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箸レーゼ (プロフ) [2023年2月20日 18時] 3番目の返信 [違反報告]朝菊です
菊ちゃん目線でなんか思い詰めすぎる話。
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蚊帳の外、そう言い切ってしまえれば楽だったのかもしれない。
でも残念ながら私は完全に外にいるわけではなかった、私は得意の愛想笑いで輪の中にいる。それは自分が望んだのか、望まなかったのか、それすらも分からないほどに欠落した感情。
否、私の身体の芯には、手の着けられないほどに熱い情の炎が燃えていた。逆に言えばそれ以外は無いのだ、それを逃がすための導火線も、消すための水も。
「菊?」
「ああ、いえ。なんでもありませんよ、アーサーさん」
「そうか。まぁ今日は少し冷えるしな、体調が悪くなったならすぐ言えよ」
「……お気遣い、感謝します」
私の方に軽く向き直って、小さく笑みを零す彼。その十秒にも満たないささやかなやり取りが、無性に恋しくて苦しかった。
待って、まだその瞳に私を映していてほしい。そう言えたなら。
しっとりとした夜の重い空気が、雨の匂いを帯びていく。降るのだろうか。
“アーサーさん。とっても月が綺麗に見えるんですけど、見に来ませんか”
そう誘ったのは確かにこの私だ。
そしてそれ以外に何も言わなかったのも。
だから私には、現状に不平不満を言う権利など無いのだ。そう、それは閉じ込めて見えないふりを、無かったふりをしなくてはならない。
「…………」
「あっおいアルフレッド、お前まだ未成年だろ。酒なんてまだお子ちゃまには早い」
「えー別にいいじゃないか!アーサーのケチ、そんなんだから飯がまずいんだ」
「お互い様だろ、飯がまずいのは!」
私との付き合いよりも、当然アルフレッドさんとの付き合いの方がアーサーさんにとっては長いはず。それは、頭の中では分かっていることなのに。
私は案外単純な男だったのでしょうか。
たった二人で過ごした時間が長くなればなるほど、貴方を独占したい想いが強くなっていくのです。
独りで、静かに庭に出て眺めた月。それは、
「綺麗ですね、アーサーさん」
口をつけていない酒に、波紋が小さく広がっていく。
『綺麗』と形容した月が、歪んでいった。