ボードの代わり?

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4―1稚奈くんと憂夜さん

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 20時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

(あ、なら此方からやりますよ!)

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 20時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「まあ、こんなものか……」
憂夜は小さく頷き、稚奈に補修プリント──ペケと解説付き──を手渡す。
瞳の奥にはねぎらいの感情が分かり難いが見え隠れしていた。
「もう帰って良い……夏とは言え、夜は危険だからな」
ふう、と溜息を吐きつつ彼は窓の外を見る。夕焼けに目を細めて稚奈には教室の出口を指し示す。これもまた分かり難いが、心配をしている。

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 21時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「親に心配を掛けるな……」
稚奈の頭を優しく撫でながら首を振る。好きだと言われて嬉しいことは嬉しいのだが、それとこれとは話が別だと、そう言う意を込めて。
「……ここまで解けるならもう補修は……明日からのは要らないだろ」
だから帰れと、強くは言わないが目で示す。言葉に出来ないのは彼の優しさであり、弱さであり、気遣いだ。
「……家に帰れ、稚奈……俺は良いが、お前の親には迷惑を掛けるな……」

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 21時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「……待て」
憂夜は咄嗟に稚奈の手首を掴む。
……その行動は憂夜自身にとっても予想外だったのだろう。彼はその後数秒何も言わなかった。
「家に……家に帰らないのなら、何処に行くつもり、だ」
ようやく絞り出したような言葉は、やはり心配の響きを持つ。
掴んでいた手を離して、憂夜は稚奈の瞳を真っ直ぐ見据えた。
「返答によっては、家に連れて行く……」
……真剣な声色。

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 21時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「……はあ」
憂夜は大きく大きく溜息を吐き出した。そして稚奈に告げる。ここで少し待っていろ、と。
何をするのかと尋ねられて、憂夜は言いにくそうに目を逸らす。
「繁華街なんぞに行くとは……頂けない。家に帰らないのなら、俺の家に泊める……」
生徒を家に泊める。それは憂夜にとって、いや教師にとってはタブーだ。
だが憂夜は稚奈を自分の家に連れて行くと言った。……それはきっと、稚奈を大事だと思っているから。
犯罪に巻き込まれないようにするのなら、自分の家が一番安全だ、と……そう、考えたのだろう。

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 21時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

「……」
憂夜は少しして、白衣を脱いだ状態で教室に戻ってくる。自分に呆れているのか、稚奈に呆れているのか……ただ、その目は酷く自嘲的ではあった。
「行くぞ……」
稚奈の方を一瞥して、これまた分かり難く付いてこいと目で言う。
……本当に口下手だ。憂夜自身、何故自分が教師を続けられているのか解っていない。まあ……影で慕われていることを知らないだけなのだが。

鼻歌交じりに自分の隣を歩く稚奈に気付かれないよう、憂夜はまた溜息を吐く。
何故自分はあんな事を言ったのか、と今更ながら後悔しているのかもしれない。
「……夜は、何を食う。あまりたいした物は作れないが」
……空気を変えようとしたのか、憂夜は稚奈に夕食の献立を尋ねた。

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 21時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

「体に悪いだろ……」
少し呆れたように憂夜は頭を搔く。
食べる物はコンビニ弁当で良い、だなんて……彼は面には出さないがそう思っていた。

「……ありあわせで、炒飯でも作るか」
憂夜は自分の住む家の前まで来るとそう呟いた。
鍵を開け、何か言ったかと尋ねてくる稚奈を中へと通す。
「何も無いが……まあ、取り敢えず手でも洗え」
そして部屋を一通り見せると台所へと稚奈を連れて行く。石鹸はそれだと示すと軽く手を洗い、冷蔵庫を漁り始めた。
「炒飯……サラダ……コーンスープ?」

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 22時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

「……じゃあ、皿でも出しといてくれ」
憂夜は玉葱の皮を剥きながら答える。
静かにしていてくれればそれに越したことは無いんだがな、と付け加えて食器棚を示す。
「好きなのを出せ……俺は、どれでも良い」
稚奈の方を一瞥すると、今度は包丁を取り出した。……玉葱を刻む。
「っ、しまった……」
稚奈が皿を出し始める頃、憂夜は小さく唸る。瞳から零れ落ちるのは涙。……コンタクトを外し忘れていたせいで、余計に痛いらしい。
「……」
手を洗って、コンタクトを外す。紅い瞳が露わになった。

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月3日 23時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]

「……そうか」
表情をほんの少しだけ緩め、憂夜は稚奈の頭を撫でる。
少し、少しではあるが……彼は嬉しかったのだ。恐がられないことが、普通に接して貰えることが。
「これは、生まれつきだ……」
苦笑いを溢して、彼は稚奈の頭を撫でる。羨まれるのは、新鮮だと。

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月4日 9時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

「……羨ましい、か」
稚奈の居なくなった台所で憂夜は独り言ちる。初めての言葉に戸惑い、そして喜ぶ。……理解しきれない感情だと、憂夜は自嘲した。

「よし……」
スープが温まる。小さな鍋を持って、リビングの方へ。
「食べるぞ」

極夜@写しの本 (プロフ) [2017年1月4日 13時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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