Anomaly

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探偵部。それは生徒達の依頼を受け、依頼の解決を第一に活動する部活。
だが、ほとんどの時期はなにも依頼を受けない。依頼する生徒がまずいないからである。大抵部員は、毎日毎日、部室で好きなことをして過ごしている。
そんな、活動しているのかも怪しい探偵部に、一つの依頼が届いた。
「"私の猫を探してください"、か……」
探偵部の部員、明智颯斗が呟く。その手には、一切れの紙が。裏には、"詳細を話したいので、放課後、屋上で待っています。"と書かれている。
明智はため息をつきたくなった。猫探しなんて、と言いかける。
猫探しなんて、情報を集めなければならないじゃないか。
明智は、コミュニケーションをとるのが大の苦手だ。それが情報収集となると、更に苦手だ。逆立ちで町内を一周する方がよほど楽だ、というのが彼の持論である。
とにかく、明智は自分で情報収集をしたくない。それに、自分がしたところでよい情報はとれそうにもない。どもって終了だ。
しばらく明智は思案していたが、少したってうなずくと動き始めた。
「井崎さん、手伝ってほしいんだけど」

ところ変わって屋上。
そこには一人の女子生徒と、明智、そして井崎がいた。明智は井崎の一歩後ろに控えている感じである。
「来てくれてありがとうございます」
依頼者であろうその女子生徒がお辞儀をするものだから、二人もお辞儀する。
「紙は、読んでくれましたよね」
女子生徒は落ち着き払った声でそういった。

ルンバ (プロフ) [2018年12月4日 22時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

涼の通う高校には一つ、とても面白い部活がある。彼自身も所属し毎日のように部室で暇をむさぼる部活……と言うと語弊があるが。
探偵部。
名前の通り生徒から依頼を受け、その依頼を達成することが部の存在意義である部活だ。……とはいえ涼のいる世界は小説含むフィクションの世界ではないし、当然毎日のように依頼が来るということもない。部員は所属したは良いが二ヶ月ほど何もない、というのが鉄板である。全く面白くない。
そんな探偵部にはしかし、三ヶ月に一回程度のペースでペット探しなどの細かい依頼が舞い込む。単純ながら労力を要するそんな依頼は涼の得意分野であり、頼まれれば是非もなく手伝うものだ。
そして今日は丁度、ペット探しの依頼が来た日である様だ。部員で同輩の明智颯斗が部室に置かれていた紙を見て、そう呟いたのだから。
しばらく思案している彼を尻目に涼は適当な机に腰掛け、ぼんやりとする。休みの時間は静かで、嫌いではないのだ。ゆっくりしよう。
……そう思っていたら、声をかけられた。
「はいよー」
手伝いはきちんと頼んでくるのなら理由がなかったりつまらなさそうではない限り断らない。もちろんつまらなそうであれば逃げるし理由があるなら丁重に断るのだが。

明智と移動して、次の居場所は屋上。
彼に見せてもらった紙を読んだため依頼の内容は分かる。猫探し。ペット探しの中でも難しい部類だ。
「うん、紙は読んだ。君のペットの猫を探せば良いよな?」
軽くお辞儀をして挨拶を交わした後で彼女から問われたことに答える。明智は涼の後ろに控えているため、仕方ないと言えばその通りであって。
なんで俺が対応しているのだろう、とは思うがもう今更である。彼は思考を一部停止させて対応に意識を注ぐことにした。
「探偵部として依頼を受けることに異議はない。捜索対象の子の写真、失踪直前の様子、失踪日などいろいろ聞かせてもらうけど、準備はできてるか?」
単語を捜査用語のような少し重いものにふざけ半分で変えてみて微笑む。それから彼女の返答を待った。

👋👋👋誠に勝手ながらさようなら👋👋👋 (プロフ) [2018年12月7日 7時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

