国の下の王選街

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戦う気のない癖に。
前回の祭りの際に敗北を差し上げた相手からの遠吠えだった。
そんなことは、ないはずだ。勝たなければ報酬は弾まないし自由に振る舞えない。十分な理由を持って争いに励んでいる。
けれど言われてしまった。のは。きっと自分がツァウバラーの長の転生者であるにも関わらず、恨みや復讐の心で動いていないからだろう。
王選街のルール。たくさん勝てば、あの王に会えるとか。躍起になる者もそりゃああるだろう。けれど彼はそんなものに興味を示せなかった。
昔の友であるから情が湧いた?別にそう思ってくれても構わない。
他人の考えはよくわからないし、昔の行動を後悔したってしかたがないのだから。
だから、そう。
こうやって乳母車に乗ってミルクを飲むのに十分な金があればいい。

『ふむ、なかなかいい筋をしているんじゃないか?片腕なのによくやる』
乳母車の中の赤子は正面の相手にそう告げた。少年の声には大人びていて、赤子の声には大人びていて。しかしそれが魔術により発せられるものとくれば納得もいく。だが、そんな手段を使うのはこの赤子であった。
滅多に見れぬからと此度は中継の陣が多いと見える。目立つには充分。金を稼ぐには最適である。
何せこれは、かつて勢力を争ったいくつかの種族の二つ。魔術師と謳われるツァウバラーの長と、絡繰師と称えられるメヒャーニカーの長との勝負であり、そして。
どちらもこの街を統べる国の王であるメンシュの因縁の相手であるのだった。

【乱闘イベント】(専用)

鈴美 (プロフ) [2017年8月16日 17時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

『殺気立っているな、お前は』
まるで部隊をを客席から見るような客観さで淡々と彼は告げる。テドルと呼ばれた赤子のあだ名だ。本名はテドルティルタ=ゼチャという。しかしこの表現には少しの語弊がある。なぜならこの名前は前世を長とした彼の名前であり、現在の彼が使うもの。だからこれは、この赤子の体の名前ではない。そんなことこの王選街では珍しくない。
けれどテドルティルタはその名を呼ばれるたびに罪悪感を覚える。しかし何に対してそう思うのかを問われてしまうと、彼は困ってしまう。もっとも生憎だが、それが彼の戦う理由となるわけだが、実はノエルほどそのことに熱を注いでいない。しかもいつもどおりを繰り返すだけで金が入ってくるような報酬をもらえる状態の彼のこと。ここで必ず勝たねばいけない理由は無いのだがしかし。
『まぁ落ち着け。あの暴君のことだ。そうお前が苛立ってるのを見て愉悦に浸っているのかもしれんだろう。そんなことだからお前はあの時利用されたんだ』
落ち着いて皮肉を言って、彼はぼぷと。乳母車の周囲に魔方陣を出現させた。赤、青、橙。三つのそれである。ばちばちと光今にも何かが飛び出してきそうだ。
『それに俺たちがこうして王位とやらのために争っていることもくだらないと眺めてるのかもしれない。そしてお前に俺が相手というのは分が悪いだろう。ほら、利害が二つ一致だ。ここはお前が白旗をあげるがいい。それでお前の言うとおり喫茶店へ行こう』
あくまで彼のことを気遣うようなことばをテドルティルタは選んだ。
しかし彼のことをよく知るノエルには、それが頭に浮かんでいただろう。テドルティルタが長として生きていた頃。彼が皮肉を言うときはいつも。
口を逆三日月形にしていた。

鈴美 (プロフ) [2017年8月16日 20時] 1番目の返信 PCから [違反報告]

『……?お前はいつから科学者になったか』
テドルティルタの語尾が上がった。
彼が不思議がるのも無理はないのだ。ノエルの持つそれは恐らく毒だ。彼がその分野に携わったのは転生後である。だからテドルティルタは知らない。彼がいかにしてメヒャーニカーという種族の欠点を補ったか。彼がいくら血反吐を吐きその分野を極めたか。
テドルティルタは、知らないから、
『BAN』
その瓶を射撃した。
発動したのは青い魔方陣だった。陣の中心からレーザービームのような射撃。それがノエルの手にする瓶の底を貫いた。
テドルティルタの発した「BAN」という言葉と陣以外には、予備動作なんて見られなかった。
『昔も言っただろう。獲物を見せるなと』
酷く落ち着いた声色だった。
転生前から彼のこれはずっと他の者たちにズルいだの卑怯だのと言われてきた技である。詠唱や触媒を持たずとも魔術を使役することができる。
しかしこれにも少しの語弊がある。彼の技の秘密は頭に生える角によるものなのだ。膨大な魔力の詰まったそれが、異常なほどに全てを統べてしまうような技を可能とさせるのだ。
テドルティルタは顔をしかめる。
『ずるい、だなんて言ってくれるなよ。お前なら知っているはずだ俺にとってこの術は手足を動かすと同じ。手足を動かすなだなんて、昔の餓鬼みてぇなこと』
そう言われてしまえばノエルは何も答えられないかもしれない。だが同時に彼は誇らしかったかもしれない。
テドルティルタは転生前、その術の強さが理由で制限を強いられていた。だから昔の彼ならば友の前で、それもこんな中継のある中でそれを使うことなどしない。
それなのにテドルティルタがそれを使用するほど、彼の見立てにノエルの薬品は危険なものに見えたのだ。

鈴美 (プロフ) [2017年8月16日 23時] 2番目の返信 PCから [違反報告]
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