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(出会い目的の書込は法律で罰せられます→ルール)

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アイリッシュ・ワーグナー

ペンネグラタン (プロフ) [2018年5月4日 15時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

最初、お母さんが、バーベキューの準備ができたから呼びに来たのだと思った。けれど違った。お母さんはお父さんに固定されながら、アイリーンの肩をあらんかぎりの力で突き飛ばしたのだ。
落ちていく視界の隅で岸を見ると、当然のようにバーベキューの準備なんてされていなかった。
濁流の中お母さんを支えたお父さんと、アイリーンを突き飛ばしたお母さんは落ちていくアイリーンをじっと見つめていた。そして、足の重りで踏ん張ってもどうにもならないアイリーンの様子を見て、滑稽だと言わんばかりに笑った。
お父さんとお母さんが私を見て笑うのは初めてだった。
それが嬉しくて、やっと必要とされたんだと思って、私も笑おうとし──笑顔を浮かべる前に滝に飲まれた。
滝とは水の竜と書く、と前にトウルちゃんが小難しいことを言っていた。水の竜とは強そうだな、と思ったものだが、実際に巻き込まれてみると、強いどころの話ではない。重りがあるせいで水圧? の影響を受ける私の体は滝の各所にある岩に打ち付けられ、増水した川に落ちる頃には全身打撲。痛いけれど、ここは水の中。痛いと言おうとすれば、濁った水が口の中に入ってきて、意識を曖昧にする。
増水しきった川は重りつきの私をいとも容易く流し、重りつきの私は浮かぶこともできず、本当に流れに身を任せるしかなかった。
いつの間にか、アイリーンの意識は閉ざされていた。
浮き上がりもしないアイリーンの体は誰にも気づかれないで、藻屑となるのだろう。
それが両親の願いだったのだと気づいた。
本当は一人で勝手に流されればよかったんだろうけど……
まあ、結果は変わらない。
*
そこから辿ったのは数奇な運命だった。まあ、言ってしまえば私の運命というのは数奇の連続だと思うけれど。
さすがに巨大な岩に頭をぶつけたときは死んだと思った。
それが今、目を開けて、少し褪せた白い天井を見上げている。当たり前だが、知らない天井。
「よう、餓鬼、生きてるか?」
知らない男の人がそう問いかけてきた。知らない人に話しかけられたら答えると捕まっちゃうって聞いたけれど、もう捕まっているようなもんだろう、と私は楽観視して答えた。
「生きてるみたい」
なんだか、拍子抜けだ。
あれだけ死ぬような思いをしたのに生きているなんて。
助けてくれた人には失礼だろうが、私はあのまま死んでいてもよかったと思った。
だって私は、忌み子なんだもの。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月5日 0時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

起き上がろうとするとずきりと全身が痛んで動けなかった。無理をするな、と言葉少なに言ったその人はミルクティーみたいな色の瞳を淀ませていた。
「全身打撲、頭部挫傷。生きているのが不思議なくらいだ。だったら黙って──生きとけ」
その人の「生きとけ」という一言が手足の枷よりもずしりと重く心に響いた。
そういえば、トウルちゃんと読んだ本の中に「命あっての物種」やら「命があるだけでもめっけもん」やらといった言葉があった。命があるのはいいことだという意味合いの言葉だ。どうやらその言葉は忌み子である私にも適用されていいものらしい。
それに点滴や心電図、呼吸マスクまでつけられている。つまり私は抵抗のできない状態で生かされてしまっている。ならば、生きるしか選択肢はなかった。
けれど、意識が覚醒したのだから、現状くらいは理解したかった。今度は私が男の人に問いかける。
「貴方はだぁれ? ここはどぉこ?」
すると、その人はちょっとだけ苦笑いをして、答えた。前髪を掻き上げた右の手首に紫水晶の腕輪が見えた。アイリーンにつけられた鋼鉄の腕輪より綺麗でいいなあ、と純粋に思った。
「俺は……迅。片桐迅。……ここは裏組織。マフィアと言ったらわかりやすいか」
「なんでマフィアがアイリーンを助けるの?」
アイリーン? とジンは首を傾げたがまたすぐ答えをくれる。
「お前を助けたことを言っているなら……たまたま散歩中にお前が流した血が見えたからだ。マフィアってのは表で語られるほど物騒なだけの組織じゃない。お前は変な重りがつけられていたから最初は不審に思ったが……どう見ても堅気の人間で女子供だ。そういうやつは救う質をしているのさ。マフィアってやつは」
どうやらアイリーンは堅気だから助けられたらしい。単純な理由はわかりやすくて好みだ。
「アイリーンとはお前の名前か?」
今度は私が問いに答える番。首を縦に振ったらいいのか横に振ったらいいのか微妙にわからなくて、私は言葉だけを連ねる。
「私の名前はアイリッシュ・ワーグナー。アイリーンは愛称。可愛いでしょ?」
少し呼吸に余裕がなかったけれど、笑ってみせる。暗く淀んだ瞳をしているその人を笑わせようとして。だがその目論見は失敗する。
その人は私の自己紹介を聞いて、目を見張っていた。まるでそこにあるはずがないものを見るように。
「確か水難事故で死んだとされた少女がアイリッシュ・ワーグナーと言わなかったか……?」

(^ー^) (プロフ) [2018年5月5日 0時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

そこからだんだんと辻褄を合わせていく。私が意識のない間、何があったかを。
私は二週間もの間眠っていたらしい。身元不明だが、堅気の人間ということで、ジンを始めとするマフィアの人たちは必死に命を繋ぎ止めようと奔走してくれたらしい。その結果が延々と終わらない点滴と規則正しく鳴り響く心電図、呼吸の助けとなる酸素マスクらしい。
心臓は動いていたし、飲み込んだ水も早期に吐き出し、回復の兆しが見られる、と希望を持って二週間。随分待たせてしまったものだと私は思った。
ただ、マフィアという裏社会の組織で請け負ってしまったため、簡単に表社会に返すことはできないらしい。複雑な事情があるのだろう。
しかも目覚めたら、自分は社会的には死人扱い。戻すものも戻せない。
私の捜索願いを一応誰かが出してくれたらしい、が、警察やら消防やらの捜索開始から48時間が経ってしまうと生存の確率ががくんと下がってしまうらしい。そのことから、両親は捜索一週間で私を死んだという現実に塗り替えたらしい。
つまり、私は一週間前に表の社会では死んでいるのだ。葬式もお通夜も済んでしまったらしい。まあ、近頃は生前葬という概念があるくらいだ。六歳とは生前葬には六十年くらい早いかもしれないが、まあ早めに経験したということにしておこう。
葬式は身内でひっそり行われたそうだ。下手にマスコミに掘られるとボロを出しそうで怖いから、早めのこの対処なのだろう。
役所に死亡届が出されたとはいえ、一応警察なんかでは私はまだ行方不明扱い。まあ、戻れなくはない。
だが、きっと今戻っても同じことだろう。きっとまた突き落とされる。そんなループが続くのなら、トウルちゃんに会えないのは寂しいけれど、ほとぼりが冷めるまで雲隠れというやつをした方が得策だ。私はジンの組織に匿ってもらうことになった。
裏社会ながら、適度な教育を受け──時々表では使わない知識もつけられたが──私はおよそ七年の時をその組織で過ごした。
ジンのこともいつの間にかボスと呼ぶようになっていた。ジンは組織のトップだから。
けれど、まだ裏の表舞台には出ていない私を「まだ引き返せる」とジンは私に失われたはずの「アイリッシュ・ワーグナー」の戸籍を寄越してきた。
調べた結果、私を一度死なせた両親は事故で他界していた。そのため、私を繋ぐ鎖はもう、表にはない。
「会いたいやつがいるだろう」と言われて、私は迷わず頷いた。
そして十三歳、私は外に出た。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月5日 0時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

トウルちゃんとの再会を果たし、政府の協力を得て、戸籍を取り戻した私は学校に通うこともできるようになって。
表社会で明るく気さくに振る舞う普通ライフが私を歓迎した。
──かに思えた。
けれど、私には知らず知らず、鎖がいくつか巻きついていた。
一つ。親が残した手枷足枷。GPSは当の昔に壊れたけれど、私はそれなしでは普通には生きられない体になっていた。
一つ。ジンという裏組織との繋がり。戸籍を取り戻してもらうのに協力してもらったため、恩返しをしなくちゃなぁ、と思っていたのだ。──何せ裏組織は表が思うより義理がたいのだから。
一つ。これもマフィアと同じだが、戸籍を取り戻すのに協力してもらった政府との繋がり。政府はなかなか悪どくて、ある程度の教育期間を終えたら私を利用するつもりらしい。誰も口に出していないが、暗黙下でそういう動きがあるのを普通より聡明な私は察していた。
まあ、政府に利用されるのは仕方のないことだ。一度死んだ身を生き返らせてもらったのだから、その恩は計り知れないだろう。
……ただ、堅気のトウルちゃんから離れてしまうのは嫌だなぁ、と思った。
トウルちゃんがどう思っているか知らないけれど、私だって、一丁前に恋心くらい抱くのだ。
私にはトウルちゃんしかいなかったから。会えなかった七年間は想いを募らせるには充分すぎる時間だった。
*
だが、なんという偶然だろうか。
政府は私をとある研究室とマフィアのスパイに仕立て上げた。
そのとある研究室というのが、トウルちゃんの所属する研究室だったのだ。
私は当然喜んだ。立場を盾にトウルちゃんの傍にいられるのだ。
……けれど、人生とは上手くいかないもので、研究室に就任したときにはもう、トウルちゃんには想い人ができていた。当人同士は無自覚の両片想い。
強い絆で結ばれてしまっていることを悟ってしまった私は、その想い人に地味な嫌がらせをするしかできなかった。
それは罪悪感が増すばかりの行為だった。
マフィアに関してもそうだった。三重スパイ。なんて不義理なことをしているんだろう、と苦しんでいる。
けれど、私が生きるには、この苦渋だらけの生活を受け入れるしかない。
それを一時でも忘れようと、私は体術を覚えた。重りつきのブーツはもはや相棒。
そんな規格外の戦闘能力の私は次第に裏社会でも恐れられる存在になった。戦闘狂にもなったと言われる。仕方ないだろう。
戦っている間は全てを忘れられるのだから。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月5日 1時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

