忌まれ子

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海知

666 (プロフ) [2019年3月28日 18時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

僕が見てきたもの。人、獣人、綺麗なもの、汚いもの、悲しいもの、幸せなもの。
僕は獣人と人間のハーフで、綺麗とは言い切れない、悲しい存在。
僕が失ってきたもの。父さん、母さん、友達、先生、人との繋がり、留まる場所。
僕は沢山の人を失い、沢山の繋がりを手放し、そんな自業自得の末に、休まることもできなくなった。

僕は憎悪を否定しない。僕は仕返しを否定しない。僕は希死念慮を、否定しない。負の感情だって結局は心だから。
僕は怨みを肯定しない。僕は復讐を肯定しない。僕は自傷行為を、肯定しない。他者を傷付け自分を傷付けても、結局はなにも生まないし、悲しいだけだから。
僕は死にたいと思ったことがある。僕は人を信じられなくなったことがある。僕は人の信用から逃げたことがある。だから、僕は逃げることを肯定している。

僕は矛盾しているのかな。僕は間違っているのかな。
けれど、僕はこの考え方が世間一般の解答から外れたものだとしても訂正はしない。僕の存在を肯定してくれない常識化んに唯々諾々と従う謂れがないからだ。

そんな僕なりの「I love you」だとか、僕の持つ言葉での「愛してる」だとか。そんなもの、だぁれも知らなくたって良い。僕が好く人が知らなくたって、それでも良い。
君が僕の言葉の真意を知らなくとも、分からなくとも、僕は君を愛している。

僕が大好きな君に望むこと。
君が君なりに世界と関わること。君が君なりに世界を愛すること。僕だけを愛す、なんてことをしないこと。僕の言葉だけに耳を傾けないこと。
僕が心から欲しいもの。
君の笑顔が、まず一番。それから、君が友達と笑う瞬間。恒常的な周囲への関心。君が世界を愛して笑う瞬間。それから時々、僕だけを見た目がほしいかな。ほんの一瞬で良いんだよ。

僕はね、君が嫌いな訳じゃないんだよ。離れようって口にするのも、一緒にいられないって泣いてしまうのも、全部は僕の弱さが原因。
君がいないと生きていけない僕なんて、君にはきっと重すぎる。
僕がいないと生きていけない君なんて、きっと君自身がいつか君を殺してしまう。
だから肯定できなくて、君と自分自身とを支えて生きていくだけの自信もないから、いつも「離れよう」って言葉になってしまうんだ。
大好きなんだよ。愛しているんだよ。世界をまとめて一つにしたよりもきっと愛しく思っているけれど、でも、僕はね、君が大好きだからこそ、君には僕との幸せ以外の幸せを見付けてほしいんだよ。



今僕が君に贈る言葉。僕なりの「I love you」。
どうか、世界を嫌わないで。

666 (プロフ) [2019年3月28日 20時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

ベイル

666 (プロフ) [2018年3月7日 16時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

「雑魚が」
その一言と共に鮮血が飛び散り、影の落ちた地面に赤い色を添えた。声の主は暗殺者。殺人鬼と名高い、ベイルという異常者。本名は知られていない。むしろ本人も知らないらしく、名乗りも通り名ももっぱらベイル、で行われている。
彼の悪名は限度がない。一人で百人を殺した、とか、嵌められた報復にその相手の組織のアジトに放火し皆殺しにした、とか。事実無根であったり荒唐無稽なものも多いが、実のところ真実も多いのである。事実拳銃を持った10人ほどの暗殺者集団に囲まれ、絶体絶命かと思われたが皆殺しにして生還したりとか、契約を反故にした依頼主の組織に奇襲を仕掛け、壊滅させたとか、エトセトラエトセトラ。
大抵の裏社会の住人は彼の名を知っているし、ある程度以上の大きさの組織に属していれば彼の姿を見たことがある者も零ではない。しかしそれでも暗殺の依頼を達成できるのがベイルである。顔が有名であればあるほど暗殺者とはやりにくい職だ。ゆえに需要がいくら高くても中々数が増えない。また、命をやり取りする仕事のために新人はすぐ死ぬ、ということもあってか、暗殺者というものは名は知れていても顔・姿・声は知られていないことが多い。だがベイルは特殊だ。

「はら、へった……」
ベイルは人体実験を繰り返す組織の中で育った。表書きは孤児院だったが中身はそんな慈善施設とはほど遠く、いつだってベイルたちは空腹や傷を抱えていた。毎日誰かが衰弱や毒、空腹や渇きにやられて死んでいった。
その暮らしに耐えられず、ベイルは施設に火を点け職員も仲間と言えたであろう孤児たちも焼き、皆殺しにした。唯一同類の匂いを感じていたとある一人の生死は確認していないが、まあ生きていたら生きていただし、死んでいたら死んでいたである。気にはしていない。
施設を焼いた後、ベイルは一人裏路地に繰り出した。元々外の世界で暮らしていたこともあり、盗みや殺しをしながら生計を立てた。勿論それでも餓えに襲われることはあり、どうしようもなくなったときは人を殺し、その肉を喰らったこともある。流石に美味くなかったらしいが。
「っ、おらぁっ!」
右目の火傷は、親に振るわれた暴力の証拠。一時期は光を失い、何も見えなかったのだが、施設で実験を繰り返されるうちに細胞やらなんやらが変異したらしく、いつからか光を取り戻していた。
しかし心についた傷が治ることは勿論なく、ベイルは荒んだまま生きていくことになった。

ベイルは最初は、大して可笑しなところのない子供だった。ただ親がろくでなしであり、そのもとで暴力を振るわれるうちに捻くれた、というその程度だった。
いつからか、他人を自分と同じような目に……つまり炎に焼かれるようなことに……遭わせたいと考え始めた。いつからか、一生消えない傷を残してやりたいと願うようになった。
そしてベイルは血に酔った。他人の血に、自分の血に酔い、そして殺人鬼として名を馳せるまでになった。彼がこれまでに殺した数は、もう四桁に入っているだろう。

「……悔い改める気は、ないのか」
「何をだァ? 俺はもう、自分のしたいようにしかしねぇって、決めてんだよォ」
けらけらと笑いながら相手をころす。その姿に狂気こそあれど、理性の光など存在していない。それが彼だ。
死にかけ、何度も殺されかけ、そして殺してきた経験が、ベイルという人間を象っている。

