狂音 李莉のボード

狂音 李莉のプロフィール | 発言 (狂音 李莉の最後の書き込み: 「「天の川の形は、ちょ...」 @狂音 李莉のボード [2016年10月11日 12時] )

メッセージ一覧

狛枝→カムパネルラ
言葉→ジョバンニ
名前も覚えていないあの娘→ザネリ
カムパネルラの言うお母さん→日向達
ジョバンニの母親→七海
訳もわからないまま、気付けば言葉は教室にいた。
長い髪を一括りにした女性が天文学…恐らく天の川について説いている。
一括りにしていても、それでも腰より長い。
よくわからないが、自分は居眠りをしていたようだ。
周りのクラスメートが自分を見てひそひそと笑っている。
「ジョバンニってば、朝からずっと居眠りしてるんだよ」
ジョバンニ?
私はその名前を知っている。
聞いたことがあるのだが、私の名前ではなかったような気がする。
私の名前は……確か、言葉。言葉美夜だったはずだ。
でも、周りがそう言っているんだから、きっとここでは私はその"ジョバンニ"なんだろう。
そう思えば、何故か納得できてしまった。
そういえば、クラスメート達の顔も見たことがある。
私は彼女達を知っている。かつてのクラスメートだった人達だ。
名前は覚えていない。名前を呼ばれたことはあるが、あまり彼女達の名前を呼んだことがなかった。親しくはなかった。むしろ嫌われていたような、そんな気がする。
不思議と、この空間にいると意識がぼんやりとする。
何かわからなくても、曖昧でも、それはそうなんだと納得出来てしまう。
普段なら私は、わからない事とか、気になる事があれば、すぐに調べて、わかるまで悩んでいたような気がする。
でも今は、それすらもどうでもいいような、ぼんやりとした、気持ちだ。
しばらくボーッとしていると、先生が……先生? 先生だと誰が言ったろう、私はいつその事を知った?
いや、先生が、問題を出してきた。
「では皆さんは、そのように川だと言われたり、乳だと言われたりしていた、このぼんやりと白いものが本当は何かご存じですか?」
その瞬間、何か映像が流れ込んできた。銀河や天体なんかの雑誌を広げて読んでいる。隣に居るのは……あれは、誰だろうか。名前が思い出せない。
気付けば、数人が手を挙げていた。先生は天の川を指しながら教室をぐるりと見回す。
さっき、映像の中で隣にいた彼も、手を挙げていた。白い髪が特徴的で、襟足はピンク色である。柔らかそうな髪の毛。そんな後ろ姿をボーッと見ていた。

狂音 李莉 (プロフ) [2016年10月11日 11時] [固定リンク] PCから [違反報告]

「ジョバンニさん」
呼ばれてハッとする。いや、私はジョバンニでは無いのだが、なんとなく反応してしまった。
「あなた、わかるでしょう?」
わかる。わかっている。それは星だ。無数の遠い星の集まりなんだと、雑誌で見た。
そうだと思った。頭にそんな考えが流れ込んでくる。
勢いよく立ち上がったが、声は出なかった。
さっき私を見て笑った彼女が、私を見てまた笑った。
なんだか、恥ずかしいような、そんな気がして、顔に熱が集まって話せない。
「大きな望遠鏡で覗くと、銀河って何の集まりかしら?」
そう言われて、喉まで星だという答えが出ているのに、やはり声が出なかった。
息が詰まるような、口だけ動くのに、喉が動かなかった。
先生が少し困ったような顔をしていて、申し訳ない気持ちになる。
「えーと、じゃあカムパネルラくん」
カムパネルラ。
名指されて立ち上がったのはさっきの青年だった。やはり白い髪が目に映える。
だが、やっぱり彼も何も言えずにどぎまぎとして動けなかった。
それにしても、彼はカムパネルラなんて、珍しい名前だっただろうか。
今度は、先生はやや驚いたような顔を浮かべて「オッケー、二人とも座りなさい」と言った。
しばらく動けなかったが、やがて私も彼も、ゆっくりと席についた。
「ちょっと難しかったかしらねー」
と先生が言うのに隠れて、笑っている彼女が、前の席で隣の子に「カムパネルラってば、ジョバンニのこと可哀想に思って」なんて言っていた。
顔に熱だけでなく、血液まで集まってくるような気がした。何故か恥ずかしかったのだ。私にもよくわからなかった。
「このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ると、たくさんの小さな星に見えるの。ジョバンニさん、そう言いたかったんでしょ?」
先生に呼びかけられて、何度も頷いた。次第に小さな涙が溢れてきた。
私はこんなに内気な性格だっただろうか。急いで手で目を拭った。
「だから、もしこの天の川を本当の川だと考えるなら、この星々はみんなその川の砂や砂利の粒に当たります。乳に例えるなら、浮かんでいる小さな脂油の球にも当たる訳です。それなら川の水は? なんて思うでしょう? それはね、真空という光をある速さで伝えるもので、太陽も地球も、星はみんなその中に浮かんでいるの。つまりは私達も、天の川の水の中で住んでる訳ね。そしてその水の中から四方をみると、水は深いほど青く見えるみたいに、天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集まって見えます。したがって、全体的に白くぼんやりと見えるのです。この模型を見て」
先生は、中にたくさんの光る砂の粒が入ったような、大きな両面の凸レンズを見せた。
本当に宇宙のようで、数々の星のようで、不思議と惹かれるような魅力があった。

狂音 李莉 (プロフ) [2016年10月11日 12時] 1番目の返信 PCから [違反報告]

「天の川の形は、ちょうどこんな感じなの。この光る粒がみんな私達の太陽みたいに自ら光っている星だと考えて。太陽が大体この中央にあって、そのすぐ近くに地球があるとします。夜になって皆さんが、この真ん中に立ってレンズを見回すとすると、こっちの端の方はレンズが薄いから、わずかな光る粒もとい星しか見えません。だけど、こっちは厚いから、その星がたくさん見えます。その内遠いのは白くてぼうっと見えるというのが、今日の銀河の話。それならレンズがどのくらい大きいかとか、星の詳しい話なんかは今日は時間がないのでおしまい、次に回しましょう。さて皆さん、今夜はその銀河のお祭りよ。夜は外に出て夜空をよく眺めてみてね。ではここまで。みんな、ノートを仕舞って!」
そしてしばらくがたがた、ばさばさという音が続いたが、間もなく静かになると一斉に姿勢を正し、礼をして、みんな教室を出ていった。残ったのは自分だけで、静かな息だけが耳に響いた。

狂音 李莉 (プロフ) [2016年10月11日 12時] 2番目の返信 PCから [違反報告]
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