花*のボード
メッセージ一覧
高校の校門の前で写真を撮り、私と咲希はクラスを確認していた。
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「……あー、あった!
美羽、私Aだったよ!1-A!」
「嘘、私C...。離れちゃった…。」
「あちゃー…。
…ん?ちょ、Cって佐藤いるじゃん!」
「え"っ。」
佐藤春翔。
中学が同じで私と佐藤は3年間クラスが一緒だったのだ。
あいつも同じ高校受けてたなんて…。
「よかったね〜美羽!これで4年連続だねっ。」
あいつとは男子の中でも結構話す方で、いつも話してた。
まぁ、いっつもからかってきたり、バカにしてきてたけど…。
でも本当は優しくて、とてもいい人なのだ。
…って、なんでこんなこと説明してるの私。
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「…嘘でしょ」
座席表を確認してみると、私は後ろから2番目で、佐藤は通路を挟んで左斜め前。
まさかこんな近くになるとは…。
「あ、楠木じゃん。
また同じクラス、よろしくー。」
「う"…授業中とか邪魔しないでね。」
「しないわっ。
そっちこそー、俺に見惚れないで下さいね。」
って、ジト目でこっちを見てくる佐藤。
はっ、そんなことしないし!
でも、佐藤とこうやってまた話せるって思うと少し嬉しくて。
佐藤の笑った顔、また見れるんだ。
なぜか、胸が高鳴った。


入学式が終わった。
家族は先に帰ってもらって、咲希と少し寄り道したりして話しながら帰っていた。
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「あははっ、やっぱり2人とも仲良いねぇ〜」
なんてニコニコ話す咲希は、少し私と佐藤の関係をイジってくる。
しかし、私と佐藤は所謂カレカノってやつではなく、フツーにただの友達なのだ。
しかし咲希は、
「ホント、どっちも鈍感っていうか。
いや、これは美羽が鈍感なのかな?」
と言ってくる。
だからそんなんじゃないってば!
佐藤は、なんていうんだろうか、気を許せるのだ。
本当に、ただそれだけなのに…。
「もー、佐藤に迷惑かかっちゃうから!
大体、佐藤は好きな人いるでしょ。
誤解されたら佐藤の好きな人にも迷惑かかっちゃう。」
「ふーん…佐藤に好きな人ねぇ…」
佐藤も高校1年生な訳だし。
好きな人の1人や2人いるはず。
そんな時に佐藤と私がカレカノなんて噂流されたら大変だ。
…でも、佐藤が誰かと付き合ったら、彼女さんのためにもあまり話さない方がいいんだろうな…。
ちくり、胸が痛んだ。


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「ただいまー」
「お帰り、入学式の返事よかったよー」
私の母はどこか抜けてておっとりしてる。
しかし、料理はとても美味しいし、掃除も洗濯もちゃんとするから、自慢のお母さんなのだ。
「えへへ、緊張したけどクラスでも友達できたし、これから楽しくやってけそう〜」
「それはよかった。
部活は?アルトサックス続けるの?」
父が学生の頃吹奏楽をやっていて、私は小さい頃から音楽に携わっていた。
だから、小学校の頃にアルトサックスを買ってもらい、やっていた。
そのため、アルトサックス歴は10年目になる。
「んー、咲希は吹奏楽部に入るって言ってたけど…。」
全国大会…。私もあのステージに立ちたい。
金賞をとりたい。ダメ金なんかじゃない。
金賞を。
「…うん、やることに決めた。」
この10年が無駄にならないように。
後悔しないように。楽しむためにも。
「私、アルトサックス続ける。」
あいつに、"また"褒めてもらうためにも。
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お風呂上り、咲希からLINEが来ていた。
《美羽、吹部入るの⁉︎》
お母さん…咲希ママに言ったんだろうな…。
《入るよ〜アルトサックスやりたい!》
《美羽なら出来るよ!一緒にまた頑張ろっ!
あと、佐藤がLINE始めたんだけど、美羽のアカウント渡していい?》
へぇ、佐藤LINE始めたんだ。
でも、なんで咲希が知ってるのかな…。
「…っ、何考えてんの私。」
咲希と佐藤は去年クラスが一緒で、元々私繋がりで1年生の頃から話していたじゃないか。
佐藤は、色んな人と仲良いじゃないか。
女子とも男子とも話してたし…。
《いいよ!》
…まるで、こんなの、ヤキモチみたいで。
「……んっ?
ヤキモチなんか妬いていいのかな…?」
私、佐藤の彼女でもないのに。
なんで、こんな勝手にモヤモヤしてるんだろう…。


