「あづ~……」 暑くてたまらない。背負った薙刀が熱されて……何とも嫌な気分。だが、こんな日こそが式神探しにもってこいだもんねェ。 「……んん?」 おや、あそこの木の下にいるのは誰だァい? 見た感じ、ひょろい式神かなァ。ま、ちょいと斬りかかってみようかァ! 僕はかるーく跳び上がって、彼の一寸横に薙刀を振り下ろしてみた。
「…ふぅ」今日は酷く暑いものだから、木陰にいて涼んでいた。やっと落ち着いたと思ったら、横から鈍い音が響く。大袈裟ではないか、と思うほどに肩を跳ねさせる。恐る恐る横を見れば、なんだっけ、なぎなただった気がする、それが刺さっていた。突然コレが自分のところに刺さるのは可笑しい。いや、自分は式神なのでそこまで不自然でもないのだが…暗青色の髪を揺らして、なぎなたを持っている人間?を見る。
「はっじめまして~♡ 李織ちゃんだよォ♡」 笑って、怯えている彼の足元を薙ぎ払う。これを避けれたら彼は式神。避けれなけりゃ……まァこの薙刀は人間を斬れないんだけどねェ。 僕はニコニコ笑ったまま、彼がどうするかを見ていた。……恐怖に歪んだ顔が、何とも面白いねェ。見ていて飽きないよォ!
「ん!」防衛本能で、足元を斬られそうになるのを避ける。着物が切られていないだろうか、疑問と心配が浮かんだが、今は気にしてはいられない。「や、やめてください!僕、何でも…っ」上手い答えが見つからないのか、焦りながら口を開閉させる。
「んー? 何だァい、ハッキリ言ってごらんよォ。言えるものならねェ!」 避けた。ならこいつは式神! しかも結構気が弱そうだなァ……棚ぼただよォ! パクパク口を開閉させてる式神クンに向けて、僕は跳び蹴りをお見舞いする。鈍い音がして式神クンは怯えた目で僕を見た。
「ゔっ!?」自分の体に痛みが走る。恐怖に満ちた目で人間を見つめる。あぁ、多分この人間から逃げられない。そう悟った式神は、それを考慮した上で思いを巡らせる。考えて、考えて、辿り着いた答えはこうだった。「力…力を、見せますから、やめてくださ、い」
「ヘェ!」 少し、この式神クンに興味が沸いた。僕の好奇心が、頭が、彼は面白い存在だと認識した。。だって、僕の望むことを見事に突いたんだよォ? 敬意を表してあげないとねェ! 「いいよォ、見せてごらァん。た、だ、し! 逃げたら遠慮な~く斬り棄てるからねェ♡」 そう言って、取り敢えず薙刀を下ろした。
そっと手を交差させ、目を瞑って人間に祈る様な姿をする。「…静かに、ゆっくり、浅き夢を…僕と、この人間に…」一言ずつ呟いて、最後に目を開く。おや?さっきと景色が違う。非常に混沌とした世界の中に来た様だ。
「ランダム世界移動……いや、幻覚かなァ」 混沌に満ちた空間を見回す。式神クンは僕に見せているのか、はたまた僕と来たのか。何にせよ面白そうな能力じゃアないかい? 「これは、どういうことなのかなァ?」 好奇心を瞳の奥に見せながら、式神クンに笑い掛けた。
「い、たいっ…!」頭を抱えながら、息が荒くなる。彼の訴える痛みと連動するかの様に、ぐにゃり。歪んでは別の世界へと、どんどん世界を変えていく。不思議なのは、どの世界も地獄の様な絵面なことだ。
「おやァ」 ふむ、式神クンは随分苦しそうにしてるねェ。まだ僕は聞きたいことがあるし……致し方ない、助けてあげようじゃアないかい? 薙刀を投げ棄てて、コートのポッケから捕縛符を取り出す。……これ、失敗作でさァ。捕縛するんじゃなくて、自滅対策用の符になっちゃったんだよねェ。つまり、これを持ってると自分の霊力や、能力を跳ね返す事が出来るようになるのさァ。あれだね、小さくて、力の制御ができない強い子に持たせる符だね。 「そいっ」 間合いを詰めて、額に符を貼り付けた。
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