青天とぼくらのタイムカプセル

「色々調べてみたんですが、植樹って大変なんですね。お花とは全く違う……大切に育てたら、俺より大きくなるんだもんなあ……」
28日、お花の刺繍が施された肩掛け布バッグを提げてやって来た綾宵。バッグの中には樹木に関する資料の本と手帳、数組の軍手が入っている。

フラワーショップを経営する彼は、普段扱っている花と同じ植物である樹木とはいえ、育てたことも植えたこともなかった。そのため、植樹計画を耳にした彼は興味を持つと同時に、独自に勉強を始めた。参考になる本を読み、花屋の経験のある人物としての着眼点で独自の考えも載せながら、一帖の手帳にクロマツの育て方のススメをまとめたようだ。色ペンで飾られたそれは読みやすく、所々にあるお花の落書きも愛嬌がある。誰かの為になれば良いな、と取り敢えず持参した。
軍手も彼なりの心遣い。俺もよく忘れ物しちゃうから、という理由で店の余りの軍手を持って来たようだ。

IDee (プロフ) [2023年5月27日 17時] 1番目の返信 [違反報告・ブロック]

植物は声をかけると応えてくれるんですよ。
彼は、元気に育ってね、と土をぽんぽんと叩きながらにこやかに話しかけだす。
人と人が日々出会い言葉を重ね仲を深めていくように、人と植物もそれと変わらずコミュニケーションが大事なのだと彼は説く。手をかけて育てた分、美しい姿を見せてくれるのだとも言った。
さながらこどものようである。
俺の手のひらにのった君が、俺の背を優に越して悠然と枝を広げるその姿を見られる日は、いつになるのかな。

IDee (プロフ) [2023年5月27日 17時] 2番目の返信 [違反報告・ブロック]

「いつか、皆が病から解き放たれ八雲街を離れた時……立派に育ったクロマツが、私たちがこの地で生きていたことの証になればいい」

来たる28日、集まった参加者たちの顔を順に見回しながら彼はそんな言葉を口にする。そう、これはあなたたちなりのタイムカプセルなのだ。あなたがこの島に連れてきた想いや、今後この島で過ごすことになる時を、その年輪に閉じ込めるための。
誰がどんな気持ちで蒔いた種も、皆同じように空の下で光と雨を浴びて成長する。育ちゆく木々の目には、この校庭の上に広がる空模様しか映らないのだから。──やわらかな日差しに照らされながら、いつかあなたが大切な人とこのクロマツの前で笑い合える日が訪れますように。

水有 (プロフ) [2023年5月1日 4時] 1番目の返信 [違反報告・ブロック]

皆が種を蒔き終えた後は、参加者全員で集まって記念写真を撮影することだろう。その撮影者として真っ先に立候補する。
誰かに「撮っているだけでなく、朋伍さんも写真に写っておこう」と誘われた場合、渋々頷いて他者に撮影を任せる。しかし、後から全体写真を見返すと、写っている彼はどれも頭の部分だけがちょうどブレている。どうして。
撮り直そうと思ってももう遅い。どれだけカメラを向けても、彼が快く被写体になってくれることはないだろう。

水有 (プロフ) [2023年5月1日 4時] 2番目の返信 [違反報告・ブロック]