望まれたくて、望まれなくて

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 7番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

kemu voxx 解釈

(^ー^) (プロフ) [2018年4月23日 22時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

カミサマネジマキ
自らが生み出したカミサマの手によって、腸を穿たれたリジェが、愛しげに悲しげに、カミサマを見つめる。
機械仕掛けのカミサマにはそのカンジョウというものがよくわからなかった。全知全能の理に反した不完全なカミサマだ。願いを叶えるには代償という辻褄合わせが必要だし、それについてクレームが殺到したことをリジェは明瞭に覚えている。
けれど、リジェはそれをカミサマのせいにはしなかった。カミサマが不完全なのは、作ったリジェの責任なのだから。
故に、最後にもう一つ、責を負うべく、リジェはカミサマに手を伸ばす。カミサマは、なんとなくだけれど、伸ばされたリジェの手を掴まえた。体温の失われていくその手を。
リジェは紡ぐ。
「最後に……君に大切なものをあげよう」
するとカミサマは髪に隠れていない右目を見開く。
「えっ? リジェからは色々もらったよ。髪飾りとか、この鎌とか、リジェからもらったものならみんな大切!」
リジェはふ、と微笑む。それは嬉しいな、と呟く声はもはや掠れており、囁きになっている。
少し咳き込み、血を吐くリジェ。己が成した結果だというのに、カミサマは大丈夫? とどこか不安げにリジェを見る。
リジェは静かに頷き、告げた。
「今まであげたものたちより、ずうっと、大切、だ……君の、な、まえ……」
途切れてきたリジェの声を拾い、カミサマは首を傾げる。
「名前? カミサマでいいんじゃないの? まあくれるならもらうけど」
カミサマはカミサマである故に、名前の大切さを知らない。名前を大切にするのは、人間の文化だから。
それでも、理解されなくても、リジェは告げた。
「……クラ……」
「クラ? クラだね?」
カミサマが確認するが、リジェはもう頷くことも首を横に振ることもままならなかった。そのぬばたまの瞳から光が消えていく。
──それは即ち、人間の死。
殺してほしい、というリジェの願いは叶えられた。クラと名付けられたカミサマの役目が一つ終わりを告げた。
何故わざわざ看取ったかまでは、クラには説明しようがなかった。無意味とクラもわかっていたから。
ただ、天才学者であり、奇跡で人を狂わせた大悪党の戦犯であるクラの生みの親がなくなったことは確かだ。
その開きっぱなしの目に手を当て、クラは右目で真っ直ぐ、主の遺体を見据えた。
「ありがとうリジェ。……さよなら」

(^ー^) (プロフ) [2018年5月11日 23時] 11番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

ぼくらの報復政策
報復を果たしたというのに、ヒロの表情は冴えない。
自分の理解者になり得ただろうユウナを己の生のために見捨てたマサを殺したというのに。
くそっ、と毒づき、物を殴り付ける頻度は日が経つごとに増えているようにムウには感じた。
ムウは不思議でならなかった。この願いを達成したとき、ヒロは喜んでいたのではないのか。この願いを達成するまで、ヒロは嫌というほどやきもきしていたのではなかったか。
ムウは殴られる。ムウもカミサマという物であるから。
「くそっ、くそっ……」
何度かムウを殴打して、ヒロは予想外なことに──ムウに抱きついてきた。
予想外だが、ムウは眉一つ動かさず、願い主たるヒロを見つめた。主は何を望むのか。そればかりがムウの懸念事であった。
しかし、ヒロは何も願わなかった。ただ吐き出すように言葉を連ねただけだ。
「あの子は死んだ。奴に見殺しにされて。奴も死んだ。報復は果たした。
でも、あの子も奴もいなくなったら、
俺の周りには誰もいない!」
そんな主の絶叫に、ムウはああ、と思い至る。
ムウはカミサマであるから感じることはないが、知識としてなら知っている。これは「孤独」というカンジョウだ。
──傍にムウがいる。けれど、ヒロにとって、ムウは願いを叶えるための「物」に過ぎないのだ。
悲しくも、なんともなかった。ムウはカミサマだから。
ただ、部屋のカーテンから零れる月明かりを見、思っただけだ。いつ、夜明けはくるのだろう、と。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月11日 23時] 12番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

六兆年と一夜物語
「ねぇ、君には本当に願いはないの?」
夢の中で何度か聞いた声。名前はクラちゃんだと名乗っていた。それから少年は彼女をクラちゃんと呼んでいる。
「ほら、クラちゃんみたいに名前が欲しいとかさ。クラちゃんの名前はリジェからもらった一番大切なものなんだよ?」
そう天真爛漫に……幸せそうに語るクラちゃんに少年はただ首を横に振った。少年には名前がないし、舌もない。クラちゃんはなんでも願いを叶えてくれるというが、少年はこの世の何にも価値を見出だすことができずにいた。
だから願いなんて、ない。一所懸命なクラちゃんには悪いけれど。
「幸せに暮らしたいとか、もうこんな世界嫌だから消えてなくなりたいとか、人生最初からやり直したいとか、色々あるでしょ、この状況だし」
少年はふるふると首を横に振るだけだ。今更幸せになんてなれないだろうし、世界から自分が消えたって何も変わりやしないだろう。やり直したって、生まれを変えることはできない。また忌み子鬼子と蔑まれるだけだ。
夢の中、クラちゃんはやたら少年の顔を覗き込んでくる。少年は少し不思議そうにその目を見つめる。
そこには少年の知らないカンジョウが漂っていた。少年は知らないが、言うなれば感傷だ。少年は、知らないが。──夕焼けの中子どもを迎える母親のその表情に似ている気がしなくもなかった。
クラちゃんの顔がこの空間から剥離していく。夢の終わる合図だ。クラちゃんの顔がぼやけてきて、少年にはクラちゃんの表情を窺うことはもうできなかった。
ただ、クラちゃんの呟きだけが、耳に明瞭に残った。
「君はリジェにとってもよく似てるから、願いがあるなら、叶えてあげたいなぁ……」
そんなクラちゃんの声には紛れもなく、
子どもの手を取る母親の哀愁があった。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月12日 20時] 13番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

地球最後の告白を
セツナの曾孫、セツナによく似たシュンの陽光を紡いだような金糸の髪に、指を通す。
自分とは正反対だ、とクロはその髪を見るたびに思う。それから自分の指を見る。
セツナが子どもを孕み、苦しみながらもクロの手を握ったときのことを思い出す。あの頃から、皺の一つさえ増えていない自分の手、指。
クラちゃんが叶えた願いの影響だ。
「大人になんてなりたくない、セツナを苦しめたやつみたいなんかに……」
そう唱えたとき、クロの体を不思議な光が包んだのは、もう百年以上前の話だ。
以来、クロの体は成長も退化もしない。ただただ時間が経過して、クロが願いで招いた人間が、セツナの血を紡いでいくのをただただ眺めていた。
「クラちゃんはなんで僕のあんな願いを聞き届けたんだろう」
あのときかかった魔法みたいなそれは、不老不死というおせっかい。人の死を……セツナに似た末裔たちの死を眺め、看取るくらいしか、クロにはできなかった。
ふと、思い出す。
「君はリジェにとってもよく似てるから、願いがあるなら叶えてあげたいなぁ」
そんな、憂いを帯びたクラちゃんの声。
クラちゃんはどうやら、人一倍クロのことを気にかけているようだ。だからこそ、こんなおせっかいを仕掛けたのだろう。
でも、それくらいなら、そうするくらいなら、
セツナに抱いていたこのカンジョウの名前を教えてくれればよかったのに。
セツナへの想いの答えがわからないまま、クロは痛む胸元で拳を握りしめる。ぎりぎりという音に、シュンが「お兄ちゃんどうしたの?」と見上げてくる。
セツナと同じ色の瞳がクロの胸を掻き乱して、クロはなんでもない、と苦しげな声で告げるしかできなかった。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月12日 20時] 14番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

カミサマネジマキ
「クロはちゃんと気づいたんだねぇ、人はやっぱり愛だよね」
クロが「セツナ、好きだった」と呟いたことにより、その身を灰に変えたことで、世界は完全に灰になってしまった。
残されたのは、願いの匣、クラちゃんだけだ。
クラちゃんはカミサマだから願われなくても何かを成すことはできる。ただ、願いがあった方が安定させることができるだけで。
クラちゃんは人間が騙っていたカミサマのように世界を一から作ることにした。けれど、何もモデルがないと、形にしづらい。子どもが知らないものを粘土で作れないように。
そこでクラちゃんは思いついた。それはとても名案のように思えた。
「よし、作ろう」
それは時間を巻き戻せばいいだけの話だったけれど、六兆年以上も前の時代を引っ張ってくるより、知っているから作ってしまった方が楽だ。
「リジェがいた、あの世界」
クラちゃんは人間の願いだけを叶えるわけではない。クラちゃんが願ったことだって、クラちゃんは叶えられるのだ。
だからクラちゃんは願った。クラちゃんが好きだったあの時代を。クラちゃんに名前をくれたリジェがいたあの時代を。
クラちゃんは世界を作った。そこにはリセット少年もいたし、透明少年もいたし、平凡少年も、報復少年だっていた。懐かしい時代だ。
クラちゃんは目的地へと向かって歩いていた。それはクラちゃんが生まれた場所。リジェと出会った場所で別れた場所。
クラちゃんが作られた研究施設。
──しかし、そこにリジェはいなかった。
クラちゃんは何もない荒野を見て、……研究施設があったはずのそこを見て思い出した。
自分のことだというのに忘れていた。
クラちゃんというカミサマが願いを叶えるには代償──辻褄合わせが必要だった。願ったのがカミサマであるクラちゃんでも、例外はない。リジェがそう作ったのだから、絶対だ。
クラちゃんが世界を願った代償は、リジェだった。

(^ー^) (プロフ) [2018年5月12日 20時] 15番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

恋愛シミュレーションゲーム

(^ー^) (プロフ) [2018年3月6日 22時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

ネタバレ

(^ー^) (プロフ) [2018年4月7日 23時] 38番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

ネタバレ

(^ー^) (プロフ) [2018年4月7日 23時] 39番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

次、皐月茜ルート

(^ー^) (プロフ) [2018年4月7日 23時] 40番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