《楠木さーん、俺誰かわかるー?》
数分後、あいつからLINEがきた。
さっきのモヤモヤなんて嘘のように消えて、LINE交換できた、ってことに嬉しさを感じていた。
《わかりまーーす。佐藤くーーん》
《えへへ、せいかーい。
加藤から教えてもらった》
《知ってるわ、笑
なんでLINE始めたの?佐藤メールとか苦手じゃないっけ?》
中学時代、佐藤はこう言ってた。
『俺、直接会話するの好きなんだ。
こうやってさ、目を合わせるの。
そういうのが好きでさ、あんまし、メールとかしたくないんだよね…』
だから、佐藤はLINEをしないって言ってたのに。
《悠也がしろ、ってうるさかったから》
須田悠也。
彼が小4の時、佐藤が転校してきてそれからずっと佐藤と一緒にいる。
彼も東桜高校でクラスはB組。
佐藤ととても仲が良く、親友と言えるんだろう。そして、咲希の彼氏。
《悠也くんか。笑笑
LINEしたかったんだよ、佐藤と》
《えーー気持ち悪ーー》
《やめなよ、悠也くんが可哀想だよ笑笑》
《いいんだよ、あんなやつ、、笑》
でも、悠也くんのおかげで佐藤とLINEできたんだし。
私は悠也くんに感謝しかないな。


「♩、」
「?、どうしたの美羽。ごきげんじゃない」
朝、制服に着替えて朝ごはんを食べていたら無意識に鼻歌を歌っていたようだ。
「えっ?そうかなっ♩」
「…まさか美羽、好きな人でもできた⁉︎父さん許さんぞ!」
「っっ⁉︎んなわけないじゃん、違うから!」
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「ってな感じで朝は大変だったよ〜」
「相変わらず美羽パパは面白いね!
でも、本当に今日の美羽ごきげんだね?」
それはきっと、昨日あいつとLINEしたから。
あいつと、夜も話せたから。
それが、すごくすごく、楽しかったから。
「ん〜…ふふっ、そうかもね」
「それは私のおかげだったりー?
どうせ、佐藤とLINEできたことが嬉しかったんでしょー。」
さすが幼馴染。すぐに言い当てた。
嬉しいことだけど、咲希の考えている"嬉しい"と私の感じている"嬉しい"はきっと違う。
「まっ、これは悠也くんと咲希に感謝かなぁ」
「ふふっ、悠也が教えてくれたの!
なんか、悠也が美羽に佐藤のアカウントあげるためにLINEしようとしたら、佐藤に止められたらしいよ。」
えっ…なんで…。それは一体どういう…。
頭の思考回路が停止した。
「だから、悠也から私に、私から美羽にって感じで昨日LINE交換してたの。」
全く、佐藤ってばわかりやすいよね〜っていう咲希をよそに私は少し期待していた。
もしかして、佐藤は…悠也くんにヤキモチ妬いたんじゃないかって…。
「…佐藤、悠也くんと咲希が付き合ってること知ってるのに?
変なやつ…」
「美羽ちゃんもわかりやすいなぁ。
顔真っ赤だよ〜?」
違うよ、これは、そんなんじゃ。


『…演じてない、素の私と、、と、友達から始めてください!』
………は?
『日本語おかしいの気づいてる?』
『…ぅあ、えっと、その……』
顔真っ赤で、涙目で、慌てる蘭馬。
見ていて飽きないな、ホント。
『……ふはっ、はははは』
『えぇっ、なんで笑うんですかっ!?』
行動の1つ1つが面白い。
それがツボにハマった俺は、笑いが止まらなかった。
『ふ、ははっ……。
…いいよ、友達。ただし、俺はあんたより1つ年下だから。
友達というより、先輩後輩って感じなんじゃない?』
『…あっ、そ、そうですね。』
少し彼女の顔が暗くなる。
墓穴掘ったか?
『…………ま、先輩には見えないけど。』
そう言うと、彼女の顔が真っ赤になって、
『よ、余計なお世話ですっ』
と、言われた。
………ふ、それだよ。
『あんたに、辛気臭い顔なんて似合わない。
笑ってなよ。』
彼女の頬をつねってみる。
『んむっ、わかってまひゅよ!』
『ふはっ、何言ってんの』
彼女は、喜怒哀楽が激しいなって気づいた。
一目惚れから始まった恋。
いつか、先輩後輩じゃなくて、友達じゃなくて、恋人……言い方がクサイけど、"そういう関係"になれるように―――――。


……昨日から、姉ちゃんの様子が変だ。
何て言うか、何をするにも上の空。
おかしい。
『…姉ちゃん』
『……。
ん?どうしたの、流馬?』
……ほら、今の返事だって。
いつもなら、すぐ反応してくれるのに。
『…恋、?』
『へっ!?!?』
恋でもしちゃったのかな。
現に、ものすごい反応したよね。
『姉ちゃん、好きな人でも出来たの?』
僕は聞いてみた。
『………!!』
お姉ちゃんは、癖がある。
図星のときは必ず、固まる。
『……へへ、お姉ちゃんもびっくりだよ。』
…出来たんだ、好きな人。
よかったじゃん、頑張りなよ。
応援してるから。
声をかけようとしても、うまく声がでない。
胸が苦しくなって、涙が出そうだ。
『……そっか。
僕、勉強するから部屋に戻るね!』
なんで、こんなにも悲しくなるんだろう。
『っ、!
置いていかないで……っ』
ひとりぼっちになるのが怖いから。
孤独はもう、嫌だから。
姉ちゃんの幸せ、応援できない自分にムカついて、腹が立つ。


