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最早淕空のそんな態度に、教師も諦めているのか起こされることは無い。寝付きのいい淕空は、意識がそこから浮上することも無くずっと深い眠りのまま眠っている
「大城戸」「ん、んー……?」授業が終わる五分前に教師に起こされ、櫂は眠い目をこすって体を起こした。せんせぇのいじわる、と文句を言うが、二度寝はしないようにしている。
「……ん…」終業のチャイムが聞こえると同時に、淕空は意識を浮上させる。急に深い眠りから意識を浮上させたために、若干頭が重たいがまあ仕方ないか、と割り切って伸びをする
「それじゃ、気を付けて帰れよー」「はいなぁ」ホームルームが終わり、担任に一応挨拶をしてから櫂は教室を出る。今日の部活は居残り練出ないでおこう、と、計画を立てつつ部室棟の方へ向かって歩いて行く。
ホームルームが終わって、淕空はさっさと荷物を持って教室を出る。今日は昼練をしたし、授業でバスケもやったのでストバスに行くか否か迷うところだ。少しくらい休んでもいいか、と思うものの練習をやめたところで、やることがない。「どないするかなあ……」
「っ、なんや正輝」部室に入り、自分が一番かと思ってロッカールームに入るとそのまま後ろで扉を閉められ、櫂は振り向いた。それから此方を見る彼に、意識を向ける。「いや……やっぱ気に入らねえなって」「わしのことが? 傷付くなぁ」わざとらしく苦笑した櫂に舌打ちをする彼に、櫂は面倒くささを感じて肩を竦める。面倒ごとは卒業してからにして欲しいのう、とのこと。
飲料水が無くなったため、学校内にある自販機へと淕空は向かう。部活へと向かう生徒達を横目で見つつ、自販機が部室棟の近くにしかないのも恨みつつ、淕空は歩いていく。「……需要があるとはいえ、なしてここにしかあらへんのや」
壁の方へ追いやられ、がん、と体の横に足を置かれる。なんや面倒くさいのう、と口にせずに考えて、櫂は思考速度のギアを上げた。「気に入らねえ、その顔も、態度も、声もだ」「全否定とはなぁ……」苦笑で流そうとするがそれも許されず、飽き飽きしたように櫂は溜め息を吐き出した。正輝の態度は明らかに敵意に満ちているし、今現在この二人しか部室には居ないし。「……本性見せてみろよ」「そないなもん、あらへんで?」
誰もいないのをいいことに、淕空は部室棟に設置されているベンチに腰を下ろすと飲料水を流し込む。近くや遠くから聞こえてくる喧騒に耳をすませて、息を吐き出した。「……全員暇な奴らやなあ」
「……気に入らねえ」「同じこと何度目やぁ」ええ加減離して欲しいのう、と言って櫂は煩わしそうに手をひらひらと振った。けれどそれが気に食わなかったらしい正輝にがっ、と手首を捕まれる。痛みに少しだけ眉を寄せ、櫂は苦笑した。なりふり構わないつもりらしい正輝が、あまりにも幼く見える。
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