても過言ではありません」
お?何気に私すごい話聞かされてない?
「でも、セッカさんは込み入った事情で表には出られないので、この話は内緒ですよ」
妖艶に唇に人差し指を当ててウインクを決めてくるアオイくん。とんでもねえ男がアイドルになったよ。

(^ー^) (プロフ) [2022年12月21日 1時] 5番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

回廊を歩いていると、見るはずのない姿にウリエルが瞠目する。
「るしっ……」
言葉は相手の唇によって飲み込まれた。息を飲み、交わし合う二人。ウリエルは最初こそ驚いていたが、深くなっていく口付けに、次第に顔が蕩けていく。
その人物──ルシファーが、ウリエルの顎を支え、さらさらの髪に触れ、体が崩れないよう引き寄せる。
「ふぁ、ぁ……」
ルシファーに翻弄されていくウリエル。厳格なことで知られる炎の断罪者もルシファーの前では形なしだ。
力が入らず、ルシファーにすがることになってしまう。
「やめ、ろ……」
必死に突き放そうとするが、ルシファーが歪んだ笑みを浮かべる。
「本当にやめてほしいのか?」
その指がウリエルの唇に触れる。それに反応してウリエルの肩がぴくんと跳ねる。
触れられただけで、過敏に反応してしまう。けれど、それはこの隻眼の男に対してだけで……
ルシファーはウリエルの耳元に口を寄せ、軽く食んでから、息を吹き掛けるように囁く。
「早く俺のところに堕ちて来い……」
「っ……」
甘い声の誘惑。だが、さすがにそれに負けるわけにはいかなかった。堕天の烙印を押されていたとしても、ウリエルは四大天使のうちの一人なのだから。
ルシファーのように、神に背く道を彼は選べない。
ふるふると首を振った。それは駄目だ、と。ルシファーも予想していたのだろう。動揺はない。むしろ、予想通りの反応だった様子で、触れるだけの口付けをもう一度だけすると、ウリエルから離れた。
擦れ違い様に言い放つ。
「なら、俺から逃げきってみせろ」
振り向くと、ルシファーの姿は幻であったかのように消えていた。
けれど、あれは幻ではない。体が、耳が、唇が覚えている。彼の声と彼の感触を。
「ルシフェル……」
ついぞ呼んでやれなかった名前を口にする。
この名を愛しく思い、いつまでも引きずってしまうのも、罪だということはわかっている。
ルシファーは神に仇なした堕天使。ウリエルは天使の規律を守る番人。決して結ばれてはいけない。
口付けさえも、本当は許されない。けれど、ウリエルはルシファーを振り払うことなどできない。弱味を握られている、というのもあるが、それ以上に……
「お前との関係とは、何なのだろうな……ルシフェル」
ウリエルの呟きは空に溶けた。

(^ー^) (プロフ) [2019年6月9日 17時] 1番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「ふー……」
炎の悪魔であるアモンだが、風呂はいいものだ、と思う。将軍と呼ばれるくらいの地位にはいるものの、駒使いのようなものだ。忙しくて仕方ない。
一日の汗を流すというのも、なかなか乙なものなのだ。
タオルで髪を拭いていると、部屋にルシファーが入ってくる。勝手知ったるといった感じで、アモンの部屋の冷蔵庫からグラスとワインを出す。
「いや、来るのはいいんだが、ノックくらいしろよな」
アモンが呆れたように言うが、ルシファーは聞いていない。
この傲慢の悪魔は、鍵をかけようとあの手この手でアモンの寝室に侵入してくる。ルシファーは天使時代からの友人であるし、ルシファー以外の曲者なら片手で伸せるから、アモンは部屋に鍵をかけるのをやめた。諦めたというのが正しいか。
それからはご覧の通りである。大体夜、風呂上がりの頃に来て、なんでもない顔でアモンの酒を我が物顔で飲む。アモンも呆れながら、ルシファーの向かいに座って、晩酌を楽しむ感じがいつものルーティンになっていた。
「……髪くらい拭いてやる」
「軍師さまが優しいことで」
アモンが手を止め、その言葉に甘えてやると、ルシファーはバスタオルごと、アモンを引き寄せた。
「んっ……」
熱を帯びた唇が重ねられるのも、アモンにはもはや慣れたことだ。胸の奥が膿んだように痛むが、拒絶はしない。ルシファーの傍にいると決めたあの日から、ルシファーを拒むなんて選択肢、アモンにはもうないのだ。
まだ湿り気のある自分の髪が首筋にひたりと触って、呻きが零れる。それさえ愛しむように、ルシファーがアモンに触れる。アモンの髪を軽く食んだ。
その姿はひどく官能を誘うものであるはずだが、アモンはひどく冷静で、美味くもないだろうに、やめろよ、と声をかける。
ルシファーはそこに一言だけ返す。
「お前は俺のものだ」
「そうだったな」
「今もそうだ。ウリエル」
呼ばれた名と、焦点の合っていない目に、アモンは嘆息する。
──所詮、俺はあいつの身代わりにすぎない。
それがアモンに強い諦めと冷静さを持たせているのだ。
アモンはウリエルに容姿が似ていた。重ねられるのが嫌で、髪を切ったり、髪型を変えたりしたが……今は傍にいない、どう足掻いても傍にいられないそいつの身代わりに、アモンはルシファーに抱かれる。
「だから俺から離れるな」
「……わかったよ、ルシフェル」
だから今日も諦めて、丁寧に名前を呼んでやる。

(^ー^) (プロフ) [2019年6月9日 17時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

城の広すぎる廊下をふらふらと歩く少年のような悪魔がいた。
「面倒くさい……なんでこんなに城でかいの……」
でかくなかったらむしろ城ではないと思うのだが、左目を包帯で隠したその人物には、広さが疎ましかった。
そんなふらふらしている肩を掴む者があった。その感覚にびくんと震え上がる。
「どうした? 様子がおかしいぞ、ベルフェゴール」
「……ぁ、ルシファーさん」
眠たげな眼差しで隻眼の悪魔を見上げる。頭がもやもやして、う、と唸ってしまう。
見ていたルシファーが異変に気づいた。ベルフェゴールが怠そうなのはいつものことなのだが、肌が熱く、火照っている。
「体調不良か?」
「そんなわけないでしょう。僕は怠惰の悪魔ですよ」
こんなのいつも通りです、と怠そうな眼差しで威張るが、威張るところではない。
何より、傲慢の悪魔であるルシファーが、虚勢に気づかないわけがない。
手首を掴むと、ひあっという喘ぎ声。そんなに乱暴にしたつもりはないが、怠惰をモットーにし、大抵のことはされるがままのベルフェゴールにしては妙な反応だった。
普段なら、無言で、抵抗なく、引っ張られるはずなのだ。だが、今日はベルフェゴールの様子がおかしい。恥ずかしがっている。
「どうした?」
ベルフェゴールは面倒くさそうな顔をしていたが、諦めたらしく、答える。
「どうやら……アスモダイさんから感覚鋭敏かけられた状態で逃げて、リリスさんに媚薬効果のある薬打たれた状態で逃げて……気力操作で媚薬の効果は抑えられるんですけど、感覚鋭敏厄介だなぁ……」
それはとんだ災難である。普段は何をやっても無表情のベルフェゴールだ。何かしらの反応を得たい変態悪魔に詰め寄られた結果のそれだろう。
気力操作という能力で、興奮作用は抑えているようだが、感覚鋭敏の効果はどうにもできないらしい。
感覚鋭敏の解除条件は性的な行いをすること。
国の宰相がいつまでもこんなではよくないだろう。ルシファーはベルフェゴールの顎を持ち上げ、唐突に口付けした。ベルフェゴールは驚いたように呻く。それが喘ぎに変わっていく。
感覚鋭敏は触覚だけでなく、他の五感も鋭敏にする。ベルフェゴールは全神経でルシファーの口付けを味わう。香り、舌の感触、水音……全てが今ばかりは魅惑的で、ベルフェゴールはいつしかルシファーに体を委ねていた。