井崎さん、ごめん。
後ろに控えながら明智は思う。まあ、思うだけで行動に移すわけではないので、質はとても悪い。
そうこうしている間にも、目の前の二人は話を進めていく。どうやら井崎は、失踪日などを聞き出すらしい。
俺に出来るのはせいぜいメモくらいだ、なんて思いつつ、明智はメモを取った。
「はい、わかりました」
聞かれることは予想していたのか、意外にも女子生徒は驚かない。以前として冷静に写真を取り出すと、井崎に見せた。明智も気になって覗く。
写真には、白い猫。カメラ越しでもわかるくらい艶やかな毛並みである。目の色は透き通るような青色。凛々しい立ち姿で写真に収まっていた。
「プチって言うんです。いなくなったのは……たしか一週間前ぐらいです」
一週間。その期間は意外と長い。
もしかしたらもうこの町にいないかも、と思ってしまったのは明智だけではないはずだ。
女子生徒は探偵部の思いも知らず、涼しい顔で続けた。
「いなくなる前は特に普段と変わりありませんでした。いつも通り散歩に出掛けて、そこから帰ってこなかったんです」
散歩? 猫に散歩は必要だっただろうか。いやまあ、その猫の趣味ならしょうがないが。
「いつも商店街のほうを散歩しているそうなので、店員さん方聞いてみたんですが」
女子生徒はうつむいた。
「皆さん、口を揃えて言うんです」
今日はみていないよ、と。

ルンバ (プロフ) [2018年12月13日 15時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

ふとメモはどうしようと思っていたら、後ろの方からペンの走る音が聞こえた。どうやら明智くんがメモを取ってくれているようだ、と涼は考える。
ありがたいことであるし、一つのこと…つまりは依頼主から話を聞くこと…に専念できるのはとても嬉しい。
見せられた写真を手に取り、覗き込んできた明智にも見せる。
「……こいつぁ綺麗な子だな」
小さく呟いて、プチと教えられた猫の話を聞く。……消息を断って、一週間。常識的に考えると発情期か何かの原因的なことがあって遠くに行き迷ってしまった、もしくは寿命が近くなり自ら姿をくらました、あるいは……誘拐されたとか、何らかの原因で帰れない状態にあるだとか。
いつも通りの散歩に出たあとから、いなくなった。ただしルーティーンである散歩道では姿が見かけられなかった。
難しい話である。情報収集は手当たり次第に行わなくてはならないだろう。
「具体的に、いつからいなくなったか特定できないかな? 例えば、いつもならこれこれの時間に通るのが見なかった、とかいう話。ないとかまだ聞いてみてないとかなら、その情報をほしいかな」
とりあえず俺が思い付くのはそんなところ、と涼は口にする。

👋👋👋誠に勝手ながらさようなら👋👋👋 (プロフ) [2018年12月20日 22時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

さらさらと女子生徒の言葉を書き留める。……まあ、書き留めているのはそれだけではなく、井崎の会話の展開のしかたも書き留めているのだが。明智には欠かせない情報だ。…………万人がそうとは限らないが。
「いつから……」
女子生徒は頬に手を添える。ぶつぶつと何かを口の中で言うと、井崎を見た。
「ごめんなさい、わかんないです」
少し落胆する。これじゃ探すのが難しくなるばかりじゃないか。
探偵部の思いを裏切るように、でも、と女子生徒は続けた。
「今日、帰ったら商店街の人に聞いてみます」
携帯の番号交換してもらってもいいですか、何て女子生徒は言う。すぐに連絡できるからと言うと、携帯を持ち出した。

ルンバ (プロフ) [2018年12月27日 18時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

分からない。その一言が一番困るものなのだ。手掛かりがない。つまり、手間が増える。
しかし涼はそんな落胆を顔に出さないまま一つ頷いた。分からないことは仕方がないのだ、と。むしろ新鮮な(つまりは手付かずでバイアスのかかっていない)情報を収集できると考えた。マイナスではなく建設的な方へ考えよう、と思ったのだ。
「了解、じゃあ俺の方でいい、よな?」
明智に一応確認を取るように目配せをし、強い肯定の意思を見て取るとそのまま女子生徒と連絡先を交換する。
電話帳に女子生徒の依頼内容を軽くメモしておき、連絡待ってまーす、と少し軽めの口調を意識して告げる。明智の落胆を感じないことはないし、女子生徒の焦燥を理解できないわけでもない。だからこそからり、と笑った。
「んじゃ今月中に成果出せるよう頑張るんで、待っててくれ。あと、そっちの方で見つけたらちゃんと知らせてくれよ~」
安堵させるように、和ませるように。
そうして涼は手を振った。

