85
来ましたー、先に始めますね 『へー、それはお疲れ様でした』お酒を出してお客の話を聞いていた。カランコロンと鈴の音が聞こえ、いらっしゃいませーと声をかける。話していたお客を違う人に任せ、はじめてですか?と聞く。
「ああ……少し呑み足りなくって」初めまして、と言いながら東暁はカウンター席に座り微笑む。そして、傑にシェリー酒を注文した。
『初めてですか、じゃあこの一杯は特別に俺の奢りです』微笑んでシェリー酒をアレンジして出す。話がないもの何だし、と突拍子もなくお兄さんはどんな仕事をしているの?と聞いた。
「おや、ありがとうございます」微笑むと東暁は傑からアレンジされたシェリー酒を受け取り、一瞬逡巡してから軍人です、と苦笑交じりに告げた。
『はぁ、軍人ですか。お兄さんは軍服似合いそうですね』呑気なことを言い笑っている。どうやらそういう人や裏の方々がよく来るようだ。それから口を開いた。『余計なことを聞いてすみません。今日はゆっくりしてってくださいね。暇なら話すのも良いですし』
「えいえ、解ってくださるのは嬉しいですから」中々受け入れて貰えないんですよねえ、と言いながら東暁はそっと、シェリー酒に口を付けた。
『良いんですよ。うちにはよくそう言った方々が話に来たり密会してますからねぇ』お兄さんも御贔屓に、と笑う。綺麗なお兄さんだなぁと思いながら。オリジナルのシェリー酒は気に入ってくれるかな。
「おやおや、では僕も贔屓にさせて貰いましょうか」くす、と笑うと頷き、東暁は優しく目を細めた。このシェリー酒は美味しいですねえとだけ呟いて。どうやら傑のことを気に入ったらしい。
『それは嬉しい限りです。毎日とはいきませんけどサービスはしますからね』お兄さんのお名前伺って良いですか?と聞く。やはり自分で作った酒が美味しいと言われると嬉しい。
「東暁と言います。東の、暁です」貴方は、と言いながら優しく東暁は傑に向けていた目を細める。見詰め、そして小さく微笑む。
ユーザ登録画面に移動