(^ー^) (プロフ) [2019年6月9日 18時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

会ったのは、天使時代に一度きりだった。会ったというのもおかしなくらい、曖昧な対面だった。
「審判から逃げ出す不届きな輩が出ないよう、見張りを頼みます」
審判の天使、ラグエルは集まった複数人の天使にそう言った。その声をアモンはよく覚えている。
審判という重要な仕事を任せられるだけあって、ラグエルは潔癖で几帳面だった。天使一人一人の特徴や性格を事前に調べ、一人一人に対して注意事項を述べていたことにアモンは感心したものだ。
「……アモン」
そう名を呼ばれたとき、どくりと胸が高鳴った気がした。ルシフェルやウリエル、ミカエルにいつも呼ばれているのに、なんだろう、慣れない感覚がした。
もちろん、ラグエルは上級の天使であるから、すぐに返事をした。
「君のことは主の側近であるルシフェルからよく聞いている。ただ、立場に甘えて怠慢のないように」
「はい」
ラグエルはその頃から、他人にも厳しかった。
それが変わったと聞いたのは、アモンがルシファーと共に堕天して、千年が経った頃。人間が魔女裁判のついでに天使の中でも堕天の疑いがある者に烙印を押したと聞いた。人間は愚かだとは常日頃から思っていたが、堕天とされた天使の中にラグエルの名があったことに驚いた。
ラグエルはウリエルに負けず劣らずの潔癖で、実際潔白だったのだが、烙印を押され、煉獄に閉じ込められてから、偏屈になったと聞いた。それをアモンは少し、悲しく思っていた。
変わり果てた彼を目撃したのは偶然だった。マモンと連絡を取るため人界に向かうと、聞き覚えのある声がしたのだ。
「……ラグエル?」
「っ、お前は、アモン……」
悪魔でさえ「君」と呼んでいた人物が、「お前」とは。それに髪も綺麗な金髪が黒く染まり、見た目も窶れていた。骨と皮ばかりの腕が、痛々しかった。
──堕天の烙印を押された者はその罪を認めぬ限り、烙印に侵され続ける──
ルシファーから、そのことは聞いていた。
こんなに変わってしまうなんて、とアモンは胸を痛めた。それだけなら何もしなかったのだが。
「アモン……」
以前と変わらぬはっきりとした声で名を呼ばれ、アモンはいても立ってもいられなかった。
ラグエルに押された烙印の魔力を吸い取ろう、とアモンはラグエルの体を引き寄せ、口付けた。
「何す、あっ……」
ラグエルが弱々しく抵抗してくるのを押さえながら、アモンはラグエルを貪り、取り憑いた魔力を吸った。

(^ー^) (プロフ) [2019年7月19日 23時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

アカリはヒカリを心配していた。
ヒカリはもう齢十を越えた。女性としての身体的特徴が現れてもいい頃合いなのだが……
薄い胸板。少年のような振る舞い。まだ月のものがきていないという。同い年のアカリとは大違いだ。
アカリがヒカリを愛するのに、性別は関係ない。きっと、ヒカリが男だったとしても、アカリはヒカリを愛せただろう。
けれど、ヒカリが女性として生長しないのも、アカリは心配だった。ヒカリは美しいのだから、女性になったら、もっと美しくなるのではないか、と思うのだ。
だから、作戦を決行した。
ヒカリに女性だという自覚を持たせる行為で、ヒカリの生長を促す。
そんな無茶苦茶な考えで、夜にアカリはヒカリをベッドに押し倒した。
いつもとは立場が逆だ。これはこれでぞくぞくする。喘ぎ声というのが、こんなに興奮を誘うものなのだ、と実感しながら、快楽に溶けそうな頭を律し、ヒカリに囁いた。

(^ー^) (プロフ) [2019年6月1日 14時] 12番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

夏になると幼なじみの蓮の精神が不安定になる。それは決まったことだった。
蓮との付き合いは長い八坂は、幼なじみの延長線から、蓮と恋人のような関係になっていた。といっても、蓮が不安定なときに愚痴を聞いてやり、必要とあらば、体を軽く重ねたり、満足のいくまでキスをする程度だ。
一線を越えているといえば越えているのかもしれないが、蓮にとって、八坂との行為は、愛の伴ったものというより、精神安定剤代わりのようなものだ、というのが八坂の認識だった。認識に若干の潔癖な詭弁が入るのは、おそらく八坂が修行僧だからだろう。八坂の家は寺で、八坂は家を継ぐつもりで修行をしている。
煩悩からのものではない、八坂から求めることはないのだから。そう理由づけをして、言い訳にしていた。
だが、たまには、蓮を満足させてやりたいと思う。あいつには八坂の事情など、関係ないのだから。それは小学生くらいまでは一緒に修行することもあったが、蓮の精神が病んでいくのを見て、八坂が止めたのだ。
中学に入って、周囲には気丈な様子を見せるようになった蓮だが、やはり、八坂を前にすると、色々とこらえきれないものを吐き出して泣く。そんな優しい蓮を八坂は好ましく思っていたし、力になってやりたいとも思った。
今、大学生になった蓮と行っている行為は、ちょっと力になってやりたい、というのとは方向性が違ってきているような気はするのだが、蓮にすがられたら、八坂は抗えない。
八坂は理由を探した。それは薬だった。
貯金を切り崩す行為にはなったが、蓮のためだ、と言って買ったのは、媚薬。蓮も自分も、薬のせいで行為を行うのだとしたら、それは理由づけになるだろう。
「裕……」
蓮が家にやってくる。部屋に招いて、涙をこぼすように悲しみを吐き出していく蓮。そんな蓮に、裕は薬を飲ませた。
裕も既に二錠ほど飲んでいた。嗚咽の混じった蓮の声に、いつもと違うふわふわした熱を感じていたし、普段はあまり自分からはやらない、蓮を抱きしめたいという思いに包まれていた。
いや、抱きしめたい、で済むのだろうか。抱いて、嫌というほど抱き潰したい……だなんて、欲望が八坂の中に渦巻く。
だが、首を振って振り払った。きっとこんな感情も、薬を飲んだせいだからだ。
そうやって、自分は穢くない、と八坂は理由づけをしていた。

(^ー^) (プロフ) [2019年6月1日 16時] 13番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「ふ、ぁ、ゆう……」
「なんだ?」
薬の誘惑をおくびにも出さない辺りは、八坂が真面目に修行している成果とも言えるだろう。蕩けたような顔をして、涙をつ、と流していく蓮の表情に、何も感じないわけではないが、八坂は眉一つ動かさず、「いつも通り」に、蓮の言葉に耳を傾けた。
「なんでだろう。感情が溢れてくる、裕、裕……」
「ん……」
自分の身に何が起こっているのか理解できないながらも、どうしたら解消できるのかを本能的に理解しているのだろう、蓮は。八坂に顔を寄せて、目を瞑り、唇を重ねる。
いつもなら、重ねるだけで収まるはずだが、蓮はより深いものを求めた。何も知らない蓮。理解していない蓮。疑うことをしない蓮。愚かと見られようが、八坂には蓮が愛しく映った。
だから、求められるがままに、蓮の口付けに応じた。蓮が求めるなら、と深く、深く。蓮が拙く絡めてくる舌を絡め取り、八坂は蓮の口内を蹂躙していく。
隙間から、あ、ぁ、と蓮の感じ入ったような声が聞こえるたび、八坂は自分の鼓動が高まっていくのを感じた。
いつの間にか二人の体がぴたりとくっついており、蓮の方からもその脈動の高鳴りが伝わってきた。ああ、蓮も感じているんだな、と、まだ冷静な頭で受け止めた。
「う……」
慣れない高まりに、八坂が唇を離して、はあはあ、と荒い息を吐き出す。思ったより、薬の効果が自分にも出ているらしい。八坂は呼吸が整わないまま、蓮を見た。
蓮は血色がよくなり、いつもより火照っているようで、わけもわからず顔を赤らめながら、八坂の服を握って、体を起こしている。蓮にはちょっと飲ませるのを引け目に感じ、一錠しか飲ませていないが、体との相性もあるのだろう。強い効果が出ているようだ。
その様子に、八坂はふ、と笑んだ。蓮がどくり、と心臓が一層高鳴るのを感じ、八坂から目を放せなくなる。八坂の笑みはいつもより野性味に溢れていて、妖艶で……襲われる、という言葉が蓮の脳裏をよぎったけれど、八坂ならいいかな、なんて思ったのだ。
「ゆ、ぅ……」
するりと首に手を回す。八坂はそれを受け入れるように蓮を貪った。もちろん、それは薬のせいだと思いながら。
薬によって引き出された本能だということを、歪なままの青年はまだ知らないのだ。

