夜を支配する薔薇【本編】

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くんくんと鼻をひくつかせてみても、土の臭いばかりで周囲の情報などはわからない。それでも同じ穴蔵のような景色ばかりか続くこの場所では、なにもしないよりはましだった。
「こんばん……あっ、いけないいけない、静かにしてないといけないんでした……しーっ、ですね……」
少女は、吸血鬼の住処へと潜り込んだ反逆者の一人だった。年相応のあどけなさと怯えを纏い、奥へ奥へと歩みを進めていく。

鈴美 (プロフ) [2019年3月13日 1時] [固定リンク] スマホ [違反報告]

「ん…?そこにいるのは、反逆者か?」
反逆者として忍び込んできた彼女は、恐る恐る歩を進める少女を見つけ声をかける。
「そんな怯えていては奴等に見つかってしまうぞ?」
忍び込み慣れたような風体の彼女は高いヒールだというのにまるで滑るかのように静かに歩み寄った。

ラズ (プロフ) [2019年3月13日 17時] 1番目の返信 スマホ [違反報告]

声をかけられて、小さく叫ぶ。背筋を張らせて恐る恐る振り向くと、そこにいたのは幸いなことに同族であった。
「あっ……あぅ……すみません、すみません……」
臆病な性格からか反射的に謝罪を口にしながらも、相手が化け物でないことに胸を撫で下ろす。
暗がりなため顔立ちはよくわからないが、声とドレスのようなシルエットから、相手は女性なのだろうと判断した。
堂々とした彼女の口ぶりに影響され、勝手に男性に声をかけられたと思っていた。だからそのドレス姿に加え、近づいてみれば案外自分よりも低い背の彼女に対し、深い安堵を抱いた。
「ええっと、そう、そうです。反逆者……さんです……えへ……」
心に余裕ができたのか、不相応に照れながらも笑顔で告げた。

鈴美 (プロフ) [2019年3月13日 17時] 2番目の返信 スマホ [違反報告]

「………。どこに行くつもりだ?」
おどおどした様子から勝手にチビなのかと思っていたが、思ったよりも背が高く、面にも出さずに面食らう。
が、すぐに冷静になり、静かな声で問うた。
「とりあえず、こっちに来い」
長い銀髪を翻して、ある部屋の扉の前に立つ。
そのまま慣れた手つきでピッキングすると、招き入れた。
「お前、見るからに忍び込み初心者だろう?」

ラズ (プロフ) [2019年3月13日 20時] 3番目の返信 スマホ [違反報告]

きびきびとした指示を受けて、慌てて彼女の後を追った。
それにしても、と先ほどのピッキング関心する。特殊な技術を持っていればこんなに堂々としており、行動力もある彼女はきっと手練れなのだろう。自分とは大違いだ。
なんて、勝手に思考を巡らせれば、当然台詞に集中できているわけがない。耳を抜けてから一拍遅れて認識した言葉へ、慌てて応じる。
「ひゃっ、あうっ、はい!あっ……ええっと、ええっと、そ、そう見えますか……?もー!そんなことないですよ!た、確かに一人で来たのははじめてですけれど……お兄さんやお姉さんとは何回か来たことあるんですよ!」
まるで弁解をするように大袈裟な身ぶり手振りを弄して説明した。確かに、この一寸先も覚束なそうな少女が一人で行動するというのは非常に不安であろう。
ならば何故今回は一人なのか。そう疑問を抱くようなタイミングで彼女はあわあわとして素振りをぴたりと止めて目を伏せた。
「あっ……でも……お兄さんもお姉さんも死んじゃってしまわれたので……」
小さな声で捻り出したような台詞。殺伐とした内容であったが、この少女はまた照れたように笑うのだった。まるで、そう取り繕うことが正しいとでも言うように。

鈴美 (プロフ) [2019年3月13日 21時] 4番目の返信 スマホ [違反報告]

「馬鹿者。一人で真面に来れるようになれ。他人に頼るからいざとなったときに堂々たる行動に出れんのだ」
傍に置かれたソファに腰をおろし、脚を組む。
お兄さんやお姉さんというワードが気になった。
誰にも頼らない一匹狼の彼女だが、とある伝手から反逆者のグループ内部の情報はよく入る。
そういえば、と記憶を辿れば、男女数名が死んだという情報を思い出す。
正直なところ、他人の生死など1マイクロも興味ないが、それによって自分の行動も変わるため、仕方なくそういった情報も頭に入れている。
しかし、と再度おどおどした少女を見る。
「何の用事でここに来た?お前、死ぬぞ?」
歯に衣着せぬその言い様はあまり聞いていていいものではない。
だが、物心ついた頃から一人だった彼女には人への気遣いなど、知らない。

ラズ (プロフ) [2019年3月13日 21時] 5番目の返信 スマホ [違反報告]

心地いいほど率直な言葉を告げる彼女に狼狽える。基本的に後ろ向きな思考回路をしているため、そんな些細なことでも、もしや何か怒らせてしまったかと案じる。この臆病な性格はどうやら根強いようだ。
「な、なんのって、勿論!吸血鬼にい、い……一矢?を?報いるため……?ですよ!」
ぐっと両の拳を握りしめて、相手の瞳を真っ直ぐに見つめて告げた。臆病な性格だが、それでも譲れないものがあるのかもしれない。
見れば、黒いドレスなどとは大違いの田舎臭いジャージ姿であるが、その腰ポケットにはカバーの中で眠るナイフの柄が覗いていた。一応は反逆者としての自覚はあるようだがあまりにも拙い。
「頑張って……頑張ったら、世界がきっとよくなるんです」
ふっと。やはりずっとは送れなかった視線を逸らして、先程入ってきた扉を見つめながら告げた。

