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666 (プロフ) [2020年8月5日 12時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

「悲しい声が聞こえるの、皆が嘆いているの。苦しいと言ってる。可哀想。どうして聞こえないの? 聞こうとしていないだけじゃない」
と最初の罹患者は言いました。それが彼女の最期の言葉であり、彼女の示した病態に似たものが世界に広まる切っ掛けでした。
発生は突然のものでした。分類するならば精神病。けれど、ただの精神病と断ずるには、或いは集団ヒステリーと断ずるには統一性がなかったのです。発病地域に大きな差があったのです。
何よりも、再現性が低すぎました。脳内の分泌物を解析してラットに投与しても。あるいは同意を取りつつも人間へ患者の環境を再現して見せても。再現されませんでした。特に青年期を過ぎた大人たちには、理解が難しいと。再現されることはないと。

発病時期は、全て思春期前後。
最低発病年齢は8歳、最高発病年齢は、25歳。しかしこの病が発見されてから早くも20年、全ての罹患者は26歳になるまでに自ら命を絶っているのです。
学術界は大いに紛糾しました。だっておかしいのです。どんなに手を尽くしても、どんなに手段を封じても、彼らは26まで生きられない。
発病したら最後、26歳にはなれない。
死因は皆様々です。けれど手段をどれだけ封じても、どれだけ死ぬなと願っても、彼らは26を迎えるまでに命を絶つのです。
とある子どもは自分の首を絞め。とある子どもは手足を縛られながらも舌を噛み千切り。とある子どもは首を吊り。とある子どもは──。

どうすればこの病は治せるのでしょうか。誰もその答えを知らず、また口を開きません。
望みは叶わないまま、また罹患者は増えていきます。

学識名【集団共有性広汎幻覚】
英名【group-shared pervasive hallucinations】
通称【GsPH(ジスフ)】

彼らの悪夢に、どうか終止符を。

666 (プロフ) [2022年11月22日 17時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

【罹患者】
GsPHに罹った者。数が増えるに従い、その単語のみで示されることも多くなった。
特徴は大きく分けると三つ。公開されている特徴は二つ。一般に知られているのはたった一つの特徴のみ。
最初の罹患者は20年前。流行し出したのは、第一罹患者が死んだ直後より。時間に直して15年前からである。

全ての患者は日本国内、とある病院に存在を認識され、No.で管理されている。識別名や識別No.は掛かり付けの病院により、別途振られていることもある。
なお、新たな罹患者は発症次第、病院所属の罹患者により捕捉され、ナンバリングされている模様。



【GsPH】
1.罹患者は詳細、かつ具体的な幻覚を有する。また幻覚によって負傷することもある。なお健常者からすると体がひとりでに動いているようにも見えるらしい。そのため舞踏病の再流行や、虚言癖などと混同されることも多い。

2.罹患者同士は幻覚を詳細に共有するが、健常者には彼らの幻覚を認識できない。そのため、特に親や同級生との齟齬を苦痛としていることが多い。罹患者同士の諍いにより、相手の幻覚による負傷が反映されるという事例も確認されている。
例:炎持ちと人魚幻想持ちとが口論の末に物理的接触を伴う喧嘩を行った際、人魚幻想持ちは火傷を負い、炎持ちは鱗のような鋭いものによる擦過傷を負った。

3.罹患者は全て、26歳までに死亡している。その多くが自殺であり、また、事故のような死であっても罹患者からすると己のGsPHによって死んでいた、という証言が取れている。
なお最初の罹患者のみ、他の罹患者が存在していなかったため死因がハッキリしていない。

なお、こちらは有力でありつつも仮説に過ぎないが、発症はトラウマや鬱屈、欠如に根源を持つとされる。病態は根源の顕現、あるいは克服のための形を取る。
なお、自覚することと完治することは全く別物である。己の発症理由を言語化できた罹患者も、22歳の時に自殺したというデータがある。
勿論学術界はそこで治療法を方向転換出来るほど出来ていないので、現在もカウンセリングや投薬での治療を試みている。



【分類1 自尊願望】
「信仰顕現」
別の人格を持つ幻覚を顕現させる。多くは実在の人物やキャラクターだが、不定形や全くの創造体のこともある。基本的には罹患者本人が最も安堵を覚えるものの形を取る。
顕現体は罹患者から離れた行動を取り、その先で得た情報を秘匿することも可能。このことから顕現体と罹患者は全く別の人格を有するとされている。なお、顕現体にとっての最優先事項は常に罹患者本人である。そのようなキャラクターとなっているし、設定人格に反することがあったとしても、必ず罹患者を優先する。
次項の心身不一致と比べると、罹患者本人の意識が保たれることが相違点。