(^ー^) (プロフ) [2019年6月1日 16時] 14番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「主さま」
奴隷の首輪で操られているにも拘らず、まるで意志を持っているかのような強い青色の目が主に向けられる。とある王国の賢者と呼ばれる錬金術師を抱え込む貴族の邸宅に彼はいた。
この青年は面白い、と主も賢者も思っていた。何しろ、美しいが故に囚われた自分の兄を救うために、奴隷に身を落としたのだ。それに、奴隷とは奴隷の首輪をつけられたら、主には抗えないよう、首輪が設計されているのに、主に逆らってまで、兄のために奔走した。意志の強さとその類稀なる執着心が、主や賢者たちの好奇心を擽った。
兄を解放してやってからは、従順な人形である。もう兄のことも覚えていないだろう。滑稽なことだ。それでも兄のことを話題に出すと、すぐに話を逸らす辺り、本当に奴隷の首輪に操られているのか、と何人もの錬金術師が疑った。
他の被験者は問題ない。彼だけが異常だった。
ただ、彼を奴隷にしているのは、彼が類稀なる才能を持っているからだ。
「カナト、それで、敵国の将はどうだった?」
「DEXとSTRが高く、当然AGIも取得しており、それなりの数値でした。ステータスには安定感があるように見えますが、VIT関連の能力が薄く、周辺人物もVITに長けた人物がいないため、一撃必殺に弱いものと思われます。攻撃無効化系のスキルも見られませんでした。部下にいたとしても、一撃二撃を防ぐのがやっとでしょう」
「全く、君の戦術分析にはいつもながら畏れ入るよ」
アイズ。この世界の人間に与えられた万象を見抜く瞳。その上位互換のうち、カナトという奴隷は二つを持っていた。
「AGIからわかる通り、機動力に重きを置いた守りは軟弱な人物です。また、過去に想い人を目の前で亡くしたことがトラウマとなっており、自ら最前線で戦うという将としては珍しい行動を取っています」
「ふは、誠に便利な目だなぁ」
カナトの青い目を見て、主が満足げに笑む。
ステータス上の弱点を見抜くデビルアイズ、心理的な弱点を見抜くフォーリンエンジェルアイズ。人々から疎まれる二つのアイズを併せ持つ、カナトは稀少な人種であった。
美しい青に主は囁く。
「宝玉より美しいその目、取って喰らいたいくらいだ」
「かまいませんが、そうなると自分はショック死しますね。いかが致しますか?」
「君のような面白い人間をころすのは惜しい」
死ぬまで利用して、適度に弄んであげるよ、と告げると、主である吸血鬼はカナトの首筋に噛み痕をつけた。

(^ー^) (プロフ) [2019年7月19日 22時] 15番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

愛しい人の姿が見えた。
藍色と水色の羽織を着ている人。若くして、一族を背負って立つ人。
雨野咲希のことが、長曽根小明は堪らなく好きだった。
彼はとても心が広くて、優しい。
こんな私のことも受け入れてくれる。彼だけは私に恐怖を向けない。
「綺麗な紫陽花色だね」
この角度によって変わるへんてこな髪の色を綺麗な花の名前に例えてくれたのは彼だけ。不気味と言われる目の色も褒めてくれた。
ああ、私だけの彼にしたい。
小明は咲希を見るたび、そう思う。けれど、能力を使う気にはならない。
顔を思い浮かべて名前を呼べば、その人物は自分の隣に瞬間移動してくる。そういう能力を小明は持っている。
けれど、咲希を能力で呼び寄せようとは思わないのだ。彼はこの能力も、きっと受け入れてくれるだろうけれど。
違うの違うの。私の方から彼に寄りたいの。抱きつきたいの。抱きしめて、愛して、と言いたいの。
でもいざ彼を目の前にすると、彼の容姿を思い浮かべるだけでも……小明は満足してしまって、惚けてしまって。
だから、名前を呼べないの。
和菓子屋で遅くまで働く彼の背を見送ることしかできないの。
私はこんなときばっかり弱虫で……と俯いていると。
「あれ? 小明さん?」
咲希がいつの間にか目の前にいた。能力を使った覚えはないから、きっと彼が歩み寄ってきてくれたのだと思う。
「女性の夜歩きは危ないですよ。家までお送りしましょうか?」
「だ、だだ、大丈夫です!」
ああ、緊張してしまう。こんな近くに愛しい人がいるなんて。私を淑女のように扱ってくれるなんて。和装だけれど、彼はきっと私の王子様なのだわ。
けれど、小明はどうしても家を教えることができなかった。それは小明の家が所謂ヤのつく稼業の家だからだ。
この人の人畜無害を汚してはいけない、といつも断っている。
ああ、けれど。
この人を汚す第一人者が私というのも、乙なものかもしれない。
けれど、美しくて、尊くて、汚したくない自分がいるから、小明は咲希をただ眺め続ける。
「お気遣い、嬉しいですわ」
淑やかに笑んで。どれだけ裏で穢い仕事をしていても、この人の前でだけは、綺麗な私でいたいの。
「そうですか。では、道中お気をつけて」
ああ、そんな彼の気遣い一つ一つが愛しい。愛しくて、彼の一言一句を脳内で何度も反芻する。
それが小明のこの上ない幸せだった。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月27日 4時] 16番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

出会い→23
結婚→26
事件→39~40
バー→42~

(^ー^) (プロフ) [2019年8月16日 0時] 14番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「最近異世界転生ものが多いけどさ、中身おっさんの美少女とか鳥肌なんだけど」
「それなー。美少女がこじきに転生したりしてたら滅茶苦茶手を差し伸べたい」
「成り上がりはちょっとメタいけどな」
「こじきのままで平和に生活とか? やべぇ助けてあげたい」
──男子のくだらない妄想には反吐が出る。
そう思っていた私は、紆余曲折あり──
ショタこじきに転生してしまった。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月17日 16時] 15番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

アディショナルメモリー
一度だけ誰かの運命を肩代わりすることができる(能力を受け継いだり、死を身代わりしたり)
ただし、その人物に一定以上の好意を持っていないといけない。
失想ワアド
時間を行き来できる能力。ただし、元の時間軸に戻るためには、三ヵ所以上別な時間軸に行かなければならない。
同じ話。
絶対予知能力。この能力で予知した未来は避けられない。アディショナルメモリーの能力で肩代わりしても、結局対象が同じ目に遭うので無意味。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月20日 18時] 16番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

陽炎に喰われる前に
カゲプロ二次創作、楽曲添いストーリー
使用楽曲
人造エネミー
メカクシコード
カゲロウデイズ
空想フォレスト
透明アンサー
如月アテンション
ヘッドフォンアクター△
コノハの世界事情△
デッドアンドシーク
シニガミレコード
アヤノの幸福理論
アディショナルメモリー
夜咄ディセイブ
少年ブレイヴ
失想ワアド
オツキミリサイタル
夕景イエスタデイ
アウターサイエンス
群青レイン
ロスタイムメモリー
マリーの架空世界△
チルドレンレコード
サマータイムレコード
※△は使うかわからないやつ。
※ここに載せてない楽曲は使わない予定。
※キャラは原作キャラを使用。
※オリジナルキャラは使わない。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月26日 18時] 17番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

家庭教師ヒットマンREBORN二次創作
「幼なじみの成り損ない」
ツナと保育園から一緒なのに、友達になれなかったすれた少年の話。
キャラシ考えとく。
名前:片ノ野サノメ
通称:サノ
容姿:黒髪に琥珀色の目。瞳孔の色素が薄く、オレンジに見える。私服は肩にかっこいいサメの絵柄が白抜きで入ったジャケットか、33という数字が入った服。大体ジャケットは黒か青。33の方はバリエーション豊か。ネックレスに指輪を通したものを制服の下に隠しており、雲雀に押収されないかいつもヒヤヒヤしている。左手首に薄紫のリストバンド。私服時は右手首にブレスレットをつけている。
性格:喋るとツッコミに回りがちなのが悩み。いつもツナのことをなんとなく見ている。獄寺のことを「五月蝿いワン公」、山本のことを「心が太平洋」と独特な認識。ツナのことは「ダメツナって考えたやつ誰だろ語呂いい」程度の認識。
渾名が「サノ」であるため、苗字が「サノ」だと思われており、教師にすら「サノ」と認識されているのが悩み。逆にフルネーム覚えてる雲雀にはびっくりしている。
甘党で飴かキャラメルかチョコを持ち歩いており、ランボに飴を分けていたりする。
年下には優しい。年上には自分の正しくないと感じた事象をきちんと指摘する肝の据わり方をしている。
基本単独行動なので、雲雀に好かれており、牛乳を毎日お互いに買って交換し合うという謎の習慣がある。
部活:元バスケ部
委員会:無所属。雲雀に幾度となく風紀委員に誘われているが、ネックレスのことがバレたくないので丁重に断っている。
過去:父親が不倫しており、母に引き取られたが、実は母も不倫していたので、本当の父親は不明。母は彼が物心つく前に不倫相手とは別れたらしい。だが、母が溺愛するのでうざいと思っている。原因は容姿が母好みだから。
一人暮らしを夢見ている。
未来:10年後の未来ではミルフィオーレのブラックスペルに所属。炎は大空、雲、雨。大切にしていた指輪は大空のリングのため、白蘭からは隠していた。ジッリョネロファミリーには数年前、アリアによって見出だされており、γとは飲み友達になっている。
大空の属性は隠しているため、雲と雨のリングを使う。匣平気は雲モルモットと雨雀。武器は拳銃とグローブ。拳銃が主でグローブは接近戦用。
レオに化けた骸と知り合っており、笑顔のコツを聞いているなど仲が良い。
スパナに飴を分けたり、スパナの作った新しい味の飴の実験台にされている。
備考:最終的にブラックスペルとしてボンゴレ側に加担していたため、未来での記憶があり、それによって雲雀から更に目をつけられることに。