・皐月は停学明けから参加。
・停学明けはゴールデンウィーク明け。イベントになっている。
・皐月の停学理由は家庭科室でガス爆発実験を行ったこと。
・左目に眼帯をしているのは火傷のせい。
・花園と同じで家庭内暴力を受けている。
・打撲系ではなく、火傷系。
・花園と違い、親を軽蔑しており、家庭内暴力は開けっ広げ。
・家庭内暴力に負けないために強くなろうとした結果の精神破綻。
・弟と妹を無意識に守っているが、認めていない。
・本人は両親と戦っているつもり。
・狂い方が風根の兄を殺した元カノと似ているため、風根に毛嫌いされている。
・風根に嫌われていることは気にしていないが、風根を偽善者と罵る。
・ジッポライターを隠し持っている。シュボッというあの音が好きらしい。
・花園を嫌っている。
・同情が嫌い。
・初期設定で人間が嫌い。
・何もかもを焼き尽くそうとする。
・唯一仲良くなれるヒロインキャラはハル。
・しかしハルと仲良くさせると、家を一軒燃やす。バッドエンド。
・このルートが難しいのは、他のヒロインを死なせないこと。
・皐月が全員を呼び出すイベントで庇う以外を選択するとバッドエンド。
ハル→秀也に庇われて狂乱
花園→秀也に庇われて狂乱
風根→リスバン燃やされて狂乱
えりまき→マフラー燃やされて狂乱
花園→本を燃やされて狂乱
・秀也や主人公、プレイヤーには攻撃しない。
・ポエマーは味方ではなく敵と考えており、プレイヤーは傍観者として絶望させることが至上としている。
・柊と相性がいい。
・狂っているので、狂った人と相性がいい。
・柊は元二重人格で今もその面影を残し、しかも、恋人が自殺志願者なこともあり、皐月を理解できる数少ない人間。
・眼帯に拘りはないため、外すことを厭わない。
・眼帯の下には火傷痕。視力がない。
・元々視力が弱いため、眼鏡かコンタクトが必要だが、コンタクトは目を悪くすると医者に言われ、眼鏡は眼帯の邪魔になるためつけない。まあ別に私生活に支障はない。
・身体中に火傷痕、タバコ痕がある。
・時々噎せる。副流煙の影響。

(^ー^) (プロフ) [2018年4月10日 22時] 41番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

・ハルと仲良くさせてはいけない。
・花園と和解させると無害化する。
・風根と交流を持たせられると無害になる。
・旅行イベントでは終始静か。
・旅行中に話しかけると、いつもの狂った感じの抜けた、まるで別人のような喋り方をする。
・旅行イベント中に部員全員と交流させておくと、ハッピーエンドにしやすい。
・放課後、自転車置き場に呼び出されるイベントが起こるとトゥルーエンドになりやすくなる。
・文化祭イベントで化学実験部に行きたがるのを止めないと文化祭でとんでもない事故を起こしてバッドエンド。
・誕生日は下手に何もあげない方がいい。意外と言葉だけで喜ぶ。
・花園と関係を強化しておくと、花園の精神力が上がり、皐月と対抗しやすくなる。
・風根との運動部見学の際に風根のリスバン燃やすと、風根は狂乱しない。

(^ー^) (プロフ) [2018年4月10日 22時] 42番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

生まれてくるとき、選べないものは三つある。
一つ、親。これはよく言われるものだ。
一つ、名前。まあペンネームとかならつけられるが、本名はそうほいほいと変えられるものじゃない。
そして最後の一つ。それが顔だ。
誰だって、容姿に恵まれたいと思ったことの一回や二回はあるのではないだろうか。ブスとか残念とか言われるやつなんかは特にそうだろう。
生まれてくるとき、人は容姿を選べないのだ。
つまり何が言いたいかというと、
もっとどうにかならなかったのか。この顔。
毎朝鏡を見て思う。普通のつもりだが睨んでいるようにしか見えない目付き。堅気ではあり得ないだろう目に走る傷痕。世界を俯瞰したような雰囲気。見るもの全てを馬鹿にしているような片方だけ吊り上がった口角。それが俺の基本仕様だ。
髪型はオールバック。目やら耳やらに髪がかかるのがうざったいため、色々試した結果、ここに辿り着いた。しかしこの髪型が余計に俺を堅気という枠組みから遠ざけている気がする。
だが、変えようと思って簡単に変わるのなら、苦労はない。俺は半分諦めている。目付きが悪いのは生まれつきで、左目の切り傷は自業自得だ。
それに性格もそこそこにひねくれているのだから、神様とやらに文句をつけるのも筋違いというものだろう。
まあ、ひねくれたのには理由がある。半分は元々持った気質なのだろうが。
俺の昔話なんざ、面白くもねぇ。
面白くもねぇ話を聞きたくないんだったら、今のうちに別なところに行くのを勧めるぜ。
ただ、聞きたいってんなら、最後まできっちり聞いていくんだぜ? 途中で逃げようとしても首根っこ引っ捕らえて耳元で滔々と語り続けてやる。
覚悟はいいか?

(^ー^) (プロフ) [2018年3月3日 17時] 1番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

俺は頭はそんなに悪くなかった。
上級生が面白半分で出してくる宿題問題もそよ風でも吹いたかな、くらいの心地で解けたのだ。
それが気に入らなかったらしい。なんとも理不尽な話だ。
俺がやった宿題をそのまま提出したらしい馬鹿な上級生はすぐにバレて先公にこっぴどく怒られたらしい。ざまぁみろってもんだ。
だが、そう簡単に気持ちを収めるにはやつらは餓鬼だった。
「お前のせいで怒られたんだよ。何か言うことはないかな、下級生くん?」
喧嘩を売るような人を小馬鹿にしたような言い様に俺は呆れた。むしろ馬鹿はお前らだろ、と言ってやろうかと思った。
それで、俺の口から出たのは、
「自業自得だろ」
至極当然の主張だった。
だが、その一言を上級生は「下級生のくせに生意気」と受け取ったらしく、俺に殴りかかってきた。
殴られそうになって避けないのは馬鹿だ、と思っていた俺は、すんなりその拳を避ける。それがいけなかったのだろうか。上級生の怒りに点火したらしく、たちまちそこは喧嘩場と化した。
──結果は俺の一人勝ち。攻撃は一切していない。金魚のフンみたいな取り巻きも一緒に襲いかかってきたため、勢いを使って互いを殴らせるとか、それで言い争いに発展させるのとかを滑稽に思いながら見下していたっけ。
全部やつらの自業自得なんだから、やつらが背負えばいいだろうと俺は思っていた。
だが、子どもというのは怖い物知らずで無鉄砲で、やつらは負けず嫌いで、プライドがやたら高かった。
だから、下級生に負けっぱなしなんて現状は許せなかったのだろう。
正直なところ、巻き込まないでほしかった。
けれど、今更言ったってもう遅い。
事は起きてしまったのだから。

(^ー^) (プロフ) [2018年6月9日 17時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

放課後、俺は普通に帰るつもりだった。いつもの通り、いつもの道を通って、家路に着く。ただそれだけ。
毎日そうしているんだから、今日だって恙無く済むだろう。……そう思っていた。
人気のないシャッター商店街。見ているだけで退屈と苛立ちを覚えるそこを抜けなければ、俺は家に帰れなかった。数年前まではもう少し賑わっていたはずだが、先日、大型スーパーマーケットが近くにできたために活気をなくしたとして社会問題に取り上げられていた。俺はその程度で店を畳むような商店街の連中の根性のなさに苛立ちを覚えていた。いくらなんでも諦めるのが早すぎだろう。店をやっていたのは四十そこそこのおっちゃんおばちゃんだった。まだまだ働ける年齢だろうに。七十八十のじーさんばーさんの方がまだ強かだ。
継ぐやつがいないからというのにしても、諦めるには早い年齢層だったことを記憶している。
はあ、といつも通り、シャッターの締まった、どことなく空気がどんよりする中を抜けている途中だった。
頭に激しい衝撃、痛みを感じた。脳が揺さぶられるとはこんな感覚のことを言うのだろうか。とにかく俺の視界はあっという間に暗転した。
ただ、意識はなんとなくふわふわと浮上していた。目は開けられないが聴覚だけが明瞭に音を拾う感覚。鼓膜の震え方までわかるようだった。
「こいつ、どうしてやろうか」
それは以前こてんぱんにした上級生の声だった。
「でも気絶してるぜ? これだけでもやべぇんじゃねぇの?」
「いいや、こいつにはちゃんと目に見える仕置きをしなきゃならねぇ。俺たち上級生なのに、舐められたまんまとかムカつくだろ」
「だけど、頭から血が……」
おいおい血が出るくらいに殴ったのかよ。
しかし、強気な上級生はふん、と鼻を鳴らした。
「こんなの髪に隠れてわかんねぇよ。あ、そうだ」
何か思いついたらしく、上級生が俺の体を持ち上げる。頬をぺちぺちと叩いてきた。
俺はうっすら、目を開けることができ──目と鼻の先を文字通りに表したものに度肝を抜かれる。
「あ、起きた。見えるか? これ、カッター。今から切ってやるから、よく見てろよ?」
するとそいつはくつくつと笑い、俺の目にその刃を突き立てた。
そのときの痛み、衝撃、そして失われていく感覚……
俺はそれで片目の視力を失い、元々良くない面に傷を得た。

(^ー^) (プロフ) [2018年6月15日 21時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

過ちは去らず

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

……とでも言うと思ったか馬鹿野郎。
まだまだ無茶はできるんだよ。
なるべく人形で頼むという条件付きなのだから、無茶は承知してもらわないといけない。
つまりは人工知能を搭載して、武力機構も搭載して……何がやりたいんだか。機械の兵士でも使ってスパイにでもする気か?
まあ、そんな依頼主の思惑なんてのは製作には関係ない。依頼されたものを作る。製作者たる我々が追究すべきは性能であり、依頼主の要求である。
しかし武力兵器を作れとはこれまたざっくりした依頼だ。ふざけているとも取れる。つまりこちらがふざけたって文句は言えないわけだ。内容を詳細に書かないあちらが悪い。
というわけでおふざけ半分で作ってやろうと思う。
まず、人形を作る。武力を持っていて、人工知能を搭載できる大きさのものだ。なぁに、少しくらい大きくても「人の形をしていれば」いいのだろう? 依頼に反していない。
それに人形である以上の条件はなかった。それはつまり、一般的な「人間」じゃなくてもいいわけだ。
人造人間に一般もへったくれもないがな。
そう、私が考えているのは、ばりばりの「人造人間」、世で言うところのフランケンシュタインというやつだ。
フランケンシュタインというと化け物っぽい印象だが、なんとしっかり人形をしているのだ。
あとは、皮膚だな。まあ、01と02で有り余った材料がある。まあ、薬漬けにして変色したやつもあるがフランケンシュタインにするなら化け物っぽくてちょうどいい。
問題は人工知能だ。作るの自体は簡単なんだが小型化なぁ……
凝ることを目指すから、人工知能も凝りたいなぁ……
どんな人格にしようか。想像が膨らむ。
例えば、人間と出会って、和気藹々としてしまえたら。化け物と人間。楽しい絵面じゃないか。
だが、それが敵わないのも現実。
こいつは兵器になるのだ。人間と仲良くなるのではなく、人間をころす冷血漢に。
……まあ、性別はあんまり関係ないか。
純粋な腕力を計算すると、やっぱり2m超えは確実だな。
巨漢になりそうだ。考えると、あいつらの驚く顔まで浮かんでくる。こいつは面白いことになりそうだ。
よぉし、決まり、最高のフランケンシュタインを作るぞ。
それで失敗と言われたらそれはそれ、だ。

