「…」フードを深くかぶりうつむいて歩いている少年のような顔立ちをした少女はカワセミ…一瞬見えた瞳の色は『赤色』だった…外見からは想像できないが、ある物語の悪役だ…
「まぁまぁ、ずいぶん辛気臭い顔してるじゃないか」ツカツカとヒールを鳴らし歩み寄って来る女。どうにも暗い顔をしていたので気になって話かけてみたはいいが、フードから覗く顔は相変わらず無表情のまま。自分の家に招いてお茶でもしよう、と誘いたかったが、まあ、それは彼と話してから。怪しげな魔女は、目の前の少年の返答を促すようにニッコリと笑った。(ゴーティはカワセミを男と勘違いしている)
「アンタ誰?」いきなり話しかけてきた女は笑っているがどこか怪しげな雰囲気を持っている。念のため警戒して相手を探る。瞳を見られたくないのでフードをさらに深くかぶる。
「おっとこりゃ失礼。私はゴーティ。しがない魔女さ」フードを深く被って顔を見せまいとする少年。どうやら自分は疑いの目で見られているようで…なにかやましいことでもあるのかしら、と勘ぐってみるが口に出すはずもなく。
「…僕はカワセミ。」相手が名乗ったので一応こちらも名乗る。魔女というのは噂では聞いていたが実在するのか…そんなことを考えながらさらに相手に探りを入れる。「いきなり話しかけてきて何の用?」さすがに相手も…ゴーティも自分が疑われてることに気づいたのか先ほどの優しげな笑顔とは違って何か裏のあるような笑顔になった気がした。
「何の用って…用がなきゃ話しかけちゃだめなのかしら?」おなじ悪役同士仲良くしようと思っているのだが、相変わらず彼は警戒を解いてくれない。自分の何がいけなかった…?と考え、しばらくして顔を隠していた大きな帽子を取った。
「…」ゴーティはかぶっていた帽子を取った。つまりこちらもフードを外せという意味だろう。だが警戒を解くわけにはいかない。「用が無いなら僕行くね。」同じ悪役だろうが所詮他人…信じたところで裏切られるだけだ。
「あら、用が無いわけじゃないわ」まさか帰ろうとするとは思わず慌てて引き留める。「まだ私、ここの誰ともお話してないから…よければお話したいなと思ったんだけど、どう?」お茶もある、と現すようにティーカップを持つような仕草を取る。ここまでして彼と話そうとするのは、『お話したい』なんて単純な理由だけではなく、なんとかしてこの少年を笑わせてみたかったから。
「…少しだけなら」話がしてみたいと言われては帰るわけにはいかない。お茶も嫌いなほうではないので誘いに乗ることにした。「…なんでわざわざ僕に声かけたの?人なんてその辺探せばいるでしょ…」なぜ自分に話しかけたのか、ゴーティは確かに僕の瞳を見たと思った…ただの思い過ごしか…ゴーティに悪意は無いことはわかったのでとりあえず話してみることにした。
「あら嬉しい、んじゃ案内するわ…でも私の家じゃない方がいいかしら?お店はあなたに任せるわよ」以外とあっさり誘いに乗ってくれてよかった。まだカワセミは自分を警戒しているようなので、さすがに自分の家に呼ぶのは自重したが。「つれない事言ってくれるなよ。目の前に居たから話しかけた。それで充分じゃないか?」この少年はどことなく娘を思い出させる。目の前に居たから、なんてのは外向きの理由だった。
「…店なんてどこでもいい。近場で適当なとこそっちが決めて。」お茶は好きだが店に大してこだわりはないし自分は世間の状況はよくわかっていない。相手に決めてもらうのがベストだろう話しかけてきたのが目の前にいたからという理由が建前のような気がしたがきっと気のせいだ。「アンタから悪意は感じられないけど信用するにはいま一つだ。アンタが敵じゃないって証明なんかできない?」こんな誘いに乗るとは思えないが敵かどうかだけは確かめるべきだ。少しでも相手の情報を集めるべきだ。
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