八百万の心と神
メッセージ一覧
極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月19日 13時] [固定リンク] [違反報告]俺は、目の前に居る問題児を見つめた。
「稲荷大明神……またお前か」
傍若無人かつお調子者。……それでいて荒神なのだから、俺以外には手に負えない。
……一度痛い目に遭った方が良いと思ってしまうのは、こいつの性格のせいだろう。
極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月19日 13時] 2番目の返信 [違反報告]「嘘をつきすぎるな……言霊で、真になるぞ」
ふっ、と霊力の流れを読み取り、稲荷の心を読み取る。……またやらかしやがったのか、こいつは。
「いい加減……少数派の人間“で”遊ぶのは、止めろ。数少ない味方だ……」
性格でもないのに説教をしてしまう。やはりこいつの性格のせいだ。俺の性格までねじ曲げるこいつの問題行動には……正直疲れている。
「あの時のように、一辺三途の川まで……連れていってやろうか……?」
溜息交じりに低い声で稲荷に言った。反省しないこいつも、地獄を見せれば流石に黙る。あの日のように見せてやろうか。
りんさん (プロフ) [2016年7月19日 13時] 3番目の返信 [違反報告]「あっはっはっはっは、面白い冗談を言う子だ!あの時はお前と僕との霊力差が無かったから油断しただけだ!だが今の君はどうだい?人間の霊力が混じっているじゃないか!そんな物で僕に勝てると、本気で思っているのかい?そいつは哀れだね…」
御託だ。半分は希望的観測でも有る。人間の霊力が混じっているとは言っても、その黒鈴と契約しているらしい人間の霊力は清い。然程差は無いだろう。
「遊ぶのは僕の勝手じゃないかい?彼奴ら僕の住んでる山の下で他の神を祀ってたんだよ?無礼にも程があるだろう。見目を変えただけなのさ、そんなに目くじら立てないでくれよ」
彼奴らだって本物の神の使者に成れるんだ、本望だろう。と続ける。
少しだけ口調が崩れて仕舞い、こほんと一つ咳をした。勿論祀っていた神主も巫女も山の上に荒神が住んでいるとは気付かなかったのだろう。最近はずっと寝ていて、起きた時に気付いた感じだからね。
極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月19日 23時] 6番目の返信 [違反報告]稲荷は気付いていないのか、やはり。俺の顔がどの位歪んでいるのかを。面白い話? ……俺の話が面白ければ、それは稲荷の頭がどうかしている。
俺は幻覚を色濃くした。
──『止めろ……止めろ、止めてくれ……ッ!!!!』
赤黒く染まった手が、誰かの体を貫く。
──『こく、れい……』
群青色だったはずの誰かは、真っ赤に染まった手を“黒鈴”と呼んだ彼に伸ばす。
──『厭だ……いやだいやだイヤだイヤだイヤダイヤダイヤダ!!!!』
一際大きな声が辺りに響く。そして……無情にも……“誰か”は黒い光となって消え失せた。
「稲荷。お前は荒神だから覚えているだろう。あれは……誰だと思う?」
稲荷を睨んだ。あれは、俺の最悪の記憶。そして俺が存在を根底から消したのは、俺と稲荷の友である、『零夜(レイヤ)』。
……これで理解しなければ、俺はもう稲荷を軽蔑するだろうな。
りんさん (プロフ) [2016年7月19日 23時] 7番目の返信 [違反報告]「あっはは、彼奴消えてたんだぁ…まあ弱っちいから当然か」
口調は軽い様に聞こえたが、その実稲荷は此処100年無い程驚いていた。
彼奴が死んでた?式神に為ったのだと思っていた。一体全体此れはどう言う事だ。
しかも…何故今の今まで彼奴の事を考えなかった?記憶がずるずると糸を引く様に出て来る。
「……やっぱつまんない話だったね。もう少し面白い話の仕方っての覚えたら?」
くぁ、と少しだけ態とらしい欠伸をする。神と言うのは生まれてから重ねた年数が多い程大抵の場合強くなる物だ。しかし零夜は弱かった。戦いを嫌う性格の事も有ったのだろうが、最期まで希望を捨てなかった。その結果がこれか。
どうしようも無い怒りを黒鈴にぶつける。自らの気持ちを振り払う為と、黒鈴の全力を見たいが為。
「あんな小さいの存在も忘れてた…ってかそんなの居たっけ?」
極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月19日 23時] 8番目の返信 [違反報告]「……何だと」
心を読むのも忘れて、言った。自分のものでは無いような、地を這うような低い声が地を揺らす。
右眼に昏い痛みが走る。……いかん、我を忘れるな。再び堕ちる羽目になるぞ。
ぐっと唇を噛み締めて、稲荷の目を再び、睨んだ。……もしかしたら、邪神の頃と同じ殺気を放っていたかも知れない。俺の周りから瘴気の匂いがした。
「……邪魔をした」
俺は踵を返した。このままここに居るのは、稲荷のためにも、俺のためにも、何よりも自然界のためにならない。
何時我を失うか解らない。……あの子の下に帰ろう。迷惑を掛けないうちに。
りんさん (プロフ) [2016年7月20日 0時] 9番目の返信 [違反報告]「はは、善い眼すんじゃん」
遠ざかる黒鈴の背中に向かって呟く。生憎瘴気には慣れているのだ。
兄弟で友人で親で子供だった狐が、何匹も何匹も堕ちて居るのだ。慣れない筈が無い。
目の前で咲き誇っていた染井吉野が、まるで毒を吸った様に枯れ果てて仕舞っていて小さく笑った。触れて霊気を込めるとあっと言う間に蘇る。木に尻尾が生えていると言うのは意外と可愛い物だ。
堕ちるなら僕が先かと思っていたのだけれど、どうやら違ったみたいで。
「でもね…6000年も生きてるとねぇ…正直何もかもどうでも良いよねぇ」
そんな事より今日の夕飯の方が大事だよ、と考える。先程の動揺は何処へやら。
この神に人間の考え方は通用しない。形は人間であっても、中身は恐ろしく狐なのだから。
極夜@写しの本 (プロフ) [2016年7月20日 0時] 10番目の返信 [違反報告]狐で、大明神で、独りの稲荷。
寂しい、という感情が頭の片隅で聞こえたが、流した。俺では稲荷の穴を埋められん。
出来るとすれば……
「……俺は、いつの間にかあの子に依存していたようだな」
気付いて、自嘲した。稲荷のことまであの子に背負わせるつもりだったのか、俺は?
歩きながら、自分自身の霊力を撒き散らした。過ぎゆく場所から、狐が人間の姿に戻る。序でにと俺自身の力を埋め込んで、稲荷の力を跳ね返せるようにした。……まぁ一時しのぎだが、暫くは何もしなくなるだろう。
「また今度、来るか……」
稲荷の耳に届くよう、少し大きな声で呟いた。