「心身不一致」
同人格、別体の自分自身を顕現する。罹患者本人は意識を失うが、意識体は本人の傍から離れ、別行動が可能。また、別行動先で得た情報は本人にも共有される。顕現体の容姿は多少の変化が加わることもある模様。
なお意識体は罹患者以外への干渉が不可能の模様。逆手に取ることで物理的な壁を通り抜けることが可能だが、罹患者の構築した壁などは接触や攻撃などしか出来ないらしい。なお、意識体での怪我は本体に反映されないが、逆はリアルタイムで反映される。
次項の自尊実現と比べると、意識の俯瞰性が高いことが相違点。

「自尊実現」
罹患者本人の容姿に幻覚のフィルターが掛かる。罹患者同士にのみ共有されるため健常者からは本来の姿しか見えないが、場合によっては心身性別の不一致、などでの理解をされることもある。比較的健常者に溶け込みやすい。なお幻覚の多くは罹患者の容貌のマイナス点を補完するものとなっている。ごくたまにこのGsPHと多重人格を併発し、人格に合わせた容姿を伴うこともある。
罹患者の意識によって応用が利く場合があり、病態が変化することもある。


なお、自尊願望項目の三病態は、自尊実現、心身不一致、信仰顕現の順に悪化するケースがある。一足飛びに悪化することもあるが、同じ系統であることが経験的に明らかである。

666 (プロフ) [2022年11月22日 18時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

【分類2 逃避願望】
「界線具現」
自他の間に明確な壁を生み出し、外界から自分を遮断する。壁の性質は罹患者間では見た目に影響される。なお壁の強度は罹患者本人の、外界への拒絶反応に比例する。しかし健常者や自然現象からの衝撃には極めて弱く、罹患者本人へ直接の刺激が加わると効果切れに先んじて壁が壊れることがほとんど。
壁の形はコンクリに四方を固められた玉だったり、段ボール箱だったり、はたまた不可視の風の壁だったり。
なお症状が重いほど心身不一致への変異確率が高くなる。また、炎やアイアンメイデン、雷などの外壁を持つ場合は、罹患者本人へのダメージによって分類3の蠹毒(トドク)願望に類する病態へ分類し直されることもある。

「甘言惑溺」
現実に上塗りする形での幻覚を展開し、健常者の世界を完全否定する。罹患者本人にとって居心地の良い世界を作り上げ、安堵することが多い。例えば建築物を城や茅葺き屋根の小屋などに幻視し、自らをファンタジー世界への転移者と誤認する、など。
ただの虚言癖と判別が難しいが、罹患者同士を近付けることで一瞬で判別出来る。なお、罹患者相手には幻覚を被せられないケースが多い。罹患者の病状が悪いほど幻覚の緻密さは上がり、他の罹患者を騙すことも増える。
罹患者自身を苛む幻覚を展開する場合、こちらも分類3の蠧毒願望に類する病態へ分類し直されることもある。

「幻想構築」
現実世界から幻覚世界への扉を開き、罹患者本人の精神世界へ避難する。一見心身不一致と似たような状態を呈するが、罹患者からの報告によると身体の近くに扉が出現しているらしい。罹患者たちであれば扉を潜ることが可能。扉を潜ることをトリガーにし、罹患者は意識を失う。なお、信仰顕現の顕現体のみを先行させるようなことは出来ない模様。心身不一致の罹患者であれば、意識体での出入りは可能。ある意味分類1の自尊願望と近い病態だと判断されている。
幻想世界は罹患者の有利な形へ常に変化する。罹患者の安息、安堵を優先して叶え、それを邪魔する場合は排除に動く。また他の罹患者が侵入した場合は、許可がある場合は受け容れられるが、罹患者本人の拒絶反応に比例して排除運動が起こる。
なお、本人が死亡したとしても、精神世界に引き籠もっていて気付いていない場合、扉は残り続けることがある。気絶状態であれば体の近くに現れるが、死亡した場合は最初に扉を開いた場所へ扉が出現し直す。
罹患者本人を傷付ける幻覚が展開される場合、分類3の蠧毒願望へ分類し直されることもある。


逃避願望の三病態は罹患人数が多く、中でも界線具現の罹患者は頭一つ抜けた人数となっている。それだけ現代社会は生き辛いということである。
また逃避願望は変異が起こりやすく、罹患者の性質によって自尊願望、はたまた蠧毒願望へと変化していく。その場合記憶の改竄が行われる場合もあり、研究は行き詰まりを見せている。



【分類3 蠧毒(トドク)願望】
「煩悶類焼」
罹患者本人の欠損や苦痛を外界にも適用する。罹患者同士であれば身体機能へも干渉するが、健常者相手に使用するとノイズのような形にしか反映されない。しかし幻覚とはいえ苦痛を共有するような形になるため、特に分類1、自尊願望の患者たちとは接触が制限されやすい。
なお分類2の甘言惑溺が罹患者本人にも牙を剥く場合、煩悶類焼へと分類し直されることがある。

