2828
愛音ちゃん用 2017年4月28日 0時 /リレー小説 2017年4月26日 20時 /Hello,shooting… 2017年3月20日 1時 /インビンジブル… 2017年2月18日 2時 /ネタメモ注意 2017年2月12日 1時
メッセージ一覧
ペンネグラタン (プロフ) [2017年5月15日 22時] 68番目の返信 [違反報告・ブロック]……さすがに分が悪い。
が、逃げるだけならどうにかなるだろうか。
「……捕まえたいなら手錠や結束バンドをおすすめします」
言うと、服の中に隠し持っていた折り畳み式のナイフで肩を掴む英理の手を刺した。
「っ!?」
英理と周りに動揺が走った一瞬でクランは英理を蹴り倒し、近場の家の屋根に飛び上がった。
わざと音を立てて民家の屋根の上を走れば、何事かと家から人が出てくる。
クランはナイフに着いた血を拭き、拭いた紙に火を着け、空に投げる。
人々は火を見て火事だ、と叫んで騒ぐ。英理たちも都合よく問い詰められているようだ。
とんずらをこくには充分だろう。
ペンネグラタン (プロフ) [2017年5月3日 16時] 38番目の返信 [違反報告・ブロック]「僕が業のこと、忘れたくなかったからだよ」
奥田さんにこの話を提案された、という覚えはない。けれど、彼女の性格から考えるに、無断で手術を決行したというのは考えにくい。
よほど僕の精神状態が正常ではなかったのだろう。
……それくらい、
「破綻するほどに、僕の中の業の存在も大きかったんだよ」
そう、彼の赤い瞳を見上げた。
*
破綻はしてほしくなかったんだけどなぁ。
渚の言葉に嬉しいような悲しいような、複雑な心境で苦く笑うしか、俺にはできなかった。
「ある意味、業の判断は正しかったんだと思うよ」
「……そうなのかな」
俺の会いたいというワガママで会えただけかもしれない今、星の中で渚は言った。
「一度忘れなきゃ、僕はこうして向き合えなかった」
ずきりと痛みが走った。
「忘れることも、忘れられることも、悲しくて寂しいことかもしれないけどね、……業は、正しかったんだよ」
少なくとも僕は救われた、と渚は笑った。
ペンネグラタン (プロフ) [2017年5月6日 1時] 39番目の返信 [違反報告・ブロック]できることなら、渚には夢を見続けてほしかった。
俺のいない、楽しい夢を。
でも同時に、夢のようにあっという間に過ぎ去った、あの頃の……中学時代の日々を、見つめ続けていてほしかった。
*
結局、俺たちとあの中学の一年間は切り離せなくて、
俺だって願ってしまった。
あの頃のように渚と二人して並んで、なんでもない話の中に、暗殺計画とか交えて、
届かなくても、星のように煌めく君を、ずっと傍らで見つめていたかった、なんて。
*
*
*
渚も『夢』を見られるのなら、俺だってそんな夢をずっと、見続けていたかった。
*
*
*
*
*
もっと早くに、自分に素直になっていれば、こんなに苦しまずに済んだのかもしれない。
俺も、渚も。
*
「俺が、正しかったなんて、俺には断定できないよ。俺は記憶を失った渚をこんな姿で見つめ続けて苦しかったし、星空を眺めていつも不満そうにキャンバスを畳む渚も苦しそうだったから」
渚を安らげるために押し通した、記憶に関する手術の法案。
俺の目からは、全てが無意味だったように思えてならない。
悔恨を噛みしめていると、ほんのりと頬に温もりが沁みた。
ペンネグラタン (プロフ) [2017年5月6日 1時] 40番目の返信 [違反報告・ブロック]「でも、こうして会えた」
業の頬に手を添えて、口から出た一言はなんてことない、ありふれたものだった。
けれど、今はそれが全てに思えた。