(^ー^) (プロフ) [2018年1月19日 23時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

大女ではあまり色気がないだろうから、大男ということにした。どうせでかいのだから性別は関係ない。どうせ人間ではないのだから、性別は関係ない。
とりあえず、楽しいから作る。人工知能の作成には一週間かけた。人間と会話ができた方がいいだろうから、精度を高めるために、私は一週間パソコンと会話していた。変人に見えるからやめろと研究員に言われたが、今更である。変人と言われるのが怖くて科学者なんかやっていられるものか。
一週間の調整の末、なんとか人格形成ができた。本当は一ヶ月とか半年とかもっと時間をかけたいのだが、依頼主は戦争がお好きらしい。こないだ久しぶりに見たテレビのニュースで、宣戦布告が発表されていた。
こちらの苦労も考えてほしいものだが、依頼主に仕事を「させてもらっている」身の上だ。言うことは聞くしかない。
01、02と失敗を重ねているのである。これ以上時間は割けない。
人工知能のソフトを脳にあたる部分に搭載し、体のパーツを組み立て、その上から余り物で悪いが、01と02の実験で使った皮膚を縫い合わせていく。神経回路を指先にまでつけたため、やはり手はでかくなった。手だけでかいと不自然と文句をつけられそうだから、全身を大きくした。私より遥かに背が高い。皮膚の貼りつけに脚立を使う始末だ。
皮膚は糸で縫い付ける。残念ながら薬品漬けになった皮膚に再生機能はない。だが、継ぎ接ぎにすることで修繕しやすくしている。
皮膚が剥がれても、データに不備がなければ、こいつは自分で修繕ができる。それくらい手先が器用だ。
もちろん、背中など手の届かない部分は負傷することがないように丈夫な皮膚、丈夫な縫い目をつけるが。
だんだんと形になってきた。目は無駄にリアリティーを追究した。リアリティーがあればあるほど研究というものの達成感が得られるし、依頼主をびびらせることができる。目が落ちないように設計したのは、武士の情けというやつだ。
実験個体03はかくして完成した。
「エリサ室長、ようやく完成しましたね」
「ああ、今回は10徹したな。危うく世界記録を塗り替えるところだった」
「室長いつ寝てるのかと思ったら全然寝てなかったんですね……」
「それが私だ。いい加減慣れろ」
研究員と馬鹿な会話を交わして、久々の床に就いた。
明日は御披露目だ。楽しみである。

(^ー^) (プロフ) [2018年2月22日 0時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

今日の御披露目は大成功だった。
が、03トレは廃棄決定となった。
武力兵器を作れと言われたのに、肝心の武力搭載機構を載せ忘れたのだ。まあトレくらいのでかさなら、握力だけでも充分な脅威となり得るだろうが、それだけでは満足しないだろう。
あれか、指先マシンガンにでもすればよかったのか? 手がパンチで飛んでいくとか?
私の武力搭載機構の提案に依頼主が渋面を浮かべ、研究員が慌てて取り成してきた。部下には苦労をかけていると思う。
そこでようやく依頼内容が具体性に欠けるということに気づいた依頼主が依頼の練り直しをしてくるということになって、今日の御披露目はお開きになった。
*
「全く、エリサ室長が依頼書片手に『不満ならこの情報を敵国家に流すがいいのか?』と食ってかかったときは肝が冷えましたよ」
そういう研究員の顔色は心無しか青白い。
「ははは、すまんな。杜撰な依頼にほとほと飽き飽きしていたのだよ。こちらを労うこともなく、偉そうにふんぞり返って文句ばかりつけてきやがる」
「室長、苛々は寝不足からくると言われています。しばらく仕事はないのですからお休みください」
研究員が言うのはもっともだ。休みを取ってもかまわないほど口止め料を得られた。当分研究所に存続の危機はない。
「だが、そうは問屋が卸してくれないのさ」
「どちらかというと我々が問屋かと」
「言葉の綾さ。細かいやつはモテないぞ」
「……室長、問屋が卸してくれないの心は」
「トレさ」
私が答えると、研究員は首を傾げる。
「トレ……実験個体03ですか?」
「そう。あれの廃棄が決定しただろう」
「ですね」
「非常に無念なことだが、廃棄しなければならない」
「ですよね」
「だがあれはでかい」
要は何を言いたいかというと、解体費用のことである。
再利用できないこともないが、あの巨体は頑丈な金属を成形して作ったものだから、同じ形のものを作るのにしか適さない。
更に疲れきった我々が解体業者に解体を依頼したとしよう。せっかくの口止め料が吹っ飛ぶ。自分たちで解体してもいいが、手間だ。
「というわけだ。処分法に頭を悩ませなければならんのだよ」
「今度は何徹になるのやら……」
研究員は先の見えない職務内容に嘆いた。
本当に悪いことをしたと思う。
一番寝ていないのは私だから研究員は文句の一つも言いやしないが。

(^ー^) (プロフ) [2018年2月22日 0時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

久しぶりに家に帰る。というか研究員に帰らされた。
「室長はちゃんと寝ないから時々とんでもないことをしでかすんですよ!」と叱られたっけ。完全に論破されたため、現在帰宅中である。
家に帰っても何もない。つまらない。いや、確かルービックキューブがあったか。あれで暇を潰そう。
「しかし、失敗作かぁ」
トレのことを思う。結構な力作であったことにはちがいないが、依頼主の条件を満たせていないため、失敗作の判を押された。可哀想なやつである。
考えてみれば、人工知能やロボットは人の勝手な事情で造られて、勝手な事情で捨てられていくのだ。私の研究は依頼を果たすという目的がある以上、造られるそれらに対して愛のある行動は取れないだろう。トレや他の01(ウーノ)や02(ドゥーレ)のような人工知能も所詮は「モノ」だ。愛を持つ価値などない。
研究とはそういう非情な職業だ。だからこそ、私はこの職業を転職だと思っている。
愛も理解もいらない。私は好奇心のみを満たせればそれでいいのだ。
トレの処分に困っているのは、廃材と資金が勿体ないからである。
さて、良い処分方法はないものか……
考え事をしていたら、誰かにぶつかった。礼儀を考えると謝った方がいいだろうと思ったが、その前に肩を不躾に掴まれたため、やめた。
「俺にぶつかるとはいい度胸してんなぁ? 姉ちゃん?」
ふむ、俗に言う輩というやつか。
いたいけな乙女を装うのも性に合わないため、対処法を考えていると、たいそう体格のいい男は握り拳を固めた。いい上腕二頭筋をしているな。
そう思った瞬間、自然と口角が吊り上がった。上目に相手を見やる。
「ちょいとうちで雇われてくれないかい?」
こいつは素体にいい。
しかし、男は何故か悲鳴を上げて逃げた。おやおや。
悲鳴の後ろには「あの廃墟の悪魔がぁっ」という言葉が連なっていた。
廃墟に悪魔とな?
興味をそそられた私は、道行く人を捕まえて、廃墟の情報をもらった。
それで、着いた先が、いい感じの廃墟だった。訳あり物件のようで、誰も所有していないとか。
これはいいものを見つけた。
翌日。
「研究員くん、トレを廃墟に住ませよう!」
「室長、やはり寝不足なのでは?」
この名案を理解してもらうのに二時間かかった。
まあ、つまり。
トレを廃墟に住ませて、廃墟の怪談を本物にしようという一計だったわけだ。
かくしてトレは現在いい感じの廃墟で人間くさく生活しているのだ。

(^ー^) (プロフ) [2018年2月28日 23時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

失敗作製造日記

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

モザイクロール

ペンネグラタン (プロフ) [2017年12月20日 16時] [固定リンク] 携帯から [違反報告・ブロック]

「あっ、な、に、……」
腰ががくがくと震える紫淋を押さえながら、東暁はゆっくりと自分のものを挿入していく。……少し、締め付けが痛い。
「大丈夫ですよ……」
余裕のない彼に微笑みかける。だが、何が大丈夫なものか、東暁自身にも余裕はあまり残されていなかった。紫淋からよがってくるまで我慢しようと思っていたが、締め付けが自分を追い出そうとするのに反して、ばちゅん、と思い切りねじ込んでしまう。紫淋の体が反り返った。
「っあああ」
紫淋の声が大きい。掠れてはいるが。誰かに聞き取られてはまずい、と東暁はすぐさまその唇を奪う。混乱した紫淋の熱い吐息が東暁の口内に吹き込み、東暁は更に興奮する。
手加減という概念など忘れてしまったように激しく紫淋を貫き、紫淋が涙をこぼし、苦しげにするのも構わず、悦楽に浸った。
舌を紫淋の口内に忍ばせると紫淋の舌が暴れ、しまいには噛まれた。だが、その刺激が尚、東暁を打ち震わせる。そうして耐えているのであろうところを突けば、より一層強く噛んできて、口内から鉄錆びのようなものが香る。痛みより快楽が勝り、東暁はうっとりとそれに身を委ねた。
紫淋はそうもいかない。相手の舌を噛んでしまい、これでもかというほど混乱を極め、東暁から離れようともがくが、東暁の力に勝てない。涙が止めどなく零れていく。
それでも体を離そうとすると、あなのなかが切れたのか、鋭い痛みが紫淋を貫く。少し離れた唇の隙間から、嗚咽が零れていく。
「……紫淋くん……」
「あぐ……ごめ、ごめんなさい……ぃあっ……」
しゃくり上げる紫淋にまた愛しさを感じる。東暁は締め付けられて余裕がなかったところから僅かに戻り、愛しげに、紫淋の頬を撫でる。
「もう少し、優しくできればよかったのですが……」
欲が膨れて、締め付けられて。なかに放つ以外両者が解放される方法はない。苦しいだろうが、しばらくこのまま、と抱きしめる東暁。紫淋が拒もうが何しようが、離す気はないくせに。
優しくできればよかった? そもそも優しさなんて持つつもり、なかっただろうに。
己を笑うと同時、東暁のものが突拍子もなく、なかに欲を放つ。
突然だったものだから、紫淋の体は痙攣し、必死にすがりついてくる。
「はぁっ、は、ぁっ……」
紫淋も息を荒くしながら達したらしく、顔を蕩けさせる。
その姿が、やけに美しくて、東暁はつい、もう一回、と抜き挿しを始めた。
紫淋が逃げ腰になるのを押さえ込んで。

