国の下の王選街

メッセージ一覧

「……。」
空は青い。喧騒の声が聞こえる。
祭りだ。祭りが始まっている。
祭りは好きだ。
心が躍る。
だがしかし、表情はあまり変わらないらしいのだが。
ハジメにそう言われた事を思い出して、ふと、優しい気持ちになる。
彼、オワリ・ノ・ハジメは、眷属のようなものを飛ばして、ある人物を探していた。
彼女は、身長が高いから見つけやすいはずなのだが。
赤いマフラーが揺れる。
最初に裏切られる方が損をするのだから、最初に裏切るか見つけでもしなければ。
もともと戦闘は得意でない自分は、彼女に負けてしまうのだ。
(専用)【乱闘イベ】

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年8月15日 9時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

彼の眷属の目をすり抜けた。
だってそんなものじゃあなくて、一番に彼に見つけて貰いたかったんですもの。
別に。
そう、彼への恋心を懐にしているわけではないの。
でも私は、褒めてもらいたいから。
あんまり見てくれないあの人に、今日くらいは。

「また踏み台になりにきてくれたのかしら」
オワリの左肩へ、かしゃりと手が置かれた。オワリの左耳へ、くすりと言葉が告げられた。
その優雅さは、まるで女神のような──。
彼が振り向いた時にはもうその女神は、ヒールにしては高過ぎでありそして鋭利過ぎる足で跳ね、オワリとは数歩の距離を取ってしまっていた。離れた体は「そんなに驚かなくてもいいのに」という風に両の手をやれやれとあげている。
かしゃりと、漆黒に輝く鋏の義手。
かつりと、白金に輝く円錐の義足。
白い髪と肌に、月明かりで出来ているように煌めく幻想的なベール。
その内に、青い宝石が二つ嵌っていることを彼は知っている。
「なぁに?その反応。いつも通りを繰り返しているだけよ?オワリ様みたいに。それで、そうね。だからいつも通りに言ってあげる!!」
背の高い彼女。
彼の探した彼女。
無邪気な少女。
フィリアという名の少女。
女神のような少女。
悪戯気に笑っても、そんな神々しさは変わらない。
「私の素顔を少しの間独り占め出来ることを、光栄に思いなさい!!」
そう、無邪気。
齢はオワリと同じはず。
しかしとても子供じみて、酷く子供じみて、痛々しいくらいに子供じみて無邪気な笑顔だった。
投げたベールはふわりと風に靡く。その金具がからりと煉瓦に落ちた。
ただの遊びみたいに、彼女は彼へ勝負を挑んだ。

鈴美 (プロフ) [2017年8月15日 15時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「ッ!!」
耳元で囁かれた言葉に、左肩に置かれた重みに驚いて思わず振り返る。
「は。」
そして、オワリは、苦笑を口元に浮かべた。
「そうだな。いつも通りのことだった。はは。光栄に思っておくとも!!」
投げたベールの下にある、美しい笑顔を、睨んで、剣を構えた。
弓も剣も槍も鞭も何であれ、武器なら殆どの物がそこそこ使えるけれど、彼女に対しては弓なんぞでは闘えないだろう。
一気に距離を詰められて終わりだ。
そう考えて。
ああ、楽しい。愉しい。と、思った。
楽しくて、愉しくて、とってもたのしくて、笑みが浮かんで。
彼女の痛々しいくらい無邪気な笑顔とは比べ物にならないくらいに自分のは、苦笑に近く、邪悪な笑顔なのだろう。とか、考えて。
集中。
世界が、ゆっくりと動くように見えて、その中で自分もゆっくりで、遊びみたいに勝負をしかけてきた彼女を見て、呟いた。
「今日くらいは、無駄口も良いな。」
そう言った瞬間、清々しいくらいに澄んだ、キィン、という金属音と共に、手に持った剣に負荷がかかる。
祭りは始まったばかりだ。
そう簡単には終わらせない。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年8月16日 8時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

剣を白金色の足で受け止める。重い振り。自分でもよく耐えられると思ってしまう。だっていくら負け続きの彼とて、成長しないわけではない。いつだって予測不可能。時には予想外の事があり、体勢を崩す事だって、鋏の指が折れる事だって、髪が数房切れる事だってある。
けれどもフィリアの緊張感は、他と異なる。
彼女の「ママ」が言ったのだ。武器はいくらでも直しようがある。けれど体はただ一つのものであると。
だから。
がきぃん。と。金属のぶつかり合う音がもう一つ。今度は清々しくなんてなく、重くて重くて重くて鈍い、一撃。乱暴だが丁寧に。粗暴であるが正確に。ただ一点を殴った。
殴った。
鋏の指で切り裂くでも、白金の脚で蹴るでもない。
そんな手段、とても優雅ではない故に、初めて彼女と戦う相手の予想の斜め上を行く攻撃方法だ。初見の相手には、ほとんど猫騙しに近い。
しかしオワリは、初めてではない。
なのに受け止められるに決まっているこれを繰り出したのは。
「良かった、オワリ様」
途端、フィリアは微笑んだ。優しく、嬉しそうに。女神のような笑み。
「とっても愉快そうね──!!」
たん、と彼の剣を一蹴りして跳躍。間をとった。
鋏の鋭利が、重い打撃に耐えられるはずがない。傷は勿論ひびも入っている。しかし彼女は誇らしかった。
優雅だった。
それからフィリアは攻撃を続けた。
女神のような幻想を纏ったまま彼女は舞台を踊るように跳ねて蹴って殴って、その武器に傷とひびをたくさん生む。それでも誇らしかった。
だってそれは、敬愛し慕うあの人の武器。
彼女の愛の象徴。それが傷つく程に思い切り、精一杯、全力で使う、使う。
彼女は無邪気である。
いつからだろう。最初からかもしれない。もともとオワリだってそうなのだ。フィリアはオワリを見ていない。そもそもこの勝負の開幕時に彼女は言っていた。「踏み台になりにきてくれたのかしら」と。
フィリアの見据えるものは頂点。
愛する者の武器を使い、天辺へ。
王とか、復讐とか、そんなものは関係ない。今目の前のオワリだって。
無邪気に、愛を使役して、フィリアはただ、頑張ってそれで「ママ」に褒めてもらいたかった。

