忌まれ子

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零斗

666 (プロフ) [2017年8月7日 17時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

俺の昔話だぁ?
……面白いもんでも、マトモなもんでもねぇって常々言ってんのによ

666 (プロフ) [2017年8月7日 17時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

俺は二歳頃の時に棄てられた。あの糞みたいな孤児院の前にだ。
そのせいで親とか、人間とか……大嫌いだ。信じる気にもならん。まあ一番嫌いなのは無力で無知な自分なんだが、そこら辺は後回しにする。

今は、お前が知りたがった俺の昔話……今までの経緯を教えてやるよ。

666 (プロフ) [2017年8月7日 17時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「……また、死んだな」
どちゃり、なんて凡そ人間の体が出さないような音を立てて、俺の弟分の最後の一人が死んだ。
……生きてるのが不思議なくらいの地獄の中で、俺らは身を寄せあって生きてきた。だけど、もう俺の家族は、兄貴分や妹分達は……居ない。死んだんだ。

「これで何人目だ? 一体、何時になったら俺は死ぬんだ……」

俺が庇っていたガキどもは死んだ。だから弱い奴──自分自身──は嫌いなんだ。手の届かないところで勝手に死んでいく。
いくら泥水啜っても、いくら甚振られて火傷塗れになっても、血を流しても骨が折れても声が出なくなっても……絶望するな、と俺は言った。……無理な注文なのは勿論、解ってた。だが仕方ない。それが生きる術だからだ。

まあ流石の俺も泥食わされて鞭打たれたときはヤバかった。ああ後、目隠しされた状態で意味の解らんヤク打たれたり体を焼かれたときは……発狂するかと思ったな。まあ今はそんなんにも慣れたが。

一体全体あいつらは何がしたいんだ?
いつもいつも思うこと。なんの解決にもならない思考回路。
……俺は生きなきゃならん。
呪詛のように俺を絡めて離さない言葉……生きてほしいという願い。呪いであり呪いである……嫌な言葉だ。
何人もが俺に言ったその言葉は、頸を掴もうとする度に俺自身の手を引き留める。

……シニタイ、シニタイ、シニタイ。イタイ、イタイ、イタイ。
モウヤダ、シニタイヨ。

「るさい、な……未だ、ほんとの地獄も……見てない、くせに」
あぁ……痛い、痛い。
心なんてとっくの昔に壊れて錆び付いた。ああ……なのに俺は死なない。救いもない世界で、未だ生きている。

666 (プロフ) [2017年8月7日 17時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「……か、じ?」
半分諦め掛けた頃のこと。孤児院は大きな火災に見舞われた。大人達は俺達子供……従順な方向性に壊れたやつら以外の反抗的な……を見棄て、さっさと逃げやがった。
俺はそして、折檻室の扉を蹴破って後悔した。なんであいつらの一人も殺せなかったんだろう、ってな。

因みに後から知ったことだったが、俺が孤児院だと言われていたそこは、裏社会に半分足を突っ込んだ──例えば人身売買や武器・薬品の実験など──場所だったらしい。
まあ、笑っちまう話だけどな。

そして俺は、焼け死ぬ前に逃げたした。
あの地獄から、そして兄弟達を弔うために。

666 (プロフ) [2017年8月7日 22時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

あの場所から逃げ出した俺を待っていたのは、絶対に知ることはないと考えていた“街”の風景だった。
曇ってはいたが温かい気温の中……俺は泣いた。初めて自分から泣きたい、と思って泣いた。
痛かった体を抱え込んで、痛い胸を押さえて。
空に向かって唾を吐いてやりたい気分になって、兄弟分達に報告したい気分になって……そして、死にたくなった。痛い、痛い、全部が痛い。痛くて堪らない。全部棄てて死んでしまいたい。

そうして生きる努力を放棄した俺を、あいつはいつの間にか見付けていたんだ。

666 (プロフ) [2017年8月8日 8時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「……ぁんだ、よ」
三日ほど何も食べずに踞っていたら、ふと影が顔にかかった。生きる努力を放棄していたが、痛いのはごめんで。
邪魔されるようなら何処かに場所を移すかな、なんてぼんやり考えながら俺は影を、あいつを……ぼんやり、ぼんやりと見詰めていた。
「ねぇ」
ふと、あいつは俺の目線に合わせるように膝をついた。突然のことに身を強張らせるが、あいつは構わずに口を開いた。
「名前はなぁに? 僕は……悠斗」
名前、名前?
俺は一瞬、その単語の意味が解らなかった。名前なんて呼んでくれる奴が、俺には最近うん年間……居なかったからだ。
だが答えるべきなのはわかっていて、仕方なく記憶の底から自分の名前を引き摺り出したんだ。
「……れい、と。ゼロの、斗」