今さら表で生きられる人間では、ない。

666 (プロフ) [2018年5月2日 15時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

幸葵【ファンタジー】

666 (プロフ) [2018年1月29日 9時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

「……がっこう」
その単語は俺にとっての禁句だった。
『そう、魔法学校。君は出ていないんだろう? だってそんな話は聞かないからね……だから、この私が! 直々に君を勧誘しに来たんだ!』
どうしてこんな者に勧誘を掛けられているのかと言えば、どうもボランティアをしすぎたことが原因らしい。

俺の唯一の友人、俺が恋慕ったただ一人の人間、そして、俺が殺そうとした、その彼がいる場所。居た場所。……まあこの学校は、建っている場所が違うらしいが。

「……折角ですが辞退します。俺には、もう勉強や研究は必要ないので」
行くわけがないだろう。向かいたくない訳ではないが……自主退学を選んだ身だ。舞い戻るつもりはない。
『な、何故だいっ! 君のような逸材は、このような野蛮な世界に居るべきではないだろう!?』
「……はあ?」
呆れて物も言えない。何様のつもりなのだろう、彼は。魔法学校は誰が創設したと思っている? 学ぶ場所がほしいと願った、冒険者だ。冒険者を野蛮と、冒険者の世界を野蛮な世界だというのなら、あの魔法学校だって……同類だ。
一応俺も元生徒。少し頭が痛くなってきた。

殺しかけた彼への贖罪には遠いかもしれないが、それでも何かしたいと望み、始めたのが冒険者。
受けるクエストは基本的に危険なものだけ。報酬は基本、あまり受け取らない。生活費は賭場で稼いだものと報酬の一部から捻出、余ったら寄付。
属性は氷と闇、武器は両方ともSランク。何回か狙われ、結局裏ギルドとの繋がりもある。
なるほど、俺は確かに逸材だろう。
だがそれがどうした?

「冒険者によって作られたのが魔法学校でしょう? それを知らないというのなら……あなたは教師失格ですね」
固まった彼を食堂に置いたまま、俺は外に出る。さて、そろそろ町を変えようか。

666 (プロフ) [2018年1月29日 10時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

親からもらった名前に自分は沿えていない。幸葵の名の意味するところは葵のように美しく幸せを誇れ。母親が父親に出会えたようなそんな出会いが俺にもあるように、と……そんな優しさから付けられたのがこの名前。
俺は罪人。闇属性を生まれつきその身に宿し、傲慢ゆえに唯一俺を見てくれた人を殺しかけた。殺さなかっただけ良かっただろうが、それはなんの慰めにもならない。俺に幸福は許されない。あるのはただ、罪と罰。

「……」
俺は両親に似て容姿が整った部類だ。
俺は母親に似て頭が良い方の部類だ。
俺は父親に似て能力が高い方の部類だ。
そして俺は二人に似ず、心に巣食う傲慢に飲まれた部類の人間だ。
「神童様はやっぱ違うなあ?」
「てかドラゴンソロ討伐とか……闇属性の賜物ってことか?」
「しかも氷の精霊と契約してるんだとさ。俺達のような野盗とは違うんだよなぁ?」
野盗に囲まれ、その顔に覚える既視感から答えを叩き出す。彼らは俺の、魔法学校での先輩。俺に面子を潰され、いつのまにか自主退学をしていたという話だったが……どうやら、俺への復讐をするために裏稼業に身を落としたらしい。
俺自身稼ぎの大半は賭場から得たものであるから似たようなものだが、ここまで強欲な方法でではない。……というよりも、そういう方法は俺の傲慢を呼び起こすから選ばなかった。

俺はあの日"彼"を殺しかけた直後に自主退学を選択した。彼に会わせる顔もなかったし、なにより自分の傲慢と闇が恐くなった。俺はそれまで、自分の闇をコントロールできていると思い込んでいたのだから。
だからこそ俺は自分の傲慢を良しとしたし、際限なく闇属性を利用した。むしろ自分の力を底上げするために闇属性を進んで受け入れた節もある。……皮肉なことに、その過ちに気付いた頃にはもう、もう一つ身に宿していた氷の力すらも俺の手には負えなくなってきていた。契約してくれている氷精が居るからこそ躊躇いなく力を行使できるが、もし彼女がいなければ俺は高いリスクを負わずにはどんなに量の少ない魔力も使えず……使い方を誤れば辺りを永久凍土に閉じ込めるような、そんな事態に陥っていただろう。
だが俺は闇属性を、捨てられなかった。俺はこの力のリスクとリターンを曲解した。
母親が俺に、ちゃんと闇を飼い慣らせと言った意味を曲解した。
今の俺はもう、闇を捨てようとすればただのマリオネットになり下がるだろう。

「……今さら言い訳する気も謝る気もありません。お帰りください」
徹底的なまでの実力差を見せ付けて、そして俺は野盗に堕ちた先輩たちを見下ろす。感情は抱かないように。
ただ、傲慢とは呼べない冷たさをその身に宿して、闇の代わりに氷を俺のものとして、口にする。

傲慢も強欲も色欲も、俺たち人間が心の隅に抱く大罪。そして俺はそれらの大罪の捉え方を誤り、さらに大きな罪に手を染めた。……心など、抱くものではなかったのだと……俺は、考える。

「……」
野盗の彼らがいなくなったのを確認すると剣を納め、僅かにずらした感情の蓋をきっちり閉め直す。感情は確かに力を増させるが、それは闇属性のリスクと隣り合わせ。俺はもう力を制御しきれないゆえに、感情を殺した。
もう要らない。彼を殺しかけた俺に力など、感情など要らない。

もう、要らない。



どうか誰も、俺を許しませんように。

666 (プロフ) [2018年5月1日 7時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

ライリー

666 (プロフ) [2017年9月19日 16時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

ライリー自身の日記より引用

今日からまた人間界! 久しぶりに降りたけど、やっぱり文明発達してるなあ、見ててすっげえ楽しい!
写真もいつの間にか白黒から色彩豊かになったなあ……時の流れをすごく感じる。
昔々俺が生まれた頃には写真なんてなくて、俺はずっと絵を描いてたんだっけ? もう、そこまでよくは覚えてないなあ。

あーあ、結構久しぶりだったからこの前出来た友達も皆老いるか死ぬかしちまったし、神子達も随分と数を減らしたな。
でっかい建物も沢山建ったけどバベルの塔レベルじゃないし、罰が下ることもなくって空き地は減っちまった。
ちみっ子達はもう、ほとんど会えない。