鈴美 (プロフ) [2017年8月16日 11時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「ああ、愉快だとも。」
彼女の攻撃を紙一重でかわして。
そう言って、邪悪に笑んだ。
もうすでに息は上がり始めているから、自分の体力のなさが酷く憎らしい。
自分は、彼女よりも雇い主への想いがない。
自分が会いたいのは。
自分の最愛は。
今亡き人に捧げられているから。
自分の雇い主は、もし、誰かが王になるというのであれば、この人だろう。と、思っただけなのだ。
正直、誰でもよかった。
メンシュにとっての暴君でも。
自分の邪魔さえしなければ。
そう考えて、何処までも無邪気で、何処までも『ママに褒められたい』一心の彼女を見ていて、ほんの少しだけ悲しい気分になった。
ママ……か。
昔死んだ母親は。
声がどうも思い出せなくて。
顔も記憶の中で、曖昧で。
ただ。
褒めてくれた時、彼女は嬉しそうだったことだけは確かに覚えている。
だがしかし。
フィリアが母親と呼び慕う人にフィリアが褒められるために倒される踏み台などには。
そう簡単にはなりたくない。
だから、オワリは吠えた。
「そう簡単には、踏み台になんぞになってやらんわ!」
彼女は蹴って殴って。それでも、優雅だ。
自分が振るう剣は、それを防ぐので手一杯。優雅さとは懸け離れたあらけずり。
息はとうに上がっていた。
されど。彼が倒れないのは。
単なる意地である。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年8月16日 16時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「もう、強情ねオワリ様ったら!!そろそろ負けを認めた方が良いのではなくって?これが終わったあとすぐに戦いを挑まれちゃったらオワリ様──」
死んじゃうかもしれないわ。
なんて続けたが、フィリアはあくまでおどけた風であったし、意地悪気でもあれば愉快そうだった。しかし冗談で告げたつもりは微塵も無い。
彼女とてわかっている。今まで妹についての研究や実験を折れることなく続けていたオワリのことだ。それに比べればこんな勝負で折れるわけにはいかない。それは誰だって同じことだが。
いつも傷つきぼろぼろになり、それでも妹への道を諦めきれない彼の姿は全く優雅なんかではない。
なのに彼はいつもフィリアを探してくれる。
「私はオワリ様のそういうところが、大好きよ」
それはとっても美しいことだと、彼女は思うのだ。自分が見えなくなるほどに追求するものへの踏み台にしてくれることはちょっぴり不快だが、悪くない。
けれど皮肉なことに、彼は彼女に敵わない。
だから、これは、私の義務。
彼の胴を、脚の側面で思い切り蹴飛ばした。
綺羅星のような円錐が弧を描く。
バレリーナのように一本足で回転して、息の上がった彼女は笑った。
「そろそろ白旗かしら?オワリ様」
私の義務は、彼を止めること。
好意でも厚意でもなく行為で。あくまでも強者としての義務だ。

鈴美 (プロフ) [2017年8月16日 17時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「お前には通用しないが、幾つか戦闘回避の策は用意してる。」
彼女は冗談を告げた気持ちはないのだろう。
自分が弱い。
自分が弱過ぎるのだ。
「頂点を目指しているお前を見るのは、悪くない。」
そういうところが大好きと。
強情なところが大好きと言われた。
何とも言えないけれど、嫌な気分じゃない。
楽しい!
楽しい!
楽しい!
そして、終わりの時間は唐突なのだ。
蹴り飛ばされた。余りにも強烈。
薄着をして、当たらない事を目的としている自分には、強烈過ぎる。
「こふっ……。」
負けた。
何回繰り返した結果だろうか。これは。
既にもう気が遠い。
立ち上がる事すら億劫で。
「ああ、そ……うだな……。」
今回も中々に楽しかった。
夢から急速に醒めていくように、身体の中から、熱が引いて、蹴飛ばされた胴の痛みが頭をぼんやりとさせていく。
喋っているのも、半ば意地みたいなものだ。喋っていないと、意識がそのまま持っていかれそうなのもあるが。
「また、……はぁ。…勝……負してくれると…ありがたい。な」ぁ。次は、負けないから。」
挑戦的に叩きつけて、同時に白旗を上げて、彼は笑う。
この勝負中、どの笑顔よりも綺麗な笑顔で。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年8月17日 7時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]
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