びょう

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kill (プロフ) [2018年5月12日 21時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

古から日本という国では、あの世とこの世という隔てがあった。人間や犬、全ての生き物は生きている間は “この世” に存在し、死ぬと “あの世” に行くという。
人間が死というものを考え始めたのはおよそ六万年前、死後の世界というものが意識され始めたのはもう少し後である。
死というものは、人間、いや生き物にとってはあまりにも漠然とし過ぎている。だからこそ、生物は死を日々恐れ、避けようとする。しかし、生きているものに死が訪れるのは仕方がない事だ。だって生まれた時から決まっている、死は人生においてのゴールなのだから。
では死とは何なのか?
一体誰が死後の世界なんて考えたのか、また見た訳でもない世界をどう描いていったのか?
一体、そのゴールの先には何がある?
それは死んだ者にしか分からない。勿論我々も。
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___これは “死後の世界” があると仮定した上での話である。____
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閻魔庁、そこはこの世から最も遠く仏の居ない場所。
「あー!お腹空いたなァ!」
美しい装飾が施された椅子に凭れ、わざとらしい大きな声で騒ぐ男。これが仮にでも地獄の親分だと言うのだから、ここはあまりにも恐ろしい場所だ。獄卒の鬼達はチラチラと周りを気にしながら叫ぶ自分の長を気にしつつも、自分の与えられた業務を全うしていた。この世であれば今はお盆の季節、地獄自体も忙しいのだろう。
そんな職場が何となく退屈なのか、皆が構ってくれなくて寂しいのか、溜まった仕事を見ないふりして彼は飛び出した。生憎様、いつもなら厳しく叱る側近すら、この忙しさのせいで過労で倒れて居ない。彼がサボるなら今しかなかった。
「何か、暇潰しすることがあればなあ」
とりあえず部下にでもちょっかいを出そう、と考えたものの、今の時期にそれをするとまじでキレられそうなのでやめておいた。誰かに構ってもらうことは諦めて、空いた小腹を満たすべく彼は御殿から少し離れた食堂へと向かうのだった。

kill (プロフ) [2018年5月12日 21時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

「そろそろ限界ですかね…」
ふぅ、と溜息をこぼして自分の部屋から出る。仕事のせいで部屋に篭り、無心で仕事を片付けて今日で三徹目。
少し遅めの昼食を取ろうと食堂へ向かう。その最中に、何人かの獄卒を見かけたが皆、こちらを見た途端に顔を青くして道を開ける。確かに、徹夜明けの顔は酷いものだがそんなに避けられるほどなのだろうか。
自室から食堂までは遠くもなく、1、2分ほどで着いてしまう。しかし、碌に睡眠も取らず書類と睨み合っていた為に時間の流れが遅く感じる。
食堂に着き、調理場のカウンター越しに蕎麦を頼めば、すぐに盛り蕎麦が出された。流石は閻魔庁の調理人。仕事が早い。
昼時になるとガヤガヤと騒がしくなる食堂も、そのピークを過ぎてしまえば自分の咀嚼音しか聞こえない程度に静かになる。
「そういえば、閻魔様はきちんと仕事をしているでしょうか…。」
何だかんだで会ってはいるものの、きちんと仕事をしている場面ではなかったから少し疑問に思う。
一応、これでも閻魔の何人もいる内の側近の1人。それくらいは確認せねば、と箸を蕎麦に伸ばしながら考える。
ほとんど食べ終わった頃、廊下の方からパタパタと軽い足音が聞こえてくる。まさかとは思いながらも扉に目を向ければ、重い扉の間から見えたのは件の閻魔であった。