つまんないなあ、なんだか、あの檻に居た頃みたいだ。

666 (プロフ) [2017年9月19日 20時] 3番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

ライリーの生まれを知る者の証言



あいつは確かに天使だが、同時に人間なんだよな。
なんと言うか、俺にも表現できないような存在だ。……まあ、良い奴には違いない。例え多くの呪いを引き受けていたとしても、だ。
気の毒なやつだよ、ライリーは。
なのに大神に仕えてる辺り、自分でそれを認めたくないんだろうなあ。

あいつは元々天使と堕天使、それも人間堕ちの堕天使との間に生まれた"天使に最も近い人間"だ。それを知るのは大神と、俺と、あとは親本人とその親友の悪魔くらいか。
ライリーはライ、と言う名前で今からそうだな……何年前だったか……確か、バベルの塔が建つ三百年くらい昔の人間界に生まれたんだったか。
さすがの俺も覚えてない。詳しい数字はさすがにな。

子供の頃のライリーは可愛かったなあ……。年の割に賢くて、自分が何者かは知らなかったんだが無邪気に大神を信じていて、な。
満更じゃなかった風を装って、大神が天使が皆持っている聖なる炎なんかを魂の中心に授けたりしてたくらいにはな。

だがやはり、無理は祟った。
ライリーは六歳頃の体で、突然成長を止めたんだ。
最初は天使に近い人間だからかと俺も思ったんだが、どうも違うようで……。
結局、その頃は殆ど居なかった"神子"として孤児院から教会に引き取られたんだ。
今となって考えれば、まあ……俺が介入すればよかったんだがなあ……。

666 (プロフ) [2017年9月20日 21時] 4番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

俺が生まれた頃、人間は皆生き生きしてた。同じ言葉を話して、神サマを信仰してた。
でもある時神サマに会おうとした。自分達も同じところに登ろうとした。……神サマを貶めようとした。



結果、皆の言葉はバラバラにされた。



俺はそんな皆の中で、何故か言葉がわかった。成長が止まった体には何が何だか解らなかったし、それを教えてくれるような"家族"みたいな存在もなかったから、
俺は皆の通訳をした。

さらに皆は俺を崇め立てた。
誉めてくれたのは嬉しかった。ありがとうと言われたのはとても心地よかった。
でも、よく解らなかった。
説明されたとしても俺の頭も体も六歳児と変わりはなかったし、何より神サマが俺の成長を止めていた。
理解させないようにしていた。
……天使に最も近い人間として、魂を汚されないように。



今なら諦めがつく。
いくら神サマだって、全知全能だって、心があるんだ。人間の皆を作るくらい、不完全な存在なんだ。俺を天使に引き留めるくらい……利己的なんだ。仕方ない。人間とも悪魔とも天使とも似ていて、違う存在だから。
仕方ない。どこまでも仕方ない。



例え俺をあの檻の中に閉じ込めたのが神サマだって言われたとしても、俺は諦めるよ。
仕方ないよ、運命、というか神サマがしたかったことなんだから。

俺は崇め建てられ、奉られ、そして捧げられた。神サマの元に。
俺のためだけに教会が、檻が作られ、俺はそこに入れられた。炎を延々と燃やす寒い寒い石床の上で、俺は永遠にも思える時間をそこで過ごし、教会の下の町に住む人たちを守った"らしい"。
……らしいっていうのは、その教会兼檻にはステンドグラス以外の窓がなかったから。声だけが、俺にそう教えていたから。

『ライ様』
『大神子ライ』
『神の子ライ様』
『街の護り手』

ってな。

666 (プロフ) [2017年9月25日 9時] 5番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

俺は耐えらんなかったんだよなあ……流石に。長い間教会に、檻に、炎に囲まれて、閉じ込められて……生きるのも辛くて。
だから、あの教会が地震で崩れそうになるときも何もしなかった。死ぬに任せたかった。……結局、生き残ったんだけどな。
俺が守ってきたらしい町は壊滅してて、ほんの一握りの子供と大人が居るだけだった。
その頃はもう言葉が同じ人間達どうしで集まってて、通訳を頼まれないのは新鮮だったなあ。
俺はよく解らないなりに助けを求めて、助けられて、他の町に移住した。名前は覚えてないけど、まあかなり住み心地の良い町だったと思う。

俺は今度こそ幸せだった。
俺を引き取ってくれた家の暖かいご飯。近所の皆の優しく、しかし対等な言葉。たまには叱ってくれる。
それが嬉しかった。

そこでの俺はすくすく育った。六歳の体から七歳、八歳と……少しずつな。
俺自身も嬉しかった。難しいことも少しずつ理解していける。自分の名前を理解できる。本、は……高価だから無かったけど、遊ぶことができる。自分で見たものを言葉にできる。絵にできる。表現できる。
楽しかったなあ……。どうしようもないくらいに。

だけどやっぱり、俺は人間じゃないんだと知ってしまった。思い知らされてしまった。

666 (プロフ) [2017年9月25日 10時] 6番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

天魔戦争。
天界の天使と魔界の悪魔との大戦争。
下手すると魔界の勢力が強くなって、天使達の力が弱くなる。
天使も悪魔も、余程の理由がなきゃ皆参加する。しかも、参加しなかったとしても戦争の様子は頭ん中で確認できる。……システムは詳しくは知らない。まあ神サマなら何でもありだって思ってるしな。
ちなみに魔界にはサタンがそれに似せたシステムがあるらしい。まあ俺堕天使じゃないからあんま関係ないんだけど。

俺が生まれてからその日初めて、天魔戦争は勃発した。
理由は確か……あの地震で死んだ人達の魂があまりにも救われないから、だったかな。俺という生贄があったのはある程度の悪魔は知ってたらしい。驚きだな。まあ構わないんだけど。
俺は突然走った声に驚いて、でも周りの皆は無反応だったから混乱した。
声曰く、天魔戦争の正義は天界にあるとかなんとか。よく解らなかったけど戦争をやるのかとかぐるぐる考えて、そいで無視することに決めた。幻聴だろう、ってな。

だけど、困ったことに日に日に天魔戦争は激化していく。俺はその状況に興奮していて、中々寝れなくなっていた。しかもその頃、体は人間のままだったから……寝不足で、俺はひどい事件に巻き込まれたんだ。

