花*のボード

花*のプロフィール | 発言 (花*の最後の書き込み: 「「♩、」 「?、どう...」 @花*のボード [2017年6月7日 19時] )

メッセージ一覧

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花* (プロフ) [2014年10月12日 22時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

その日は怖いくらいの大雨だった。
「可哀想よねぇ。両親が自殺なんて」
「何でも、会社が倒産して多額の借金を背負ってしまったらしいわよ」
その日は葬式で皆、真っ黒で。
「でもあの二人、誰が引き取るの?」
「やっぱり、施設送りじゃないのかしら」
その日は自然と涙は出てこなくて。
ただ、光を失っていた。
「……君達はこれから、私達の家で住むといい」
「……これから、私達の家族として」
光を失った私たちを拾ってくれたのは、叔母夫婦だった。

花* (プロフ) [2014年10月12日 23時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

ガタンッ
『……ん、』
「お、起きたか!
ここが今日からお前達の家だぞ!」
外国の家みたいに肌色の煉瓦が太陽に反射して、キラキラしていた。
「あっ、これからあなた達のお姉ちゃんになる子を紹介しないとねっ」
パタパタとリビングへ行く叔母さん。
…お姉ちゃん?
私たち以外にもいるんだ。
『…………っ…』
『………大丈夫。お姉ちゃんはここにいる』
ただでさえ、弟は幼いうちに両親を亡くした。
人間に恐怖心を抱くのも仕方がない。
『ええええええ!!!
私、お姉ちゃんになるの!!??』
…この瞬間からかな。
私たちが、不幸になるのは。

花* (プロフ) [2014年10月12日 23時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

『うぁっ、あたた…
…………うわぁあっ!可愛い!』
『っ……ど、うも…』
キラキラと透き通った綺麗なオレンジの目。
その人は、皆を惹き付ける能力があるのかな。
すぐに目を奪われてしまう。

花* (プロフ) [2014年10月12日 23時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

『えーと…このクルンとした髪型の子が蘭馬ちゃん?
で、後ろのサラサラのショートカットの子が流馬くん?』
「そうよ。仲良くしてあげてね?」
『はーい!
よろしくね!私の名前は---未来!』
『……よろしく…お願いします……』
この人に、不幸なんて訪れてほしくなかった。
なんで、あの時助けてあげられなかったのか。
巻き沿いなんて…したくなかったのに。

花* (プロフ) [2014年10月13日 8時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

『じゃじゃーん!見てみて!この三段ベッド!
お母さん達にお願いして買ってもらったの!』
『……すごい…』
ポツリと弟が呟いた。
でも、確かにすごい。
『ふふっ!でしょでしょ?
流馬は一番下だけどね~』
『えぇっ……ぼ、僕一番上がいいっ
蘭馬ちゃんが一番下なのっ!』
『ムッ…私も一番上がいいです~!』
『駄目~』
お姉ちゃんの笑顔によってか、私達姉弟はすぐに心を開けた

花* (プロフ) [2014年10月13日 8時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

--
この家に来て五年が経った
僕は九歳。
蘭馬ちゃん……いや、姉ちゃんは十歳。
未来姉は十五歳で、高校一年生になった。
僕は小学校で割りと明るくやっていけていると思う。
皆、僕を囲んで笑顔になるし。
いつも、僕と一緒にいてくれる友達もいるし。
五年前の不幸なんて嘘みたいに今は幸せだった。
ただ、姉ちゃんは警戒心が高いのか、いつも敬語で通していた。
姉ちゃんの友達はそれを不愉快には思ってないけど、疑問には思っていたみたい。
姉ちゃん自身、いつも僕を守っていたからいつの間にか、警戒心が高くなっちゃったみたい。

花* (プロフ) [2014年10月14日 13時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

放課後。
雨が降っていた。
こういう日は、あの日を思い出してしまうから嫌なんだよなぁ。
「じゃあな流馬!また明日っ」
『うん、じゃあねっ!』
でも、それを掻き消すように僕は笑顔を作って、さよならをするんだ。
『流馬ーっ』
『あっ、姉ちゃん!
傘忘れたから一緒に帰ろっ』
『全く…仕方ないなぁ……』
呆れながらも、姉ちゃんのその優しい笑顔が僕は大好きで。
-----
『あ、赤信号。
ツイてないねぇ…』
『まぁまぁ。じっくり待とう?ね?』
『……うん』
姉ちゃんは、心を明るくしてくれる人で。
未来姉は、それ以上に心が温かくしてくれる人で。
『…………ん?あれ、未来姉だっ!』
『……あっ!未来お姉ちゃんっ』
この瞬間が、僕たち姉弟の未来姉を見た、
最期だった。

花* (プロフ) [2014年10月14日 13時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

『………蘭馬、流馬………
――――――ごめんね。』
『……っえ?』
キキィィィィィッッ
--------
『………自殺だってさ。
飛び出したんだって。』
『……何で、未来お姉ちゃん…。』
『僕たちのせいかな。
僕たちが何かしたから……?』
『……私達……何したんだろう?』
『………未来お姉ちゃんを苦しめちゃったこと。』
『………うぁっ……なんでっ、
何でっ………未来姉っ……』
苦しくて。
呼吸ができなくて。
僕達、また光を失っちゃったみたい。

花* (プロフ) [2014年10月14日 13時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]

「………蘭馬ちゃん、流馬くん。」
「すまない。もう、君達を育てることは出来ない。
君達は悪くない………だけど、君達を見ると…
未来を思い出してしまうんだっ……」
「ごめんなさいっ…貴方達は悪くないのっ……
私達が……ただ、弱いから………」
『叔母さん…叔父さん………。
いいですよ。わかってますから…』
『私達、施設に戻ります。
五年間お世話になりました!』
………姉ちゃんが叔母さん達に向けた最後の笑顔は、とても無邪気で愛らしくて、
涙が止まらなかった。
---
「怖いわよねぇ。
両親が自殺。義理姉も自殺だなんて。」
「まるで、死神ね。
死神姉弟。」

花* (プロフ) [2014年10月14日 13時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

"クスクス"
"やだー、怖いww"
"死神…姉弟wとかww"
あの日から一週間、僕らは独りぼっちに戻ってしまった。
そして、"死神"扱いをされるようにもなった。
でも、そんなの、どうでもいいんだ。
僕は死神でもいいよ。
でも、姉ちゃんは、姉ちゃんだけには、何もしないで。
僕の、願い。
9歳の僕の願いなんだ。

花* (プロフ) [2014年10月19日 20時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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