「……」
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しばらく無言が続く。
公園に活発に遊ぶ子供たちの声。それを見守る母親らの世間話。
外の道路を走る車のエンジン音に、頭上でけたたましく鳴り響く蝉の声。
外の風景の音しか聞こえない。
彼は暑さのせいで喋る気力など無いのだが、この状態をとても気まずく思った。
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「…何処かで会いましたっけ」
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先程と同じ声量で、彼女に問う。
少しの沈黙が破られ、彼の周りに響きが戻ってくる。
頭に浮かんだ、素直な疑問である。
自分と同じように暑そうに顔を赤くした彼女を横目で見て逸らす。そんな事を繰り返しながら。