666 (プロフ) [2017年10月13日 9時] 7番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

零斗

666 (プロフ) [2017年8月7日 17時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

どこにもいたくなくて、最終的に落ち着いたのがそこだった。
ベッドに潜り込むと悠斗の香りがして、本を開くと優しい声がして、机の前に立つとその姿を思い出した。
そして俺は、何気なく開いたノートに書かれていた内容に、頭を殴られたような衝撃を受けた。

666 (プロフ) [2017年8月27日 18時] 14番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

悠斗がどうしようもないレベルのバカだ、と言うことは解っていた。現にここには赤点ギリギリの答案だってある。
だが……俺を助けるためにと身を呈していたことについて、俺は何も言えなかった。馬鹿だろ、とも、何やってんだよ、とも、……ありがとう、とも。
悠斗はかなり早い段階で、俺への苛めを感知したらしい。だから無茶をして、悪化をそれこそ命懸けで止めていた。俺が殴られないようにと自分を殴らせ、集られないようにと金を差し出し、物を差し出し……おいおい、周りを騙すのもやってたってのはどう言うことなんだ?
……何て内容だ。意味が解らん、この馬鹿は。
俺は確かにトラウマがあるし、苛めだって本来は忌避されるべきものだろう。だが俺は少なくとも悠斗よりは弱くないはずだし、守られるような御大層な人間でもない。
何やってんだよ。
……何やってんだよ、悠斗。
俺に謝れよ、俺に礼を言わせろよ、一発殴らせてやるから一発俺に殴らせろ。
だから、なあ……なんで、『俺の大切な零斗』だなんて書いたのか、教えてくれよ。その文言、消してくれよ。
……じゃないと、涙が止まらないじゃないか。

666 (プロフ) [2017年8月31日 5時] 15番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

俺は生まれて初めて、本気でキレた。理不尽に抗ってやる、なんて生温いレベルじゃない。彼奴らを殺してやるとも、永遠に後悔させてやるとも誓った。
当然だろ? 欲していた温かさを、悠斗を、俺の目の前で奪ったんだからな。
俺が奪われる側を甘んじていたのは、大切なものを傷付けていなかったからだ。お前らの俺にしていたことが、大したことじゃなかったからだ。
だがお前らは俺を傷付けた。悠斗を殺した。……これ以上に罪深いことがあるというのか?
  
「俺の感じた絶望を、貴様らにも味わわせてやる」
 
その決意をすると同時に、俺の中の箍が小さな音を立てて崩れ去った。
 
 
 
俺が先ず、何をしたか。
お前にだって解るな、復讐の下準備さ。
医者に言って診断書を書かせ、教職員を嘘と事実を織り混ぜた話で脅し、悠斗(とついでに俺)の苛めに荷担した奴の家庭状況を噂と実際の情報から集め、最終的に警察沙汰にならないように配慮までした。
奴らにそこまでしてやる義理があるのか、何てことも一瞬考えたが、途中で思考を放棄した。

悠斗を殺した奴らに容赦は要らない、とな。

666 (プロフ) [2017年9月5日 15時] 16番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

そこには当然、俺も含まれてるんだがな。

666 (プロフ) [2017年9月5日 15時] 17番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

……これで終いだ。
別に面白くもなんともない話だろ?
……奴らのその後か? 責任を持つような言動は最後までせんかったな。
知らん。今何をしてるかなど、俺の興味の外だ。
だがまあ幸せではあろうな。あれほどの心的外傷を負った。……全てが全て、生温くなるだろう。死ぬこともないだろうしな。まあ、それら全て俺の興味の外だ。

666 (プロフ) [2017年9月5日 16時] 18番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

東暁

666 (プロフ) [2017年8月3日 21時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

まずは本当なのか親父さんの安否を、残った理性で確認しようとした。……結果は芳しくなかった。少し前から諜報活動の一環で国の外に出ていたから、情報が掴めなかったせいだ。
次に他の部署で親父さんの不調が噂になっているかどうか。…………信じられないことに、諜報以外の部署でも親父さんが死に掛けであるなんていう噂は流れてた。
俺は若かったんだ。噂が流れてるってだけで頭ん中が真っ白になった。……もう止まらなくて、無理に情報をつかんで、そして……親父さんに会いに行ったんだ。

親父さんは、普通に生きてた。
説教されたよ、俺は。久し振りの怒声に、思わず泣いちまったなぁ……それくらい心配で、怖かったんだ。
だが奴らは感動の余韻には……浸らせてくれなかった。



一発の銃弾が親父さんの体を貫いた。飛び散る紅色。一瞬、思考回路は止まって……そして視界は真っ白に染まり直した。
気付いたら俺は主犯の男の頸を握り潰さんばかりに掴んでいて、そして親父さんは俺のその腕を……血を吐きながらも止めていた。
「や、めろ……ひであ、き……」
「なんで止めるんだ、親父……!」
解らなかった、本当に。
ただただ憎くて、殺したくて堪らない……なのに親父さんは俺を止める。
だが親父さんは焦れる俺に、こう言った。
「そいつは……おまえの、ちちおや、だ……ころ、すな……こうかいする、ぞ……っ」
思わず手の力が緩んだ。崩れ落ちた相手も……目を見開いていて。

ちちおや、父親? 俺を棄てた、親……?
親父さんはそして、相手を見た。自分を殺そうとした相手を……慈しむような優しい瞳で。
「おれをにくむ、きもちは……わかる。だが……ゆきなの、おまえの、こだ……こいつは、こいつだけは……みのがして、やれ……」
相手は目を見開いたまま俺を見て、そして名前を呼んだ。東暁なのか、と。疑問と恐れが混じった、小さな声で。
頷くしかなかった。
だから、放心状態のまま頷いた。

親父さんはそれを見届けるとその場に膝をついて……そして俺達に謝り始めた。

666 (プロフ) [2017年8月6日 20時] 7番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

雪奈、という女が居た。
あいつはそりゃもう……良い女だったよ。
桐斗もそうだが俺も惚れた。まあ雪奈が最終的に選んだのは桐斗だったが……とても幸せそうな空気を出す二人を見て、俺は嫉妬は捨てたな。
笑ってくれんなら良いだろう……ってな。

それが壊れたのは雪奈が懐妊した、と周囲に知れた頃だ。

ま、最初は単なる妬みだったんだろうなぁ……。あいつら二人の子が生まれる前に流産させようなんて動きがあった。
そんなんは勿論俺も桐斗も許すはすがなくて……ま、片手で捻り潰してたわけだ。二人とも実力派の中佐だったわけだし、年も30だったしな。

