ふぶき様専用
「(褒められた……)」嬉しいと珍しく、顔を綻ばす。頬を朱に染める辺りに何処か乙女だと感じるが、マフィアに入って以来それは無いので、けして恋愛感情はない。だが上司に褒められたのは嬉しいようだ。が、顔を何時もの真顔に戻す。そんな考えはない、十月の頭はボスである彼がいる。「追わなくて宜しいので?」と問い詰める。「マフィアに潜入され、貴方の命が狙われた……。いくら貴方の妹であっても処分するべきでは?」
「俺の妹さ、悪魔に脳みそ半分とられちゃってさ、俺のこと忘れてて敵とみなしてるんだよねぇ」と言いながら足を動かす。その背中はどこか寂しげであった彼はいつも仕事では残虐な事しかしないが、仕事以外のオフは大体の時間、妹に費やしている。
「家族……」バレないように呟く。十月には家族がいない、幼い頃から捨てられて孤児として育てられた。マフィアに入り、17年間淡々と任務をこなしていた。その間、とやかく騒ぐ、感情が嘘のように無くなった。恋愛も親愛も何もかも同様することがない。だからか、いくら敬愛するボスの思いにも同様しなかった。「そうですか、貴方は予想以上に家族が大切なのですね……、では私が今妹様を追って始末する、と言ったらどうしますか?」同様なんて、ない。家族なんて、知らない。
「…真日の場合、始末する前に自分で自殺しちゃいそうだな」数秒考え、言った言葉がこれだ。全く心配すらしない感情で相手に告げる。「まあ、俺が言ったらおかしいと思うんだけど真日はこの裏世界にいちゃいけない。俺だって一度半殺しさせられたからね…」苦笑しながらあの時は流石にない、と思い返しながら
「はぁ……貴方、やはり分かりません」かれこれ彼がボスになるまでさまざまなボスを見てきた。彼は何を考えて何を思っているのか分からない。読むことさえ出来ないし、かといって読むことさえ許されない。妹を大事に思う反面、他人事のような物言いをするから十月を、惑わせる。彼は何を思って、大事にしているのか。分からない、だかそれは十月には一生分からないものかもしれない。
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