(^ー^) (プロフ) [2017年12月23日 19時] 10番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「外に、出たいです」
紫淋が東暁にそう要望したのは、情事をしてから数日後。ようやく紫淋の体調が安定してきた頃だ。過去という楔から心も解き放たれ、表情も豊かになってきた。紫淋のそういった変化を間近で見られるのも、東暁の喜びだった。
それに、紫淋が自分からこういう要求を口にするのは珍しいどころか初めてではないだろうか。そこも、一歩前進である。紫淋に甘くなっていた東暁は、その要望を嬉々として受け入れた。
一緒に街へ出かける。任務でもないこの行動は所謂デートというやつだ、なんて言うと、紫淋は顔を赤くしていた。初なところも愛しく、東暁はそっと額に口付け、支度を始めた。
軍服以外のものを紫淋が身に纏う姿は初めて見た。紫淋もなんだか慣れない様子で、いつまでも自分の姿を眺めては首を傾げていた。よく似合っているのだが。
街に出る。適当にウインドウショッピングでもしようと回っていると、紫淋がとあるアクセサリーショップで足を止めた。
「ぁ……」
何かを熱心に見つめている。自分を見てほしいな、と東暁は思うが、紫淋にだって思うところはあるだろう。その視線の先に何があるのか気になって追ってみた。ペアルックのブレスレットだ。
入りましょうか、と提案しようとしたところで、中から店員が出てくる。紫淋がはっとしたように声を上げ、店員を見る。店員も紫淋のことを知っているようで、東暁は少しむっとする。なんてことはないただの嫉妬だ。東暁の知らない紫淋の世界があることは当たり前であるのに、こんなちっぽけなことにさえ、東暁は妬いてしまう。お知り合いですか、と訊ねる声が、少々棘を孕んでいた。
「いえ、この子、通りかかるたびにお店を見ていくので……自然と顔を覚えちゃったんですよね」
「ええ……」
少し恥ずかしそうに紫淋は笑う。どうも、いつもペアルックのブレスレットを見つめていたようだ。欲しいにはちがいないが、紫淋は物をねだることに慣れていないらしく、ただただ見つめるだけだったのだとか。なんと可愛らしいことだろうか。
しかし、ペアルック。──一体誰とやりたいというのだろうか。……こうもすぐに悪感情が湧いてくる自分が東暁は嫌になりそうだった。
迷いながらも、ようやく欲しいですと口にできた紫淋に免じて買ってはみたものの、やはり胸の奥を焦がすものは消えない。
それを噛み潰していると、不意に紫淋は東暁の手を取り──ペアルックの片方を手首に通した。
「やっぱり似合いますね」

ペンネグラタン (プロフ) [2017年12月28日 12時] 11番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

思わず、目を見開いた。
「こ、れは……?」
「あきさんに。前から似合いそうだなぁって思ってたんです」
あきさん。想いが通じ合ってから、紫淋は東暁のことをそう呼ぶようになっていた。階級重視の軍属である紫淋は、どうしても上官である東暁を呼び捨てにできないらしく、けれど名前で呼んでほしいという東暁の我が儘により、試行錯誤の末、こうなった。
そんな東暁に紫淋がつけてくれたのは、東暁を象徴するような氷色のブレスレットだ。紫淋はいいセンスをしているのかもしれない。対する紫淋は紫のブレスレットで、単に名前に肖ったのかもしれないが、よく似合っていた。
「空みたいな色です」
紫淋が東暁にそう微笑みかける。東暁は軽く目を見張った。空みたい、なんて、言われたことがなかった。
そんな温かい言葉を紡いでくれる紫淋が愛しくて、引き寄せ、口付けようとしたそのとき、
ちりちりと肌を焼くような感覚が東暁を撫でていく。慣れた感覚だ。紫淋も同じだったのだろう。蕩けさせていた顔をきりりと引き締め、無言で東暁から指示を待っている。
──敵だ。
街中で襲撃とは……と憎しみ混じりに思う。せっかくのいい雰囲気をぶち壊してくれた礼をしないと、腹の虫が収まらない。東暁はそんな心持ちで、紫淋の手を引き、裏通りに足早に進む。
気配は多数ある。こちらは二人きり。多勢に無勢だが、東暁は殺る気をみなぎらせていた。紫淋も無言ながらに敵対の姿勢を取る。
袋小路で立ち止まれば、ぞろぞろ蛆虫のように湧いてくる敵。見るに紫淋が属していた軍の者だ。だが、紫淋は敵意をぶつけていた。その様子に、東暁は場違いに笑みをこぼす。
──もう紫淋は東暁のものなのだ。
手放してやるものか。
戦闘が始まった。もちろん、紫淋も東暁も無手ではない。いくら休暇といえ、ちゃんと装備くらいは持っているのだ。
東暁が特注の銃を放ち、紫淋は東暁が渡したサーベルを抜いて敵陣の中へと向かう。弾幕の雨を器用に潜って。
東暁の銃弾が何人も屠り、紫淋のサーベルが何人も切り捨てる。しかしやはり多勢に無勢。次から次へと敵はやってくる。
そのうち、東暁の足を貫くような痛みが走る。事実太ももの辺りを銃弾が貫いており、東暁は一瞬態勢を崩す。
すぐ持ち直すも、敵は畳み掛けるように襲い、東暁のみならず、紫淋までもが負傷し、傷は増えていく一方だった。
「データベースは生かして捕らえろ」
敵軍の指令が言う。その一言に東暁はぶちギレた。

ペンネグラタン (プロフ) [2017年12月28日 13時] 12番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「……」
無言でそれを言った指令を撃ち抜く。もちろん、楽に死なせるつもりはない。
「彼を人として愚弄することは、万死に値する」
東暁の冷徹な人格が目覚める。誰よりも紫淋がどれだけ頑張ってきたか知っている。どれだけ、「データベース」であるために傷ついてきたか知っている。
故に許せなかった。紫淋は人なのに、物扱いをする。東暁はどんなに紫淋をいたぶっても、愚弄することはなかった。尊敬すらしていたのだ。紫淋のその在り方に。
しかし、多勢に無勢は変わらず、東暁に狙いが次々と当たっていく。
「あきさんっ!」
「来るなぁっ!!」
東暁は紫淋ばかりをも助けようと叫ぶが、紫淋は切れ味の悪くなったものを捨てては新しいものを奪い、と次々兵士を切り捨てる。
東暁の隣に来るなり、サーベルを振り払って周囲を威嚇する。……本来なら味方のはずの紫淋の暴挙に敵は動揺する。
だが、ふと、紫淋の威嚇の雰囲気が消える。東暁は敵意を絶やさずにいるために違和感を覚え──
その瞬間、
腕を引かれ、口元を耳に寄せられ、紫淋の吐息が吹きかかる。
それに身を竦める余裕もなく、紫淋の声が耳朶を打っていく。
「……ごめんなさい」
「え……」
彼が、どんな顔をしているのか、見えない。
ただ、止めなくては、と思いながら、ゆらゆらと手を伸ばすが、届かない。紫淋はもう、相手を見ていた。緊張が抜け、東暁の体は崩れ落ちていく。
「投降します」
紫淋の声だけが、明瞭に響いていく。
「なっ……」
「この人は満身創痍、データベースもこの通り無事です」
それでも信用ならないというのなら、と紡ぎ、紫淋は重たげにサーベルを手にした右手を持ち上げる。ゆったりとその刃が、迫ってくる。東暁は止めることもできずに滲む視界で紫淋を見つめる。
ごめんなさいの意味がわかった気がした。
謝る必要はない。僕が君にしてきた数々に比べたら、こんな一度くらい。
けれど、それは声にならない。代わりにごぽりと口から血が零れていく。
彼はなんて優しいんだろうなぁ。きっと刺されたはずなのに、全然痛くないなぁ。
ああ、でも、胸の辺りは痛いかな。刺されていないのに。急所は外されているのに。
僕の口から出てくるのは、自分勝手な言葉ばかり。
「いか、ないで……」
血ばかりが零れて、上手く音にならない。
けれど、紫淋は最後まで振り向くことはなかった。
全員がいなくなると騒ぎをようやく察した軍が東暁の姿を見、大わらわで対処した。

(^ー^) (プロフ) [2017年12月28日 22時] 13番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

それから、東暁は、仕事もほとんど手がつかず、安静にと言われているのに、街をふらふらと歩いたり、拷問部屋に行ったりして、紫淋の残り香を探した。もうここにはないものを探し求めた。
身体中が痛い。何より紫淋に穿たれた傷が疼く。紫淋は無事だろうか。僕のもの、俺のものなのに。
亡者のような姿のまま、紫淋がいるはずの敵国家の内情を調べさせた。状況は紫淋が話していたより悪く、レジスタンスが立ち上げられ、国は軽く混乱状態のようだ。
そこに漬け入り、紫淋を取り戻す──
紫淋のことしか頭にない東暁が行動を起こそうとするのを、必死に部下たちは止めた。
そこへ、東暁宛に一通の電報が届く。煩わしく思いながら開くと、差出人の名前は紫淋になっていた。……敵国家のレジスタンス代表として。
物資の供給を求めるものだった。何故紫淋がレジスタンスにいるかは謎だったが、紫淋の望むことなら、叶えることに何の異論も抱かない。東暁はすぐさまルートを確立し、物資支給を開始した。
紫淋のため。それが唯一生きる糧であった。
レジスタンスが勝てば、紫淋は戻ってきてくれるかもしれない。
そんな淡い期待の下、東暁は行動していたのだが……
ある日、敵国家から密入国してきたレジスタンスの一員と名乗る青年がやってきた。
レジスタンス、と聞いて咄嗟に紫淋を想像してしまったが、その人物は紫淋ではなかった。けれど、紫淋のことを話しに来たのだという。
何故?
嫌な予感が振り払えない。何故、何故、何故……
聞くと、国とレジスタンスの戦乱は終わったらしい。両者の壊滅によって。
概要は……敵軍の罠により非人道的な人間に仕立て上げられた紫淋はレジスタンス内で味方をなくし、双方から攻撃を受け……自衛のために壊滅させたのだという。
そこまではいい。だが、紫淋は勝利の栄光を手にすることなく死んだ。──自害したのだ。
残存していたレジスタンスの勢力が混乱に紛れて国のトップに立ち、偽りの栄光に酔いしれ、もはやその貢献者たる紫淋のことなど忘れているのだという。
……消えて、しまった。
東暁はぼんやりと思う。その青年が紫淋の形見として置いていった、ばらばらの紫のブレスレットが、紫淋がもういないことをありありと物語っていた。
消えてしまった。いなくなってしまった。やはり、縛りつけておくべきだった。自分から離れてしまわぬよう。嫌われてもいいから、傍にいてほしかった。
東暁のそんな慟哭が辺りに谺した。

ペンネグラタン (プロフ) [2017年12月30日 12時] 14番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

知られざる超能力──変身能力を得た少女たちの物語。
アルビノ体質で生まれて日の光を浴びることができない少女、水海レイは考古学者の父が発見した謎の石に触れ、よくわからないうちに「契約」というものをしてしまったらしく、氷の力を吸い取り操る能力を得た。
ただ、吸い取った分だけ体が勝手に変身してしまう。(しばらくすると戻る)
また、ルミナントという生命力が著しく高まるため、異能持ちに目をつけられることに。
しかし、この力を得たことでアルビノの虚弱体質を克服することのできたレイは篭りきりだった家から出、普通の学生生活を送れるようになる。
平凡な日々を送れるようになった喜びに身を浸す──そう思っていた時期が、レイにもありました。
石と契約した影響で、その石に関わる古文書の文字を読み解くことができるようになったレイは、父の手伝いをするうち、自分が世界を救う使命を与えられた存在となったことを知る。特殊能力はそのためのものだった。
石は合計四つあり、レイの契約した「氷の石」、凶悪さ故にかつて砕かれてしまった「炎の石」、能力者が必ず心を病んでしまう「蠱毒の石」、適合者が稀有な「光の石」が存在する。
契約者が現れたとき、世界に危機が訪れる──古文書にはそうあった。
石の契約者、適合者を探し出し、危機に立ち向かう定めを持つ少女らを、人は魔法少女と呼んだ。
眉唾物の古文書の内容に、レイは一時放置するが、そんなレイが通う学校で突然の発熱で倒れ、暴れ出す生徒が!
それをどうにか押さえようとした矢先、レイの前に熱海ユウという少女が現れる。
ユウは生徒の熱を吸い取り、熱と共に取り憑いていた悪魔を無力化する。
ユウの存在に必然を感じたレイはユウを見、驚愕する。なんとユウも変身能力を持っていたのだ。
ユウは夏に海で貝殻集めをしていた際に間違えて石を拾ったらしいが、その拾った石が偶然にも炎の石の欠片で、ユウは契約し、炎の石に従い、欠片集めをしていた。
レイとユウは手を組み、炎の石の欠片集めと、他二人の契約適合者を探しながら、悪魔との戦いを繰り広げる!