まあなんやかんやで雪奈は無事に出産し、それでいて俺は二人の子供に東暁って名前を付けた。……つまり俺は名付け親って訳だ。
だがなあ……悲劇はそこからだったんだ。



ある日、雪奈は倒れた。当然桐斗は慌てて医者を呼んだが……原因は解らなかった。
俺も驚いて軍の医療書を漁ったが、雪奈の病状に当て嵌まるような病気はなかった。

それからは酷かったな……桐斗は荒れに荒れ、手当たり次第、それこそ敵国たるある国にまで手を伸ばした。
医学の進んでいるっつう奴らの甘言に乗ったんだな……。
馬鹿な奴だ、と桐斗を罵ることはできる。だが、それが何になる? 手段を選ばないだけで桐斗の行動は……人として間違っていなかった。

俺は、桐斗の行動を黙認した。



軍から指令が下った。
雪奈を殺し、裏切り者である桐斗を捕らえよ、と。

666 (プロフ) [2017年8月6日 20時] 8番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

笑っちまうよな……解ってた筈なんだよ、桐斗を放っておいたら何が起こるか、なんてさ。
指令部は俺にその命令を、名誉挽回のチャンスとして下した。
俺はほぼ強制的にその指令に従わなくてはならなくて……桐斗に逃げろと言うことも出来ずに雪奈を……



殺した、この手で。苦しまないように……薬を、飲ませて。



雪奈は俺に謝って、そして許してくれたが……まあ、桐斗が俺の、そして軍のそんな行動を許すはずがなく。
逃げた。
三歳になったばかりの東暁を毛布に包んで、二人で。

666 (プロフ) [2017年8月6日 21時] 9番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

勿論の事みすみす二人を逃がせる筈もなく、だがこれ以上俺は使い物になら無いだろうっつーことで、俺は任務を下ろされた。

悲しくて、一人でふらふら歩いてたんだよ、俺はだから。
冬のあの日、ホントは俺の方が生きる気力がなかったんだ。

でも、薄氷の下から覗く瞳は力強くて、優しくて。……まるで雪奈のようだった。
だから声を掛けた。

『餓鬼、生きる気力があるか?』

666 (プロフ) [2017年8月6日 21時] 10番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

裕也、という男が居た。
その人は僕の母親を殺した人であり、同時に僕を名前付け育てた人であり、そして自分の死を甘んじて受け入れた愚か者である。
軍の内外では冷血無慈悲などと謂われていたが、実際はかの国に騙されて親友との友情と、嘗て愛した女を亡くした……殺した、不器用で盲目な阿保だ。
罵るつもりはない。彼はそれでも僕の養父なのだから。

桐斗、という哀しい男が居た。
彼は僕の実父であり、僕を棄て……義父である祐也を殺し僕に殺され、そして僕の実母である雪奈をとある国の策略から護りきれなかった、一人の弱い男である。
敬う心の持ち合わせはない。
理由はなんであれ、彼は僕の母親と裕也さんを見殺しにしたから。



僕は東暁。
裏切り者の父親である桐斗を殺し、軍の少将で父に殺された裕也に育てられた、少佐。
裏切り者は僕の、俺の手で殺,す。それが桐斗の最後の願いであり、裕也の矜持だったから。
俺は自分を顧みない。それが裕也の、教えだからだ。

666 (プロフ) [2017年8月6日 22時] 11番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

藜兎

666 (プロフ) [2017年5月24日 23時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

俺が生まれたのは、小さな小さな村だった。
古い考え方と風習の強く残る、閉鎖的な風通しの悪い村。
俺はその村出身の父親と、都会から移り住んできた母親の間に生まれた。因みに父親も一度都会に住んでいた人らしい。両親が出会ったのは医学の大学だと聞いている。

俺は生まれつき、瞳が蒼色を宿していた。
俺は生まれつき、力が異常に強かった。
両親はだが、隔世遺伝という事にすぐ気付いて俺をひっそりと育ててくれた。……村の排他的な目から巧い具合に隠して。
だが……それも最初の三年程度で終わりを告げた。俺が動き回れるようになったから。
最初は両親もカラーコンタクトなどで隠そうとしてくれた。だが小さかった俺は意図を汲めず、むくれて膨れて無言で抵抗した。
両親は折れ、そして母親は俺にこう言い聞かせた。
『貴男は優しい子だから大丈夫だと思う。けど……虐められて、排斥されることは殆ど確実なこと。だから、だからこそ……誰も恨んでは駄目よ。優しくなさい。きっと、何時かは解ってくれるから』
父親も母親に頷いて、俺に優しく言い聞かせた。
『俺達はお前を護る。それは約束しよう。だから、辛くなったら何時でも言うんだ。絶対に』

果たして両親は間違っていたのか。
……俺には解らない。

俺が学校に通い始めると同時に、村は酷い不作に襲われた。日照や豪雨、暖冬が続いたせいで。
そして俺は、それの原因として敵視された。両親はそれを科学的に否定しようとしたが、大衆の力には勝つことが出来なかった。
……そして俺は、人身供物……人身御供として殺されることに、生贄にされることに決まった。確か9才の時だったと思う。

『止めなさい! 何でこの子がそんな無意味な事の生贄にされなければならないと言うの!? そんな事をするというなら私を代わりに殺しなさい!!』
『藜兎を生贄にするくらいなら俺を殺してみろ。……それで不作が解消されたら、この子は悪魔の子ではないということだ。……そう信じると誓え』



……結果的に両親は殺され、不作はおさまった。
俺は祖父母の家に両親の遺言で送られ、そして考斗と出会ったんだ。

666 (プロフ) [2017年5月24日 23時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

両親が俺の身代わりに死んで、遺言で祖父母の家に送られて。……八年は何事も無く暮らすことが出来た。
祖父母の家があった土地は、あの村と違って開放的で、進んでいたから。
俺はだから両親のことを想いながら……それなりに暮らしていたんだ。

そしてそれが終わったのは俺が18になる年、高校三年生……考斗が入学してきたあの年からだ。



今でこそ明るくなったが、当時の考斗は酷くなよなよした自信のない青少年だった。
まあ、容姿は良かった。緩くウェーブの掛かった茶褐色の髪に、俺とは違って優しい、琥珀色の瞳。……ヘテロクロミアにしてしまったのは、とても申し訳なく思っている。

