終焉無き紫霧

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涼やかな風が吹いていた。
初夏の季節。
昼は暑いが、夜は涼しい。
夜の帳が下りていく。
日は随分と長くなった。
知り合いが言っていたが、あの忌々しい蚊も姿を現したらしい。
蚊がいるから、自分は夏より冬の方が好きだ。だが、身体には夏の方がいい。と思う。わからない。だって、知らないから。
病魔に蝕まれている身体は悪い時には一日中咳が止まらない。
今日の夜は気持ちがいい。
そんな事を考える。
「ご飯でも食べようかな。」
そう、呟いて不意に立ち上がった。
夜食の時間でいつもは、独りぼっちで食べているが、今日は体調もいいし、食堂で、食べてもいいかもしれない。
Sランクに籍を置く、薄幸の美剣士とまぁ名高い神無月 春雨は考えた。
食堂にはもしかしたら「あいつ」もいるかもしれない。
だけど、「あいつ」は、Sランクだから自室で夜食を食べているかも。
まぁ、どっちでもいいや。
春雨は食堂に向かおうと思い、食堂がある方向へ歩を進める。
あ、でも。
数歩だけ歩いたところで春雨は立ち止まる。
どうでもいいが、今日は天気がいい。
そして、春雨は苦笑いを人知れず浮かべた。
もしかしたら、「あいつ」が、迎えに来てくれたのかもしれない。
耳に届いた足音に、何故さっきから「あいつ」を待ち焦がれているのかがよくわからないまま、春雨は足音の主を見る為、足音が聞こえた方に身体の向きを変えた。
(専用です。)

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2016年5月22日 21時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

「さむ…」
ぼそ、と本当に小さな声で呟いた。べっとりとした汗が流れていた額がひんやりと冷えていく感覚が体を冷やしていく。
初夏はこれだから面倒だ。夏と冬が入り混じっている。あいつは、いつも遅い。
「あたしがわざわざ来てやってんだから早く来いっての…」
むすりと不機嫌そうな顔をするも、その場所―食堂と反対側にあるなにかの部屋―に寄りかかっていた。
彼女はSランクの、水無月 ヒナ。何年か前に染めた黒髪が風に揺れ、彼女の端正な顔がちらりと垣間見える。
シュッとした鼻に、ぱっちりとした目、一文字に噤まれた唇。まるで絵画のような彼女を見つめる人間は、大抵が食堂から帰る人間、食堂に行く人間だ。
わあ、あの子誰?すごい可愛い。
私知ってるよ、あの子水無月さんって言うの。Sランクだよ、確か。
こそこそと彼女をみつめながら話す生徒達。彼女はそんなこと少女達をじろりと睨み、「アタシは見世物じゃねーよ!」と叫んだ。少女達は驚いてどこかへ逃げていく。
…あー、ほんと遅い。春雨、なにやってんだよ。ぶつぶつと呟きながら眉を顰める。
「…寒い。はやくしろ…」

朱夏 (プロフ) [2016年5月22日 21時] 1番目の返信 PCから [違反報告]

春雨は立ち止まる事なく歩いていた。
まだ、空には月も星もないが暗い。
鈴虫が鳴く季節を何故か思い出し、見えて来た部屋の壁によりかかっている女に気付き、春雨の口元は綻んだ。
「やぁ。ヒナ。待ってくれてたんだ。」
あまり食堂を使わない自分を、どうして今日に限って待ってくれていたのか。
春雨には見当もつかないのだが。
以心伝心か? と、考え、密かに首を傾げる。
「わざわざありがとさん。」
皮肉まじりに言ってみせるが、こう言うのが春雨の通常運転なのだ。
とてもありがたいと思っている。
「私は見世物じゃねーよ? 聞こえてたよ。」
揶揄うような表示を浮かべ、春雨は言って。
「けほけほっ。」
と、咳き込んだ。
寒いからか。
今日は体調が良いはずなのに。
あぁ、でも。
命に別状は無さそうだしいっか。
そんな事を何処か他人事のように考えて。
「食堂、何食べる?」
一瞬、苦しくなった胸を忘れるように春雨は言った。
最後まで待たせたことに謝るつもりがないのが春雨らしい。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2016年5月23日 5時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「おっせーよ、バカ」
むうっと頬を膨らませて怒ったような表情をするが、すぐに頬を緩ませる。
どんだけ待ってたと思ってんだ、と言って彼に駆け寄った。
ああでも、ここにいてよかった。なんとなく今日はここに来てそうだと思っただけだたのだが。うん、やっぱり、好きな人というものの思考は分かってしまうんだ。以心伝心?ってやつかも知れない。
「見てたの?…あれはあいつらが悪いって。こそこそ陰口叩くんだもん」
実際は陰口などではないのだが、彼女は陰口だと思い込んでいるらしい。
いい加減にして欲しいよ、と言いそうになったが、彼の咳き込む声が聞こえて焦ったような顔をした。
「春雨、大丈夫?…寒いからかな…食堂入ろ。アタシからあげ」
ぽんぽん、と彼の背中を落ち着けるように撫でながらそう言う。あくまで平静を装っているのだ。自分が焦ってわーわー騒ぎ立てたって、彼のためにはならないのだと分かっていた。何年も一緒にいるわけだし。
「気分悪くなったら、言いなよ。アンタは遠慮なんかしないだろうけど」
任せて、とでも言うように満面の笑みを浮かべる。普段はクールな印象を受けるが、笑うと意外に子供っぽい。といっても、笑みを浮かべるのなんて、彼くらいしかいないのだけど。