(^ー^) (プロフ) [2019年12月13日 2時] 18番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

依頼話

(^ー^) (プロフ) [2018年7月10日 21時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

御筆監督のご指導の下、細かいシチュエーションと台詞回しを教えてもらった。
童心に帰ろう、なんて言い訳をして恋敵(俺)を連れ出す片想い男(村崎)。水切りで勝負しようぜ、の流れまでは和やかだが、全然本気にならない恋敵にやがて片想い男がキレる、というシチュエーションらしい。
水切りは手加減した方がいいのか、と思ったら、普通に楽しんでくださいと言われた。わけがわからん。
台詞や場面切り替えのタイミングは自由。お互い好きな人を思い浮かべて台詞を吐き出してください、とのこと。その方がリアリティーが出る云々。
ひとまずレクチャーを終えた俺と村崎が繁る植物を掻き分けて川へ向かうところからスタート。
「っていうかこの植物結構硬いっ。ヨシでしたよね」
「いいえ、アシです。字は同じですが」
アシなら聞いたことがある。人間は考える葦のアシだろう。
「あれ? 茅って言わない?」
「これが同じ植物なんですが、生息域により、名前が変わるんです。水辺のをアシ、平野のをヨシ、山のを茅と呼ぶんでしたか」
さすが小説家。博識である。全然知らなかった。
「元々はアシと読むのが主流だったんですが悪いものという意味の悪しと重ねられて、ヨシと呼び名を変えられたとも言われています。花言葉は──後悔」
繁る葦を踏み散らかしていた三人の足が止まる。御筆はさくさく進んでいた。
「今回の舞台にはうってつけです」
「御筆さんえぐいなあ」
葵衣がけらけらと笑う。
叶わぬ恋の思いを恋敵にぶつけ、どうしようもないことに気づいた片想い男は、ずっと秘めておけばよかったのに、と現実になってしまった言葉を悔いる場面。なるほど、葦の花言葉が後悔というなら、この葦の覆い繁るこの河原は舞台としてうってつけだ。そんなことまで下調べしていたのか。
本格的だな、というと、御筆はあら、と返してくる。
「いつもはこんなことはしませんよ? 私の妄想は私の中で完結しています」
「じゃあ、今回いつも通りにしない理由は?」
御筆は問いかける俺にさて何故でしょう、と冷やかしを入れた。誤魔化された、と思う。
問いを連ねようとすると、先が拓け、やっと着いた、と村崎が解放感を堪能する。
俺は舞台となる川には見向きもせず、踏みしめられた葦たちを見やった。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月24日 3時] 172番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「水切りしましょ、センパイ」
村崎は剽軽に丸くて平たい石──既に水切りをする気しかない石を手で弄びながら声をかけてきた。
まあ、断る理由もない。もう川の中に入って水をばしゃばしゃかけ合うような年頃でもない。水切りもガキ臭いとは思うが、河原には俺と村崎の男二人。特段、何の軋轢もない俺たちがこんな人気のない場所で殴り合う理由などあるはずもなく。俺は返事の代わりに石を探し始めた。
「センパイは水切り得意っすか」
「あんまり。十数回飛ばせる程度だ」
「充分得意な部類じゃないですか」
「誘ったんだからお前もそれなりの腕なんだろ?」
「ガキの遊びでハードル上げないでくださいよっと」
一見無造作に見える動きだったが、フォームとしては悪くない。大人げないくらいに綺麗なスタイルでやつが水面に投げた石は、目測だが、八回は跳ねた。
「充分上手いじゃないか」
「十回以上飛ばせる人に言われても嫌味にしか聞こえませんよ。さ、センパイの番です」
言われて、俺は小ぶりな石を握り直す。さぁて、水切りなんていつ以来だろうか。十数回と啖呵は切ったが自信はないぞ。
そう思いながら投げると、少し力みすぎたか、石は三回跳ねて沈んだ。
まあ、ブランクもあったんだ。三回くらいできれば、上等だろう。
なんて誤魔化していたら。
「このっ………」
村崎は俺の襟首を、ぎちぎちと音が立つほどに強く、握りしめていた。俺は村崎の態度の豹変に戸惑う。
ああだこうだと宥めているが、どれも効かない。参ったな、と思っていると、村崎からぎりっという歯軋りの音がし、その奥から低く、地面を這いずってくるような声がした。
「これだから、あんたはッ」
激情を迸らせる拳は震えていた。
「あの人はな、あんたが子どもの頃、すっごい上手く水切りしてる姿に見惚れてあんたを好きになったんだぞ。ブランクなんてないだろ。今でも時折水辺にいると思うとやってるって……嬉しそうに……楽しそうに……幸せそうに、あの人は言うんだ……!」
あんただって、と唸るように続ける。
「あんただって、あの人のことが好きなんだろ!?両片想いだなんて、恋愛小説だけにしてくれよな。いい加減……」
腹の底から村崎が叫ぶ。
「いい加減、あの人を好きだって認めろよぉっ! 俺が、諦めるために」
叩きつけられた言葉を返すように今度は俺が村崎の襟首を捕まえた。
「どんな言葉でも足りるわけねぇだろっ、俺が朱音をどれくらい好きかなんて!!」
……あ。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月24日 3時] 173番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「いや、あの、その、申し訳ない……」
俺の先の発言により、現場が固まったのは言うまでもない。咄嗟に口を衝いて出たのは御筆の名前。結構本気な感じの声で言ってしまい、気恥ずかしくなった俺、という構図が穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。
でなければ葦に紛れて逃げてしまいたいくらいだ。そういえば、御筆が葦の花言葉は後悔だと言っていたな。出た言葉は返らない。それを嘆くのは後悔と言って差し支えないだろう。
だが、先の発言があながち嘘ではないため、後悔と思うことができないでいる。複雑な心境だ。
御筆と過ごす時間はとても心地よい。今日のダブルデートとやらも、終始御筆に振り回されていた気がするが、嫌だとは感じなかった。むしろ、居心地がいいのだから……好きという表現は、不適切ではないと思う。
ただ、思うだけに留めていたのを思わぬ形で暴露してしまったことが衝撃的なだけで。
村崎と葵衣のコンビは俺と御筆を交互に見て、様子を窺っている。
御筆はというと。
さらさらさらさらと先程からペンが止まらない。俺の「朱音が好き」発言から、ずっとこの調子である。頼むから何か言ってくれ。受け入れてくれたらもちろん嬉しいが、拒絶でもかまわない。この空気を動かせるのはお前の言葉だけだ、と祈る。
祈っていると、やがて御筆はペンを置いた。
「とてもいいシーンを見ることができました」
監督様からの太鼓判をいただいた。
「やはり、妄想だけに留めておくより、実際に渦中に身を置く方が、表現のリアリティーが増すような気がします」
「そ、そうか」
ん? なんだか今、とても重要な一言を聞き流したような……
渦中に身を置く……?
渦中……?
御筆は俺をその朱色で真っ直ぐに射抜くと、告げた。
「これからは是非、朱音とお呼びください」
「御、筆」
「朱音です」
「御筆……」
「朱音」
「みふ、で……」
「あーかーねー!」
朱色の持つ圧には勝てそうもない。
俺は溜め息を一つ、いや、溜め息と呼ぶには喜びの色が混じっていたかもしれないが、御筆に、朱音に、応えてやることにした。
「──朱音」
朱音がふわりと笑う。
「はい、灰群さん」
ああ、朱音が何故名前で呼ぶよう要求したかわかる気がする。
好きな人には名前で呼んでほしい、なんて、恋愛小説みたいなベタな心境変化なんて、案外あるものだ。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月27日 2時] 174番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