問題だったのは、中途半端に優しかったこと。

考斗は家が所謂上流階級の人間で、親父さんも政界の大物。……道具類は大体高級品だし、ブラウスもズボンも毎日新品みたいにぱりっとしている。
ただ馬鹿みたいにへらへらしていて、その上中途半端に優しくて。

嫉まれてた。

最初は物を隠されてた。
上靴から始まって筆箱、筆記用具、教科書、気に入りの本、携帯端末。
その次は無視、陰口。
……机の上に真っ白い菊の花が置かれていたこともあった。流石にその時は俺が考斗に見せないようにと処理したがな。

見ていられなかったから。

俺は結局、見棄てることも見ない振りもすることが出来なかったんだ。
それは卑怯者のする事だ、と決めつけて掛かって。……その選択を誤りだなんて言うつもりは今更無いが、もう少し違う選択はあったのでは無いか、位は考えることもある。

だから、だから考斗を疵付ける羽目にもなったんだから。



ある日、考斗は俺に告白してきた。何時も守ってくれてありがとう、可能ならこの想いを受け取って、応えて欲しいと。
……俺は、半分反射で断った。
『俺が考斗、お前を庇っているのは……好意とか、そう言う類のものから来るものでは無い』
……考斗は解ってました、と少ししてから微笑んだ。
その笑みの理由が解らなくて、俺は首を傾げたが……考斗は何を言うことも無くありがとうございますとだけ告げる。

そして、どこかに向かって去って行ったんだ。俺は家に帰るものだとばかり思って……



そして、あの出来事を未然に防ぐことも出来なかったんだ。

666 (プロフ) [2017年5月28日 9時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

<考斗の独白>





俺は今でも悔やんでる。アカザさんを、藜兎先輩を巻き込んだことを。
確かに俺は右目の視力を失って、尚且つヘテロクロミアになった。それは事実だ。でも俺は藜兎先輩に感謝こそすれ、恨みなんて持った覚えは……一切無い。



『親の七光り』
その頃の俺がよく言われていた言葉だ。
成る程確かに俺は成績が良かったわけでは無い。だが頭が悪かったわけでも無いハズなんだ。
ただ、その頃の俺はどうしようもない弱虫で。……だからただ堪えるしか無かったんだ。
物を隠されたとしても、机の上に菊の花を置かれたとしても……殴られて蹴られて水を掛けられても何をされても!!!!
……それが藜兎先輩に迷惑を掛けないことだと、俺は盲信していたんだ。

あの日までは。

俺は廃工場に呼び出されて、嬲られていた。
そしてぼろぼろになったところで広場に引き摺り出された。
何をされるんだろう、なんて半ば達観して……諦観して放り出されたまま地べたに転がっていたんだ。……そしたら声が聞こえた。大好きなあの人の……藜兎先輩の声が。
『コウヘの虐めを止める代わり、か……俺に何をしろと?』
信じられなかった、信じたくなかった。
何でこんなところに居るんですか、何で僕への虐めを止める代わりとか言ってるんですか、何で、何で何で何で何でなんでなんで!!!!
『俺達のオモチャになれよ? そしたらアイツは見逃してやるさ』

『……成る程、お前らのオモチャか……構わない、その位で良いならな』

やがて聞こえてきたのは殴る音、蹴る音、そして罵倒する声。
楽しそうに、愉しそうにアイツらは嗤ってる。藜兎先輩を僕の代わりに嬲って、遊んでる。僕が先輩を頼ったせいで……先輩に庇って貰ったせいで、先輩を好きになってしまったせいで、先輩と出会ってしまったせいで!!!!

666 (プロフ) [2017年6月1日 9時] 3番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

『れいとせんぱい!!!!』

痛む体を無理に引き刷り起こして、俺はそう叫んでいた。
背後でざわりと揺らぐ空気を無視してでも止めなきゃと思って、俺は後先考えずに飛び出していた。
藜兎先輩が居る場所に出て、そして俺はそこで後頭部を勢い良く殴られた。……藜兎先輩が息を吞む音が、やけにハッキリ聞こえた気がする。
意志に反して崩れ落ちる体。
『なんで……コウ、そんなぼろぼろ……なんだ?』
藜兎先輩の言葉に嗤い始めたアイツらの声が反響して、耳を痛いほど打った。
『そりゃ遊んでるからだよ! あ、どうせなら反応で遊ばせて貰おうかなぁ? お前も俺達のオモチャだからな!』
わざとらしく愉しそうな声で誰かがそう言って、手を叩く。……カチカチカチとカッターの刃を出す音がした。誰かが体を羽交い締めにする。
『止めろ……』
カッターの刃が腕を切り裂く。
そんな中で藜兎先輩の掠れた声だけが響く。
『止めろ……!』
カッターの刃が首筋をなぞっていた。……たらりと垂れた血が、鎖骨からシャツに染みを作る。
『こいつ叫ばないなあ』
『目とかやれば流石に泣くんじゃね?』
『あ、それ良いな』
奴らの声はもう、遠くて。
……迫って来た刃がぼやけるまで、俺はただただ放心していたんだ。そして、

視界が真っ赤に染まる。



『やめろおおおおオオオォオォォォオおォおおぉおォオオおぉお!!!!!!!』
狂ったような、それでいて悲痛な叫び声がしてニブイ音が響き渡ったんだ。
半分にぼやけた世界の中で見えたのは、何人もを殴っている藜兎先輩の姿。何人も殴り、蹴り飛ばして血が出ても骨が折れても構わないように……嗤ってた。
目を見開いた状態で口元を歪めて、そして嗤い声を上げ始めたんだ。鳥肌の立つようなあの、冷たい声を。

『ァは……っあハハはははハハはハハハはははハハハははははは!!!!』



結局藜兎先輩は何人も再起不能にして、俺までも殴る直前で我に返った。その後何度も謝られた。……俺は動揺して何も言えなかったけど。

事件の後俺は親父に頼み込んで、説明して、交渉して……世間に事件のことを広まらないようにした。
藜兎先輩のあの行動は全部、本来俺を守ろうとしたことだったから、マスコミに面白がられるなんて耐えられなかったんだ……。