依十 (プロフ) [2018年5月13日 17時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「うげ」
そうだ、忘れていた。
真面目で厳しい部下なんて、この地獄にはいくらでもいるのだ。それは偶然居合わせた彼も然り。
「や、やあ!一閃クン!暫くぶりに見た気がするよ〜!窶れているように見えるけど大丈夫かい?無理をして身体を壊さないようにね!とりあえず僕は今からお昼ご飯だから、これで。バイバイ!」
勿論真っ赤な嘘である。お昼ご飯ならつい一時間前に食べたし、腹も小腹程度にしか空いていない。ただ仕事をサボる口実でここに来ただけ。『嘘をついたら閻魔様に舌を抜かれる』なんて話があるぐらいなのに、その閻魔様が嘘だらけとはジョークも度が過ぎているぐらいだ。
勿論こんな下手な嘘で優秀な獄卒の一人である一閃を騙せるわけが無く、結果的には足止めを食らってしまった。
仕事をしていないとバレれば、最も彼に厳しい右腕(過労で撃沈中)にはたっぷり絞られる事だろう。ああ、考えただけでもなんて恐ろしい!ぶるりと身震いすると、地獄の王様は考えた。何とか友好的に、かつ楽できる方法を。
「……いっせーん…、今ちょうど食べ終わったとこ?まあいいや、ちょいと付き合ってよ」
席から立った彼を半ば無理矢理また座らせて、自分も彼の向かいの席へと移動する。
彼が取った方法は “一緒にご飯を食べる事” であった。
「まあまあ、そんな顔しないで。君はデザートでも食べると良いよ、僕が上司として奢ってやろう。ほれ、何が良い?」
ぽい、と無造作にメニューを投げてやると、机に頬杖をついてにっこりと笑った。

ボ-ドミテ (プロフ) [2018年5月14日 22時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

「閻魔様」
にこりと効果音でもつきそうな笑顔を見せながら閻魔を見る。
数百年以上、閻魔様の側近として側で仕事をしてきたのだ。このように、何かで釣ろうとしながら誤魔化そうと笑う時は、何かが裏にあるに違いない。
だが、せっかく甘味を奢ってもらえるというのなら今回は見逃しても良いかもしれない、と頭の片隅で考えながらメニューを手に取る。
「では、お言葉に甘えて…。この餡蜜をお願いします」
メニューを閻魔様に見せながら、メニューように撮られたであろう餡蜜の写真を指差す。いつもは食後に甘味を食べることはないのだが、こんな日もたまには良いだろう。
この閻魔庁の食堂だが、非常にリーズナブルでそれに加えてとても美味しい。収入が少なくとも働けるように、というシステムになっている。だが、勿論そこそこな値段がするものだってある。そのうちの一つがこの餡蜜である。
この餡蜜、地獄産の小豆をふんだんに使用し、質のいい砂糖も使用している。だから、上品かつ甘過ぎない程よいものが出来るのである。
勿論、閻魔様には忠義を尽くしているし、上司としても慕っている。ただ、この上司はサボり癖がすごいのだ。それで、仕事が増えることも少ないわけではない。ならば貰えるものは貰っておこうと思うのだ。

依十 (プロフ) [2018年5月19日 20時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「ぐえ」
それ、高いヤツじゃんと唇を尖らす。
いくら彼がここの長だからといって割引が効くわけではない。食堂を切り盛りしている鬼女(通称はおばちゃんである)は、彼を見たら寧ろ色々な品をオススメして給与を搾り取ろうとしてくるぐらいだ。まあ、ついついそのオススメに乗ってしまう彼も悪いのだが。
「……まあいいや、一時間もこっぴどく怒られるよりずっとマシだ」
溜息混じりに独り言を呟くと、彼もメニューと睨めっこを始めた。
改めて見ると本当に沢山のメニューがあるものだ。屋台料理である姿焼きから、王道の家庭料理である肉じゃが、それから呑み屋などでよく見る貝の酒蒸しまで沢山のレパートリーがあるものだと感心した。彼は一応既婚者であったが、結婚してすぐに離婚してしまったので家庭料理とやらの存在を知らない。大抵がジャンクフードや食堂で間に合ってしまう職場だからこそ、そういった触れ合いで知る暖かさを知らなかった。
「……そういえば一閃って結婚してたっけ」
メニューから目は離さないまま、目の前の部下に問い掛ける。
「本当に呆れたよなあ…、寂しいから離婚するって。僕が多忙なんて知ってるはずなのになあ。しかも離婚する時には既に彼氏居たんだよ。夫が忙しい時に浮気なんて、女は恐ろしいな」
愚痴を漏らすようにぶつぶつと語り出す。表情から見て、いくら彼が離婚に後悔していないとしても裏切られた事はショックであった事が見て取れる。不思議そうにこちらに視線を送る部下に気が付くと
「ああ、ごめん。ただの小言さ」
と微笑み、彼の餡蜜と自分の分であるパフェを注文した。

ボ-ドミテ (プロフ) [2018年5月20日 12時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]
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