"『あんたに、辛気臭い顔なんて似合わない。
笑ってなよ。』"
『……木根くん…。
……………"曽良"くん』
ポツリ、彼の名前を呼んでみる。
私しかいないこの部屋に、彼の名前の余韻が残る。
『………っ!』
自分で呼んで、恥ずかしくなる。
ボフッと、ベットに横になり目を閉じる。
ーーーー思い浮かぶのはさっきの彼の笑顔。
あんな風に笑うんだ…。
『……好き。』
この2文字の言葉を伝えられるのに、あとどれくらいの時間が必要なんだろうか。
そして、それを伝えた瞬間の彼の顔はどうなんだろうか。
『……ないないっ!』
両想いなんて、そんなこと。
でも、そうありたい。
彼氏、彼女の二人でありたい。
ーーーーなんて、ワガママな私だろう。
『…せめて、名前だけでも…』
"木根"くんじゃなくて、"曽良"って。
『……はぁぁぁ、なんで恋ってこんなに苦しいんだろう。
こんな、締め付けられるものなのかな。』
好きってだけで溢れる感情。
好きの海に溺れて、助かる方法は両想いなんて。
『……難関過ぎるよ、バカ…。』
明日も会える
明後日も会える
休日は会えなくて、学校では会える。
『…今度、RAIN聞いてみようかな。』
その前に彼はやっているのかな?
教えてくれるかな。
もし、RAINできたら、たくさん話せるな…。
『………そ…ら、くん……』
いい夢見れますように。


"曽良ーっ!
見て!子猫だよっ"
"曽良みたいに生意気な猫だね
…わぁっ、冗談だってばっ(笑)髪グシャグシャにしないで~"
"曽良…私のこと、………"
"ごめんなさい。私、曽良のことわかんない"
"別れよっ…?
曽良、弄んでたんでしょ…?"
.
"ーーーーお前なんか"
.
ーーーー××××。
『………っ!』
ガバッと起き上がる。
冷や汗が止まんない。
『…くそっ、最悪。』
シャワーでも浴びるか
にしても、なんで今さらこんな夢。
"あいつ"との事なんて忘れるって決めてたはずなのに。
むっかつく。
『……汗、気持ち悪』
キキッ
シャァーーーー
シャワーを浴びてる間でも気持ち悪さは収まらない
『……蘭馬』
"あいつ"を忘れさせてくれよ。
なんて、無理な話。
蘭馬だったら、きっと楽しいはずだろう。
『………餓鬼じゃねぇし…あーもー。』
恥ずかしいじゃん。
こんな、いかにも恋してますみたいな。
感情を抑えられずに、滅茶苦茶にしてしまいそう。
"っあ、そらく…"
彼女だったらどういう反応をするんだろう
『…チッ、俺サイテーじゃん』
彼女で処理するとか。


"ねぇ、蘭馬"
…ここは、どこだろう。
真っ暗で何も見えなくて。
ただ、この声、忘れるわけがなくて。
『未来お姉ちゃんっ……!?』
声は聞こえるものの、どこにいるのか、わからない。
"蘭馬、蘭馬、蘭馬"
私の名前を何回も繰り返して呼ぶ。
お姉ちゃんが私を呼んでる。
どこに、いるの。
『お姉ちゃん、どこ、、?』
辺りは真っ暗だから、わかるわけなくて。
今気づいた。これは"夢"なんだと。
『お姉ちゃん……、会いたい、』
"会えるよ。"
白く光って、そこに目をやると…
『お姉ちゃんっ……!!
お姉ちゃん、お姉ちゃん!!』
一度も忘れたことのない、大好きな姉の姿がそこにあった。
"私はいるよ。
蘭馬と、流馬と同じ。
私を、見つけて…"
『お姉ちゃん…?』
*
*
*
*
*
*
『姉ちゃん、起きてっ
もう朝だよ?ご飯、!!』
『……ぅ、ん?』
…目が覚めたら、もちろん明るくて。
辺りがはっきりとしていて。
やっぱり、あれは夢なんだと確信する。
『…ねぇ、姉ちゃん。』
"見つけて"なんて、どういう意味なんだろう。
未来お姉ちゃんは、私に何を伝えようとしたんだろう。
『……なんで、泣いてるの、?』
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ーーーーなんで、こんなにも涙が止まらないんだろう。
ーーーーーーー同時刻、とある場所にて。
「……らん、ま。
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ーーー何も、"思い出せない"。」

