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on (プロフ) [2016年7月4日 13時] [固定リンク] PCから [違反報告・ブロック]

《殿下、お考え直しください!殿下!》
『うるさいぞ、アルデオ卿。僕の命令に従えないと言うのか』
《しかし、これはかなりの激戦区。殿下のお命がなくなられては___》
ブツリ、という音と共に、画面から彼女の顔が消える。彼女が言おうとした後の言葉に苛つく。彼女の言葉が予想できてしまった自分にも腹が立った。
『……ライア、起動。システム制御、よし。シンクロよし。システム異常検知、異常なし。オールグリーン』
そう、人間の真似をして、戦闘機を起動させる。こんな言葉なんぞなくとも、僕達は起動させられるというのに、自分は何をやっているんだろう。自分に自分でため息をつき、僕は月面要塞から飛び立つ。彼女から幾度となく送られてくる無線申請を無視し、敵集の中に紛れていく。人間の戦闘機と色が似ているからか、攻撃はされなかった。
『…僕はできる』
そう暗示をかけて、一戦闘機に銃を構える。実際はこんな古典的なこと、しなくてもいいのだ。何度も人間の真似をしようとする自分に舌打ちをして、引き金を引いた。
『…死ね。憎き人間共よ』
バン、と頭に残る音がした数秒後、目の前の戦闘機は爆発した。物凄い暴風と飛び散る破片に、自然と目を細める。それが落ち着いたかと思えば、次は自分を狙う戦闘機が襲ってきた。
『地球に住む下等民族め…。この僕に逆らおうというのか!』
そう言って飛び交う銃弾を避け、相手に攻撃する。そうしていくつもの戦闘機を爆発させた。それ以降、彼女からの無線申請は途絶えた。僕の武力を恐れたのではなく、単に戦闘で忙しかっただけかもしれんが。

《殿下、お見事にございます!このアルデオ、感激いたしました!これからも戦争のお務め、及び指揮をお願いできますでしょうか》
『構わん。…アルデオ卿、先に戻っていろ。まだ相手がいるかもしれない』
《それでしたら、私もご一緒に…》
『いらん。帰れ』
《…御意》
またブツリと無線が切れる。先程見つけた半壊の__頭部と右腕が壊された__一戦闘機が気になった。ジジ、と電気の音が聞こえるあたり、まだパイロットは生きているんだろう。
ジジ、ジジ。その音は徐々に大きくなる。見つけた機体はまだ電気の音を奏でているようだ。
まだ無事であろう左腕に戦闘機の手をかけ、動かす。うおっという人の声と同時に、無線をつなぐ。どうやら、申請機能も壊れてしまっているようだ。
『…おい、無事か』
ぶっきらぼうに相手の心配をしてみるが、相手からの応答はない。腹が立って、故意に機体を引っ張った。苛立った声で自分は告げる。
『見慣れない機体だな。地球人か。まぁいい、とりあえず捕虜として捕まえる』

on (プロフ) [2016年7月5日 2時] 2番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

[…ここは?]
『捕虜が口をきくな』
[はいはい]
壊れた機体を引っ張られ連れていかれた場所は…よく、わからない場所だ。重力がないことだけはわかる。だがそれだけだ。
たまに飛び跳ねながら、金髪の…誰かはわからない男のあとを追う。すると、色黒の女性と思わしき人物が、男に近づいた。
「殿下!心配いたしました。忌々しき地球人の元へ向かわれていると思うと、このアルデオ、いてもたってもおられず…」
『僕はもう子供ではない。殺されるなぞ有り得るものか』
「しかし、殿下は」
そこまで言って、女性は自分の存在に気づく。眉間にシワを寄せた後、皮肉のように吐き捨てた。
「…汚らわしき下民が、こんなところまで何の用か。捕らえられたフリをして、我が祖国を崩壊させようものなら、私はすぐにお前をなぶり殺してやろう」
俺の国を壊したくせに、という返答は、金髪の男の腕によって遮られた。
『口を慎め、アルデオ卿。これは僕の捕虜だ』
そういう問題ではない、という声も、自分の心にしまっておいた。今は変なことを言わない方が身のためだ。
ふん、と鼻を鳴らし、いけ好かないヤツ。と呟き踵を返した女性___アルデオ、という者は自分のことを快く思っていないようだ。アルデオに睨みをきかせた彼も同様に。
『来い』
無重力の空間で彼が向かった先は、牢屋、と言っても過言ではないほど質素な部屋だ。まぁ当然か、なんて思いながら部屋に入る。すると、彼がすぐ前にある大きな窓を開けた。
そこには、まだ少し青い部分が残っている我が祖国、地球があった。
[…何故俺にこんなものを見せる]
そう言って彼を睨めば、鼻で笑う彼の姿が見えた。
『見せしめだ』

