神器戦争

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麻呂 (プロフ) [2017年4月8日 7時] [固定リンク] PCから [違反報告]

朝市で露店の立ち並び,朝から安くて新鮮な肉や野菜を求めて集まる国民たちで毎日のように賑わう大きな路に響く鎖と錘を引きずる音
その音に気づいた平民の一部は音を出すモノを見ては嫌悪感を面に浮かべつつ見ないふりをする
また他の一部はそれを見て可哀想に,とつぶやくもやはり見ないふりをする
そんなものは日常的なのだ
滅亡寸前のこの国では,
政府は戦に頭を持っていかれ奴隷問題にはまるで手が回らない
奴隷商や奴隷を買った者からすれば有難いことだろうが,奴隷たちにとっては地獄でしかなかった
しかし,いまこの大きな路を鎖と錘を引きずりながら歩く少年にはそんなことどうでも良かった
自分が奴隷であること,家畜以下の扱われ方をされていることに気付かないでいたのだ

そんな少年が歩いてきた後には時折血が土の上に落ちている
彼は傷を負っていた
綺麗な青だったはずの服,いや布も赤黒い返り血で染まっていて,腕に受けた傷からは血が溢れていた
しかし彼の顔には薄い笑みが浮かぶ
「 ... 御主人さま 褒めてくれるかな 」
おそらく主人の命令に従いそれをやり遂げたのだろう
鎖と錘の重みなど忘れ軽い足取りで主人の家に帰るための近道として路地裏に入ったとき後ろから声をかけられ振り向いた
「 ... なに 」

麻呂 (プロフ) [2017年4月8日 8時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「あ……。」
黒いチャイナ服に身を包み、一際目を引く、赤い髪の青年は少年が振り向いた瞬間に、自分で話しかけておきながりも、驚いたような表情を浮かべる。
「いや……、すまない。」
其れなりに上質な服であるので、貴族か上級の武士か。
彼は、次の瞬間には優しい笑みへと変わる。彼のその金色の瞳はまるで悲しげに揺れ、痛ましいものを見るようですらあった。
青年の名を孫鐘と言う。
歴史ある孫家の嫡男、上級武士の一人で、奴隷反対派の青年である。
「怪我をしているようだ。」
彼は、膝をついて、少年に優しい声で言う。
「そのままだと、治りが遅くなる。診せて貰えないだろうか?」
孫鐘は目を伏せた。
この国は、変わってしまった。
自分が好きだった国は、あの先代の王が死んだ際に時同じくして、既に息絶えてしまっていたのかもしれない。
これは、ただの自己満足だ。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年4月8日 12時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

振り返った先にいたのは黒い服に赤い髪の映える青年
話しかけてきたくせになぜ謝るんだ,そう思いながら少し人目を気にする
なぜ奴隷の自分に話しかけてきたのか,それが不思議だった
そんなことを考えていたら奴隷である自分の前に膝をつき見上げて怪我を見せろなどと言っている
不思議だ
ほっといておくのがこの国では普通なのに,何故
「 .. これくらい ... 」
いいかけて止まる
まてよ
治療すると見せかけて殺しをしたことを警察にでも突き出されるのだろうか
それは主人にも警察の手が及ぶのと同じ_..
そこまで考え相手から距離をとった
「 ... 近寄るな 」
低く唸るように小さい声でそれでいてはっきりと相手に届く声でそう言った

麻呂 (プロフ) [2017年4月8日 13時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「……そうか。」
孫鐘はゆったりと立ち上がり、一歩後ろへ下がった。
痛ましげに悲しげに、瞳を揺らして。
「あんたの主人を別にどうこうしようと言うわけじゃないんだ。」
そう、言い訳がましく呟く。
昔は、昔は、こんな事なんて無かった筈で。……少年が人殺しなどしなかった筈で。
少年の人生が狂ったのは、誰のせいなのか。
悪いのは、少年ではない。
悪いのは、彼の主人でもない。
悪いのは、きっと民たちではなく。
悪いのは、自分でもないだろう。
悪い人は、……きっといないのだ。
最初から最後まで。
強いて言えば、全員悪いのだ。
「すまない。」
孫鐘は苦しそうに言った。
彼が謝る必要性はどこにも無い筈なのに。
「……治療が要らないのであれば、何かあげよう。何が欲しい?」

