ロル4
「……あんさん、拳銃かなんか持ってはるんでしょ?」それを使うつもりかどうか、と琥珀は言って螢の腰に巻いてあるジャンパーへと視線を落とした。わざわざ実弾を確保するくらいだし、持っているんだろうな、と何となくあたりをつけているが、はたして。
「職務時間外に拳銃なんか持ってたら減給じゃあ済まされないんだけどなぁ」刑事さんここに来る前は普通にオフだったんだよ? とのこと。にこにこ笑いながら、それとも気になるの? と言う。まあ持っていることは出来るだけ黙っておきたいところはあるが、螢としては手札が増えるからリスクとリターンを考えれば、どちらですもいい。
「だってあんさん、時折確認するみたいに手がそこに動くんやもの。」そこに何か、無くなったら困るもの隠してるんとちゃいます?と琥珀は言う。無意識か、意識してか、わからないが、螢が何度かそこに手を持って行っていたのを琥珀は見ていたのだ
「ん~」よく見てるね、と軽く拍手し、螢は腰の方へ手を持っていく。それから軽く溜め息を吐いて、まあこれくらいならいっか、と何かを抜き取った。がしゃん、と硬質で重い金属音を立てながら鈍色の手錠を机の上に投げ出す。「はい、これがなくなったら困るもの」私物だし出来れば誰かに奪われたくない奴だよね~、と、嘘ではないことを言って螢は笑う。まああと尻ポケットにはカードホルダーも入れてるし? とのこと。誤魔化しきってしまいたいらしい。
「……ふうん」手錠を眺めながらも琥珀は螢に疑う雰囲気を向けるのを辞めない。この手の人間は大事なことを、易々と話さないことを知っている。だから、これ以上追求しても無駄だということを、琥珀は悟った。引き際だ、と。「嫌なお人やわ、こないなもの持ってはるなんて」
「そぉ? これくらいだったら私物にしちゃってもそこまで怒られないからね。というか、ちょっと高いけどネットとかで購入できるし?」にこにこしながら手錠を尻ポケットに戻し、螢は琥珀を見詰める。まだ気になることはあるかな? と。「一応、時間はあるし大体のことには答えるつもりだよ~」
「…あんさんのこととは違いますが、見解を聞きたいことなら。」琥珀は思案するようにしたあと、そんなことを言って螢を見る。「カイくんが言ってはったことで余計気になったんですけど…ケイさんはセイカちゃんとコウキさんに接触とったことってあります?」
きょと、としてから系は腕を組み、首を傾げる。シラサキさんとセイカちゃんか、と呟いて少し記憶を遡っているような気配がある。「……いや、彼らと接触したという記憶はないかな。シラサキって名前だけならどこかで聞いたことはある気がするけど……よくある名字だし、多分記憶違いだね」ああいう人たちは見たら忘れられないだろうし、とのこと。
「……なん、ていうか、あの人らはアカン気がします。何とは言えませんけども。目の奥が、常人の色やない。」あの二人、何か起こすかもしれんですよ、と言って琥珀は煙草を出した。火をつけて煙を吐き出す。「警戒した方が、えぇ。」
「なに、必要ならころすよ」確かにあの二人は厄介そうだしね、と呟き螢はクルミをつまんだ。仮想コイン多めに払った甲斐があったなぁ、などと呟くが一つ前の発言がそれで消えるわけではない。嘲笑が閃く。ああいうのは幸せだろうけど、ケイさんたちを害すなら要らないよね、と呟いた。
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