ㅤ\\ 幻想住人 ___ ㅤ
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ggrks (プロフ) [2019年4月6日 12時] 1番目の返信 [違反報告]「月は好きか」
月の見える夜に、いつも公園で出会う人がいた。
名前は夜。本当の名前は知らない。教えてくれない。夜しか会えないからと、僕が勝手に名付けたのだ。
夜、と言っても 夜明け前の少しの時間。
僕は夜更かしが苦手ですぐ寝てしまうせいで、まだ暗い早朝に起きる習慣がついてしまっていた。
彼は不思議な人だ。
明るくなり始めると、すぐにどこかへ行ってしまうような、そんな人。
いつもスーツを着ていた。黒いスーツ。何故か紙袋を被っていて顔も見えなかった。職業も知らない。住んでる場所も、嫌いなものも、何も知らない。でも何故だかその人とは安心して話せた。
いつしか___その人と話すために早起きをするようになった。
たまに、日が登ってから起きてしまった日には案の定居なくて、夏場は起きるのがかなり大変だった。
ある日の昼間、彼を見かけた。
驚いた。まさか、昼間いるとは思わなかったからだ。彼が居るのはいつも夜だった。
ふわふわの髪を2つで縛った、可愛らしい女の子と一緒だった。
2人で、仲睦まじく喋っていた。僕と喋っている時よりも楽しそうだった。
心臓の裏側がどろりと黒く溶けた。
割り込むように彼に話しかけた。今思い返してもとても迷惑な行為だったと思う。すると彼は、空を指さして言うのだ。
「月が綺麗だったから、思わず出てきてしまった」
僕の目には、雲しか映らなかった。
彼と一緒にいた女の子はとても優しくて楽しくて、僕とも仲良くなりたいと言った。僕も彼女が悪い人だとは思えないし、出会った場所がここじゃなければきっとすごく仲良くできていただろうに、と思った。
その日から僕は自分が嫌いになった。