麻白「お腹……減った……」昼休み、弁当を食べ終えたばかりなのだが、やはり腹は膨れない。しかし我慢もできず、誰かに食べ物でもたかりに行くか、と席を立った。
「おーい、ましゅーいる?」ひょっこりと他学年の教室に顔を出す彼女。手にはクッキーやチョコレート、パン、など様々な食べ物が抱えられていて、彼女はそれを得意げに掲げた。「暇でしょー?これ食べようぜー!買ってきた!」
「!!! りずちゃーん!それくれるの!?ほんと!?」ぱっと麻白の顔が明るくなる。それは最近彼女と顔を合わせることが少なかったせいでもあった。
「おうともよ!新作もあるし食おー!!」相変わらず喜怒哀楽が激しい、と彼の顔を見ながら思う。あまり会っていなかったけど、意外と変わらないものだ。なんだかすこしほっとしながら、彼にお菓子をいくつか手渡した。
「さっすがりずちゃんは太っ腹だねぇ!でもあんまり食べてるとほんとに太るよ?」次々にお菓子を消費しながら毒を吐く。しかし、彼女がこれくらい気にしないことも分かっていた。
「わかる~!やばい!でもそれお互い様だよ!」もっもっとパンを頬張りながらけらけらと笑う。ちょっと前、お互いによく会っていたころは、顔を合わせたらお菓子を食べるというのが当たり前だった。そのおかげで、あの頃の体重の増え方が異常だったのはまだ覚えている。気にしてないけど。
「僕は運動してるから太らないもん」水泳選手にはかなりの体重が必要だ。もっとも、麻白はむかしから大食いだったので、そのあたりの体重調整はよく出来ていた。
「私だって陸上部ですしー!えっへん!」昔から走ったりするのは好きだったし、一応そこらへんはちゃんとできているのだと信じたい。お腹を弱く抓って、このお肉全部胸に来いよ、と不満げに言った。
「りずちゃんは平均的だから大丈夫だよ」微妙な強がりを見せる彼女を微笑ましく見つめる。何が平均的なのかはあえて言わなかった。
「…それフォローになってる?」年下にフォローされるのもぐさっと来るし、大体それはフォローなのか。優しいけどたまーに毒を吐くからビックリするんだよなあ…を彼を見ながら思った。
「大体、女の子の魅力のある箇所って人それぞれだと思うんだよ」これは本気の発言だった。たとえばりずちゃんなら……と軽く思考を巡らせる。
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