Cendrillon en enfer
メッセージ一覧
上を見ても下を見ても赤黒い世界を歩きながら周囲を見回し、時折手元の地図に目線を落とす。
この金髪赤眼の女性は悪人がタヒ後に向かうとされる世界___いわゆる地獄というところで家事代行サービスを行なっている悪魔、オルヴェージュ。今日はかのヴォックステック・コーポレーションの社長、ヴォックスからの依頼により、普段は滅多に立ち寄らないエンターテイメント地区に来ているのだ。
Vタワーってかなり高い建物だから目立つけど、あまり知らない場所だからしっかり確認しておかないと…
街中に漂う、血や何かが腐ったような悪臭に顔色ひとつ変えず、金髪赤眼の悪魔は鞄を持ち直して再び歩き出す。途中で声をかけられたりなどのトラブルはあったものの、何とか約束の時間までにVタワーの入り口に到着することができた。
…ヴォックスさんってテレビでしか見たことがないけど、どんな方なのかしら…緊張するわ…


突然バチバチッという音と共に背後から何かが光ったのを感じ、即座に振り返る。そこには今日の依頼主であり、この地獄の上級悪魔の1人であるヴォックスが立っていた。
この方があのヴォックスさん…上級悪魔というだけあってオーラがすごい…って、そんなことよりご挨拶…!
「こんにちは、本日家事代行を担当させていただくオルヴェージュです」
なるべく平静を装いながら、自己紹介をしつつ握手しようと手を差し出す。


足元から手元へと流れていく視線に冷たい汗が出そうになったが、落ち着いた声が聞こえてくると同時に心の中でホッと安心する。良かった、何か無礼を働いてしまったのかと思ったわ…
「わざわざありがとうございます。確かに、私1人だと迷子に___」
握手された己の手に力を込め返そうとした次の瞬間、視界全体が青白く光り周りの風景がガラリと変わった。目の前に依頼人がいるというにも関わらず、突然の出来事に驚きを隠しきれなかった。
「…べ、便利な能力ですね…」
さすが上級悪魔…すごすぎて逆に言葉が上手く出てこないわ…