でも先輩は、俺から一歩距離を置いた。
名前を呼ぶなと言い、俺の渾名を呼んでくれなくなった。……直接目を合わせ無いと言うつもりなのか、伊達眼鏡までかけて。



……哀しいけどね、それが藜兎先輩の、アカザさんなりのけじめだって言うなら……俺は何も言えないかな。

666 (プロフ) [2017年6月1日 9時] 4番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

鈴音

666 (プロフ) [2017年5月24日 23時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

僕は愛された覚えが殆どない。
褒められはしたよ、確かに。でも僕は大人から見る奇行が多かったからね。
成績はいつも一番だった。
レポートも何時だってS+、クイズだって雑学問題だって10秒立たずに答えを出す。……そうだね、よく考えれば僕はやりすぎだったんだろうね。
褒められて、誉められて、賞められて、ほめられて。
まあ、中学校当時は何も考えて無くって取り敢えず、興味を満たせれば良いかなあって思ってた。
正直今出も思ってるけどね。……あはは、他人には口が裂けても言えないなあ。

ま、そんなんだから……僕は愛という物を知らない。もちろん言葉は知ってる。だけどそれはカタチだけ。どんな行為が愛に準ずるもので、どんな言葉が愛を内包するもので、どんな理由が在って他人を愛する対象として見られるのか、どんな働きを脳がして相手を愛するのか……全く以て解らないんだ、僕は。
感情に関しても似たような感じかな。
例えば僕は、哀しいという感情を余り……と言うか殆ど理解できていない。
それを感じた事が殆どないからだとは思うけどね。何時も自己完結して、解決するようにしてるから。
それが悪いだなんて思ったことも無いし言われたことも無い。



……咎める人も居ないんだ、当然だよね。

666 (プロフ) [2017年5月24日 23時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

鋼稀

666 (プロフ) [2017年3月31日 12時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

そもそもの始まりは、赤羽が殺されて俺があの屑どもをぶち殺したところから。勿論世間の誰も……弟達でさえ知らないことだ。
んで、身売りを始めたのは公園でいきなりレ イプされて金を受け取ったから。俺の顔が男にも受けることをその時初めて知った。金額が良かったからな、そのままずるずると……その顧客は今でも常連だ。最近弟達のこと嗅ぎ付けそうで恐ろしいが、払いは良いからなあ、縁は切れそうに無い。
まあそんなこんなで体を汚している俺っていうのは最低な存在なわけで、自分で選んだとはいえ時偶自決したくなることもあるわけだ。
綺麗になりたいだなんて大それた事は望まない。せめて、全てをやり直せればなあとは思う。強くてニューゲームってやつを出来れば、俺は赤羽を護りきるし、屑どもを殺しはしないまま普通に生きていったと思うよ。
金欲しさに身売りなんかもしない。弟達のためだなんてのは言い訳だからな。……解ってても止めない今のこの俺は、つまりは最低な人間だって訳なんだけど。
……苛つくけど、俺が選んでしまった道はもう変えることが出来ないんだよ。

666 (プロフ) [2017年3月31日 13時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

∝∝∝
俺の顔が女受けの良いことは、知っていた。
だが、男受けの良いことまでは……流石に知らなかった。



屑で在る両親を殺して盗んだ金が底を突きかけたとある夜、俺は独り公園に来ていた。理由はない。ただ弟達の顔を見るのが辛くて……そうした。
そしたらいきなり、何の前触れもなく後ろから肩を掴まれたんだ。

その当時俺は未だ14才。両親以外にも屑が居るだなんてことは知らなくて。

金が欲しくないかと問われた俺は、勿論欲しいと答えたんだ。下卑た笑みを浮かべた男は、体を買わせて欲しいと言ってきたんだ。

『俺の労働力が欲しいのか?』
『まあ、考えようによってはそうだね。……それで、答えは?』

断るわけもなかった。
幾ら出すんだとだけ聞いて、返ってきた5万という言葉に目を見開く。断る理由もないとすぐ頷いて、手を引かれるまま男の家まで向かったんだ。

666 (プロフ) [2017年5月7日 22時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

「先ずはシャワー、浴びようか」
服は私が用意したものを着なさいと言われて、先程言われた『男の言うこと全てに従う』という条件通り素直に頷いた。

男の家はやけに広くて、風呂場も冗談じゃない程デカかった。俺は半分放心状態のまま体を綺麗に洗って、用意されていた趣味の悪い真っ黒なゴスロリ服に腕を通す。
あの男は女装趣味なのか?
背中や胸に入ったスリットがやけに体にあっていて、物凄く居心地を悪くした。

「着替えたけど……これで良いのか?」
嫌に短いスカートを手で押さえながらリビングに戻って、俺はなんとなく首を傾げながらそう言った。
男は俺のその姿を見ると、何処か気持ちの悪い満面の笑みを浮かべて頷く。そしてピンク色の液体の入ったコップを俺に差し出し、飲みなさいと言った。やけに甘い匂いがして、一瞬躊躇う。
「なに、毒ではないよ? とてもイイモノだ」
男が催促するように言うから、俺は仕方なしにそれを飲み込んだ。
……空になったコップを男に手渡すと、俺は寝室に連れて行かれる。なんだ?
「さて、じゃあ先ずは私との約束を覚えてるね?」
「?」
何故そんなことを聞くんだ?
俺は不思議になって、でも頷く。念のためにその言葉を復唱した。
「俺があんたの言葉に何を思っても、全てその通りに従う……だろ?」
すると男はにんまりと笑い、俺をベッドに押し倒した。……視界が揺れて、思わず身を強張らせる。
男はそして、俺に嫌がる事を禁止した。これからすることに一度嫌と言えば、更に嫌に為ることをすると言って。

「ん!?」
いきなり、スカートの中に手を入れられた。恥羞と驚きから顔が赤く染まる。
俺は少し冷たく感じる男の手に僅かに可笑しな感覚を覚えながら、言われた通り嫌とは言わないで居た。
男の手は、何が楽しいのかさわさわと俺の太股を撫で回す。じんわりと、男に触られたところが熱くなるのを俺は感じ始めていた。
「顔が赤いね?」
耳元でそんな事を囁かれて、更に俺の体は火照っていく。なんだ、この意味の解らない感覚は?
「ほら……段々気持ち良くなって来たよね」
……気持ち良い、なのか? これは。
段々と火照るこの体が求めているのは、更に触れられること。少し冷たい程度の男の手が気持ち良いのは確かだが……よく解らない。元々の気質のせいもあるのかな。
「わ、からない……」
……だが、俺の声は上擦っていた。
妙に鼻に掛かる声。何処か甘いような、そして堪えるような。
何だこれ、何だこれ?
「ま、ハジメテだもんね。それもそうか」
そう言って男は俺の首筋に唇を寄せた。
湿ったような感覚は初めてで、吸われた瞬間、驚きの余り男の服の端を掴む。
……耳元で、男が笑みを漏らす音が聞こえた。