666 (プロフ) [2017年8月8日 8時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

悠斗は信じられないことに、俺を引き取った。世間であの施設が火事になったっつーことが知られていたから、比較的簡単に申請は通ったらしい。
そいで俺は橘の名字と、家と、悠斗っつー兄弟と、優しい両親を手に入れた。
衣食住も保証されて、部屋も貰って、教育までされて。……恐かった。意味がわからず恐かった。

解んないだろうな、普通に生まれて育ってきたお前には。
まあ簡単に言えば、俺の中の常識は一日にしてがらっと180゚……変わっちまったんだ。だから、どうしようもなく恐かった。

悠斗は警戒心むき出しの俺を風呂に入れ、服を着させ、飯を食わせ、そしてふかふかのベッドに寝かせて、……家族だと呼んだ。俺と年は大差ないのに弟、何て呼んで。
……今思えば、あの時にありがとうの一言くらい言えば良かったんだがな。

666 (プロフ) [2017年8月12日 14時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

俺は悠斗の従弟、として近くの中学校に通うことになった。籍を入れたからと言って、容姿が似る訳でも無いからな。
同じ名字で従弟という設定の俺達は性格が正反対でな……よく周りから似てないなどと言われたもんだ。その当時はそういう言葉が俺を、俺自身を否定している様にしか聞こえんでな。相当辛くてよく逃げとった。授業は基本出ていたが、休み時間にゃ屋上若しくはトイレの方に、な。
今の俺からは考えられんか? だが事実さな。

666 (プロフ) [2017年8月22日 10時] 8番目の返信 PCから [違反報告]

さあて、気の弱い俺は当然のことながらイジメの標的となった。
まあ昔から痛め付けられてきたお陰で死ぬようなことはなかったし、程好く相手に優越感を抱かせる方法も、俺は知っていた。だからまあ、やはり俺は何も出来ずに虐げられる側なのだと無理矢理納得することにした。
漸く得た寝床まで無くしたら最悪だと思ったしな。
……ただ、毎日のように心配してくる悠斗と義両親たちからの言葉にはなぜか妙な暖かみを感じていた。
それも、段々と失うのが怖くなっていき……いつしか俺はさらに臆病になっていった。



そしてあの事件は、俺が臆病に何もかもを知ろうとしなかったからこそ起こった。

666 (プロフ) [2017年8月27日 17時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

今となっては何年前の何月何日なんだということは覚えとらんが、俺は遊びと称して休日に、とある廃工場の屋上へと呼び出された。
まあ何かしら命の危うくなるようなことをさせられるだろうとすぐに解ったから、俺は諦め半分で誰にも行き先を告げず家を出た。どこに行くんだと言う悠斗の声を無視して、な。
誰かを巻き込むと、こういうことは録な結果にならん。長い間で身に染みた常識で武装し、俺は早足に廃工場へ向かった。まあ、ちゃんとその時後ろに気を使えばよかったんだよな。あいつ……悠斗はどうやら感付いて俺の後を着いてってたらしいから。
廃工場の屋上に上がると果たして、奴等は居た。皆一様に気持ちの悪いにやけた表情をし、手に手にカッターやら紐やら水の入ったボトルやら……俺が呆れるような物を持っておった。
それでいて案の定俺を屋上の縁に座らせ、後ろから色んな事──カッターで切りつける、紐で頸を絞める、頭から生温い水を掛けるetc.──をしやがって。まあ反応するのも馬鹿らしいから黙ってたら、今度は不満そうに俺を立たせて……そして、俺に目隠しをした。
効果はてきめんだったな。



俺にとってあの孤児院での生活はトラウマだ。だからある一定のキャパシティを越えると……俺は、過去の恐怖に囚われる。
あの際水を掛けられたり頸を絞められたことが俺のキャパをそれなりに使っちまってたらしく、視界がいきなり黒に染まったことで俺はトラウマが発動した。

666 (プロフ) [2017年8月27日 17時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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