そんなやりとりを終えると、脇に控えていた村崎と葵衣が、ようやく呼吸を許されたように動き出した。
「あたしたち、ここにいちゃお邪魔かな……」
「空気を読むのは大事だと思うよ」
そうしてそろーり、忍び足で去ろうとする二人の肩をがっしりホールドしたのは人気作家さまだった。
「あらあら、私がどうしてダブルデートにしたのかわからないのですか? お二人共」
「えっ」
御筆の笑顔は小説家のそれになっていた。
「灰群さんに会う口実が欲しかったのもそうですが、実際の恋人をこの目で見るためにお呼びしたんですよ?」
実際の恋人、というワードに反応し、各々顔面焦土となった。とてもお似合いだと思う。
「ふふ、葵衣さんは普段気が強そうなのに、こういうところが初なので、可愛らしいですね。そして類は友を呼ぶということを実感致しました」
俺もそう思う。というか、顔面焦土具合は村崎の方が重篤だ。
「ま、まだ告白もしてな、ああっ何言ってるんだ僕」
「まあまあ落ち着け、最近流行っているらしいタピオカとやらでも飲むか?」
「今飲んだら喉に詰まらして死ぬ未来しか見えないですセンパイ」
まあ、冗談を言って空気を緩和してやる。淑やかな顔をして爆弾を振り撒くさまは歩く砲撃台だ。
「朱音、初な人間をいじるのは程々にしてやれ」
「ふふ、なかなか面白いので。やはり今日のことを企画してよかったです」
朱音が「今こそ漢を見せるときだぞ」と葵衣に発破をかけられて女々しい村崎を眺めながら言う。
「村崎の演技力は意外な発見だった」
「アドリブとはいえ、灰群さんの水切りが三回で終了するくらいの腕前だとは思いませんでした」
「本気を出せばもっといける」
強がりはしたが、あまりつつかないでほしい。実は気にしているんだ。
野暮ったい児戯のようなやりとりには発展せず、朱音はすん、とした目で俺を見上げた。
「灰群さん」
「なんだ?」
「出会ったときから、少しあなたに惹かれている自分を感じていたんです」
いきなり何の告白だ。
「最初は、創作者として瑞々しいあなたの言語感覚に惹かれただけでした。そう思っていました」
少なくとも今は違うと思っています、と朱音は告げた。
「私はあなたが好きなんです」
そんなありきたりな言葉で、
俺と朱音の愛は始まった。

(^ー^) (プロフ) [2019年8月27日 2時] 175番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「センパイ、人生春色ですよね。羨ましいですー」
「お前はお前で春色だろうが」
絡んでくる村崎がうざいので、正論を返しておいた。村崎はあっという間に頬を赤らめ、何言ってるんですかセンパイ!!と叫ぶ。
まあ、村崎と葵衣の仲は進展していない。見るからに両想いだが、村崎のへたれと村崎から告白を待つ葵衣という構図により、関係は進展していない。恋愛に無頓着な俺ですら信じられないくらいの不器用……いや、村崎がへたれなだけか。
まあ、村崎には後ろめたいところがたくさんあるだろうしな……例えば、俺との関係とか、関係とか、関係とか。
何を恐れているのかはわからないが、村崎はどうやら、自分が軍人だと知られることを恐れているらしい。俺と朱音にはとっくにバレているというのに。そんな嘘に何の意味があるのやら。俺にはさっぱりわからん。
別に、戦時中の今、軍人であることは誉こそあれど、隠すようなことでもないはずだ。朱音にも何故だかわからないらしい。見栄だとしたら、よくわからん見栄だ。
「今日の出撃が終わったら、しばらく休みだ。またダブルデートとやらでもするか?」
「セセセ、センパイ、ななな何を言うんですか」
かなり戸惑っている村崎を弄るのも楽しい。
──そう、冗談めかして過ごしていないと、俺たち軍人は忘れてしまう。愛しい日常を。
ふう、と戯れ言はこの辺にして、集中を高める。俺の雰囲気の変化に村崎も真顔になる。切り替えの早いやつだ。
まあ、そうじゃなきゃ、軍人なんて務まらない。
俺は引き出しにノートを仕舞った。
このノートはあのダブルデートの後、朱音から渡されたものだ交換日記、というものらしい。今は軍も立て込んでいて、いつ裏切りが出るか、と睨みを利かせている。容易に手紙のやりとりもできない。
交換も難しいと思うのだが……俺の言葉が欲しい、と朱音が渡してきた。何故、俺の言葉なんかが欲しいのかはさっぱりわからないが、朱音は出会った当初から、俺の言い回しというのを気にいっているらしい。特に俺は考えずに喋っているのだが……やはり、小説家として色々考えながら言葉を組み立て、物語を作っていく朱音だからこそ、一般人の何も考えない素の言葉が愛しいのかもしれない。
だからこそ、朱音は人気作家足り得るのだろう。
あれから多少は書いている。休暇のときにでも会って、見せる約束にしている。休暇がいつ来るかわからないが、いつでも朱音に見せられるように。朱音が望むものを俺が与えられるのかは謎なのだが。それでも、信じて待ってくれている朱音のことを無下にもできない。ただ、もうすぐ戦場だ。そういう情のようなものは捨てて、冷徹にならないと。
──生き残らなければならないのだから。
「村崎、行くぞ」
「了解です」
村崎もすっかり軍人モードになっている。
……これが葵衣の前ではへたれな会社員を貫き通しているのだから、大した役者である。
さて、一時とはいえ、俺は日常を忘れよう。
──ここから、戦争だ。
…………
………
……
飛び交う血。耳をつんざく銃撃戦の音。目眩がしてもおかしくないのに、俺は平然として、その中に立っている。
感情なんか、働くわけがない。俺はどこかに忘れてしまったのだ。
生きるために、自分を捨てる。
まあ、これも自分だと言われれば、そんな気はするが。
灰群伸也はここにいる。戦場で数多の戦士を刈る死神として存在する。
意味なんて、考えたことがない。こうなるのはどこかで定まっていたシナリオのような気さえする。
だから俺が現状を拒むことはしないだろう。きっと、これからも。
……
………
…………
今日も、生きて帰った。
だから、約束通り、日記に綴っている。
もう飽きた戦場の感覚をこうして自分なりに言葉にまとめることで、俺は戦場の俺を客観視し、まだ「日常」の俺を保つことができている。
……これも、朱音の狙いなのだろうか。
ふとペンを止めて、そんなことを考える。
だとしたら、俺は朱音に感謝すべきなのかもしれない。
次に会ったときにでも聞いてみるか。
そう思いながら、俺は日記を閉じた。

(^ー^) (プロフ) [2019年9月19日 2時] 176番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

ひゃくものがたり2

(^ー^) (プロフ) [2018年7月10日 12時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

谷織田「何があっても雨野家の人とカラオケ行っちゃいけない。
延々と鬱曲を明るく歌う咲希さん、
延々と明るい曲を鬱曲みたいに歌うまつさん、
だけでカオス極まってるのに、
どんな鬱曲でも咲希さんが歌うとタンバリンで盛り上げようとする勇さん、
まつさん(女性)の声に不気味なくらいちょうどいいハモりをする声帯がヤバい竹さん(声変わり済)、
ずっと涙腺が崩壊している百合さん、
竹さんの洗脳によってボカロを訓練された水樹くんのエンジェルボイス……
ここに何年か前は選曲したのと違う人格が順番で回ってきて、ひたすら予約を取り消すうめさんがいたんだよ……」

(^ー^) (プロフ) [2019年8月31日 1時] 291番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

雨月「風呂場って書くのも洒落てねぇから「よくじょう」って打ち込んだら、欲 情が真っ先に出てきた。欲求不満なパソコンだなぁ」

(^ー^) (プロフ) [2019年9月1日 20時] 292番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

イリク「ちんぴらでも作りましょうか」
リチア「ごぼう持って何言ってるの?」

(^ー^) (プロフ) [2023年1月7日 13時] 293番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

明坂「親父さんに『たかし』って名前間違えられた……」
三枝「災難だったね」
明坂「姐さんが『たけし』でしょって突っ込んでたけど俺は『たくし』だ……」
三枝「」

(^ー^) (プロフ) [2023年1月7日 13時] 294番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

三枝「ヘイ、タクシー!」
明坂「読んだか?」

(^ー^) (プロフ) [2023年1月7日 13時] 295番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

