Snow
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やな (プロフ) [2019年1月27日 22時] 1番目の返信 [違反報告]【夢】
「あ、ほら、ここがいいよ」
彼女は、携帯のマップとニュースに記載されていた場所を手掛かりに、そう言った。
随分現代的な星スポットの見つけ方に、ちょっと笑ってしまう。
夜空にはいくつもの星が存在していて、あれは何の星だろう、どんな名前が存在するんだろう、この星とあの星を繋げばどんな星座ができるんだろう。
想像するだけでもワクワクする場所だった。
人は案外少なくて、気持ちいい風が私達を避けて通り抜けていく。
綺麗、と、小さく輝いた星がまるで夜空から零れ落ちるみたいに、ふっと彼女は呟いた。
私はその横顔に自然と口角を上げて、
「綺麗だね。私、貴女とここに来れて嬉しい」
自然とそんな言葉を紡いでしまったのだ。
あ、変なこと言っちゃった。
どうしよう、私、変な人だよね。
冷静に考えた頭の中から、冷静に考えられなかった部分が漏れだす。
紡げないほど単体の言葉達が、ぽろぽろと音を立てるように地面に落ちていった。
彼女は私に、こう言う。
「私も貴女と旅をできて嬉しい。もうちょっと、探検しよう?」
夜空に誘われたみたいに……いや、夜空を誘うみたいに、彼女は私に笑いかける。
夜のワクワクする雰囲気とは裏腹に、ちょっと怪しげで。夜の本来の姿を見た気がした。
そうすると、少し不安になって。
この先は正直何があるか分からない、と、考え始めた。
この先は闇かもしれないし、星はもうないかもしれないし、空だって───
「大丈夫。ドントウォーリー、心配しないで。」
彼女は私の巡りに巡った考えを見透かし、遮るようにそう言った。
不思議と安心できた心地の良い声は、私を勇気付けてくれる。
彼女は英語が苦手だから、決して流暢ではなかったけど。
私は彼女の手をぎゅっと握った。
……震えていることに、気付いた。
本当は彼女も怖いのかもしれない。
この先にあるものがどんなものか、誰にも分からないから。
本当の夜の姿が甘くはないってこと、私達は知っているから……。
「行こっか」
彼女は私よりも勇敢な女騎士のようで。
彼女はこの世で一番綺麗だと思っていた星よりも、驚くほど美しい表情をしながら、私の手を引く。
今日も眠らない空の下で、星の下で、彼女の隣で、旅をする私達だった。
やな (プロフ) [2019年1月28日 18時] 2番目の返信 [違反報告]【現】
「あ、ほら、ここがいいよ」
彼女は、偶然見つけた屋根裏部屋を覗き嬉しそうな顔でそう言った。まるで美しくて、清潔で、広い部屋を見つけたような顔だったけど、彼女の背景には蜘蛛の巣が見えて、ちょっと笑ってしまう。
私は〝まぁいいよ〟と妥協して同じように笑った。
部屋に放り込まれてしまったビールの空き缶を蹴り飛ばし、彼女はハシゴを早々と上る。
その後をついていく私。
ボロボロのランドセルが視界の端に見えたから、ハシゴに手をかけたままベッドの下にしまっておいた。
到着した屋根裏部屋は天窓で、夜の月明かりが射し込んでくる、景色は綺麗な部屋だった。
……さっきの部屋よりかは良いかな。
天窓からは夜空も見える。
夜空にはいくつもの星が存在していて、あれは何の星だろう、この星とあの星を繋げばどんな星座ができるんだろう。
想像するだけでもワクワクした。
それと同じワクワクを持たせてくれたのは、彼女の表情だった。
月に劣らないほどの美しい姿に、思わず息を呑む。
「……綺麗だね。私、貴女とここに来れて嬉しい」
彼女は夜空に浮かんだ星を掴むように手を伸ばし、そう口角を上げる。
その手は当たり前のように空を切ったけど、それが私にとっては一番悲しかった。
私達の身体に、同じ血は流れていない。
彼女の父親の連れ子だ。
最初は緊張して何も喋らなかったけど、次第に仲良くなり 今では一緒に隠れんぼをする仲までとなった。
「私もだよ」
少し間を空けてそう言うと、彼女はさっきよりももっと悲しそうな顔をする。
ハッとその顔に気付いた時には、もう遅かったのかもしれない。
紡げないほど単体の雫達が、ぽろぽろと音を立て地面に落ちていった。
彼女は私に、こう言う。
「夢がいつまでも続けば良かったのに」
嗚咽をすり潰して絞り出した声は、何とも冷酷なものだった。涙がボロボロと溢れていく。
私は彼女の手をぎゅっと握った。
……震えていることに、気付いた。
私達は、夜という大人と隠れんぼしている。
本当の夜の姿が甘くはないってこと、私達は知ってる。
「大丈夫。ドントウォーリー、心配しないで。」
私が彼女をそう勇気付けると、彼女は安心したように泣き笑いをしてくれた。
私よりも彼女の方が大人ではあるけれど、こういう時元気付けなきゃいけないのは私だ。
「大丈夫だよ、大丈夫……。」
彼女の頭をゆっくりと撫でて、生暖かい手を何度も強く握る。
これ以上の事はもう、何もできない……夢のようには、上手くいかない。
結局今日も眠らない空の下で、天井の下で、怒号の中で、夢を見て。本当の夜から逃げる事しかできない私達だった。