鈴美 (プロフ) [2019年3月13日 22時] 6番目の返信 スマホ [違反報告]

「声がでかい。吸血鬼どもに見つかる」
少々イライラしたように小刻みに爪でひじ掛けをならす。
「いいか、素人小娘。敵陣に忍び込む際必要な心得は二つある」
黒い手袋で包まれた細く長い指を2とあらわした。
「慎重に、そして大胆に、だ。誰にも見つからず慎重に忍び込む。欲しい情報以上のものを大胆に手に入れる。それをするには、冷静な判断力と圧倒的な力が必要になる。力は知らんが、冷静な判断が出来るほど落ち着いているとも思えんな」
キツイ言葉ではあるが、はっきりと丁寧に説明する。
脚を組みなおすと、黒いドレスが彼女の足を象った。
「それを経てもう一度聞こう。お前はその一矢とやらを報いることができると本気で思っているのか?答えは否だ。お前には無理だ。世界を動かすのは、いつだって力と知恵だ。がむしゃらな心じゃない。頑張り、なんて絵空事だ。絵に描いた餅だよ」
わかるか?とでも言いたげに大太刀を抜き、その切っ先を鼻っ先に突きつける。
「きっと、で世界は救われない。鈴木春告鳥」
寂し気に呟くように言った。

ラズ (プロフ) [2019年3月13日 22時] 7番目の返信 PCから [違反報告]

「なんで……」
なんでそんなことを言うんだ。なんで自分の名前を知っているんだ。色んなことを言おうとしたが、全て口の中で解けてしまった。言葉につまって、唇がぱくぱくとだけ動く。それが情けなかったのか、少女は━━鈴木春告鳥の視線は、怯えつつも切っ先に釘付けだった。
「ひぅ、っあ」
そんなそう、刃を向けられたくらいで腰を抜かしてしまうのだ。拍子に唯一の得物であるナイフもポケットからこぼれてしまう。絨毯の上に落ちたそれは、皮のカバーからも抜け出て鈍色に煌めく。向けられた刃はこんなにも銀色なのに。
この場にあまりにも不相応な鈴木は、だから相対する彼女の口調に目を向けることができた。
「だったらなんで……そんなに風に言うんですか」
今度の「なんで」は、きちんと口から出ていった。
しかし、それが相手へ届いたかは微妙なところであっただろう。何故ならその台詞は、彼ら二人がいた床が崩落する轟音と重なったからだ。
重力に逆らえない鈴木の頭は突然のことで上手く働かない。ただ、「まだこの人の名前も知らないな」と、そう思った。

鈴美 (プロフ) [2019年3月13日 23時] 8番目の返信 スマホ [違反報告]

切っ先を静かに下げて、冷たい視線で落ちたナイフを見下ろす。
いや、厳密にいえば見ているのはナイフではない。
床だ。
まだ怯えて腰を抜かした春告鳥には気にも止めず、ただ床の一点を見つめる。
空気が動く、そんな感じがした。
修羅場をくぐり抜けてきた彼女には、絶対的な危機察知能力がある。
彼女は一歩、二歩と軽く下がり、床が崩れたその瞬間に、壁にかかった電気に飛び移る。
と、そこで気付いた。
怯えたままの春告鳥が重力とともに落ちていくことに。
「チッ…」
彼女としては、春告鳥の生死はどうでもいいのだ。
だが、
「目の前で死なれるのは些か夢見が悪い」
落ちる少女の片腕を強引に引っ張り横抱きにすると、落ちる破片に飛び移り飛び乗り、窓辺へと避難する。
ここはまだ落ちていないが、まだ人心地はつけない。
再度しっかりと抱き上げると、軽く口角を上げた。
「しっかり捕まっていろ。舌を噛むから喋るなよ。脱出する。なぁに、心配するな。ここは私の庭のようなものだ。どこに何があるかなどとうの昔に頭にたたき込んである」

ラズ (プロフ) [2019年3月13日 23時] 9番目の返信 スマホ [違反報告]

深い闇に吸い込まれそうになる体が、しっかりと受け止められる。その衝撃や崩れた床に対しての様々に悲鳴をやっと悲鳴をあげよと言うところで頭上から、言葉を牽制された。ぐっと飲み込んだ言葉が腹に落ちても、心臓は落ち着くことはなかった。
抱えられたままその場を離れる刹那、奈落に奪われてしまったナイフがどこかにぶつかる、鋭く冷たい音が響いた。



「━━━━っ、ぷはぁっ!」
喋るな。そう言われたのにもかかわらず息まで止めていた鈴木は大きく息を吐いた。やはり土臭さの混じるものの、酸素を求める欲求には抗えず、死に物狂いで呼吸する。
二人は、腰を落ち着かせられる場所へ辿り着いた。鈴木を助けた彼女にとっては庭のような場所のようだが、元よりこの住処の内部構造を把握してない上に、知らない通路を抱えられながら進まれたのだ。無論、ここがどこかだなんてわからなかった。
「あ、あ、あの、あの、すみません、すみません……!!あと、えっと、ありがとうございました、すみません……」
悪い癖だ。礼よりも謝罪の方が先にでるのはお国柄かもしれないが、どれに対して向けているのかわからないそれを、また口に出した。

鈴美 (プロフ) [2019年3月13日 23時] 10番目の返信 スマホ [違反報告]
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