「ここ、どこ、だろ…」自由気ままに歩いていればいつの間にか道の入り組んだところに入ってしまったようだ。「だれも、いない…」
「あら…貴方なんでこんなところにいるの?」彼を見つけ、驚いたように目を見開くじっ、と見つめ背をつんつんとつつく相変わらずデカい図体だと思いながら
後ろを振り向き下を見れば、そこには自分が知っている“同種族”がいた。「僕は、お腹すいて…貴女、こそ…何故ここに…?」暗に食料を探していたと言い身を屈め目線を合わせて問い返した。
「本を取りに行くためよ」身を屈めたことが少々気に食わなかったのか顔を背け少しキツい口調で言うはぁ…、と溜息をつき彼の手を引く「お腹が空いてるならあっちよ貴方方向音痴なの?」ぐいっとその小柄な体からは想像出来ない力で引っ張る人間のいる部屋に行くために
「こっちか…。方向音痴のつもりは、ない…」その華奢な体からは想像出来ない力に少し目を丸くするが同族なのでそんなこともあるかと自己完結する。「最近寝てた、から…まだ眠いのかも…」掴まれた手をきゅっと握り返して反対の手で欠伸をする口を隠す
「何年もいるのに寝すぎで覚えられないの?」欠伸をした姿を見てまたため息をつくちゃんと覚えなさいよ、と悪態をつきながらも手は離さずに「まぁ、覚えられないならまた私に聞いて」私の部屋の場所覚えてるのかしら…、と思いながら
「うん、そうする…」どことなく嬉しそうに表情を綻ばせる。構ってくれる人は大好きだ。実は構ってもらいたいがためにあれこれ頼っている、と言ったらこの人はどんな反応をするのだろうか、と考えながら。
「貴方って弟みたいね」自身に弟がいた訳では無いが、なんとなく世話を焼きたくなるのは彼を弟のように思っているからだろう構ってほしがる弟のようだ、と思いながら部屋の扉の前までくる「はい。ここが食堂よ人間がたくさんいるけど、直接飲みたくないなら血液パックもあるはずよ」食堂の扉を開け、中を見る
「ありがと…」面倒見のいいこの人に何を返すべきだろうか、と考えながら中を覗き見る。「人も、いいけど…パックでいい、や」そういえば、自分の記憶のかぎり、人間から直接血を飲んだことがない、…ような気もする。他の同族を見たこともないような気がした。寝過ぎた弊害だろうか。ころころと考える内容を変えながらパックを手に取った。
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