八百万の心と神

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目を閉じ、瞼の裏に浮かぶのは10数年前の情景。
人からすれば気が遠くなりそうなほど永い時を生きているが、この世はまだまだ不思議なことに溢れている。飽きもせずこの世をうろつき回るのは、その全てを解明しようと思っているからか。
「…なぜ君は此処にいるの?」
からん、と漆塗りの下駄が軽い音を立てた。目の前にいるのは、幼き人の子。
小さな身体をした少女は、ゆっくりと此方を見た。
「神様…?」
此処は神域。人が侵すことのできない領域。その筈なのに、何故この人の子は此処にいるのだろうか。
狩衣の裾を揺らしながら少女に近づく。彼女は逃げなかった。
「お帰り。此処は君の居て良い場所じゃない…」

(専用)

圷. (プロフ) [2016年7月20日 2時] [固定リンク] PCから [違反報告]

「かみ、さま……かみさまぁ!」

幼子はその神に抱き着いた。足元に縋り付いてグスグス泣いて。

驚くその神を全く意に介さず、幼子は語り始めた。

「神様、神様……あのね、神様がね、式神様がね、私の目の前で……消されちゃったの」

辿々しい言葉で、一生懸命その神に伝えようとする。

「消したのは式神様でね、その式神様も、泣いてたの……私も、その式神様二人にね、仲良くして貰ってたからね……凄く、悲しいの」

極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月20日 2時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

たどたどしく語る少女に、同情しなかったと言えば嘘になる。
小さい少女に合わせて身を屈めると、ゆっくりとその頭を撫でた。
狩衣の裾で涙を拭う。
「今は、落ち着こう。…式神が、式神の手で?」
人の仕業だと瞬時に察する。彼等は私たちを目の敵にしているのだ。
使役して、酷使して、仲間であったはずのもの達を手に掛けさせる。
惨い事を…。そう思い、一人歯をきつく食いしばった。
「…それは。…暫くここにいなさい。そんな気持ちで帰るのも、嫌でしょう?」
君と同じ人の仕業だよ、だなんて口が裂けても言えず。
同情からか、私は少女を一旦は此処に置くことを決めた。

圷. (プロフ) [2016年7月20日 2時] 2番目の返信 PCから [違反報告]

「そう、なの……二人はね、四千年くらい前からのね、物凄く仲の良い、式神様だったの……なのに、なのにね……!」

幼子は涙をこらえるように歯を食いしばり、その年丈に合わない顔でこう言った。

「大人達が笑って、呪いを掛けたの……! 『試しだ、その式神……零夜だったか? そいつを消しなさい、黒鈴』って! 黒鈴様はね、嫌だって叫んだのにね、零夜様をね、消して、しまったの……」

少しして落ち着いたのか、幼子は目の前の神に頭を下げた。

「ごめんなさい、もう少しここに、居させて下さい」

極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月20日 2時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「…黒、鈴」
何処かで聞いたことのある名前。同じ式神であったか。知り合いではないが、何かの縁でその名を聞いた気がする。
ほろほろ涙を流す幼子の頭を、なるべく優しく撫でる。
時折涙を拭いながら、私としては珍しく人の子に寄り添い続けた。
「…辛かったね。すべて吐き出せるようなら吐き出しなさい。
…言霊にならない程度にね」

圷. (プロフ) [2016年7月20日 2時] 4番目の返信 PCから [違反報告]

「う、ひぐっ……零夜、さまぁ……黒鈴、さまぁ……私に、もっと……力が、あれば……黒鈴様を、荒神様に、戻せたらぁ……」

その神の言葉に、再び幼子はぐずりだした。目の前で起きていたことに、何も出来なかった自分を呪った。神々を冒涜している大人達を呪った。

泣いて、呪って、吐き出して。

何時の間にか幼子は、神にしがみついたまま眠ってしまっていた。

「こ、くれい……さま……」

極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月20日 2時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「…はぁ」
眠ってしまった幼子を抱え立ち上がると、この神域を出るため歩き出す。
からんころんと下駄を鳴らしながら歩き、時々ぐずる彼女の頭を撫でた。
真実をこの幼き人の子に伝えるのは酷だ。ならばこの人へ対する恨みつらみも今は押し込んでしまおう。思いは伝染する。
「この子の恨みも呪いも…言霊にならないといいね」
神域を出ると、中とは違う淀んだ空気にむせ返りそうになる。
中に綺麗さを強く感じた。

圷. (プロフ) [2016年7月20日 2時] 6番目の返信 PCから [違反報告]

「……あれから、10年か?」

私は何時ものように散歩をして、あの日のことを思い出していた。

「あの神様からすればあっと言う間なんだろーけど、私からすれば長い10年だったよ」

腰のバックから狼の仮面を取り出し、顔に付けた。

「神様、もう一度貴男に会いたいです」

極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月20日 2時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

からん、ころんと下駄の音がする。鈴にも似た音を鳴らしながら歩けば、懐かしい声がどこからか聞こえてきた。あの時の声よりは幾分か落ち着いているが、それでも聞いた事のある声だ。その声が私を呼んでいる。応えずに、どうする?
「…呼んだかな、人の子」
何もない空間にその姿を霧と共に現す。りーん…と長く細く鈴がなった。

圷. (プロフ) [2016年7月20日 20時] 8番目の返信 PCから [違反報告]

「神様……!」

仮面の下で目を見開く。あの日と同じ姿で、神様はそこに現れた。

綺麗な鈴の音が耳を擽って、思わず破顔する。神様だ。神様だ。

「お久し振りです、神様」

無礼の無いように仮面を外して、頭を下げた。

「十年前は、ありがとうございました」

極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月20日 22時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

「久しいね。10年前の様に泣いていなくて、安心したよ」
にっこり笑って、成長した彼女の頭をあの日の様に優しく撫でた。
まだ追い付いてはこないけど、彼女の頭の位置は高くなった。目線も近づき、少しばかり違和感を感じた。人の子の成長は喜ばしいことだが。
「…大きくなったね」

圷. (プロフ) [2016年7月23日 12時] 10番目の返信 PCから [違反報告]
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