ネタバレ注意、竜とそばかすの姫の感想
どうせサマーウォーズやるんだろ、過去の栄光を忘れらんねぇんだろ、そう思いながら友人に連れられて劇場に行った。全然違った。何が変わったか。多分細田守の描きたいものは一貫していて、でもこの12年で我々の価値観は確実に変わった。インターネットはより身近になり、他人との関係も変わりつつある。
連れてきてくれた友人には感謝してるんだけど野郎「俺も仮想現実行ってみてぇな」とのたまった。気に食わない。両作で一貫して細田が描いたのはインターネットを挟もうが、どんな世界に居ようが人間の本質は変わらないという部分だ。性格だけではなく、家族や部活や友人みたいな現実で属している共同体でさえ。細田の仮想現実は理想の世界を皮を被ってこそいるが、残酷にも現実の延長線に過ぎないのだ。
鈴は音楽の才能があったから竜を救うことができて、陣内家は血のつながりがあったから世界を救えた。全部は最初から与えられていたものだ。結局現実の延長だから。だとしたら成功の条件は持って生まれた才能だけなのか？それもやっぱり違うんじゃないか。
サマーウォーズとそばかすの姫の一番大きな違いは主人公を支えてくれたのは誰なのかという部分だ。サマーウォーズでは血のつながりのある家族、一方でそばかすではクラスメイトや地域のコーラスサークルの面々。母親は死んでいたのだから仕方がないとして、父親も折に触れて出てきてはいたがほとんどわき役に過ぎなかった。
じゃあそばかすは家族の話じゃないのかというと多分それは違う。この12年とは言わないけど、確実に家族の在り方っていうものは変わってきている。僕なんて多分家族よりもよっぽど、ここの人たちの何人かの方が話をしているかもしれないし、僕以上に僕のことに詳しいと思う。血のつながりだけが家族じゃない。多分鈴にとっては父親母親だけじゃなく、クラスメイトもコーラスサークルの面々も家族だったんじゃないかと思う。
だいたい、鈴の音楽性だって母親譲りのものだ。そして彼女が日々積み上げてきたものの結晶だ。あるいは健二にとっての陣内家の面々だって言ってしまえば赤の他人だ。結局それらの運命を変えるために決定的な要素というのは最後の最後は自分の力で得るものだ。
世界の命運をかけるようなことにはならないけど、いつだって僕らは見も知らない誰かに感情を揺すぶられながら生きている。被害者面するやつ、正義を振りかざすやつ、見栄を張るやつ。そういうろくでもないような奴らもここにはいっぱいいるけど、でも静かに寄り添って励ましてくれるような人だっている。そういう僕らの日常を遠くから切り取ったのがこの映画なんじゃないかと思う。
とりあえず今日はここまで。
久しぶりに学生時代5年も通ったあの街にふらっと立ち寄りたくなる映画だった。川べりに並ぶ背の低いビルにNHKのアンテナばかりが目立って、田舎のちょっとだけ人がいるような町はどこも似たようなもんなんだなと思った。
あとは親父の作ったカツオのたたき。
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