Vices and virtues

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鈴美 (プロフ) [2019年10月11日 23時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

パチリと瞼を開いた午前7時08分。昨晩ソファーで眠りに落ちたのが0時頃。平均睡眠時間が七時間である彼女にとって健康なルーティーンであった。
まだぼんやりとした頭。時計の秒針を3つ聞き流したところで、彼女はぶるりと肌を粟立たせた。半身しか覆えていなかったブランケットをいそいそと引き寄せる。温かい。
その寒気でどうやら、目が覚めたらしい。思考を巡らせる暇も無く、完璧な脳は本日の予定を思い出す。
「AM、10時、はん。ミーティングチャット……」
ポツリと呟いてため息を吐いた。好きで引き継いだ訳でない役割と責務に対しての憂鬱であった。しかしうんざりとしつつも抱えてしまったあれこれを放棄するほどの無責任さは育んでいない。
『一本くらいなら、まだ十分に嗜める。』と。頭の内で言葉にした彼女は、放ったままの足の近くに転がる薄型の液晶端末に手を伸ばした。
表面をタッチ。液晶画面が明るくなる。ネットワーク接続済みのライブラリからタイトルを漁る。決めて、ぽんとその項目をタッチ。動作に連なり、大型の液晶テレビはとある作品を画面に再生させる。
「……全く、十全じゃあない。科学が進歩したって、能力なんかがあったって、私達はわざわざ動かないといけない。全く、十全じゃあない、万能じゃあ、ない」
満たされないような瞳にプロローグを映して、彼女は言葉を紡ぐ。
だらしなく端末を放った。ふかふかのソファーで、精密機械は壊れることなく跳ねた。
こうして映画を観る毎日が続けば良いのにと、普段彼女は思考する。
趣味の映画鑑賞をするだけでも面倒であるのに、役割なんてものはもっと面倒だ。
普通だったのは生まれた家くらい。逸脱してしまった彼女には永遠に面倒が付きまとうだろう。
ほら、ピンポンと。今日も予定外に呼び鈴が鳴った。

鈴美 (プロフ) [2019年10月11日 23時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

※専用です~

鈴美 (プロフ) [2019年10月12日 0時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

町は今日も人で溢れている。耳は人のざわめきを、目は道を行き交う人々を、鼻は排気ガスの臭いを。住み慣れたこの街での日常、いつも通りの光景。
今日はとある用事があった。部屋から出ようとしない美徳の頭領をつれて、ある重要な会議にでなければならないのだ。
正直言ってしまうとめんどくさいことこの上ないが…毎回出席しようとしない 頭領にお偉いさん方が痺れを切らしてしまっているのだ。今回は引きずってでも出席させる。
その頭領が住んでいるマンションに着き、エレベーターに乗っているとため息をつきたくなってしまった。引きずってでも…正しくは担いでなのだが、出席させるときっと機嫌を損ねてしまうだろう。子供のようなあの人はほほを膨らまして怒るだろう。それも可愛らしいな。
到着しました。というアナウンスを聞き、エレベーターからおりる。マンションには静寂が漂っていた。聞こえるのは私の足音と息使い、布の擦れるおとだけだった。
このマンションは丸々、頭領が所有している。前頭領から頭領の地位を受け継いだときに買ったのだ。それ故音が聞こえないのだ。
コツコツと靴をならしながら進むと、音が聞こえてきた。人が叫んでいる声。あぁ、別に頭領があげたとかではなく…頭領がみている映画の音なのだろうけど。朝から何をみているんだあの人は。
そして音の発生源である部屋にたどりついた。今の時間はAM8:00。さすがにこの時間であればあの人も起きているだろう。というか映画の音が聞こえたので十中十起きているだろう。扉の横についている呼び鈴をならす。
そしてしばらく待つと、まぶたを擦りながら顔を出してきた。この気だるげな三白眼の少女が、我らが頭領、針館ウ井である。
「やぁ、おはようウ井。今日も愛らしいね。」
部屋から引きずり出しに来たなんて悟られないように、笑顔で言葉を投げ掛けたかけた。

結梨@復活なう (プロフ) [2019年10月12日 1時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

少しというか大分長く…ごめんなさい(> 人 <)

結梨@復活なう (プロフ) [2019年10月12日 1時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