on (プロフ) [2016年7月5日 22時] 3番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

ー2060年6月26日ー
【月民族に通達せよ。この日、我が月民族軍が、下民に支配された蒼き星、アースを奪還したことを報告する。これより、アースは我が月民族の支配下となった。して、アースの名を、これから___】
絶えること無く光るカメラのフラッシュ。それに動じることのない皇子の顔。会場から聞こえてくる声援。それを抑える警察の声と、それより大きく、耳元で聞こえる声。
「…ユーズフラン姫」
〔おや、気付かれてしまいましたか。やはりアルデオ伯爵には敵いませんね〕
「恐れ入ります、姫様。このような…アルズ帝国の皇女なぞに」
私がそう告げると、姫様の顔が歪む。そうなることを知っていたのか、私は儚げに笑う。良いのだ、これで。たかが第六皇女を見て下さっただけで良いのだ。
〔そんなことはありません。アルデオ伯爵は、我が軍を率いて勝利に導いて下さいました。民族なぞ関係ありません〕
心配そうな、いや、なぐさめのような彼女の顔に、罪悪感をちらつかせながら私は答える。
「…ありがとうございます、姫。さて、私は捕虜の観察に参ります」
ニュースを閉じ、私は立ち上がる。やはり申し訳なさそうな彼女の顔に、罪悪感が胸を締める。姫様はアースに酷く関心を持っていらっしゃる。それだけだ。たかがそれだけ、されどそれだけ。
〔私も参ります、アルデオ伯爵!〕
同じく立ち上がった姫様の瞳は、やはり私を見据えていて。
「…すみません、姫様。トップシークレットですので」
彼女には見せたくない。見せるべきではない。地球人なんかを。私を。
〔…わかりました。どうかお気を付けて〕
彼女が愛した男を見せるべきではない。彼女が愛した惑星を汚すわけには行かない。殿下にも、姫様にも、これは秘密にせねばなるまい。
自室のドアを閉めると、私は牢とは反対の方に歩いてゆく。辿りついたのは実験室。その中から1つ。故意に私が開いた一つのカプセル。そこには。
「…私は永遠にお前達を許さないぞ。アース…いや、マッセス」
そうして私が手に取ったのは、暗殺用の薬品だった。