「呪縛感染」
罹患者本人の身体に損害が発生した様態を呈し、また、その損害が他の罹患者へも波及していく。例えば罹患者の喉を焼きながら炎が吹き出し、他の罹患者すらも巻き込んで焼いていく、など。自身と共に他者を害する場合、この病態に分類される。
分類1、信仰顕現の顕現体が罹患者にも牙を剥く場合、呪縛感染に分類し直されることもある。また、罹患者本人すら傷付ける武器を顕現する場合も呪縛感染となる。

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

【分類3 蠧毒願望-2】
「暗澹迷宮」
罹患者を巻き込んだ悪夢を形成し、自他を巻き込んだ破壊的な世界を構築する。分類2の幻想構築から進行することがあり、巻き込まれた場合は精神的な被害を受けることがある。様態は幻想構築に近いが、時として暗澹迷宮では現実世界と幻想世界のどちらもで意識を保持していられる場合がある。つまり、強制的に信仰顕現と心身不一致を混ぜ合わせたような症状を引き起こす場合がある、ということ。
肉体的損傷は基本的に負わないが、出口に辿り着くまで完全覚醒が不可能となる。なお、暗澹迷宮では幻想構築とは違い、罹患者本人が離脱しても幻想世界は維持されたままになる。常に罹患者の傍で、幻想世界への扉がついて回るのである。


蠧毒願望の蠧毒(トドク)とは物事を損ない破ること、またその害毒を意味する。自他を等しく害する、もしくは罹患者本人にもコントロール出来ない幻覚はこちらに分類される。分類3からの改善例はなく、基本的に最も重篤な状態であるとされる。



【分類4 特殊:共振共鳴】
この分類のみ特殊で、他三類九種の病態を擁さない。しかしGsPH特有の幻覚は共有しており、視界は他の罹患者と同一。また死亡統計も同じ結果となっており、26歳まで生存できた罹患者は存在していない。
ただの幻覚・幻聴との判別が難しく、彼らの存在があるため、15年前から精神学会は大わらわである。なお、判別法式は目の前で罹患者を数名集めて幻覚を展開させる、もしくは幻想構築に入れて意識が失われるか確認するのみとなっている。
確認が取れた分類4の罹患者は多くが某病院に雇われ、治療と並行しながら各地の新たな罹患者を捕捉する業務に就くことになっている。
分類4の罹患者のみ、他三類の罹患者と違って罹患理由がハッキリしていない。ただ、最初の罹患者は分類4であったのではないか、という噂は時折真実味を帯びた形で流布される。

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

【治療法】
病院や学会によって細かな差異はあるが、基本的にはカウンセリングと投薬によって治療が行われる。カウンセリングによって罹患理由の掘り下げを、投薬によって幻覚の改善を図る。しかし分類4においては理由が病態として現れないためカウンセリングが難航しやすく、分類1・分類2においては幻覚によって安定を保っていることが多く投薬を拒否することが多い。
なお、投薬によって一時的な症状の緩和は観測されているが、一定期間を過ぎると寄る辺としていた幻覚の不在から自傷行動に走る者たちが一気に増えていく。

・特別症例01
GsPHを発病した後、交通事故に遭い一切の記憶を無くした患者が居た。彼はその喪失期間の間他罹患者の幻覚を認知せず、自分に在った幻覚も発現しなくなった。また他の罹患者からも「もう罹患していない」と言われていた。
しかし記憶喪失から数年経つと段々と強い喪失感を訴え始め、事故から五年後にはGsPHを再発。幻覚の分類は変化していたが、原因を追究する前の25歳某日、身投げ自殺を完遂した。

・特別症例02類(02からナンバリングされる一連の治療記録群のこと)
投薬治療での効果や特別症例01を参照し、催眠療法を実行。流行5年目から試行されだし、現在症例は18件記録されている。
催眠療法によりトラウマや欠落部を補完、もしくは分離封印し症状の緩和を狙う。結果として18例中5例で幻覚発現の頻度が低下、18例中1例で記憶障害を伴いつつも幻覚の一時沈静化を記録。しかし6例とも時間経過で再発しており、寛解にはほど遠かった。
なお、02類では他罹患者からは「未だ罹患している」との回答が得られている。本人が認識していなくとも、他罹患者には依然と同様に幻覚を発現しているように見えたらしい。
現在データを更に収集中。

・特別症例03
分類3、暗澹迷宮に罹患者No.1153-fが迷い込む。幻覚の主No.1643-mが捜索に入るが発見できず、本体を点滴に繋ぎ、生命維持を図る。
No.1153-fはNo.1643-mよりも年上であり、迷い込んでから三ヶ月後に26歳を迎えたが死亡しなかった。しかしNo.1643-mが18歳の某日に自殺を完遂した日、同時に息を引き取る形になったという。

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

『願いの病』

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 7番目の返信 PCから [違反報告]

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 8番目の返信 PCから [違反報告]

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 9番目の返信 PCから [違反報告]

666 (プロフ) [2022年11月22日 22時] 10番目の返信 PCから [違反報告]
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