髪はボサボサ。服もきっと寝巻きであろうジャージ姿のまま、部屋の住人・針館は現れた。成人女性として人前に出るべきでないその格好を晒すのに抵抗なんてものは無いらしい。
「……やぁ、愛らしい美少女になんのようだい。クロエ、愛しい私の『美徳』の構成員ちゃんよ。おはよう。よくもまあ朝からきびきび動けるねぇ」
極度の面倒臭がり屋な針館であるが、口と頭の回りようだけは活発である。映画鑑賞の妨げとなったクロエに対して皮肉のような言葉を交えて、俯きがちに台詞を放った。
目線が合わないのは身長差故である。自身より背の高いクロエの顔を見上げるのも、針館にとっては億劫なのであった。
そう、そんな女が、重役会議なんてものに出席するわけがないのだ。
扉にもたれかかるようにして顔を出す針館はまず、クロエを訝しんだ。大抵の用事ならば通話やメールで済ませてしまう針館の元に来訪。即ち、針館の身柄に用件を抱えているのであろうことは容易く頭に浮かぶ。
例えクロエが、どんなに朗らかな微笑みを携えていても、だ。だって彼女は現に、何度も針館の体を運んで言ってしまうのだから。
だから今日の針館は一味違う。
にこり、と針館は笑った。クロエの位置からでは翳ってしまいその表情は窺えないだろうが。
それでも不必要に微笑んだのには理由がある。そう、何度も繰り返し担がれる彼女でも無い。クロエに対してある対策をしてあるのだ。
「何の用事かなぁ。“私”にわざわざ会いに来るなんて。今日は会議があるけれど、それについてはテレビ通話で出席すると伝えたはずだけれど」
意気揚々と告げる針館の顔の間近でキラリと光る物があった。
セキュリティの整ったマンションでは不要と、オプションで付随していなかったそれをつい一昨日、針館が個人的に業者へ発注した、扉のチェーンであった。
なんと!この鎖一つで!扉を開けさせるという行動を妨げられるのだ!と、いう活力に満ちたナレーションが針館の頭の中で響く。
そもそもこれを見せつけるために普段は遠隔操作で行う解錠をせずにわざわざ玄関まで歩いて来たのである。天才と呼ばれる彼女・針館ウ井。面倒臭がり屋ではあるものの、なかなかに懐の小さい抵抗をするのであった。

鈴美 (プロフ) [2019年10月12日 2時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

大丈夫です~!
お陰で私も遠慮なくのびのび書けました……(^.^)

鈴美 (プロフ) [2019年10月12日 2時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

さて、どう引きずり出そうか。私は悩んでいた。普段は玄関まで来ないのにわざわざ出てきた。素直に連行されてくれるのかと思ったがそれは思い違いだったようだ。
何故ならウ井の顔の近くにはキラリと光るチェーンがあるのだから。そしてなぜかどや顔をしている。脳内で「どうだ参ったか!これでは入ってこられまい!」と考えていそうな顔をしている。
うーんと悩んだあと、私はチェーンに触れた。その瞬間、チェーンと扉の接合部に炎が上がった。私の能力は“身体能力の強化”と“道具から炎を出す”能力。そしてチェーンは“扉の隙間から顔を出し訪問者がだれか見る道具”だ。
鉄の融点は1538℃。私は自分の能力を使い、1600℃の炎をチェーンと扉の接合部に発生させた。するとあ~ら不思議。ガチャンと音がなりチェーンが扉から外れたではありませんか!
実は自分が悩んでいたのは「どうやって扉を開けさせようか」ではなく「どうやって扉を開けようか」であった。
1番目の作戦は「身体能力を強化して扉をひっぺがす」だったがこれは損傷が多すぎるため却下。
そして2番目の作戦が「チェーンと扉の接合部を溶かす」だった。
唖然としているウ井をお姫様だっこし、スタスタマンションの出口へ向かう。バタバタ暴れているが貧弱なウ井では逃れられまい。
たぶんこれが一番早いと思います。
そしてマンションから私の家へ向かう。まともに見せられない格好をしているウ井の姿をまともにするためである。
これできっと自分がお偉いさんがたに怒られることはないだろう。不安のひとつがなくなった私は、どこか晴れ晴れとしていた。
ウ井はまだ騒いでいるが。

結梨@復活なう (プロフ) [2019年10月12日 22時] 7番目の返信 スマホ [違反報告]

どろ。と。容易く目の前で鉄の鎖が溶ける。
唖然も唖然。天才の脳にしても眼前の状況を理解するのに時間を要した。
そして生物の本能。炎を至近距離で認識して「うわ」瞬時に仰け反った。
「お、お、お、お前お前お前お前!!気狂いなのか!?な、な、何するんだっ!!この私が火傷するところだったろう!?いたっ」
わなわなと拳を震わせて叫んだ。人の住居の付随品を軽率に、どろりと。先ほどまでそこにゆるい弧を描いていたそれは既に融解。じわと熱を放って外と内との境界に滴った。
大声を上げた反動で傷んだ軟弱なあばらを擦る。ほんの少し痛みが和らいだところでひょいと抱えられた。
「ちょっ!?おいっ、おいっ、ふざけるなよ!なんだって、あぁくそっ、くそ、ぜー……ぜー……」
騒いで、叫んで、暴れてるも、あっという間の疲労。諦めてだらりと手足を投げ出した。あまりに体力の無い彼女では数分抵抗するのにも一苦労である。
「……意味など無いさ。寂しがり屋な人類のことを、私は何処からでだって愛せるんだから」」
映画みたいに。と。クロエの腕の中で減らず口を叩いた締めくくりにと、針館はそう皮肉を漏らした。
彼女とて、悪徳との抗争に関心が無いわけではない。能力者という道理から外れた存在が生まれてしまった世界。日常の安寧を願うのならば、誰かがその管理をせねばならないのはわかりきっていた。そして天才たる自分が適任であることも。
けれど「それ」を直に求めようとする者の気持ちは理解できない。もう現代は、地球の反対側の誰かとも意志疎通が容易な世の中なのだ。世界がいくら進歩したって、人類には体裁がまとわりつく。
孤高の城に引きこもることを良しとした天才に、折角世界は追い付いて来たというのに。
針館は目を瞑った。次に目を覚ませばクロエの家だろう。きっと彼女は、甲斐甲斐しくこの不恰好な姿を整える。その手間の由来を、天才は理解できない。

鈴美 (プロフ) [2019年10月13日 1時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]
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