八百万の心と神
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圷. (プロフ) [2016年7月26日 2時] [固定リンク] [違反報告]デジャヴ。既視感。そんな言葉じゃ済まない何かを感じた。
場所が場所であればご神木とも呼ばれるであろう大樹の前に、一人番傘をさして佇む。くるくると傘を回し、意味も無く大樹に掌で触れた。ひんやりとしていて、しっとりしてる。気持が良かった。
「…何でだろうな」
呟き、大樹から離れて、番傘を閉じる。
先程からずっと、何かの拍子で始めて訪れた筈の此処に、酷い既視感を感じていた。とても懐かしくて、心の底が温まるような、そんな感覚がする。頭の奥の奥で、遠い日の記憶が濃い霧が掛かったまま渦巻いている。断片的に浮かぶ。
自分でない自分の幼い姿。見たこともない筈なのに懐かしい誰か。暖かい手と、幼子らしい可愛らしい約束。
そこまで浮かんで、割れそうなほどの頭痛がして。頭を押さえてその場に崩れ落ちた。ふわんと草の青臭い匂いが香った。
「っ…ぐぅ、ぁ…」
痛い。痛い。拍子に番傘を落として、カランと音を立てる。耳鳴りもする。呻き声をあげながら、目をキツく閉じると…懐かしい誰かの、懐かしい気配がした。
塵芥 (プロフ) [2016年7月26日 11時] 2番目の返信 [違反報告]ふと、動物たちが騒ぎ始めた。
木々までもが鳴いている。
また人の子が迷い混んだか。はたまた、俺を落としに来たのか者たちか。
何れにせよ見に行くしかあるまい。
動物たちに大丈夫、と声をかけて人の子がいる方に向かう。
ここ数年は彼が来たのでは、と期待するのを止めてしまった。
どれだけ待っても来ないから。
やはり人の子との約束など所詮その程度。
期待していた俺が馬鹿だったと思えば、幾らかは楽だった。
どうせ、彼ではないから期待をするなと自分に言い聞かせていた筈だった。
『……。』
その筈だったのに、今大樹の前に彼がいるではないか。
驚いたが表情には出さず、カランと音を鳴らしながら小走りで彼に近づく。
何故か苦しそうに蹲っていて、目尻に涙が浮かんでいる。
人の子は約束など忘れるから、何も覚えてはいないのだろうけど…助けないと。
そう思いそっと彼の髪に触れた。
勝手に記憶を紡いでいるせいで苦しんだいたらしい。とりあえず過去を紡ぐのを止めた。
すると彼は、痛みから解放され、意識を失ってその場で倒れこんでしまったので抱き上げて家に運んだ。
圷. (プロフ) [2016年7月26日 18時] 3番目の返信 [違反報告]夢を見た。遠い日の記憶。前世に忘れてきた、淡く愛しい、幼き約束。
幼かった自分からすればとても背の高い男性が目の前にいて。彼の醸し出す雰囲気は酷く清らかで、今となれば神と分かるが、小さく知識のない自分には分からないようで。穏やかな顔をして自分と目線を合わせる神に、前世の僕は小指を立てた手を出した。そして口を開いて。
「…ぼくが大きくなったら、ぜったいにーーをむかえにくるから。それまでまっていてね。やくそくだよ」
やくそく、と言って指切りをかわす。嗚呼、確かにこれは『やくそく』だ。…神との、『契』だ…。破ってはいけない。そう分かるのに、前世で命を落とし転生してしまった今世の僕は、彼とは相対する位置に立ってしまっていた。これは、どうなんだ。僕は、愛する彼との約束を、愛してくれた彼との約束を、契を破るのか?
「…ごめ、なさ…黒柊、さま…」
塵芥 (プロフ) [2016年7月26日 19時] 4番目の返信 [違反報告]『…気にすることじゃないのに。』
小さくため息をついて家に帰ると彼を布団に寝かせる。
約束など忘れてしまえば綴も楽なのに。
今の世界は人の子と神は敵対する存在。
此処に来たのが偶然でも、無理して思い出す必要も、謝る必要もない。
俺は人の子を嫌いになってしまったから。
綴の事は好きだけど、いざ会うと本当に好きか自信が持てないから。
神だと言うのに自信がないなんて馬鹿げた話しだ。
だからお前がした約束だけれどもう、守らなくてもいいんだよ。
噂は予々聞いている。
荒神を落として、式神として彼等のみを戦わせているのだとか。
俺といれば立場が危うくなるやもしれなのだから。
圷. (プロフ) [2016年7月26日 22時] 5番目の返信 [違反報告]前世の記憶を遡りながら眠る。幸せだった日の記憶だ。遠い日の約束でも、今はもう守ることが難しい契でも、破るなんていうことは到底出来なかった。だって黒柊は、僕にとって最初で最後の愛しい人なんだ。彼を失えば、僕はもう一生誰かを愛することが出来なくなる。だって彼は神様だ。全ての能力が人間とは段違いで、そして人間の歪んだ心がひどく醜く見えるほど、優しい存在。神を愛し、愛されるということはつまりそういうことで、これから先、神を好きになれば、穢い人など愛することが出来なくなる。
嗚呼、黒柊様。その愛しいかんばせを、今一度…
「…っぁ…」
寝起きでどろりと溶けた藍の瞳が、ゆっくりと開いて行く。光に目がなれず、逆光か何かで、そばに居てくれていた誰かの姿が見えなかった。
掠れた声を紡ぎ、目を擦る。
「…こ、こは…何処、でしょうか」
塵芥 (プロフ) [2016年7月26日 23時] 6番目の返信 [違反報告]『ん、あぁ、起きたのか。俺の家だよ』
まぁ、少し動物達のせいで獣臭いが。
さして表情を変えず、じっと彼を見つめた。
会った当時とあまり変わらない。いや少し大人びたのかな。
俺が知っている彼の面影は残っていて、何故か安心した自分がいる。不思議だな。
『気分はどうかな?』
会ったことのない、他人事ではあるが、いつも人の子と話すときと同じ話し方で彼に対応した。
思い出したかなど、俺には到底わからないし、思い出さなくてもいいと思ったから。
神だからと言って何でも分かる訳ではないのだ。
彼がどう思っているか何て知るよしもない。
ただほんの少し覚えていてくれたらと願うのが本音だが。それも怪しいとこだ。
言い方だ悪いのかもしれないが、綴のことは本当に愛していた。勿論今も変わりはない。
だから…覚えていてほしいなんて。