三久島×律弥
「ただい……」
僕は言葉を失った。いつものことながら、心臓に悪い。
死んだふりをしている律弥くんというのは。
まあ、死んだふりだというのは毎日見ているため、わかってはいるのだが。
「今日は矢ですか。痛そう」
「これ、最近百均で売ってるんですよ。出来がいいでしょう?」
そういう問題だろうか。そういう問題なのだろう。
ハロウィンシーズンになるとこういうグッズが出回りやすくなるため、そこで買いだめしているらしい。
「あ、冴先生、晩御飯何にします?」
「きんぴらごぼうが食べたいです……ってちょっと待ってちょっと待って、せめてその頭の矢と血糊は落としてくださいっ」
今日も可笑しい我が家の日常。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 19時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

淕空×セイム
帰り道。またしても部活で遅なってもうたな、と思いながら、家の扉を見つめる。
扉の向こうで待つ光景を想像した。セイムはいつもなんか死んだふりしてんねんなぁ……今日はどないなってんやろ。毎度毎度よう思いつくもんや。
はあ、と想像がつかないことに溜め息をこぼし、扉を開ける。
そこにはマンボウの着ぐるみが。
あかん。目が逝ってもうたか。
目を瞬かせ、もう一度現実を受け止め直す。閉めかけた扉をそろーり、開けた。
やはり、マンボウの着ぐるみが死んどる。
俺は大きく息を吸い込んだ。
「なんでマンボウなんねん!?」
アパート中に響き渡ったであろう俺の声が微かに谺する中、確信犯のセイムがてへっと笑うのが聞こえた。
かわええから憎めへんのやけどな……レパートリー尽きたなら辞めりゃええんに。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 19時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

イリク×ルチル
家に帰る。今日も帰りが遅くなってしまったな。そう思いながら自室の扉を開け、包丁が背中に突き刺さった状態で倒れているルチルを確認。
今日は血糊が少し多めだ。
ぺろりと床に散らばる赤を舐める。あまり知られていないが、血糊というものは口に入ってもいいようにイチゴジャムを煮詰めて煮詰めて作られている。
……この味付けはルチルのだ。手作りしたのかとうとう。美味しい。
だが、以前出来がいいのを褒めたら、調子に乗ってこの通り血糊を増量したりするため、スルーしておく。
「この量のイチゴジャムを掃除するのは骨が入りそうだ」
くつくつ笑うルチル。そんなルチルが立ち上がると、体についた血糊を少し拭いてあげた。それから……口についている血糊を舐め取る。
もうちょっと、と見上げてくる彼女に、体がべたべただからシャワーを浴びるよう勧めた。
さて、べたべたの血糊をどう洗おうかな、と僕は頭を悩ませた。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 19時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

東暁×紫淋
ドアを開けて目の前に飛び込んできたのは血塗れで倒れる紫淋くん。
僕は仰天して、とりあえず彼にまだ息はあるか確認しました。脈はあります。
凶器等は見当たらない……毒殺でしょうか。
それなら血を舐めてみたらわかる、と思い、舐めた。この際、死んでしまってもよかった。紫淋くんがいない世界に生きる意味なんて見出だせない……
と舐めた血は予想外に甘くしかも舌に馴染みのあるジャムの味がした。
すると徐に紫淋くんが起き上がって、「びっくりしました?」と悪戯っぽく笑うのが可愛くて可愛くて、僕は躊躇いなく彼を抱きしめました。
一分後、「あきさん、苦しいです」と言われましたが、僕だって驚かされたんだからおあいこですよね。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 22時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

西園×夏帆
夏帆さんが毎日のように死んだふりをしてぼくを待つようになったのは、ぼくが仕事に打ち込み始めてからだろうか……もう長いことやっている。あれだけ手先が不器用だった夏帆さんが、マンボウの着ぐるみを縫えるようになるくらいには。
結婚前……就活前の大学時代は楽しかったことを思い出す。取り立ての運転免許使って、夜中に車を回して、二人でドライブなんかしたっけ。途中、浜辺で降りて、砂の掛け合いなんかして……思えば、笑顔に溢れていたなぁ……
それに比べて、死んだふりを始めるまでの間、僕は就職してから彼女の笑顔を見ただろうか。そもそも、彼女の顔をちゃんと見ていただろうか。
……もしかしたら、見てほしくて、死んだふりなんか続けているのかな。
だとしたら、こんな生活もありかもしれない。
それでぼくらが幸せなら。
今日はどんな死に方をしているのかな、とちょっと笑いながら、扉を開けた。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月6日 23時] 7番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

ひゃくものがたり

(^ー^) (プロフ) [2018年6月27日 21時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

八坂「夏の暑い日に蓮から電話が来て、「今からそっちイグアナ」っていうから一瞬何のことかわからなかったが、俺は迷わず言った。「今からそっち行くから待ってろ熱中症」」

(^ー^) (プロフ) [2018年7月9日 17時] 297番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

セイム「こないだロッカーにラブレターが置いてあって、「青い夢を追いかけるのは辞めました」って書いてあったんだよね。最近ずっと感じてた視線と関係あるのかな?」
アオイ「視線感じてたんかい!」←始末した人

(^ー^) (プロフ) [2018年7月9日 18時] 298番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

西園「こないだ春子さんをつけていた女の子に捕まって、「東雲先輩に近寄んないでよね」と言われ、「春子さんのこと好きなんですか?」と問いかけたら、「そうよ、悪い?」と不機嫌に返されました。
同志を得たと思ったぼくは「ぼくも春子さんのこと好きなんです」って打ち明けたんです。そしたらその女の子が怒って、こう怒鳴りました。
「告白もできない意気地なしのくせに、あの人に近寄んないでよね!」
と。
ぼくは春子さんに対する恋には悟りを開いていたので、冷静に、「それって盛大なブーメランですよね」と返したところ、その女の子は泣いて逃げていきました。
……ということが四回くらいあったんですが確認です。春子さんって女ですよね?」

(^ー^) (プロフ) [2018年7月9日 18時] 299番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

アルミナ「チェストォッ」
エルリダ「いや、ラストです、姉上」

(^ー^) (プロフ) [2018年7月9日 18時] 300番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

度会「反響がよかったら続き作るってさ。反響があるといいよね。
っていうかひゃくものがたり越えて三百書かれた物語……
まあ、期待せずに待ってね」

(^ー^) (プロフ) [2018年7月9日 18時] 301番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

ぼくが他の男と違ったのは、軍属を目指していながら、医学に興味があったことだろう。軍人たるもの、怪我の一つや二つに対処できなくてはやっていけないだろう、というところから派生して学んだ学問だったが、これがなかなかぼくの性に合っていたらしく、ぼくは暇があると医学書を読んでいた。
もちろん他の訓練や勉学を怠ることはない。
軍の仕組みについてはまだよく理解できていなかったが、前線に出て戦う部隊を補助する援護班やら救護班やらが存在することはわかっていた。軍属になったら、どんな部隊に所属になるのかわからないのだ。多方面の知識を得ていて損はないだろう、とぼくは医学書に読み耽った。
軍属になったばかりのぼくは、まだ階級が低いからだろう、前線を任されることが多かった。まあ、前線であればあるほど戦果を挙げやすい。ぼくは様々な戦果を挙げ、どんどんと階級を上げていった。階級が上がるたび、父様と母様が喜んだのは言うまでもないことだろう。お国に恩返しができているのだ、と語っていた。果たして父様と母様に一体国にどんな恩があるのかはわからなかったが、別にそれはぼくには関係ないだろう。ぼくの存在価値は父様と母様を喜ばせるため、軍属し、戦果を挙げ、階級を上げていくことにある。ぼくが考えるべきは、作戦をどうやって成功させ、国に恩返しをするか、父様と母様を喜ばせるかの一点に限るのだ。
そうして、ぼくは大尉という階級まで上り詰めた。尉官階級ではまだ前線の仕事が多い。もう一つ階級を上げれば、佐官。佐官になると尉官階級までほど前線に出ることはなくなるが、今度は作戦指揮を採るという大任を任せられることになる。それこそ国への最大奉仕だ、と父様と母様は語っていた。だからぼくは頑張って、佐官階級になれるよう、前線で張り切っていた、そのときだ。
ぼくが負傷し、その治療の最中で、ぼくが男ではなく、女だとばれ、軍より虚偽を裁かれたのは。
歓迎されることではないが、我が国の軍では、女性でも兵役ができる。だから、ぼくが兵役をしていること自体に問題はない。
問題はぼくが男であると軍に虚偽の報告をしていたことだった。
上層部では様々な意見が飛び交ったらしい。その上でぼくに下された罰は、その後の昇進の取り消しと、救護班への異動命令だった。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 0時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