朱夏 (プロフ) [2016年5月23日 13時] 3番目の返信 PCから [違反報告]

「あはは。バカ……。」
バカじゃないよ失礼な。と、春雨はからから笑いながら背中に感じた彼女の手の平のあたたかさに、小さな声でありがと。と、呟く。
陰口だ。と、憤慨するヒナにあれは陰口じゃなくて褒めてたんじゃ……。と、思ったがまぁ、こそこそしていた彼女らも悪いとも思ったため、春雨は訂正もしないのだった。
「大丈夫だよ。いつもの事だし。」
不安になるけど、もう、慣れた。そう思って顔に笑顔と言う名の仮面を被る。
「僕は、焼き鮭かなぁ。」
唐揚げだ。と、答えた彼女に春雨は言う。
「遠慮しない……。僕の事、どう思ってんのさ。ま、そうだけど。頼りにしてるよ?」
もう一度ありがと。を、呟いて春雨ははやく行こ行こ。と、ヒナに笑顔を浮かべて、食堂への扉を開く。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2016年5月23日 20時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「馬鹿でしょーが!」
べー、っと舌を出してケラケラと笑う。女っ気が一ミリもないが、それすらも親しく思える。
ぽつりと聞こえたありがとうに、すこし恥ずかしそうな顔をした。何故かは自分でも分からない。
「慣れた、って…アンタねえ、アタシの前でくらいは素直になりなよ」
いくらアタシでも、アンタをめんどくさいなんて思わないよ。そう付け足して眉を下げ、ひどく心配そうにする。
「焼き鮭もいいなー…半分ちょうだい?」
ちょっと、ではなく半分。そこに彼女の性格が表れている、ような気がする。
「どう思ってる、って…よくわかんないけど、好きかな。頼ってくださいよーっと」
にひひ、と茶化すように笑って先に彼を食堂の中へと入らせる。人少ないね、と呟いた。

朱夏 (プロフ) [2016年5月24日 15時] 5番目の返信 PCから [違反報告]

「うっわ。ひっどーい。」
春雨はからからと笑い、食堂のあたたかい室温に目を細めた。
そして、考える。
『よくわかんないけど、好きかな。頼ってくださいよーっと。』
何かさらりと言われたけど、俗に言う告白では? いやいや、ヒナに限ってそれはない。
病の所為で、あまり学校の外には出歩かない春雨だが、世間ずれしているわけではない。
世間知らずには入らないぎりぎりのラインだが。
一瞬フリーズしてしまった脳を無理矢理現実に押し戻して、
「じゃあ、唐揚げちょうだいね?」
と、半分と要求した彼女に言った。
まぁ、半分よりも少なくしてやるつもりだけど。
あげてやってもいいかも。
もちろん唐揚げと交換で。
「確かに。人、少ないかも。もしかしたら遅いくらいなんだろうね。」
その時、不意に思い出したテストの事。
全くもって勉強していないのだが。
「……嫌なこと、思い出した……。」
小さく呟く。

yuiyui(*^_^*) (プロフ) [2016年5月24日 19時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]
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