八百万の心と神

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けん玉も縄跳びもあやとりも、させてもらった思い出なんてない。それでも世界にはうんと楽しいことがある。それを知ってるから笑ってられる。
なんて。子供のくせに悲しいことを主人は言うのだ。

鈴美 (プロフ) [2016年7月22日 20時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

空を見上げていた視界に、それは突然入ってきた。
青い空に良く映えるような『真っ白け』。見た瞬間、胸の奥をきゅっと捕まれた気がした。
恋なんかではないだろう。ただただ言い知れぬ違和感に包まれた感じだ。それでも警戒心は皆無だった。何故なら彼は、体の大きさこそそれとは違うものの、自分と同年代の少年のように見えるのだ。
「あ、あ、あの、ここは菊ちゃんのおうちだよ……?あっ、でも、借りてるから菊ちゃんのじゃないけどね!!」
来客の予定はなかったから、彼が迷い込んだのかと思った。勝手口の向こうは堀があるものの地続きだ。滅多にないだろうがありえないことは無い。
必然的に上目遣いになる黒目は少し不安になる。なんてったって『真っ白け』の彼は笑顔のまま何も言わないのだ。怖くはないが、心配だった。何かいらぬことを言ったかと思い、叩かれてでもしてしまうのかと思った。

鈴美 (プロフ) [2016年7月22日 20時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

迫ってきた手にぎゅっと目を瞑る。叩かれると思った体はふわりと浮いた。それで提案する彼の目にやはり『真っ白け』なんて思うのだ。
だから反応が遅れた。家を、彼は、遠ざける。
「あ、あ、あ、えっと、かげろうくん!菊ちゃんもね、お遊びはしたいけど、い、今お留守番してるところなんだよ……?とうくんを待たないとなんだよ……?」
不安がって白い水晶体を覗いて見ても、ますます知らないどこかへ運ばれるばかり。やっとここで怖いと、警戒心が産まれた。
彼女の言うところのとうくん。それは彼女の持つ式神の一つだった。
式神は主人の心を敏感に察する。だからきっと今頃、それの胸が騒いでいることだろう。

鈴美 (プロフ) [2016年7月22日 21時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

わからないことばかり並べられて、身体に対して精神の追いついていない彼女は当然困惑する。しかしそれから導き出された答えは、歪だった。
「あ、あのね、かげろうくん。菊ちゃん、頭悪いからかげろうくんの言ってることよくわかんないんだけど、でも、あのね」
もじもじと節目に、不安げに問う。
それは過去の経験から、これまた当然のように口から這い出る質問なのだった。
「それなら、とうくんに、怒られないの──?」

「なんだお前」
自らの主人の代理として、彼は彼女の上司とやらに品を届けた帰りだった。家の中に、主人の気配がない。しかし気配はあるのだ。
主人のように純情ではない気配が。
廊下を歩いて、襖を開けて、いない。別の廊下を歩いて、襖を開けて、いない。いないがその部屋の障子の向こうに気配。ふっと一つ息を吐いてそこを開ければ、いた。
見知らぬ神が。

鈴美 (プロフ) [2016年7月22日 21時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

『真っ白け』のよくわからない、彼女にしてみればすかすかも中身もない、よくわからない言葉だろう。それでもその空白の中に、呑み込まれるように。
彼女はにっこりと笑ってしまった。
「じゃあ、遊ぼう?」
安堵を抱える無垢な心では、彼の心に気づくことなどできない。
そこに漬け込んでいるのはきっと、目の前の彼だけではない。

へらへらと笑う、式神。俯瞰すれば、焦る自分が馬鹿らしく見える。
「おい、お前。俺の主人を知らないか」
少々の敵意と警戒心と不信感を持って、目の前の狐ヶ崎と名乗る式神を睨んだ。いない主人は、もしやこれの仲間にでも連れていかれたのかと思ったのだ。
これに、主人の匂いはついていない。
だから安心して一歩踏み込んだ。威圧を込めた瞳は、狐ヶ崎の白い髪を映しても薄汚れて淀んで、眩んでいた。

鈴美 (プロフ) [2016年7月24日 3時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]
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