「あ、ひ……っ、なにこ、れ……っ!」
熱い、熱い……っ、体が熱い、男に触れられた傍からどんどん火照ってく。
男は下卑た笑みのまま俺の下着に手を入れて、何だかよく解らないまま反応してる俺のそれを捏ねくり回していた。
っ、触られる度に体が跳ねる。
「気持ち良いだろう?」
言われるまま、恥ずかしいのだけれど首を縦に振る。
すると男は俺の孔に指を挿れてきた。汚い、とは思ったけれど抵抗する力なんてもうないから……男の体に縋り付いて、喘ぐ。
気持ち良い、気持ち良いけど酷い不快感は拭えない。男なのに、男同士なのに……何なんだよこれ、意味解らないだろ。
何時の間にか俺の目からは涙が零れてて、泣いてた。……俺は何が哀しいんだ?
ずるっと指が抜かれて、何時の間にか凄い質量の熱を押し付けられた。な、んだこれ……?
「ほら、力を抜いて……」
それは何だ、これは、まさか嫌だ、止めろ可笑しいだろ……っ!?
「ぁ、あぁあああっ、ひ、ぁ……っ!」
ずぐずぐとソレが俺の体の中に入ってきて……如何しようも無いような快感に襲われる。不快感が体を蝕んで、涙が節度を知らずに溢れていく。
「気持ち良いだろう?」
男の甘い声に悪態を吐きたい衝動を必死で抑えて、俺は首を縦に振る。



……そしてその夜から俺は、身を売るという行為を覚えてしまった。

666 (プロフ) [2017年5月8日 16時] 3番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

幸葵

666 (プロフ) [2017年3月31日 8時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

ヤンデレ、メンヘラ、と言うのが俺に最も上手く当てはまる言葉だとは思う。
正確にはパラフィリア。異常性愛。
……まあ現実的には受け入れたくない言葉であるわけだけれども、事実であるのだから理性の上では認めざるを得ないわけだ。なんと言っても俺は人を殺したことがある。
いやまあ正確には未遂なのだけれども、殺人の未遂であるから……笑うことだってできない。俺の犯した罪というのは、そんな軽い代物ではない。
それに、そのせいで殺し掛けた相手は人間関係というものに疑問を抱いてしまったらしくて。疑心暗鬼になって俺は愚か周りの人間全てを敵視して、そして苦しんでしまったらしい。らしいというのは、俺はその頃にはもう警察やら精神病院やらを転々としていて、人伝え風の噂……そんなものでしか相手の安否やら現在状況やらを確認する事が出来なかったから。
今は教師という職業に就いていることもあって、もうそんなことはしていないが……その相手のことは、実は未だ忘れられていない。
まあしつこいだろうなあとは理性の上では考えているし認めている。
……問題は、それを受け入れられない本能的な部分だ。
俺の困った癖の中に自傷癖という物がある。読んで字の如く自分の体を傷付ける、何て言う癖だ。これは本能を抑え始めた頃に出来た癖で、まあ副作用的な物だろうとは思っている。
これは先ずタイミングが読めない。読める気がしない。
大まかに分類すると、この癖が出て来るのは俺の異常性愛の部分……根本的なところが疼くときと、自己嫌悪が疼くときだ。どうしても抑えきれないときに意識が飛んで、俺の体には傷が付いている。
全く困ったことだ。周りからは仰天される上に積み上げてきた物が一気に無くなってしまうから。
唯でさえ前歴が酷い物の上、自傷癖付きとは如何な物か……。全く、自分の事ではあるが困ったものだ。

666 (プロフ) [2017年3月31日 8時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

彼を殺し掛けた後まで俺が生きているのは、ただの惰性のようなものだ。
母さんは俺が事件を起こした後も変わらずに接して、それでいて生きろと言ってくれた。父さんは事件なんて関係ないと言ってくれた。二人の為に生きて居る、と言うのもあながち間違いじゃ無いが……。
だがやはり、俺が今まで生きて居るのは惰性のようなものだと思っている。



俺の通う大学の、小さな講義室。
とりとめもない事を考えて、彼のことと父さんや母さんの事を考えて、そして教師が話すことを一々ノートに取っていた。
……ただただ、詰まらないと思う。
彼の居ない生活は何処までも単調で、それでいて虚しいものだ。
彼の声を想う。
俺の名前を呼ぶ、あの彼の声を。……懐かしい。懐かしくて堪らない。

俺はあの当時どうしようもないほど自己中心的で、傲慢で……そして弱かった。
今思えば意味が解らない。
何故彼が俺を理解してくれると考えたんだろうか。
何故彼が俺の気持ちを受け止めてくれると考えたんだろうか。
何故、何故……彼が、俺を好いてくれているなどと、考えたんだろうか?

……思考がループし始める。気付けば世界は暗転していて、俺の意識だけを置いてけぼりにして進んでいくんだ。そして俺の体は、俺の物では無くなる。



夢が覚めたような心地。
ジクリと音を立てて痛む手首と、喧噪を遠くに聞いていた。
俺は息を吐き出して手元を見る。……ノートが血で汚れていた。だがまあ表紙だけ。問題はやはり、このカッターだ。
このカッターはずっと、というか何時の間にか自傷用になっていて、これでもう……ウン十何回目になる。
俺自身は構わない。問題はこれを見られることだ。……喧噪は遠い。今の内に隠れてしまおう。

立ち上がって辺りを見回す。……どうやらここは何時もの空の講義室のようだ。
面倒くさい。
ノートを綺麗な方の手で抱えて、汚れた手の方はハンカチで包む。……幸運なことに、俺のサークルは芸術系だ。幾らでも言い訳のしようはある。



……そう、癖が付いたのはこの頃からだ。
痛みと理性は同じ物で、幸せと本能は遠いものだと考えてしまって、自傷癖を止める気がなかったから。
何故、だろう。
答えは無い。……当たり前のことだから、俺はまた、諦める日々を繰り返す。

666 (プロフ) [2017年5月22日 10時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]
(C) COMMU