国の下の王選街

メッセージ一覧

【乱闘イベント】

からから。からから。から。
乳母車は止まった。引手のいない乳母車。ただそれには赤子が一人乗るだけである。可愛らしく縮こまり、薄手のブランケットをかけて愛らしい。
しかしそれがあるのは祭りの真っ只中である。祭りといっても出店がそこいらにあり、踊り子が舞台で跳ねるようなそれではない。ついでにいえば王の行進もない。
乱闘イベント。
この王選街でたまに起こる一つの催しである。
思い思いに己の力を奮って点数を稼ぐというものであるが、それは力無きものには耐えられるようなものではない。各々の雇い主が弁償するとはいえ壁や道にひびが入る入る。
しかも今乳母車のいるこの辺りは、噂になるほどの強者が二、三人ほど徘徊しているはずである。だから並のものはまず近寄らないがどうしても用があったり道に迷った者は物陰に隠れていなければならない。
ちょうどこんな風に。
『おい、小娘。貴様がこんな所に現れるなんて珍しいな。自害でもしたくなったか?』
乳母車の中の赤子は煉瓦道の脇にあった樽の向こうにそう声かけた。

鈴美 (プロフ) [2017年8月15日 19時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

専用です!!

鈴美 (プロフ) [2017年8月15日 19時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]
メッセージ返信
メッセージの一覧に戻る
(C) COMMU