学生夢境鉱戦記

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同定不能 (プロフ) [2020年12月8日 12時] [固定リンク] PCから [違反報告]

付け慣れないピアスを左手で弄りながら、石徹白肇は薄暗い草むらからゆっくりと顔を上げた。その不健康な白さをもつ顔は今や青白く、薄暗闇のなかで月明りに照らされて右頬だけがぼうっと浮かび上がっている。左頬にはべったりと泥と血の混じったものが付いており、ひびの入った眼鏡のレンズの奥で、黒い瞳だけが煌々と異様な生気をもって輝いていた。
(まだか…まだ夢から醒めないのか?僕はもう光を消耗しきってしまったというのに…)
彼の右耳のピアスから吊り下がった大粒のルチルクォーツは完全に光を失い、この平原で唯一の光源である月の光をわずかに反射して、時々控えめにつやりと存在を主張する。
まばらに草むらや木々が点在する広い草原が今夜の戦場だった。黒々とした空洞のような空には、異様に大きな月以外、何一つ浮かんでいない。時折遠くから聞こえてくるクラスメイトの悲鳴や交戦の音だけが、広い戦場の静寂に微かに爪を立てた。
石徹白の周囲だけが、不気味なほど静まり返っている。しかし、今の彼にはその恐ろしい静寂こそが何よりも心地よく、安らぎさえ与えてくれるものだった。
石徹白は今しがた戦闘から逃げてきたばかりだった。運悪く好戦的なクラスメイトの一人に見つかって、問答無用で襲われたのだ。今は泥を引っ被って見えない左頬の大きな傷は、その戦闘でつけられたものだった。恐ろしく強い光を放つ宝石を身に付けていた彼が、とにかく光を消費しなければと考えて石徹白を襲ったことは明白だった。
石徹白の宝石にもそれなりに光が蓄積されていたため、何とか応戦して逃げおおせたが、恐らく殺害までには至っていない。それもお得意のパニック状態でメチャクチャに針を乱射したものだから、せっかく溜めていた光は全て消費されてしまった。今は攻撃手段を何もかも失って、
「このざまだ、はは…」
空元気で虚ろな笑みを浮かべる。自嘲の言葉を小さく呟くと、予想だにしていなかった返事が近くの暗闇から返ってきて、彼は身を固くしながらも反射的に立ち上がり、返事の返ってきた方向に厳しい視線を飛ばした。

同定不能 (プロフ) [2020年12月8日 12時] 1番目の返信 PCから [違反報告]

(石徹白肇、戦場はずれの森にて)

同定不能 (プロフ) [2020年12月8日 12時] 2番目の返信 PCから [違反報告]
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