on (プロフ) [2016年7月6日 14時] 4番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

ー1年後ー
「…」
自室に向かった。勿論、誰がいるかなんて知らずに、あのカプセルを持って。
暗殺なんてする必要はなかった。必要性としてはなかった。ただし、私の心の中としては重要な問題だった。
どうして地球人なんかが殿下と。私ではない地球人なんかが。殿下に口を聞けるというか。
ただの嫉妬だった。尊敬の意を向けている殿下に対しての、地球人に対しての。私の心は追い詰められていたのだ。もう後戻りできないほどに、深く深く傷付けられていたのだ。
「…ユーズフラン姫様。どうかご無礼をお許しください」
自室のドアの前に立ち、小さく呟く。裏切り者になると知っていながら、私は今、今この時に。視界が回るような気持ち悪さの中、私は自室のドアを開け、同時にカプセルを開ける準備をする。
この日のために、捕虜を月面要塞で働かせた。位を与えた。部下を与えた。全てこの日のため。この日で、地球人のすべてが終わる。
すみません、姫様。
「っ…姫様、死んでください」
中にいたのは案の定姫様のみで。驚いたような姫の顔と待って、という姫の声に顔を歪ませる。カプセルを開けた瞬間に広がる、紫色に着色された煙に、さらに顔を歪ませた。
彼…長月という地球人が、もうすぐここを通るということを私は知っていた。いつも殿下の元へ行く時に、ここに寄って姫様に会いに来るということも。だからそれを逆手に取った。すまないな、下民。
[姫様!!]
やはりか。と笑った後、ゲホゲホとむせる真似をする。姫に目を向けると、もう、呼吸をしている風ではなかった。わらわらと集まってくる人々に、大きな声で告げる。
「こやつが、姫様を殺した!!」

on (プロフ) [2016年7月8日 14時] 5番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

[なっ…!?]
捕虜にされてから一年後。唐突に姫を殺したことにされた。違う、俺はやっていない。そう言いたいが、沢山の月民族に囲まれ、体が竦む。少なくとも、とアルデオを睨めば、彼女は自分を意識していないかのように泣き崩れた。
「姫、姫様…!地球人なぞに…こんな奴に殺されてしまうなんて…!!私が、私がついていれば!あぁ、姫様…!!」
鼻をすする音とえぐえぐと聞こえてくる彼女の声に顔を歪ませる。合間から見えた彼女の笑い顔も、あの泣き方が彼女の笑い声だということも、俺はさほど驚きはしなかった。ただ、俺はこの空間の中であからさまに悪者だということを、周りの月民族の視線が訴えていた。
彼女は特別地球人を嫌っていた。それはもう殺したいくらいに。口には出さないものの、俺に対する態度があからさまに違っていた。あぁ、嫌われているのだ。と、通り過ぎるだけでもわかった。しかしそれに突っかかっては自分も幼稚だろうと、今まで相手にしていなかった。
今日、今日だってそうだ。姫様のところにあいつがいませんように、なんて願いながら彼女の部屋に入った。するとこのざまだ。俺は殺人犯にされ、自分が愛していた姫は今や呼吸をしていない。
助けたいのに、足が動かない。呼吸がおかしい。上手く息が吸えない。
「っひゅ、…か、ぁ…ひゅぁ、」
俺の過呼吸の不規則な音は、大勢の話し声に消えていった。こんな時こそ俺がなんとかしなければ、この誤解を解かなければ…。
そう思うと。
『何の騒ぎだ』
聞き覚えのある声が聞こえた。ハッとして後ろを振り向くと、そこには金髪の…ニコライがいた。すかさずアルデオを見ると、涙を流しながら驚いた顔をして彼を眺めていた。イラついたような素振りを見せる彼に、他の月民族は怖気付いたのか、そそくさとその場から去っていった。待ちくたびれたかのように、再び彼が口を開く。
『何の騒ぎだ。アルデオ卿』

on (プロフ) [2016年7月10日 3時] 6番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

ニコライ・クラストリアス第一皇子
アイリーン・アルデオ伯爵 兼 第六皇女
長月 椿生一等騎乗兵 兼 大佐

on (プロフ) [2016年7月5日 5時] 2番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

一日一話更新ペース たまに複数話更新

on (プロフ) [2016年7月5日 5時] 3番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

「」…アイリーン
『』…ニコライ
[]…長月
《》…無線通信を通した相手
【】…テレビなどの画面を通じたもの、モブ

on (プロフ) [2016年7月5日 5時] 4番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

毎回視点が変わる(事が多い)ので、注意が必要

on (プロフ) [2016年7月6日 4時] 5番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]

《キャラ追加》
ユーズフラン第一皇女 兼 革命軍副総督

on (プロフ) [2016年7月6日 14時] 6番目の返信 PCから [違反報告・ブロック]
(C) COMMU