√a学院

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学校、 と言うにはあまりにも華美すぎる校舎の中、 部室へ向かう為にスコーピオは廊下を歩いていた。 コツコツと革靴の音が響く。
ふと周りを見渡す。 たかが、 廊下。 スコーピオはそう思っていた。 しかしその廊下さえも他の学校とは違う気がする。 気がする、 だけだ。 なぜならスコーピオ初めての職場がこの学院であったから。 勿論教師になる前に他の学校へ教育実習として足を運んだことがある。 しかしそれも数年前の話だ。 こんな華美なものを見ていたら“普通”など忘れていくに決まっている。
生徒だった頃は気づかなかったのがこの学校は不思議なところだらけだ。 誰が見るかも分からない細を穿つような美しい彫刻、 学生には勿論のこと教師でさえ価値が分かりそうもない美術品が至る所に施されている。 それはまるで宮殿と言っても差支えはない程だった。
流石は次期お偉いさんの卵が通うところ、 規模が違う。 その中にはきっと価値のあるものは沢山あった。 残念ながらスコーピオは芸術に学が無い。 しかしその残念な感性を持つ者でさえ、 この学校が権力を持つものが集まるということは骨身に感じていた。
そう、 例えばスコーピオが顧問を務める天文学部の部室に関しても言えることだ。 部員は少ないが普通科の生徒もいる。 勿論、 己の価値を高める為天文学を学べるこの部活へ所属する貴族科の生徒もいた。 それは顧問であるスコーピオが一番理解していると言っても過言では無い。
スコーピオが気になっていたのは部室の中にある大量の書物についてだった。 過去に縋り、 思い出を追うように顧問になったのはいいが天文学についても全く知識はない。 だからこそ天文学部に置いてある書物の価値が今ひとつ理解できなかった。 勿論中には目を輝かせて飛びつくような物好きも居る。 生徒から何度も書物を貸してと言われることもあった。 断る理由が見つからないスコーピオはいつも快く貸している。 期限はそう、 卒業するまで。

“ 星を見るだけの学問に感じるが見る目があればそれも変わるんだろうな。 ”

あの時の彼のように。スコーピオは考え込んでいた。 しかしその考え事は終わりを告げる。 何かをしている時、 時間早く流れていく。 あんなに長い廊下だったのにもう部室の前だった。
部室の鍵を開け、 中へと入る。 薄暗い中でも一番最初に目が行くのはやはり本棚に仕舞われた大量の書物だった。 地球儀や望遠鏡。 何かしら宇宙を観測する機械。 科学とかけ離れているような学院だが唯一この場所は近未来的な雰囲気を醸し出す場所だった。
今日は活動日では無い。 故に部室は薄暗く不気味なオーラを放っていた。 取り敢えずは光を灯そうか。 これでは本を見る前に帰りそうになってしまうから。

「 Lamplight maximum.. 」

ブレザーの懐へ手を入れる。
慣れた様子で杖を構えれば光を灯すようにと呪文を唱えた。 すると数秒後、 杖先に淡い光が灯る。 その光は強さを増し、 本が読めるぐらいの大きさへと変化した。 満足気にふっと笑みを浮かべては早速本を…。 しかし肝心なことにスコーピオは本を選んでないことに気づいてしまった。 はぁ、 とため息を着くと光の灯った杖を持った手がだらんと垂れ下がる。
本棚へ歩いていくと光の灯った杖を近づける。 誰がやったのか不明だが綺麗に縦で整理された本棚だったが、 一つだけ本の上に横になって置いたものがあった。 それをよく見る。

「 天蠍宮…? さそりのことだったな。 」

その本を取り、 本を取る為に設置されたであろうハシゴに腰をかけ足を組んだ。
適当なページを捲り、 スコーピオは杖を近づける。 場所がハシゴという事もあり何とも窮屈だったが、 この体制を取ってしまった以上これで読むしかない。 もう一度立ち上がり別な所で読むなど、 どうしてもプライドが許さなかった。
故に本の内容などよく覚えていないが、 何だが腑に落ちないことが書いてあったような気がする。 勿論たかが神話から来ている話。 軽く流すのが一番ではあるのだが。
はぁとため息を着けば片手で本を閉じる。 神話に愚痴を言うなどスコーピオは小さな男だ。 ハシゴから立ち上がるとその本を定位置に片付ける。
何も理由なくして本を閉じた訳では無い。 どこかそのサソリと通ずるものがあり、 居た堪れなくなったのだ。
灯りを消す為に杖を振ろうとする。 しかし此方へ向かってくる足音が聞こえた。 今日は部活動がない。 …と言うことはここへ来るのはきっと魔術の高みを目指す彼女だろう。

きむ (プロフ) [2020年1月4日 7時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

教師、エウリュアレー・モーガンを一言で説明するとすれば、それは“浮いた存在”という他ない。吸血鬼が統べるこの学院で、人の身ながらわざわざ教師になった浮いた存在。なぜか人間界を捨てて魔界に来た、浮いた存在。なにより生徒主体の考えが蔓延るこの学院で、それを気にもしない、浮いた存在。本人の認識と違うところもあるが、それは他者が知ったことではない。ともかく、学院にいる人間からすれば“異質”の言葉が似合うとしか考えられないだろう。
しかしエウリュアレーはそんなことどうでもよかった。他者から評価がどうだろうと、所詮はそれまで。全て負け犬の遠吠え。魔術の場では意味をなさないものだ。実力こそ正義だというのは彼女の持論である。

さて、エウリュアレーは教師でもあるが、その前に魔術師である。高みを目指す魔術師である。科学も人も日々進歩するように、魔術も日々進歩していかねばいけない。進歩をやめれば後に向かうは衰退の道だけであることを、エウリュアレーはよく知っていた。
そのため最近では「独自の魔術、及び新しい魔術の学習」を主に生活を回している。自身の受け持つ授業でも、生徒に課題をさせているあいだはずっとその事で頭がいっぱいだ。
ただ、ゼロからイチを創り出すことはそう簡単ではない。簡単なものは先人が生み出しているだろうし、その中でオンリーワンを探すのはなかなかに難しいことなのだ。自分の今ある知識だけではなく、様々な知識を取り入れなければ。
その過程として、“星の学問”は必要不可欠であった。だから、彼女がこの学校の天文学部に顔を出すのも、必然的なことではあった。
片手に本を。もう片手にはランプを。炎こそまだつけてはいないが、用事のある部室につけばすぐにつける算段ではあった。
ただ、その手間は省けたらしい。
目の前の部室から溢れる灯。薄ぼんやりとしているそれは、誰かが部室にいることを示している。
明かりがついているなら好都合。エウリュアレーは歩く速度を速めると、一切の躊躇もなく扉を開け放った。
「お邪魔するわ、誰かいるのかしら」
いつも弧を描いている口に、更に深く弧を刻みながら口を開いたエウリュアレー。
だけれどすぐに人物がわかると、拍子抜けしたように「あら」と声を漏らした。
「キャベンディッシュ先生、あなたがそこにいるのは珍しいわね」
特に馬鹿にした様子もなく、ただ一つの純粋な感想を投げかける。ただ返事はあまり気にもならないようで、すぐさま本棚に手を伸ばしたのだが。

菊乃 (プロフ) [2020年1月19日 1時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]
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