奇怪病院〜本編〜

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John (プロフ) [2017年3月31日 21時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

武士道とは、日本の象徴である桜花にまさるとも劣らない、日本の土壌に咲いた固有の華である。
看護師の男は一人の女性患者のために用意した数冊の本を手に取ると、とある病室に向かっていた。その本の中の一冊、"武士道"。その書き始めに書かれているのが、前ほど読んだものである。
彼女は、必要最低限の動きしかできない。好きな剣道をすることも叶わない。それなら、とせめてもの償いとして、暇潰しになるような、武士道の心得についての本を買ってきた迄だ。
ああそうとも。この気持ちは同情である。だがそれ以上に、武士道を語り合いたい。彼女は、唯一無二の共感者だ。そんな彼女だからこそ、彼は、こんなことをしているのだ。
"木俣"と書かれた板を一瞥すると、病室の扉をノックし中に入る。
その病室のベッドに横たわる少女こそが、男の共感者であった。
「退屈だろうと思いな。まあ、こんな本では退屈しのぎにもならないか」
そう言うと、ベッドから届くような距離に椅子を持ってきて、その上に持参した本を無造作に置いた。

John (プロフ) [2017年3月31日 22時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「勘助殿ですか。」
少女の顔にふわりと浮かぶ笑顔。
ベッドの上でぼんやりと天井を眺めていたのに、そろそろ飽きてきた頃であったので、彼の存在は少女にとって、有難いものであった。
「いつも、ありがとう。礼をしてもしきれない。」
その言葉に宿るのは、不自由な自分への怒りすらあり。
それでも、笑みは、穏やかなままで。
少女の包帯で隠された素肌は、今や火傷で赤爛れているだろう。
想像するだけでも悍ましい。
痛みはいつからかわからなくなった。
木俣 灯は、ベッドから動かないまま、顔だけを勘助に向ける。
「この前貰った本は、中々良いものだった。……病が治った時には、恩返しをしましょう。考えておかなければ。」
口早にその言葉を声にした。
彼が居なくなった後は、孤独を埋め尽くすように、そんな事を考えようか。
何でもいい。
熱に浮かされた頭で、良い事が思い浮かぶなど、とても思えないけど。
「今日は何の噺でしょうか?」
わくわくしたような、きらきらした瞳で、彼女は男に問うた。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2017年4月2日 12時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]
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