救護班への異動命令は悪くなかった。救護班は基本的に女性が所属する部署だ。ただ、前線で戦ってきたこれまでに比べたら、戦果というものはないに等しい。
それよりも問題になったのは昇進の取り消しであった。
ぼくは大尉止まりになる、という決定。
お国が決めたことなのだから、一国民にしか過ぎない自分には反発のしようがなかった。
危惧したのは、父様と母様のことだ。父様と母様はぼくが男として戦場で活躍し、戦果を挙げ、お国に奉公することを望んでいた。
そして、父様と母様にとって、女であるぼくには価値がない。
そのことが、ぼくの心を揺さぶった。
ああ、価値のなくなってしまったぼくはどのように父様と母様に顔向けしたらいいのだろう。
そう悩んで家に帰ると、ただいまの一つも吐く前に、父様に顔を殴られた。もちろん平手などという生温い処置ではない。握り拳だ。
男である父様の力は強く、こうも唐突に暴力を振るわれることを予期していなかったぼくは口の中を盛大に噛んで、血反吐を吐く羽目になった。どうやら、国からの通達は、父様や母様の元にも届いていたらしい。……問答無用だった。父様は無表情でぼくを殴った。顔だけではない。腹を殴った。母様は同じ女だからか、顔を殴ることはせず、けれど執拗にぼくの腹を殴り付けた。
やがて下腹部に損傷をきたしたらしく、自分の股の間から何かぬらりとしたものが溢れるのがわかった。それは着ていた服に染み、赤く染めた。血である。月に一度の生理現象とは違い、その血は止まらなかった。だが、父様も母様もそれには気づかないようで、ぼくを殴り続けた。下腹部が痛い。これまで感じたことのない痛みだった。月に一度の生理現象でも、ここまで痛むことはない。そのことに異常を感じながらも、父様と母様の暴挙を止めることはしなかった。わかっていたことだ。父様と母様にとって、女であるぼくに価値などないのだ。そして、昇進の話もなくなった。軍人としての価値すら失ったぼくは、ぼろ雑巾とそう変わらない価値なのだ。
ぼくは殴られるまま、けれどやがて痛みに耐えられなくなって、倒れ伏した。股から血が流れて、赤い池を作っていく。これはまずいのではないか、と思ったときにはもう遅く、母様に鈍器で急所を殴られると同時、ぼくは意識を失った。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 0時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

次に目を覚ましたのは、度々世話になった、軍の救護室。ベッドの上にぼくは横たわり、点滴と輸血を受けていた。よほど危ない状態だったらしいのか、酸素マスクに、心電図までつけられていた。心電図の規則正しい音が鼓膜を震わせる。
ぼくはまず何を言うでもなく、溜め息をこぼした。手は自然に下腹部に向かう。……言い様の知れぬ喪失感がそこにあったのだ。
ぼくは女でなくなった、と直感的に悟っていた。だが、だからといって、父様や母様にとって、ぼくの存在価値があるわけでもない。
ぼくは生きる目的を見失った、脱け殻になったのだ。
その実感を噛みしめていると、カーテンから覗く顔があった。大尉の自分からすると上階級の人物であるため、慌てて敬礼をしようとしたのだが、体がいくつもの管に繋がれて自由が利かず、上官が「そのままで結構ですよ」と有難い言葉を下さり、ぼくはその上官──氷色の髪と瞳が印象的な東暁大佐を見つめた。
何故大佐がここに来たのかわからず、混乱していると、大佐はぼくを労るように見つめ、「災難でしたね」と告げた。
「医者の診断によると、貴女の体──特に下腹部は内部で過度の損傷を受け……女性としての機能を失ったそうです」
なんとなく察してはいたが、他者より告げられると、やはり打撃は大きい。
ぼくは女として大切なものを失ったのだ……
では、男でもなく、女でもないぼくは、果たしてこれからどう生きたらいいのだろうか、と虚ろな目で中空を見上げた。
東暁大佐が続ける。
「貴女をこのような状態にまで陥れた貴女のご両親は、勝手ながら僕の方で処断させていただきました。貴女の容態とこれまでの経緯を鑑みた結果、全会一致でご両親は極刑となりました。貴女が眠っている間にこんな重要事を進めてしまい、誠に申し訳ございません」
「……いえ」
東暁大佐の謝罪に、ぼくは柵から解放されたことを知った。だが、今まで柵の中で生きてきたぼくは、一体これからどうやって生きていけばいいのかわからなかった。
そんなぼくに、大佐は告げる。
「実はですね、貴女を救護班に抜擢したのは僕なのです。軍学校のとき、医学に興味を持っていたという噂を小耳に挟みまして。……医学に携わる救護班なら、貴女も新しい生き方を見つけられるのではないでしょうか?」
そんな大佐の言葉に、
ぼくは、
私は、
涙を溢れさせた。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 0時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

私はミアカ大尉。
大尉であるが、今は大尉という響きより、救護班長という身分に誇りを持っている。
「班長、また暁さんが怪我を」
「またですか。わかりました。では消毒液をたっぷり塗りたくって差し上げてください」
「うわあ」
ちょっと毒舌な救護班のリーダー。東暁大佐が用意してくれた私の居場所が、私にとても合っているような気がして、毎日気が楽だ。
「ぼく」として頑張らなければならなかったときより遥かに充実した軍属ライフを送っている。
薄情なものだ。父様、母様、と呼び慕っていた存在が、極刑により死んだというのに、父様、母様という柵がなくなったことなど、今の私にとって、露ほどの憂いにもならなかった。
ただ、「ぼく」であった頃の自分を捨てられていない。
例えば、救護室で安静を取っている患者に暗殺者なんかが来たとき。私は「ぼく」に戻って、迷わず武器を取る。
結局私は軍人であり、けれど救護班という新たな居場所で、新たな「ぼく」というものの価値を見出だしたのだ。
医者や看護師は命を救うために存在する。殺し合うための軍隊において、生かすために存在する救護班というのは異端だ。
だが、命を救うことは、ただそれだけで価値になると救護班長になった私は知った。価値を失った私は新たな価値によって、生きる意味を得たのだ。
そして、人の命を救うことは、人の命を守ることに繋がる。
だから、私は暗殺者なんかが患者に手を出そうとするなら、容赦なく「ぼく」に戻る。患者を守るために。
そうやって生きていくことに決めた。
私は無意識に下腹部を触る。失われた女性の生理器官。それにより、私は女でありながら、命を生み出すことのできない存在と成り果ててしまった。
だが、それで私の存在価値、あるいは理由が消えることはない。そう信じている。
生み出せない分、命を救い、守れたなら、いくつ奪われたかわからないあったかもしれない未来への命の贖罪になると思うから。
「救護班長ー、お父さん……千秋少将が三日もう寝ていないんです」
「ふむ、わかりました」
なんてことない苦情にも対処する。軍人の健康管理も救護班の仕事のうちだろう。少将ともなれば、倒れられては困る。
私は席を立ち、少将の元へ向かい、口八丁で少将を休憩に導いた。
最初は軍人として戦果を挙げることばかりに執着していて見えなかったけれど、何も前線で戦うばかりが軍人じゃないのだと吹っ切って私は生きていく。

(^ー^) (プロフ) [2018年7月5日 1時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

その身を赤く染めても

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

トウル・ワトソン

ペンネグラタン (プロフ) [2018年5月6日 11時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

アイリーンの死は、まだ幼かった僕には衝撃的な出来事であったが、あまりにも冷めきったワーグナー夫妻の対応に、僕は涙の一つもこぼしてやることができなかった。
アイリーンは死んでいないのかもしれない、と涙の出ない言い訳を考えた。その可能性もあり得た。
警察が調査したところ、滝から落ちた先にある大岩の先端にルミノール反応……つまり血がついた形跡があったという。
水で流され、DNAなどまでは調べきれなかったらしいが、アイリーンがぶつけたのかもしれないという可能性に賭けて、その周辺を重点的に捜索したが、見つからなかったという。
僕は思った。あの重りだらけの体では、流されるより沈む可能性の方が高いのではないか、と。流された可能性はそれこそ限りなく0に近い。0ではないが、怪我を負ったのなら、そこに沈む可能性の方が高いのではないか、と考えたのだ。
しかし、警察の捜査も虚しく、アイリーンがそこから見つかることはなかった。
……ここから、一つの仮説を立てる。「アイリッシュ・ワーグナーが生きている可能性」だ。
もし、仮に、アイリーンが大岩で怪我をして、それを通りすがりの人物が気づいてアイリーンを引き揚げて保護したのだとしたら。手当てをしてくれたのだとしたら。
そうしてアイリーンが生き延びている可能性を僕らは完全には否定できない。そりゃ、アイリーンは名前も容姿も公表されて、マスコミに取り上げられてさんざんっぱら騒がれているから、保護したなら出てくるだろう、という意見はわかる。
だがもし、そのアイリーンを保護した人間が世間様に後ろ暗いところのある人間だったとしたら? 警察に関わりを持つことを忌む類の人間だったとしたら?
荒唐無稽な話かもしれない。まあ、僕の苗字と同じ登場人物が出てくる小説に肖るわけではないが、あり得る全ての可能性を潰して、それがどんなに途方もなく、荒唐無稽でも最後に残ったそれこそが真実なのではなかろうか。
僕は無意識かもしれないけれど、それを真実だと信じた。
だから葬式以外ではアイリーンの遺影なんかに手を合わせなかった。
彼女はまだどこかで生きていて、元気に走り回って、そしていつかまた、あの快活な笑顔を見せて僕の前に現れるんじゃないかと、淡くても僕は希望を抱いて過ごした。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月6日 23時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