「いつか、殺せんせーが言ってた。過去の教訓から学んで、人は成長するものだって。それはつまり、失敗しても、それは全部が間違いじゃなくて、いつかはわからないけれど、でも正解になるってことなんじゃないのかな。
えーと、こういうのを端的に表した名言があったと思うけど……」
度忘れしたなぁ、どうも決まらない、と思っていると、業がゆったりと口を開く。
「失敗は成功の母」
しっとりとした声が正解を紡いだ。
「そう、それ。今回のはそれなんじゃないかなって思う」
だってほら、
*
「嬉しいじゃん」
*
渚のその一言が、風と共に俺の体を吹き抜けて──なんだか、心地よかった。
「……そうだね」
確信した。
俺は間違っていなかった。
渚が、今を嬉しいと感じてくれているのなら、途中経過はどうあれ、間違いではなかったんだ。
それに、
──俺も今、幸せだ。
ペンネグラタン (プロフ) [2017年5月6日 2時] 41番目の返信 [違反報告・ブロック]「いやぁ、にしてもなんだか懐かしいね。いつだったっけ、殺せんせーと一緒にアメコミ映画見に行った夜を思い出すよ」
「あっ、渚も? 俺もそれ思い出してたとこ。あの日も夜空は綺麗だった」
少し草の生えたグラウンド脇に二人並んで座って、空を見上げていた。流星群が、見る間に過ぎていく。
「……いいの? 渚。今日は描かなくて」
業が広げっぱなしのキャンバスをちらと見やって言う。いいんだ、と僕は少し弾んだ声で返した。
「僕に足りなかった存在(いろ)は、業だったってわかったから、もう描く必要、ないんだ。思い出せたし」
朝陽を見て、いつも瞼の中にちらついていた赤は、業の色だったんだ。
「……渚ってなんか、恥ずかしいことさらっと言うよね」
「えっ!?そんなつもりじゃ」
反論しようと振り向いて、業の手に触れ──息を呑む。
「業、手……」
それしか紡げなかった。
触れようとした体温は、確かにそこにある。けれどそれはもう輪郭を伴っておらず、もっと言えば、形を成していなかった。
ふと見れば、業の姿形も、薄らいだ影のようになりつつある。
「お星さまも無情だねぇ。時間制限つきなんて、先に言ってくれりゃいいものを」
当の業は……泣き笑いのような表情を浮かべていた。まあ、星に口なんてないから言えやしないだろうけどね、と夢のないことを嘯きながら。
「せっかく、会えたのに」
話したいことは山のようにある。そっちの仕事はどうだったんだとか、僕はそこそこ上手くやってるよとか。あの頃の、話とか……
「うーん、じゃあさ」
僕が悲嘆に暮れていると、業がぴ、と人差し指を立てる。口元には薄らいでいてもわかるほどの不敵な笑み。
彼が何か企んでいるときの表情だ。
耳を傾けると、彼は告げた。
「お星さまより、確実なものにお願いしようよ」
ペンネグラタン (プロフ) [2017年5月6日 2時] 42番目の返信 [違反報告・ブロック]「星より確実なもの?」
僕にはいまいちぴんとこなかったが、業はおぼろげになった手で、空を指さした。
「空にある、最も有名な衛星さ」
「あ……」
微かな指先を真っ直ぐ追えば、今日も煌々と輝く、僕らの三日月。
三日月になってから、幾年が過ぎただろうか。もう、十年は経っているか。
きっともう、僕ら以外は、あの衛星が何故三日月になってしまったかの記憶なんて、風化して忘れてしまっただろう。
けれど、僕らは忘れない。あまりにも、思い出深すぎるから。
恩師の遺したようなものだから。
「殺せんせーならさ、なんか俺らの願いなら、なんでも聞き届けてくれそうじゃん」
「ふふっ、確かに、そうかもしれないね。じゃあ」
「……うん」
僕の拳と、業の消えかけた拳をとん、と突き合わせる。
「それなら、今度は月が綺麗な夜に」
*
会いに来るよ。
*
ここで待ってるよ。
*
*
*
*
*
その約束を、胸に刻みつけて、
僕は前に歩き出した。