ふぶき様専用
ふっ……と十月は軽く息を吐くと、路地裏に隠れた。腰にあった小さめのリボルバーを取り出し、狙いを定める。だが中々標準に合わず、舌打ちを溢した。「ちょこまかと……!うざったい……」十月にしては珍しい動揺であった。その動揺が「任務失敗」という引き金になることを嫌ほど知っているのだが、そう自分を攻め立てるほどずれていく。「警察………ごときがっ!!!」パンッ___。乾いた銃声の音が路地裏に響いた。
「かんちゃ〜ん?そんなに焦ってたら殺せるもんも殺せないよ?」そう呑気に言いながら十月に近寄り、自分が羽織っていた軍服の長いコートを相手の頭に被せ、前が見えないようにする。これは今から自分が能力を使うサインである。手袋を取り、腕まくりをすると偽装の腕が見える。「ちょっとビリってするくらいだから、死にはしないと思うけどっ」そう言い、手から電流を出し、警察らの方へ手をかざすと真正面に電撃が当たり、麻痺したように警察は倒れこむ
「っ、」緊張の糸がほどけたように十月は座り込んだ。かちゃんと手に持っていたリボルバーが音を立てる。放った銃弾は警察の間を通り抜けた、標的に当たっていないことを悔やむ。また手を煩わせてしまった…。ぎりぃ、と唇を噛む。私の大切は上司である主人。マフィアの大事な頭領。それを守るのが部下の役目。だが守れなかった。守れなかったどころか、助けられた。それも契約した能力を使って。「申し訳ありません……」
「いーのいーの。ほら、立てる?」相手が倒れたと確認し、十月に寄り、相手と同じ目線にしゃがみ、手を差し伸べる。次、また頑張ればいいの。期待してるよ?かんちゃん、と優しく笑いながら相手に語りかける「さすがに久しぶりだからか腕が取れちゃったな…」と言いながら片方の偽装を持ちながら言う。やっぱり新しいのに変えた方がいいのか?と1人でブツブツと考えている「かんちゃんはどっちがいいと思う?新しいの、作ったほうがいいかな?」と全く関係ない相手に話しかける
「………そ、うですね」頭を振りかざし、通信機を、装着する。繋がったのを確認して要請を頼む。いつの間にか冷静さを取り戻していた。「こちら十月です、車をお願い出来ますか?」軽い会話を終え、通信を遮断する。「迎えが来るそうです、暫くお待ちください」倒れている警察の脈を測る、辛うじて脈があるようだ。十月はかちゃりと弾を入れ換える、愛用している一番古いリボルバーである。警察の額に銃口を向ける。「せめて、安らかに」
「気に入らないものは全て壊す。いいね、かんちゃん。好きだよ、そう言う所」とクスクスと笑いながら殺れ、という笑顔で相手に言う。異能を使っていた手に口を使いながら手袋をつける。そして、異能でしばらくの間右腕を偽装で固めておく「俺さ、たまに思うんだよね。裏ボスってなんの意味があるのかって」そう言いながらコーヒーを飲む
バンッ、乾いた音がまた響く。目が開いたまま亡くなった警察に手を合わせ、瞳を閉じさせる。そしえ立ちあがり、慕うボスにひざまづいた。「そんな悲しいことを言ってはいけません。このマフィアにとって貴方は必要なのです。誰よりも貴方が必要なのです。私は貴方だけを慕い、任務をこなしている。そんな些細なことでも意味がありませんか?」
「あー………まあそうだけどさ?ボスちゃんが大体まとめてるじゃん?」ちょっと照れるからやめて、と言いながら笑い、ありがと、と頭を撫でる「俺の仕事は裏で依頼をこなしてお前ら部下の面倒を見るだけの簡単な仕事なんだけどね、こんなに慕われるとは思ってもなかったよ」そう笑いながら言い、着いた車を見つける
「(少なくとも、私がですがね…)」と笑う。何処か子供っぽいのに頼りになるその姿に憧れた。誰よりも、負けない思いを貫き続けた。他の幹部や構成員は知らないが少なくとも十月は彼を慕い、任務をこなす。これはいつまでもたっても変わらないであろう。車に向かう彼の背中を追い求める、と、何処かで小さな音が聞こえた。カチリ、何かスイッチを押した音。考えられるのは一つ、これは映画で見られる爆弾のスイッチで仕掛けたのは車。狙いは___「っ、ボス!!!」十月はとっさに走り、彼を突き飛ばした。
「、」少し驚いた表情を見せ、突き飛ばされる勢いと同時に壁に立つ悪魔ちゃんの仕業かな?それとも警察?あ、それか海軍という可能性もあるぞ、と心の中で考えながら頰に手を置く。相手は大丈夫か、相手の方へと立ち寄る「かんちゃん?だいじょーぶ?」
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