創作民集まれ
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五十崎@命 (プロフ) [2019年7月26日 9時] 1番目の返信 [違反報告]その年、里帰り最終夜は相変わらず雨。
ベランダに出た心琴は運がないなぁ、とため息を吐く。
手にしたドロップ缶を鳴らしながら部屋に戻りベッドに腰を掛ける。
今年で18歳になる心琴は施設を出なければならない。
里帰りも花火も今年が最後になると楽しみにしていたのに……。
「花火、一緒に観たかったなぁ……」
ポツリと呟き横になる。朝には施設に戻らなきゃいけない。
決して戻りたくないわけではないが、思い出が少なすぎた。
そうこうしているうちに眠くなり心琴は眠りについた。
翌朝、昨夜の雨が嘘かのように晴れた空を睨みつけ、リビングに向かう。
「おはよう。」
暗い心琴の声に母親が反応する。
「心琴、昨日は残念だったね。」
「もういいよ、一生叶わないんだから。」
心琴の即答に首を傾げた母親に畳み掛けるように言葉を吐き出す。
「一緒に住んでないしそりゃ誕生日も祝ってもらってないし年齢なんてわからないよね!私もう18歳になるの!施設出なきゃいけないの!だから……今年でバイバイなんだよ……。」
泣きそうな顔で言い切った心琴は力なく床に座り込む。
すぐさま母親が駆け寄り背中をさすってくれた。
「ごめんね、ごめんなさい……心琴……。」
堪え切れず溢れた涙が頬を伝って服を濡らす。
きっと今日も夜は雨が降るのだろう_____。
《雨なら泣いてもいい筈でしょう》END