ペンネグラタン (プロフ) [2017年10月13日 16時] 1番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

二人の魔法少女の力に惹かれてか、悪魔と呼ばれる存在が二人の周りに現れ始める。
悪魔とは、生命力であるルミナントを貪り食らい生きる生き物。
魔法少女は石との契約により常人離れした質と量のルミナントを持つため、悪魔に狙われやすい。しかし、石には悪魔除けの力があり、二人に悪魔が取り憑くことは容易ではないため、忌々しい魔除け石の破壊と二人のルミナントを求め、悪魔が二人に次々と刺客としてやってくる。
そんな最中、国中で謎の熱病が流行り出す。悪魔の仕業かと思ったが、どうも違うようで、ユウとレイ、二人が出会うきっかけとなった生徒の症状と似ている熱病に、炎の石が関係しているかもしれない可能性に辿り着く。
試しにユウが熱を奪ってみると、その症状が収まり、患者からは石の欠片が出てくる。これで一件落着のように思えたが、患者は石の欠片からルミナントを得ていたらしく、瞬く間に体温が失われていく。慌ててレイが冷たくなっていくのを抑え、どうにか事は落ち着くが、容易に二人が手を出せない状況に。
そこに病を奪う特殊能力を持つ少女、ソロ・リスタリアが現れる。
彼女もなんと、変身能力を持つ魔法少女だった。
ソロの家系は遠い先祖に「蠱毒の石」と共に辺境に追いやられた一族らしく、その末裔の彼女は石の継承者にして契約者だった。
ソロの持つ蠱毒の石は欠片が集まりきっていないユウの石どころかレイの氷の石すら凌駕する大きさを誇っていた。
石の大きさに驚嘆する二人にソロは告げる。
「そちらの氷の石さえ、世界を救うには足りない。石は使って育てなくてはならない」
石を育てる。謎だらけの言葉の真意を探るため、レイの父親が持つ古文書を読もうとしたのだが、レイの父共々、悪魔に拐われてしまう。
拐ったのは悪魔でも上位の存在で、不完全な二人の石の影響をものともせず、二人を殺そうとする。
間一髪でソロが二人とレイの父を助けるが古文書までは取り戻せず、しかもレイの父は大量のルミナントを食われていた。
ルミナントの喪失は生命の死を意味する。不完全なユウとレイの石、病や毒を取り去るだけのソロの石ではどうすることもできない。
手も足も出ず、絶望しかけるユウとレイだが、ソロが言う。
「光の石があれば……」

(^ー^) (プロフ) [2017年10月13日 17時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

彼──四宮約(しのみややく)は、確か五歳のときに知り合った。
約は、よくわからない病気にかかっていて、体が丈夫ではなく、いつも青白い顔をしていた。腕にはいつも点滴。そんな、子ども。
僕はたまたま同じ病室に叔父さんが入院していたので、約と顔を合わせる機会が多かった。当時、僕と同年代の子どもが病院にいるのは珍しく、しばらくぼんやり約の顔を見つめ続けて、失礼だろう、と親に叱られたことがある。
約はそのときうっすら笑い、大丈夫ですよ、と言った。
きっかけは親が花瓶の水を取り替えに行ったときのことだ。
その隙に約が僕に話しかけてきたのである。
「君、名前は?」
「えっ」
まさか話しかけられるとは思っていなかったので、僕は慌てた。随分と慌てながら「三久島冴」と名乗ったもので……十回近く、言い直しただろうか。約には緊張しすぎだと笑われた。
「僕は四宮約。約っていうのは約束の約って書くんだよ」
まだ小学生にもなっていない自分が漢字など知る由もなかったが、その説明にはなんとなく感心した。なんとなく深い気がした。
ベッドのプレートに書かれた「四宮約」の走り書きを見て、無意識に覚えようとぶつくさ彼の名前を繰り返していたらしい。
くすくすと他意のない笑みを浮かべるのが、約の特徴だった。
叔父さんが入院している短い期間だけの交流になるかな、と思っていたんだが、叔父さんの容態は芳しくなく、入院期間が何日も何日も延長された。
なんにも知らない僕は、なんとなくそれが、僕と約を仲良くさせようと神様か何かが導いてくれているのだ、とか思っていた。
僕は無邪気に約との交流を楽しんだし、約も僕と話すのは楽しそうだった。時々、発作を起こしていたけど。
辛そうな約を見て、僕は、「将来お医者さんになって約を治してみせる!!」なんて、幼心に一所懸命になって言ったんだっけ。
約は苦笑いをして、「僕なんかより、叔父さん治してあげなよ」と言っていた。
全くその通りである。
そんな朗らかな会話の傍ら、叔父さんの病状は悪化し──当然僕が医者になる間もなく──死んでしまった。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月9日 21時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

当時、まだ七歳。小学校に入学して間もない年の出来事だった。
叔父さんの兄だった父は、陰ながらに涙をこぼしていた。あまり感情を表に出さない父さんが泣いているのは不思議で……同時に胸が痛くなった。
けれど、死というものを完全に理解していたわけではなく、僕はただ、父さんの悲しみにつられて悲しいと思っていただけだった。
でも、将来医者になる、という決意は揺らがなかった。
約は、病院に通っていた間、病院というものがよくわからなくて退屈していた僕の、大切な話し相手で、友達だった。いつの間にか僕は彼を友達と認識していた。
助けたい、と確かに思っていた。
僕は、度々、約に会いに行っていた。
約は空っぽになった隣のベッドを眺めて、苦笑いを浮かべていた。
「また、いなくなっちゃった」
約はそう呟いた。隣のベッドの人がいなくなるのは、よくあることらしい。退院していく人もいれば──当然、死ぬ人も。
空っぽになると話し相手がいなくなるのだという。寂しくなるのだという。
「それなら、僕が来るよ」
僕は、同年代だからすっかり気を許して、そう言った。お父さんとお母さんが心配するよ、と約に言われたが、当時の僕は、有言即実行だったらしく、病院通いをやめようとしなかった。
それが約のためだと思っていた。自己満足という言葉は、この頃まだ知らなかったから。
「お医者さんになって約を治してみせる。約束」
そんな、指切りを交わした。
約は、初めてできた友達で、いつ消えるか知れないくらい儚げで、僕はそんな風に約束を押し付けて、約が消えないように祈りながら、毎日毎日通い続けた。
まあ、中学生になる頃には忙しくなって、会う頻度は落ちてしまったけれど。
それでもできる限り、顔を合わせた。
医者になるために必死で勉強して、高校と大学まで決めていた。中学生にしてはしっかりと進路設計を立てていた。
僕は本気だったのだ。
一人の友達を救いたいと。
一途にあろうとしていた。
約は初めてできた友達で約の名前は約束の約。だから、約束したら、果たさなきゃ、と。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月9日 22時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

頑張って勉強して、医学部のある大学に入って、人の血──擦り傷とは比にならない量──に最初は恐怖を抱いていたけれど、それでも約を救いたいという気持ちは変わらず、医者になるために努力と研鑽を積み重ねてきた。
採用されたのは、大学病院。僕が入学したのはこの大学病院の登竜門みたいな学校で、もちろん、狙っていたのだ。
何故ならこの大学病院は原因不明、治療不能の病気について研究しており、患者もそういった類が多い。
そういった類の患者には、約も含まれていた。
約を治すために医者になったのだから、約のところに真っ先に行けるように計画を立てて行動するのは、当たり前のことだった。
主治医にはなれなくても、約の病気の研究を手助けできるかもしれない位置に就きたかったのだ。
そうして画策と努力を積み重ねた結果、僕は望み通りの配属になったわけである。
そう決まってから……高校に入ってからは忙しくて全く行けないでいた、約の元に真っ先に報告に向かった。しばらく……10年くらい会っていなかったから、心躍らせていたのだ。
約はまだ生きていると聞いていたし、約束が果たせるかもしれない、と──僕は喜びでいっぱいだった。
聞いたらきっと、約も喜んでくれるだろう。
そう思って、何年かぶりの病室を開ける。
──するとそこには以前より肌色が悪く、ひどく窶れた様子で、扉の音にも反応せず、点滴を唯々諾々と受けながら、窓の外をじっと見つめる青年がいた。
髪はぼさぼさで色が抜けている。一瞬、別人なのか、と思ったが、ベッドのプレートの名前にはしっかり「四宮約」の文字があった。
それがなければ、あんなに笑い合って子ども時代を共に過ごした友達だと、気づけなかった。
それくらい、約は変貌していた。
僕は数十秒、扉の前で呆然と立ち尽くしていた。その間、彼も一切の身動きをしない。まるでその格好で固められた人形であるかのように。
生気を感じられなかった。時間が止まっているようにすら思えた。
ぽたり、ぽたり、と落ちていく点滴だけが、時が進んでいるのを証明していた。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月10日 3時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