👋👋👋誠に勝手ながらさようなら👋👋👋 (プロフ) [2018年12月27日 18時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

「……わかりました。ありがとうございます」
女子生徒はゆっくり笑うと、屋上を去っていく。来たときよりかも表情がよくなっているのが、明智にもわかった。
いなくなったところで、明智はゆっくり息を吐き出した。
「色々ありがとう、井崎さん」
無表情ながらに疲労の顔を見せる。カーディガンをもう一度深く着込むと、メモを構えた。
「もう一回、情報確認をしよう」
うなずくのを感じ、明智はメモの内容を簡潔に読み上げた。
「依頼は猫の捜索。猫は白の毛並みに青の目。一週間前のいつもの散歩から帰ってこなくなった」
これくらいかな、と明智。
「俺は猫の生体とか詳しくないから明日までに調べてこようと思う。何か必要な情報とかある?」
メモをポケットにしまい、明智は井崎に聞いた。

ルンバ (プロフ) [2018年12月27日 18時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

礼を言った女子生徒の後ろ姿を見送り、声も届かなくなったであろうタイミングで涼は明智に向き直る。情報整理の時間だ。
「どいたまどいたま」
明智の礼におざなりに返事をしておいて情報確認の誘いに肯定を一つ。なぜカーディガンを深く着込むのかは理解できないが、個人個人の趣味性癖があると思っているため突っ込みはしない。そしてそのまま、朗読され始めた情報に耳を傾けた。
まあ、おさらいしても大した情報量ではないのだが。
「そうだな……発情期のこととか死期のこととか一般的なところ……あとは、猫がいやがる、逃げようとする、もしくは逃げ出す音の周波帯が調べられるんなら頼みたいな。面倒なら別に調べなくていいけど」
それとできればこの町の詳しい地図も作ってほしいかも、と涼は呟く。まあそこは自分でもできることのため強くは言わない。
「ちなみにだけど、普通の迷子探しだと思うよな?」
それ以外の意見ない? とフィクション染みた返答を期待するような声色で涼は尋ねた。実際には大きな事件を期待しているわけではない。ただ暇潰しの一貫として、フィクションのような壮大なストーリーを考えてもいいだろうと思ったのだ。

👋👋👋誠に勝手ながらさようなら👋👋👋 (プロフ) [2018年12月27日 19時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]

井崎の言うことを頭の片隅に置きつつ、明智は相づちを打った。
「わかった、できるだけする」
ただ、明日までだ。できることはそう多くないだろうな。明智はそう思った。
普通の迷子探し。そういわれるとなんだか違う気がしなくもないが、そういうことは何度もあったし、毎度普通の迷子探しだった。
ただ、井崎の少しおどけた口調からから、真面目な回答など期待していないことはわかる。
明智は少し広角をあげると、いつもより少しおどけて問いかけに答えた。
「どうだろう。もしかしたらUMAの実験台にされたりとか」
いつもと変わらない表情で言う明智。内心笑いながら井崎を見る。

ルンバ (プロフ) [2019年1月4日 16時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

明智の生真面目な返答を少しつまらなく思い、そして次の返答に涼は盛大に吹き出した。
「ユーマ、UMAか! 未確認生物の実験台、そりゃヤバイな!」
早いうちに見付けて助けてやらなきゃだ、とげらげら、げらげら、面白そうに笑って涼は膝を叩く。無表情でそんなことを言うから、ふざけそうには見えない顔でふざけるのだから、涼は明智のことが嫌いではないのだ。
それから少し息を整えて、目元に浮かんでしまった涙を拭って、涼ははあー、と息を吐き出した。
普通の迷子探しよりは面白くなりそうだ、と涼は少しばかり考える。もちろん迷子の猫は見付けるつもりであるし、見付けられないなどとはほとんど思っていない。ただ、このようにふざけてくれる相手がいるのだからある程度以上の期待はしたいのだ。
「ミイラ取りがミイラになる、なんてことにならないように準備しようぜ」
いつものような明るい表情でそんなことを言って、涼は軽く親指を立てた。

👋👋👋誠に勝手ながらさようなら👋👋👋 (プロフ) [2019年1月4日 16時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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