憂鬱な記憶

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"椎名 絢"

塵芥 (プロフ) [2018年7月14日 12時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]

弟を守らなきゃ。
大事な弟が傷つかないように、俺が守ってやらないと。
大人なんて信用できない。
何時かは大人にるのは何処かで分かっていたけれど、物心がついたときにはそう思うようになっていた。
両親はとても優しくて格好よくて、優秀な政治家だった記憶がある。家に帰ってもそれは変わらず将来は俺に政治家として名を残してほしいと、色々政治の事について、勉強させられた。何よりそういう勉強は嫌いじゃなかったから良かったんだけど。まだ言葉も知らない弟は周りより少し遅れて立てるようになった年頃。生まれてきてくれたときは兄になった実感が湧いてきて何があっても守ってやろうと心に誓った瞬間だった。

小学校に上がり落ち着いた時には、政治の勉強もテストも人間関係も順調。でもたった一つだけ俺には汚点があった。食事ができない事。肉を煮ようが焼こうが生でも何をしようと、肉に限らず数分後には全べて吐き出してしまい、食事が喉を通らないのだ。両親は心配して病院に行くも異常はなし。俺がわざとやっているのではないかと疑われ怒られたりもした。でも本当に何を食べても美味しくない、吐き出してしまいたいほど気持ちが悪かった。そんなことがあった日から心配させると仕事に響くだろうと俺は食べ物を飲み込んでは隠れて吐き出すようになっていた。
変わりに弟は問題もなくすくすくと育ち小学校に入学。安心したのも束の間、次第に両親の仕事は極端に忙しかったり、問題を起こしたりと空気が悪くなっていった。支えてやらなきゃと、食べれもしないのにご飯を作るようになったり小学生の俺に出来る限りの家事を必死にやってのけて、弟の世話をした。それでも何か問題があったり、ストレスがたまる時は発散するように俺に暴力を振るい、罵られるようになった。
自分なりにえ考えて弟には手を出させないようにと、両親の目の前でだけ悪い子を演じた。そうしなければいけなかったから。俺は殴られ、蹴られ罵られ、気づけば血塗れだったなんて最早日常茶飯事。熱湯をかけられようと何時間も冷水に浸けれようが弟が無事であれば何も苦じゃなかった。兎に角耐えて耐えて、我慢すればそれでいい。それだけで弟に被害は及ばないのだから。

塵芥 (プロフ) [2018年7月14日 12時] 1番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

ちょうどその頃だっただろうか。幼なじみの楠が俺の体が酷くボロボロになっているのに気づいて、毎日泣きながら包帯やらを巻いてくれていたのを見てなんだか申し訳なかった。それから彼奴は俺のためにと医者になることを決意したらしい。まぁ飯もまともに食えないし、ボロボロで何時死んでもおかしくはなかったと思う。自分を大切にするなんて事は出来なかったから、だから何だかむず痒いような、嬉しかったのは覚えている。
俺が12歳になったときには弟は小学校2年生で、何時も通り学校から帰ってくると何だか様子が違った。帰ってきていない筈の両親の靴が置いてあった。少し肌寒い時期なのに家の中がいやに蒸し暑い。背筋が凍るような、冷や汗が垂れた。
ああ、どうか嘘であってくれと。そう願った矢先、それは一瞬で打ち砕かれた。…大事な弟が、弟がヒューヒューと喉をならしている。皮膚が真っ赤に爛れている。父親は片手に包丁。母親は熱いであろうやかんをてにして、俺を見ている。うっそりと、してやったと言わんばかりに笑っている。
何で?どうして?あれだけ必死になって家事も覚えて、勉強して、弟の世話して、お前らの前では望むようにしてやっただろ?何でだよ?なぁ?何でっ!!!!
頭の中がぐちゃぐちゃで動けなかった。どうしていいかわからなかった時、微かに弟が俺をみてお兄ちゃんと呼んだような気がした。プツンと俺の理性が、何かが壊れた気がした。気づけば衝動的に走り出して包丁を持ってる父親に突っ込んで、反動で父親が倒れたからそのまま跨がり、手放した凶器を奪って、それから心臓を何度も何度も何度も何度も何度も何度も刺した。血が手を汚し服を汚した。母親が抵抗で何かを叫びながら熱湯をかけられたが、生憎慣れたもので熱さも感じず母親も父親だったものと同じように殺 し、自分の手を見つめた。きっとその時俺は笑っていたのだと思う。だって初めてこんな満ちた気持ちになったのだから、楽しいと思えたのだから。堪らなかった。ああ、こんな解放感と自由を手にできるのなら、もっと早く殺 っているべきだった。両親であった肉体の虚ろな瞳が此方を見ているのが堪らなく興奮してゾクソクする。あれだけ嫌いだった両親も綺麗で、愛しいとさえ思う。この高揚に身を任せて、もう一人ぐらい殺 したい。そう考えていると突然見知らぬ男が入ってきた。流石にこの状況で人が入ってきた事に俺は酷く動揺した。男は気にする様子もなく俺に声をかけてきて、何故生きていると。お前も弟も殺 す予定だから処分しに来たんだがと。突然のことで声が出せずにいると男はため息をついて、意外にも優しい口調で俺を落ち着かせてくれた。中に入って男は理解したようで呆れたように弟の応急処置をしてくれた。更には当てがあると弟を病院に連れてってくれた。状況が掴めずまだ頭は混乱しているなか、男はよく頑張ったなと声をかけてくれた。殺した瞬間は楽しかったけど辛かったことには変わりはなくて、その言葉で思わず泣いてしまった。大きくてゴツゴツした手で頭を撫でられながら、男は俺に色々と話してくれた。男は裏の人間で、俗に言う解体屋らしい。両親は俺と弟を殺 す予定だったから処分してほしくて頼んできたそうだ。男が両親だったものを解体しているのを眺めていると、男は飯は食ってないのかと肉を持って尋ねてきた。俺は吃りながらも食べ物が食べれないんだと話した。すると男はキッチンへ向かい、何故か解体した肉を調理を始めた。人の肉で料理なんて発想は俺にはなくてビックリだったが出されたそれは今までにないほど美味しくて、お腹が一杯ってこう言うことなんだと実感した。男は所謂カニバリズムと言うやつで人間の肉以外食べれないらしい。じゃあ俺もカニバリズムなんだなとここでようやく理解した。

