放課後、美術室。「ふう・・・。こんな感じかな」キャンパスに向き合っていた青年は筆を置くと、満足そうな笑みを浮かべた。そのキャンパスに描かれていたのは、月と太陽、空と海、あらゆるものがごちゃ混ぜになったこの世のものとは思えない美しい風景だった。
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扉の開く音にビクッ、と肩が跳ねる。突然の出来事に混乱しつつも、断る理由もないので頷いた。「う、うん、いいけど・・・」
「そ、そうだけど・・・」少年の反応に戸惑いつつも、そう返す。確かに、妙な絵ではあると思うが・・・。
ほわ、と胸が暖かくなった。久しぶりに感じた、この気持ち。ああ、これだから絵を書くのは止められないんだ。「ううん、僕は美術部の人じゃないよ。これは趣味かな」
「ありがとう。この絵は、夢に出てきた風景を描いたんだ。僕、普段は似顔絵とか人の絵しか描かないんだけど・・・。この風景は、すごく印象に残ったから」絵を眺めながらそう言った。我ながら良い出来だと思う。
「はは、ありがとう。この夢は、特別印象に残ってたんだ」
「・・・君は、楽しくなれること、ないの?」
「・・・君も描いてみる?」
「大丈夫。描きたいものを描けば、初めてだろうとなんだろうと、それはきっと素敵な絵になるから」
「うん。ところで君、名前は?」
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