「……や、く……」
ようやく口を動かすことができた。けれどそんな自分の声は喋ることが初めてできたばかりのようなぎこちなさに溢れていた。約が人形ならば、自分は機械にでもなってしまったんじゃないかと思えるほどに。
あ、あ、と気まずい沈黙の中奇妙な発声練習をして、僕は再び口を開いた。
「約、お久しぶり、僕だよ、覚えてるかな……?」
恐る恐る放たれた、ありきたりな言葉。
しばらくじっとしていた彼だが、やがてゆっくりとこちらを振り向く。その顔は、恐ろしいまでに無表情だった。笑顔も怒りも悲しみも、どんな感情もそこには宿っていなかった。ただ、思い出そうとはしているのだろうか、僕を凝視している。
長い長い沈黙を経て、ようやく約が口を開く。ああ、というのは吐息のような空気に溶けてしまいそうなほど掠れた声。
「さえくん」
……覚えていてくれたらしいが、僕の名を呼ぶ彼に声はないに等しかった。辛うじて空気が振動して聞こえるだけのような声だった。
彼は僕をじい、と見、それからようやく──ほんのり笑った。
やけに懐かしい、笑顔だった。
「医者になったんだ、おめでとう」
「ありがとう」
僕も微笑む。
素直に喜ぶ僕に、約はこんな提案をしてきた。
「お祝いに、僕のお気に入りの場所で話をしよう」
そう言って約は点滴台にすがりながら、ゆらりと立ち上がった。
僕は何の訝しみもなく、彼についていった。
エレベーターに乗り、階段を上り……着いた先の扉の向こうは爽やかな風の吹く屋上だった。
約はすたすたとフェンスの方に寄っていく。僕の手を引いて。
「見てよ、地面があんなに遠い」
「危ないよ」
フェンスを覗く彼を引き戻そうとした。フェンスは古びて脆そうだ。錆び付いているし、危ない。
そう、腕を引こうとしたけれど、
するり。
「……え」
思っていたより細かった約の腕が、すり抜ける。
スローモーションのように流れていく中で、約は告げた。
「君には僕はもう、救えないよ。僕はもう、明日死ぬかもしれないんだから。お医者さんが泣きながら教えてくれた」
「待って!」
手を伸ばしても約はすり抜けていく。
「大丈夫、自殺か病死かの違い」
そんな言葉を最期に、彼は。
*
あのとき、もっと握りしめることだって、できたはずなのに、僕はそれをしなかった。
約は僕が死なせたも同然。
僕に泣く資格なんてない。
彼を死なせたのは、医者の涙。なら、自分は益々泣いちゃいけない。
それが僕の真実。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月10日 3時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

あの日の約束は、

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

純朴な疑問が暴かれ、それがからかいへと変化するのは小学校に入った頃。主に同級生の男子の首領みたいな……所謂ガキ大将を中心に「やぁい悪魔」「赤目」「弱虫」「泣き虫」だのと今にして思えば実に子どもっぽい囃しでからかわれていた。
僕もそれにいちいち反応しなければいいものを、やはり反応して泣いてしまっていた。それもいけなかったのだろう。ガキ大将を中心としたグループを増長させるには充分だった。少し年を経ると、それはからかいから暴言へ、それと共に物理的な力……暴力も、吐き出すように繰り出された。
殴る蹴るは普通だし、地面をずるずると髪を引っ張られて引きずられたり、髪ではなく首に縄をつけられて、というときもあった。
悪魔菌とか呼ばれて、目に消毒液をかけられたときはさすがに焦ったなぁ。痛くて痛くて仕方なくて、失明するかもしれない、と思ったくらいだ。誰も、助けてはくれない……
みんなに、そんな余裕はなかったんだ。既に僕以外にもいじめられている人はいたし、いじめを止めるのは、勇気がいる。だって、庇った自分が今度はいじめられるかもしれないんだ。そんなの、誰だって嫌だろう? ──だから、仕方ない。
けれど、そんな中でもいじめられっ子に味方してくれる人は皆無ではなかった。教室で起こる暴言、暴力の嵐に果敢に立ち向かう女の子がいたし、自分を異端に見せることで恐れさせ、発言力を得ていじめっ子を牽制する、なんて巧妙な業を使う男の子たちがいた。
まあ、たった数人ぽっちだったけど、それでも少しは救いだったんだよ。
少しは希望も覚えられた。
そんな俄に光が見えた頃、僕の転機と言える出来事があった。
「サイ、そろそろクラスで学級委員の話とか出るんじゃないかしら?」
久々に帰ってきた母にそう言われて、一瞬きょとんとした。
「学級……委員?」
「クラスの中で優秀なやつが選ばれる、クラスのまとめ役だ」
父がコーヒーを飲みながら説明してくれる。
学級委員とは、誰が統率するかで、その後のクラスの行く末が違ってくる重要な役職らしい。
「一度、経験してみるといい。クラスの何かを変えられたなら、泣き虫だろうがなんだろうが、自信の一つにはなるだろう」
言葉こそ粗雑だったが、父なりの、僕への励ましで助言だったのだと思う。まあ、上昇志向の高い二人が権力を求めていただけかもしれないけど。
これをきっかけに、僕は学級委員になろうと決意した。

(^ー^) (プロフ) [2017年9月26日 1時] 2番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

学級委員になり、以前よりクラスのことが見えるようになった。
僕以外にもいじめられている人はいたし、女子の方が陰湿だったりするのもわかった。
僕は学級委員になったことで、先生との距離が近くなり、警戒されていじめが和らいだ。
それがいいことかというと、そうではない。対象が少なくなったことで、一人に対する当たりがより強くなった。
どうにか止められないか、と色々働きかけてみたけれど、そう上手くいかず、いじめはなくならない。
そしてとうとう、
僕のクラスで死者が出た。
*
死んだのは度会夏彦くんという転校生だった。転校してきてからこっち、ガキ大将の身体的ないじめに悩まされてきて、それでも抗う態度を崩さなかった子だ。
死因は電車に轢かれたこと。
いじめを苦に自殺……というわけではなさそうだった。目撃者によれば、ふらふらとホームに落ちていったのだという。
後々知ったのだが、彼はその日、ひどい暴力を受け、ずたぼろのふらふらだったらしい。
そのせいで運悪く電車が来るタイミングで倒れてしまったのだとか。
これは、いじめのせいだと思った。
同時に、いじめを止められなかった、僕のせい、とも。
故に、いじめっ子たちに反感を抱いた同級生何人かによるクラスメイトへの「呪い」の実行に賛成したのだ。
いじめっ子を、周りで見て見ぬふりをした奴らを、地獄に落とそうと。
──いや、それでは生温い。生き地獄を味わわせてやろう、と。
歪んだ想念だった。そして僕らはあまりに子どもだった。
何年も何年も繰り返す、百物語の呪い。
毎年同じ日に呼び出されて、見るも無惨な死に方をしていくいじめっ子や傍観者たち──というのは呪いにより生み出された幻影で、徐々に彼らの心を蝕んでいくものだった。
僕らはそれの見届け人。その地獄を地獄と知りながら、何年もそれを見つめ続ける──誰も、辛くなかったわけじゃない。僕らだって辛かった。けれど、僕らは見届けることを義務と思っていた。
止められなかった僕らも、罪人なのだから。
そうやって自分を罰しながら、その呪いを続けていくと、遂に一人、現実で気づき、耐えられなくなって自殺した者が現れた。
そいつは笑えることに、いじめっ子の総大将だった、ガキ大将だった。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月1日 22時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

あはははは、ざまぁみろだ。
僕はそう思った。
そう思ってしまった。
僕の中の闇が疼くのがわかった。
ガキ大将の自殺を知って、自分が何を思ったか。
いい気味だ、と。
心の底からあいつを嘲笑ったのだ。
自分をいじめてきたやつが、ようやく罰された。──でも、まだ一人。
その事実が、僕の暗い感情を更に根深くした。
やがて、その呪いを始めた同士の子ですら、呪いの百物語を愉しむようになってきた僕に、怯えの眼差しを差し向けた。
それでもかまわなかった。僕にとっての重要事は、復讐というよりか、人の死になっていったから。毎年毎年、少しずつ自殺者が出るのだ。僕を、僕たちを苦しめたやつらが。
中学を卒業する頃には十人ほど減っていた。
自殺した十人ほどは苦しみ泣き喚き、無様な姿を親兄弟に晒した後、死んだ。何を言っているかわからなかったらしい家族は精神錯乱で死んだのだ、と簡単に片付けてしまった。
ほら、大人はそんな風に、簡単に蓋をして、もう開けようとしないから、
だから目を離したらいじめが起きるんだよ。
そして証拠がないからと罰してくれないから、僕らが代わりに断罪しなきゃならないんだよ。
僕らは被害者なのに、まるでやっていることは犯罪者、人殺し。
それでも少しでもやつらの報復になるならと、僕は毎年欠かさず百物語に向かうのだ。今年は誰が何人死ぬのだろうと胸を躍らせながら。
しかし、高校になり、変わった。
まあ、高校生になるとみんな学校がばらばらになったり、環境が目まぐるしく変わったりして、変わるのは当たり前なのだが、
僕の入った学校には、僕の顔馴染みは一切なく、僕の容姿──茶髪と赤目だ──は当然のごとく浮いて、目をつけられるようになった。
小学校のときと同じに戻った。
殴る蹴るは当たり前。悪魔の目と罵られるのは茶飯事。気持ち悪いと言われて、頭をがんがん地面に叩きつけられて、挙げ句、「そんな気持ちの悪い目なんて、見たくもない。抉ってやる」とカッターきちきちと出されたときは、さすがに逃げた。
意気消沈した。
結局僕はこうなのか、と。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月10日 4時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

高校では、成績がよければよいほど妬まれた。僕は成績は悪くない。わりと上位。それがいじめを更に加速させた。
「成績上位者サマには教科書なんざいらねぇよなぁ?」と教科書をぐしゃぐしゃにされるならまだしも、ページを破って捨てたり、一ページマーカーで塗り潰されたり、盗まれたり、ノートに至っては、わざわざ掃除のときに出た埃をまぶして、ゴミ箱にぽい、とされていた。
何するんですか、と抗おうものなら暴力の時間がやってくる。時には教室で花瓶を頭に叩きつけられたにも拘らず、花瓶を割った罪を被せられたことさえある。
僕は──とにかく逃げた。そいつらの目の、手の、届かないところを探して。
家は、知られていたし、親は味方にならない。同級生が相次いで自殺してから、親は赤い目の僕に呪いがあるのではと言い始め、避けるようになっていた。
故に逃げ場は自分で見つけるしかなかった。
……僕が見つけたのは、図書館だった。
頭の悪いやつは来ようとも思わない場所。万が一来ても、暴れれば即座に職員に厳重注意を受け、ともすれば出禁になってしまうような場所。
静かな場所で、ほっと一息吐く。それが高校生になってからの習慣になっていた。
あるとき、一冊の本を手に取る。怖い話の本だった。
なんとなくばらばらと開いたページに「呪いについて」とあったからふと読んで……思わず声を上げて笑ってしまった。
そこにあった一言の文言。
「人を呪わば穴二つ掘れ」
すぐに意味は理解した。
人を呪ったのなら、呪った方も相応の代価を支払う必要がある。
僕の場合、今のこの状況がその代価というわけだ。
笑えた。
しかし、結構な声量で笑ってしまったため、司書に注意を受けた。
そのときの僕ときたら、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
いじめによって身についた反射謝罪。
もう、他人から引かれるくらいに僕はコミュニケーション障害に陥り、
誰とも交遊関係を気づくこともできず、
ただ呪いに侵され、溺れていった。
──そんな僕を救える人なんて、いるのだろうか。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月10日 4時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

