ㅤ\\ 幻想住人 ___    ㅤ

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迷子を見つけた。
見つけたというか目をつけられた。迷子に。
数分前のことだ。「迷ったの。道案内して。」と、話しかけてきた迷子。
年齢は多分同じ位。背は僕より少し低くて、長いストレートの黒髪。パッツン。何の意味を成すのかわからないが、左耳の上辺りに向日葵の髪留めを付けている。僕はこれを、どこかで見たことがある?
「どこに行きたいの、駅?」
「知らない。」
知らないって何だよ!と、言いかけてやめた。何だか寂しそうな横顔だった。
意味の無さそうな髪留めが妙に気になる。向日葵が好きなのかな、と思いながら歩く。
この町には小さな向日葵畑がある。本当に小さくて、誰が植えたのかも誰も知らない向日葵畑。物知りな一丁目のお婆さんも、近くに住んでる人達も、誰もいつ誰がなんの為に植えたのか知らないのだ。
だから手入れ等もされてない。雑草も多い。それでも幼い頃の僕はそこが大好きで、人があまり通らないのを良いことに秘密基地だと言ってよく行っていた。もう引っ越してしまってここにはいないが、大好きな友達も連れて、2人で遊んだものだ。
着いた。昔と変わらなかった。もう日は傾いているせいで、その黄色は赤みがかって見えた。
隣の彼女は泣きそうな顔で僕を見ていた。僕は息苦しくて、何か言わないと押しつぶされそうになった。見えない何かに。耐えきれず、君に問いかける。
「向日葵、好き?」
「嫌い」
君が震えた声で言うから、僕は思わず言葉に詰まる。
「嫌い、嫌いよ向日葵なんて。だって真っ直ぐで、今のために一生懸命で、過去のことなんてすぐに忘れてしまうのでしょう?」
僕を真っ直ぐに見つめて言った。向日葵みたいだと思った。
僕は何も言えなかった。何も。昔も今も変わらなかった。向日葵畑と同じように。
「ごめんね」
ふいに零れた。何に対して謝っているのかも分からないけど。ぽろぽろと落ちる。気付けば僕も泣いていた。
「ねえ、」
「違う。私じゃないわ。」
言わずとも伝わってしまったようだ。
「私は、私があの娘なら、迷わなかった。でも迷ったの。来れなかったの。迷ったから、私は、私は私じゃないの。」
君は向日葵の髪留めを無理矢理取って、僕に押し付けた。
手の中のそれを握り締める。無機質で冷たくて、どこかで僕を嘲ているような。いつの間にか日は暮れていて、走り去る君と共に、あの頃の向日葵は闇に溶けた。

ggrks (プロフ) [2019年3月16日 19時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

ggrks (プロフ) [2019年3月16日 19時] 2番目の返信 PCから [違反報告]

ggrks (プロフ) [2019年3月16日 19時] 3番目の返信 PCから [違反報告]

ggrks (プロフ) [2019年3月16日 19時] 4番目の返信 PCから [違反報告]

ggrks (プロフ) [2019年3月16日 19時] 5番目の返信 PCから [違反報告]

夏を探しに行こう。

そうだな、また2人で冒険しようよ。

秘密基地も作ろう。2人で。

次はきっと、ちゃんとした夏になるよ。

じわじわと暑い、汗ばむような夏。現実。

絵に描いたような爽やかさなんていらない。

虫もいて、花も咲いて、嫌になるほど太陽が眩しい、夏。

さて、またやり直しだね。

ggrks (プロフ) [2019年3月16日 19時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]
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