それから七年が過ぎた。アイリーンが生きていたなら、今年13歳になるはずだ。
僕は15歳。上の学校に行くための試験勉強に追われる年になった。
僕が信じていたそれは、唐突に訪れた。
僕はそこそこ上の学校を目指すために、本屋で見つけた面白そうな参考書に気を取られていた。買ったのだから、気兼ねなく開けて中を見てもよかったのだが、最後のページを読み終えるまで家に帰らない自分が想像できて、親に心配はかけまいと急ぎ足で家路に着いた。ただ、ちらりと本屋で読んだ内容の続きが気になって仕方なくて、僕の集中は本と現実との境であやふやになっていた。
足早に帰途に着く僕は、周囲に目がいっていなかった。だが、それは今思うと運命とか天恵とか、非科学的だけれど、そういった巡り合わせだったんじゃないかって思う。
何故なら──
僕は細路地から出てきた女の子と衝突した。それはもう派手にこけたし、女の子はきゃ、と女の子らしい悲鳴を上げていた。女の子はぬりかべなんじゃないか、と思えるほど体躯に似合わぬずっしりとした佇まいでその場に立っていたが。
「ご、ごめんなさい私、人を探してて周りちゃんと見てなくて……って……」
「いてて……あれ?」
普通このパターンで弾き飛ばされるのは女の子の方だろうと思い、弾き飛ばされた我が身を情けなく思って謝罪の一つでもしようと顔を上げ、その女の子と目が合い、固まる。
そこにあったのは、七年前から変わらないきらきらした輝きを宿す青い瞳、ボブカットのベージュの髪。太陽光の影響か金色に透けて綺麗だ。年齢から考えると平均より少し小さいかな、と思える背丈の彼女は、見間違えようがない姿、聞き違えようがない声をしていた。
その小さな唇が、僕を瞳に映して、信じられないといったような声音で紡ぐ。
「トウルちゃん……?」
僕をちゃん付けで呼ぶ人間なんて一人しかいない。線が細く華奢なのは認めるが、僕は男だ。大抵くん付けで呼ばれる。(3レス目のは誤植です。正しくは女の子ではないから、です)
懐かしいその呼び声は、紛れもなく、
「アイリーン……」
僕は立ち上がり、彼女に抱きつきに行った。彼女も僕に抱きつきたいだろうけれど、彼女から抱きつかれた場合、僕はまた地面を転がる羽目になるだろうから、予防線を張って、自分からいった。
「トウルちゃんっ……! 会いたかったよぉ」
七年の時を経て、成長した彼女と僕はようやく再会を果たした。泣き止ませるのが大変だったけど

(^ー^) (プロフ) [2018年5月6日 23時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

それから、大学院を出るまでは普通のなんでもない日々だった。
そう、忘れもしない、26歳のあの日までは。
*
アイリーンは高校を卒業するなり、またどこへとも言わずに離れていった。僕への執着が薄れたわけではないのは知っている。「お別れだね」って言ったときの彼女の瞳は寂しそうだったから。ただ、彼女はこう言った。「私には行かなきゃならないところがあるから」と。
自分をアイリーンと呼ぶ癖がなくなっていたから、僕はアイリーンについて何も心配することはなかった。アイリーンはまあ極端に頭がいいわけではないが、器量はいいので、どこに行っても心配はないだろう、という気持ちで見送った。保護者みたいだな、と笑ったのを覚えている。
*
さて僕はといえば、新しい学問として確立された「生命学」というのに興味を持って、いずれ研究員になろうと凡人なりの努力を重ね、無事に大学院を卒業したわけだが。
問題は26歳のとき。研究室の行き来ばかりだったので、季節やら天気やら気にする余裕がなかったので、他のことは覚えていない。ただ、その日、僕の運命が決まったといっても過言ではない出来事が起こったのは確かだ。
その日は世界初の生命学研究室の設立式典だった。室長は生命学の先駆けとして知らぬ者のいないエリサ・クリスティ博士。確か、世界で初めて、一から人工生命体を作った人だ。彼女の造ったピンク色の猫は世界中に驚きを呼んだのにちがいない。
生命学研究室の室長に彼女以上に相応しい人間はいないだろう、と式典に参加した研究員たちは皆一様に拍手を贈った。
しかし、そこからが問題だった。
一研究室の設立祝いにこぞって研究員が集まったのには理由がある。それはその式典中に、クリスティ室長より、参加した研究員たちの中から助手を決めるという一大イベントがあったからだ。
偉大なるクリスティ博士の助手とは、生命学の研究員としてこの上ない誉。腕に覚えのある者が参加しないわけがなかった。
逸材揃いの中に僕がぽつんと座っていたのは、単なる興味だった。クリスティ博士の顔を拝める機会なんて滅多にないのだから、自分たちの研究の頂点に立つ人の顔くらい見ておこう、と物見遊山くらいな感覚だったのだ。お気楽だった。大学院をやっとこさ出たばかりの新人が選ばれるわけないだろう。そうタカを括っていたとも言える。
だが、クリスティ博士は大方の予想を裏切り──僕の肩を叩いた。

(^ー^) (プロフ) [2018年6月20日 21時] 7番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「君がワトソンくんだな?」
「は、はい」
咄嗟に肯定してしまったのが、僕の運命を定めたといっても過言ではないだろう。
僕は室長助手というひよっこ研究員には分不相応な地位になったのである。
当然、周囲からの妬み嫉みは物凄かった。書類仕事をさりげなく増やされるわ、室長のスケジュールにブッキングが生じるわ、陰口を堂々と叩かれるわ……散々だった。
僕のそんな散々な日常に拍車をかけたのは、助手にど素人を選ぶエリサ・クリスティという研究者の破天荒さだった。
月に一度、定例で国との会合があるし、国からよくよく呼び出される。だが室長の態度と来たら……国は大事なクライアントなのに、ふてぶてしい態度で、首相に向かって「用はなんだ?」「わざわざ呼び出すくらいなんだから大した用なんだろうな?」などと大層傲慢に、そしてタメ口で問う。本人曰く、「国なんかとの会合のために削られる研究時間が惜しい」とのことだった。エリサ・クリスティにとって、研究>>>>>>>>>>>>>>>>>国くらいの扱いらしい。どれだけ彼女が研究馬鹿なのか思い知らされた。
しかも、室長は極秘裏に国から依頼された生体兵器の開発を三度も失敗し、失敗したにも拘らず、国にああだこうだとダメ出しをしてなんだかんだで国を言いくるめる。おかげで胃痛に苛まれる毎日を送っていた。
だが、研究となると一番熱心なのは室長で、室長は寝る間も惜しんで研究に励んでいる。半分趣味だが、きちんと仕事として。
研究室に払われる給料は研究の成果次第となっている。その成果を出すために働いていると言われたら、何も言えなくなってしまうではないか。
だが、さすがに五日連続徹夜でろくな食事も摂らない室長に家に帰ってくださいと懇願したところ、家に帰る足がないと宣った。おかげさまで僕の初任給は車代に吹っ飛んだ。それで室長が倒れないなら安いものか、とも思った。室長の研究馬鹿に諦めを抱きつつあったのだと思う。
かれこれ二年、なんだかんだあったが、僕は陰湿ないじめに耐え、上司の横暴に耐え、気づけば室長に次ぐ仕事馬鹿になっていた。

(^ー^) (プロフ) [2018年6月22日 22時] 8番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

紫露草 序章

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 9番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]
(C) COMMU