四十四物語~壱之巻~

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

俺はいつの間に死んだのだろうか、とふと思い、笑った。
何故俺が死んだとして、思考が存在するのだろう?
けれど、その空間は──人々が天国だの地獄だの黄泉だのと呼ぶであろうその場所は、生きている人間がいるには些か、寂しすぎる空間だった。
真っ白でまるで立体感がない空間で俺の存在だけが唯一、立体であり、その空間が立体であることを証明するものだった。
面倒くさい思考回路だ。
つまりそこには俺以外誰もおらず、果ても知れない、ただただ白い空間だったのだ。
敵も味方もいやしないが、自分の生存を確認しようとして胸に手を当てて……絶句した。鼓動がない。
おかしな話だが、自分で自分の脈を取ってみた。……どこにもない。
俺は息をしているのか、と口元に手を当てて……かかる息がないとわかると、唖然とするしかなかった。
そこでようやく、もっともな疑問を口にする。
『ここ、どこだ……?』
はっとした。自分の声が聞こえた。溜め息混じりのように。しかし相変わらず息はしていないし、口を動かして喋ったわけではない。耳が振動を拾って音として認識したのではなく、脳に直接反響するような、そんな声だった。
『は……はは……』
非現実に置き去りにされた気分に──実際その通りだが──俺は笑った。笑うしかなかった。
これは夢かな、とぼんやり頬をつねる。痛い。死人のくせに、痛みはあるんだ。不便だな、と真っ白なだけの天を仰いだ。まあ、空かどうかすら知らないが。
自分の死というのは衝撃的な出来事であるはずなのに、案外あっさり受け入れることができてしまった。軍人だったからかもしれない。そういえば服装が軍服だ。二等兵の紋章まである。死ぬ前に階級の一つくらい、上げてみたかったなぁ、と笑うが、まあ死んだので叶わないだろう、と諦めた。諦めるのは、得意なのだ。
どこかの紛争で応戦中にでも死んだのだろう。俺のことだから、誰の目にも留まらないくらいの下らない死に方だったのかもしれない。
そう笑って天を仰ぐと、「おい」と声が聞こえた。知らない男の声。直接頭に響く感じではない。鼓膜を震わせる声だ。
誰だろう……とその声に耳を傾けた瞬間、俺は落とし穴にでも落ちたかのように世界がぐるんと回転する感覚に陥った。白い世界はずてっと落ちて目を瞑った隙に立ち消えたらしく……俺は何故か、何もかもが大きく見える世界にいた。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月12日 22時] 3番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

落ちて、まず思ったのは、頭が痛い。
異様に痛い。泣き喚きたいくらい痛い。死ぬときですら自覚のなかった自分が何故今死んだその後に痛みになんて苛まれるのか──と、気づいたらわんわん五月蝿い赤ん坊の声が異様に近く聞こえ……そこで俺は内心で絶句することになる。
その赤ん坊の声というのが、紛れもなく、俺から出ている声だったのだ。近い近いと思っていたが……これはまさか、転生というやつか?
かつて軍の下っ端同士で死んだらどうなるとか下らない話をしていたときに転生という言葉が出た気がする。生まれ変わり、とも言うんだったか。そのとき下らないと鼻であしらった俺がまさか、その転生を体験することになるとは……
と思っているうち、激痛は引いていった。自分の泣き声も弱まっている。思考と乖離した体というのはなんだかもどかしい気もするが、自分の体に面白い現象が起こっているのを見、見方を変える。
その現象というのは、発光……みたいなものだ。人間というのは自分では光れないはずだが、今の俺──赤ん坊なので小さい体は、灰色の街灯のような光を体から発していた。もしかしたら、オーラといった方が正しいのかもしれない。オーラも可視化できないとされる眉唾物だったが、まさかこの目で見ることになろうとは。生きてみるものである。
生きている俺を見て、大きなやつら……おそらく大人、親とかそんなんだろう……が目を剥いている。大した間抜け面だ、と前世由来の悪態を吐いてみるが、赤ん坊なので言語にはならない。
まあ、赤ん坊がいきなり可視化できるオーラとか身に纏ったらドン引きだよな、と一応納得するが、どうも違うらしい。
金髪青目の──どうも前世の母親に似ていていけすかない女性が、瞠目し、口元を押さえ、ひきつれた声で言う。
「回復魔法……!?」
へ? ……は?
転生にオーラと来て、続いては魔法ですか奥さん。思考と体が乖離しているのをいいことにキャラじゃないことを考えてみる。奇っ怪なことだ。
人々の夢想が作った科学を超えた思想、想像物の筆頭、魔法。それが、この世界にあるというのか。
しかも、俺が回復魔法を使ったみたいな雰囲気だ。……よくよく考えると、俺は先程結構な高さから落ち、死を覚悟するほどの痛みに襲われた。赤ん坊の身なら、大人ならなんでもない高さからでも落ちたらひとたまりもない。つまりさっき死んでいてもおかしくない。けれど痛みは引いたし生きている。俺が回復魔法を使った説明になる。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月14日 4時] 4番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

笑える話だ。
どうして魔法なんてものが使えたのかはわからないが、これは前世ではついぞご縁がなかった救いじゃないか。
自分の傷を、自分で癒すことができる。回復魔法、なんて便利なんだろう。
だが、状況や雰囲気はあまり芳しくないように見える。特に先程の女性。恐れるような目でこちらを見ている。目が合うと「見ないで」と喚き出した。赤ん坊に何求めているんだ。意識はあるが剥離中だぞ。
というかその前に赤ん坊が床に落ちたんだから誰か拾えよな。倫理的に。
まあ、誰に拾われても、俺は知らない体温に怯えて大泣きするんだろうけれど。
考えていると、思ったより小さな腕の中に抱えられた。
「かるおもい……」
どっちだ、と思う発言をしたそいつは、幼子だった。三歳くらいだろうか。三歳で赤ん坊抱き上げるってすごいな、と思っていると、黒髪黒目の平凡な顔立ちのそいつからは、緑色のオーラが立ち上って見えた。これも魔法とやらの効果か。
じんわりと伝わってくる体温と、オーラを介してか伝わってくるそいつの優しさに、俺は悪寒を覚えた。
そうして……案じた通り、泣き喚いた。
びぎゃああああ、と耳をつんざくような泣き声。自分の声だができるなら耳を塞ぎたいくらいだ。なんて呑気に考えていると、異変は間を持たずして訪れる。
ばちぃんっ
自分を抱き上げた子どもと自分の間で火花の上がるような音がしたかと思うと、俺は床へ再び急転直下。子どもが火花に驚いて取り落としたと思われる。
嫌な予感が通りすぎる間すら与えず、がつん、と頭に鈍痛。それがじわじわと激痛に変わり、俺はとにかく回復魔法回復魔法と念じた。念じてどうにかなるのか、と思ったが、どうにかなった。死ぬ気でやると人ってすごい、と赤ん坊らしからぬことを考えていた。
俺を落とした子どもは父親とおぼしき人物にたんまり怒られていた。セーウ、という名前らしい。
そこから黙って耳を傾けていると、女性は俺の母親で……どうやら前世と同じくヘテロクロミアで生まれた俺を疎み、殺そうとしたらしい。最初に落ちたのの犯人はその女だった。
俺は結構生まれたてほやほやで殺されそうになったらしい。稀有な生まれつきの強力な光属性のおかげで助かったのだろうとのこと。光……だからさっき光っていたのだろうか。いや、セーウは違う色で光っていたし、光属性というわけではなさそうだが……
とりあえずはっきりしていたのは、この世界でも、どうやら俺は捨て子確定らしいことだ。

(^ー^) (プロフ) [2017年10月14日 5時] 5番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

俺の魔力が異様なものであることは生まれて数年でわかった。
母親に捨てられた俺は医者の家で育てられたセーウと共に。だが、セーウは成長すると、見覚えのあるやつに似てきた。あいつは確か、ジャンと言ったか。俺の後輩の一人だが、仲の悪い先輩に媚びへつらい、俺を貶してきた一人だ。そんなやつと幼なじみなんてぞっとしない。
ある日ついうっかりとセーウではなくジャンと呼んでしまい、セーウの目を丸くさせた。どうやら彼の名はセーウ・ジャン・クロッカスというらしい。名前が三つもあるとは豪勢な、と思いつつ、俺はとりあえず呼び慣れたジャンと呼ぶことにした。
だが、世界とは奇異なもので、ジャンは俺と仲良くした。もしかしたら生前のジャンとの劣悪な関係は、軍属だったからかもしれない。この世界はどうやら黒差別はないようだし。
というかむしろ、俺は先天的に光属性を持つ類稀なる存在として重宝された。教会で仕事を預けられるくらいだ。
黒差別はあるが光属性と対になる闇属性というのが疎まれていて、俺に回されてくるのは、闇属性を纏った者の浄化だった。
俺は浄化の使徒として重宝された。難易度が高いとされる人に憑いた闇属性まで浄化できるのだ。
その反動なのか、代償なのかは知らないが、俺は光属性以外の魔法の習得ができなかった。他の魔法は触れるだけでいつぞやジャンが俺を落としたときのように拒絶の反応が起こる。
その分光魔法の精度は高いため、俺は生前受けなかった重宝という扱いを存分に受けることとなった。
生まれた当初はまたろくでもない人生を送るのだろうな、と人生を半ば捨てていたが、生きてはみるものだ。
人から必要とされ、教会からも良い待遇を受けた俺は、やがて教会を引き継ぎ、慈善事業として浄化を行うことにした。少しましな生を与えてくれた、この世界への密かな恩返しだ。
神など信じる気も毛頭なかった俺が神を語るのはおかしいことこの上ないだろうから、神については語らず、しかし形ばかりの恩返し、と口調だけは改め、人当たりも柔らかくしてみた。
自分が自分でないような倒錯を覚えるが、これはこれで悪くない。
さて、今日も人助けだ。
報われることはないと知っている。だが、今この境遇で俺は既に充分なほど報われている。
故に俺はこの世界の人間には手を差し伸べる。
「何かお困りでしたら、ご相談に乗りますよ?」

(^ー^) (プロフ) [2018年3月10日 3時] 6番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]

それを偽善と人は喚ぶ

(^ー^) (プロフ) [2019年3月1日 17時] 7番目の返信 携帯から [違反報告・ブロック]
(C) COMMU