塵芥 (プロフ) [2018年7月14日 12時] 2番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

それから、男は俺に解体の仕方や、料理する部位など教えてくれた。これだけの事を教えてもらっておいて失礼ではあったが、何故会ったばかりの俺に此処までするのか気になって聞いてみた。男からは意外にもお前みたいな子供が嫌いじゃないからと返ってきて、なんだか嬉しかった。でもやっぱり弟の事をは心配で怪我が治ったとしてこれからどうするのか、施設送りにさせるなんてそんなことはできない。俺は既にこんなにも汚れているし、弟を汚してしまいたくない。知ってほしくなかったんだ。だから俺は男に頭を下げ、弟を裕福な家庭の養子にしてやってほしいと頼んだ。男はゲラゲラと笑い意外とお前頭いいんだなと呟いた。それから男は仕方ねぇと、幾つか条件をつけて俺の提案を呑んでくれた。条件は至って簡単。俺が弟に会わないこと、この男に付いていくこと。たったのそれだけだ。弟に会えないのは悲しいがそれで弟が幸せになれればと思うと苦ではなかったし俺も条件を呑んだ。弟が何事もなく自由に生きてくれればいいと願って。

塵芥 (プロフ) [2018年7月14日 12時] 3番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

それから暫くして俺も言葉巧みに人を誘い出したりして、解体や調理ができるほど一人前になった。男は俺になにかを強いるわけでもなく、ただ生きるための術を教えてくれて、育ててくれた。あれ以来勉強はしていないから決して頭はよくないけど、コミュニケーション能力は高くなったと思う。楠は立派に医者になり、結婚していい家庭を築いている。傷の手当てとか度々世話にはなるが、楠の相手の男も理解のある人らしくこの間散々自慢された。弟はというと、詳しくは知らないが、男が唯一教えてくれたのは五色という裕福で環境的にもいい家に引き取られたそうで、トラウマは残ってはいるものの元気に過ごしているのだとか。まぁ、楠からも弟が薬剤師で薬の研究をやっていて、チームを組んでいるというのは知ってるんだが。でもそれを聞き安心して泣いたのを覚えている。あの傷を抱えながらも、元気に生きているのならそれで良かった。
例え弟が俺を忘れていようとも、楠の話を聞く限り楽しくやっているようで、それだけで多分俺は何とかやっていける。男が死んで身寄りが居なくなったとしても、男から教えてもらった生きる術があれば案外一人でも平気だろう。意外にも俺自身こんな人生でも悪くはないと思っているんだから。

改めて自分の手を見つめ思う。
弟はこんな快楽殺人鬼でろくでもない兄貴など忘れてしまえばいい。楠も大切な人ができた。俺はただ楠と大事な弟が幸せであればそれで十分で他になにも要らない。

塵芥 (プロフ) [2018年7月14日 12時] 4番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

end…

塵芥 (プロフ) [2018年7月14日 12時] 5番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

"氷烙 麗"

塵芥 (プロフ) [2017年7月27日 14時] [固定リンク] スマホ [違反報告・ブロック]
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