アバンギャルド・マボのボード

アバンギャルド・マボのプロフィール | 発言 (アバンギャルド・マボの最後の書き込み: 「( ・´ー・`)どや...」 @アバンギャルド・マボのボード [2023年5月4日 13時] )

メッセージ一覧

〜芥川と足立、四季。〜
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千代助が外に出た瞬間の様子を見ていると、季節がわかるようになっている。動物は季節が変われば毛皮の特性を変えていくが、千代もそのようにしてコロコロ変わるのである。
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皐月の頃は「あっちぃなぁ」、
梅雨になると心底嫌そうに「ジメジメしてんなぁ」と呻く。雨に濡れると異能が使い辛くなるらしい。……そうか折り紙か、それはそうだ。
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夏頃になるともっと嫌な顔をして
「あっちぃんだよバカ!!」と大声で太陽のある方角に向かって叫ぶこともある。それでも生き生きとしている辺り、夏の暑さは好ましいものであるらしい。
それから度々「パピコ食べようぜ〜」と言いながら、勝手に片方のパピコを僕に押し付けるのがこの季節だ。
訛って「ずっこしねぇ?」と言うのだが、それはどうやら「半分ずっこ」の略称らしい。何故だろう。子供かお前はと言いたくなる。
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そろそろ秋になる頃になれば「風がするするしてきた」と落ち着いた顔で言う。
葉が色づき一面が賑やかになってくると、それはもう嬉しそうに
「あれまぁ 葉っぱもお化粧したのかぃ」とケラケラ笑う。きっと誕生日が近いというのもあって、愉快な心持ちでいられるのだろう。
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そうして木枯らしが吹く季節になると、散りゆく葉っぱを片目に眺めながら、マフラーに顔を埋めて 冬毛のスズメのように膨れた様子で てくてく歩く。歩幅が異様に狭くなるから余計にスズメのようである。
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冬。
家から出ようとしない。
無理に連れ出すと死んだ顔で僕の後をついてくる。酷い時は冷たい手を僕の首やら手に引っ付けて 暖をとる。外套にすっぽり埋まって震えていることもある。正直 歩き辛くてしょうがない。
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この季節はあまり活動的でないが、温かいココアを中原さんから頂いた折には 滅多にそんな顔で笑わないような風に、とても嬉しそうに微笑む。
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新年になると打って変わって、初詣やら何やらを真剣に執り行うと大騒ぎする。クリスマス、バレンタインだとかいう催し事については「リア充爆破計画」なるものを立てながら一日中陰気なオーラを出す。夏場の元気はどうした。
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そうして、春。
子供らが新しく学校に通い始めるこの季節、千代は賑やかに走っていく子供を眺めて 寂しそうにしている。
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殺しは、あれのやりたいことではない。あの子供らが走っていく先、学校の教壇に立つことが、ずっと持っている夢だ。それでも尚、「人殺しに教師は無理だよ」と笑いながらいう。
目の前で咲く桜が見えないように、孤独な顔で笑う。

アバンギャルド・マボ (プロフ) [2018年7月22日 9時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

桜が散り、ようやく葉が青くなってきた皐月の頃に、いつも通りの千代に戻る。
「あっちぃなぁ」というつぶやきを聞くと、何故だか僕は腹がたつ。
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いっそのこと、殺しへの罪悪感など捨ててしまえれば良いものを。
これでは一生花見ができぬではないか、と。
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これまで色々と季節の催し事はやってきたが、ついぞ花見だけはせずに今に至る。
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アバンギャルド・マボ (プロフ) [2018年7月22日 9時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]
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