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年4月8日 14時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

向こうに敵意がないことがわかるとまた思考を巡らせる
それに治療が要らないのなら何かあげようとも言っている
いまの自分が欲しいものは?
...ない
自問自答してふるふると首を横に振る
何も要らない
主人の傍に居られたらそれでいい
あぁでも 金を盗めばもっと褒めてもらえるだろうか
そうしている間にも腕の傷からはたらたらと血が流れ出ている
「 ... なんのために 」
思い出したようにそうつぶやく
なんのために自分に話しかけてきたのか
それがいまは知りたかった

麻呂 (プロフ) [2017年4月8日 18時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「何の為……か。」
自嘲のような笑みを浮かべ、孫鐘は言った。
「強いて言えば、自分の為だ。だけどまあ、気まぐれだと思ってくれればいい。」
孫鐘は、自分が目の前の少年の名前を知らないことに今更ながら気づく。
まあ、それでもいいだろう。知ったら、彼の主人をきっと、優しく言うなら、怖い目に、きつく言うなら、殺してしまうだろうと言うことを、孫鐘は感じていたから。
自分の為。ああ、そうだ。余りにも、目の前の少年が『可哀想』であったから。
自分が正義の味方だ。と、思い込み、そして、自分の様な人が居るのだと、それを守るのだと、国を守る理由が欲しかったのだ。
……この国を守ると言うことは、彼らの存在を許容してしまうような気がしてしまった自分に、許しが欲しかったのだ。
「すまない、申し訳ない。」
悲しげに、許しを乞うように、孫鐘は呟く。……奴隷は、大嫌いなんだ。彼らは……民であったはずなのに。
どうして、こんな……酷い目に。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年4月10日 15時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

「 .. 私は好きでやってる 」
ぼそりと呟く
血がようやく止まり始めた腕の傷に自らの身体に巻き付けている布の端を破り包帯替わりにきつく巻き付けた
この国の多くは奴隷を毛嫌い,可哀想だと思っている
でも,そんなふうに思われているのが自分にとっては嫌なことだった
好きでやっているのだ
主人のために,身を呈してまで命令に従いこなすことが好きなのだ
それに主人はあの御方
国民とは交わることのない高貴な御方
「 .. 主人に手を出しかねないって顔ですね 」
珍しく表情が作り出される
目の前にいる男を嘲笑うような,そんな表情だ
主人に手を出すならばその前に自らの命を捨ててでも殲滅するのみ
相手にばれないように大きな布の中にかくした仕込み刀の柄を握った

麻呂 (プロフ) [2017年4月10日 18時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

「……別に、手を出そうという訳ではない。さっき言ったしな。宣言は守る。それにしても、好きで、か?」
少年の嘲笑に、無理やり話題転換をし、驚いたような表情で。孫鐘は首を傾げる。好きで? よく、解らない。解りたくもない。
目の前の少年の仕込み刀。それなりに孫鐘は、戦場を経験して来ている。
最初に気付いた時から、注意はしていたが。
神器、か?
それであれば、此処で暴れられるのも、こちらの神器としても困るのだ。
こちらの神器は、相手が近距離であればあるほどに強い。水を纏えばまた別であるが、そうでない限り、近距離では強力だという事は、違いないだろう。
……民は傷付けない。奴隷であっても、国民は、王族は、絶対に。
だからこその話題転換であったが、無理が過ぎただろうか。
……貴族は、嫌いだった。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年4月11日 15時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]
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