僥倖

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それは、ささやかな拾い物だ。
随分と長くを生きる彼にとって、過ぎる時というのは惰性で面白みのないもの。そんな世界をほんの少し狂わせたのは大層なものじゃない。
ただ、そう。それでも、アーデルヘルムにとってその子供は宝物といっても過言ではなかった。
この世界には多くの種族が入り交じる。血を欲する夜の王や、ウドの大木のようにデカいだけでなんの知能も持たない獣、生えた角を唯一のアイデンティティと言うばかりに見せびらかす東洋の魔人。上げればキリがない、どれだけの化け物が入り交じるのかなんて考えてもくだらないことで、数えるのは馬鹿らしいことだ。ただ一人だけ、この世界で珍しいと言われる種族が居るならばそれは彼らだろう。もうずっと昔にソレらはこの世界で姿を消した。
いつまでもその姿を忘れられないのは――遠き日のあの日から、彼がずっと恋をしているから。

「ただいま、悪いね。少し汚してしまったな」

血と泥がべったりとついた足元のカーペットを睨んで、真っ赤な瞳を申し訳なさそうに細める。その表情は恐ろしいと謳われる化け物に似合わない人間臭いもの。まるで本物以上に本物に似た笑みをぶら下げて、差し出されたタオルをありがたく受け取った。

「あーいや、うん。まぁ……そうだなぁ」

清潔なタオルで見当たる汚れを拭いとる。べったりと乾いて固まった血は爪の先で掻き毟れば汚れは落ちれど、赤い頬に赤い線ができた。
喧嘩でもしたのか?という礼の問にアーデルヘルムが答えなかったのは、外に広がる世界がどれほど卑劣で恐ろしく冷たい場所かを彼には知られたくないから。聡い彼であれば、この世界がどのような場所なのかもきっと理解しているだろう。それでも、アーデルヘルムは彼には語らない。過保護なくらいこの屋敷の中に閉じ込めて、恐ろしい森も退廃した街もすべて彼の瞳には映さなかった。彼の庇護下にいるうちは、獣一匹とも礼には近寄れない。それくらい、アーデルヘルムは彼のことが大事だ。

「心配してくれてありがとう、なぁに大したことはないよ」

珍しくしゅんと眉を下げた礼の頭を汚れていない左手でくしゃくしゃと撫でる。化け物にとって些細なことでも、繊細な人間には恐ろしく怖いものがあるのだ。それをアーデルヘルムは理解できないし、理解できないことを酷く残念にも思う。安堵に頬を緩めた礼を見て、彼も優しく笑みをつくった。

「でも、まだ少し臭うかな。着替えてくるよ」

くんくんと匂いをかげばまだ胸くその悪い香りがこびり付いている。成程、これは確かに彼を不安にさせるだろうとアーデルヘルムは短くため息を吐いた。大抵、彼の縄張であるこの城を潜れば勝手に浄化されていくのだが、長い間あんな道を通ったのが悪かった。

「その後はお茶にしよう。先に食堂で待っていておくれ。すぐに行くから」

するりと頬を撫でてから、パチンと指を鳴らす。先程まで泥と血が染み付いていた絨毯はその仕草だけで元の新品のような美しさを取り戻した。

きつつき (プロフ) [2021年5月23日 7時] 38番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

ワ〜!!!!!ありがとうございます!!!!!ありがとうございます!!久しぶりのロルで私もとてもwktkしてます!!最高ですありがとうございます!!!!!結婚します!!

きつつき (プロフ) [2021年5月23日 7時] 39番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

人の寄り付かないその場所にこれだけ大きく、古い建物があることを知る人は少ない。立ち入る者がいないのだから、それは当たり前といえば当たり前のようだが、そもそもこの場所を人が立ち入れない己の縄張りに変えたのは彼自身だ。
この邸宅はその昔、魔女の館であった。故に、この邸には未だ魔女の魔力が残っている。それを、それなりに力のある彼が継ぎ接ぎしながら守っているので半端な獣や低級の小悪党共は近寄ることさえできない。元来物静かな場所が好きな彼はこの場所がたまらなく好きだったから、どれだけの年月が経とうとも、その場所を離れようとはしなかった。

「非科学的か、やはり……あんまり変なものを見せるべきではないな」

自室の扉を締め切って、ぽつりとアーデルヘルムは呟く。嫌な匂いの染み込んだ上着をポイとベッドの上に投げ捨てて、クローゼットにずらりと並ぶ皺ひとつない上質な衣服にひとつひとつ手を伸ばした。考えるのは、人間である彼のこと。過保護に傍に置いているその子供が、脆弱な人間であることをアーデルヘルムは常々忘れたことがない。
下手なものを見せないようにと思う。けれど、その肝心の彼が彼らの言うところの"変なもの"であった。そういうものに怯えて、震え上がるのが普通だろうに、彼が特に気するわけでもなくケロリとしているから、たまに忘れてしまいそうになる。そういう違和感を拭うことに関して、アーデルヘルムはさっぱりだった

「さて、と」

白く清潔なシャツに袖を通して、一番上のボタンをひとつあける。生まれのおかげで幼い頃からきっちりとした衣服ばかりを押し付けられてきた彼にとって、いくら歳をとってもそれが鬱陶しく面倒なことに変わりなかった。そうして首元へ、今度は不釣り合いな黒猫の装飾が施されたペンダント。彼は眠りにつく時以外、必ずそれを身につけている。その中身を見たことがあるものは、彼以外、誰もいない。アーデルヘルムはそれが人の目に触れることを拒んだし、過去の話を掘り返されることを嫌った。
きっとおそらく、彼の内にあるその記憶がふたたび蘇ることはないだろう。

アーデルヘルムは、食堂の大きな扉をそっと手を引いて開けた。
シルク布の掛けられた大きなテーブルは一人で使うにも、二人で使うにも少々大きすぎる。天蓋にぶら下がるシャアンデリアは薄暗い灯りだけを落とし、ちろちろと輝いていた。天鵞絨色をした壁一面には、埋め尽くされるほどの肖像画。それはすべて、古い昔にこの邸に関わった者達の晩年の姿で、一番済みにはどうしてかアーデルヘルム自身の絵もある。不気味なその空間は、彼一人であれば絶対に使わなかっただろう。
小さな嘆息だけを吐き出して、誰にも見つからないように小さく首を振った。

きつつき (プロフ) [2021年5月27日 8時] 40番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

遅くなりました!!!!!!!!!!ゥ〜!!!!!お互いゆっくりやりましょ……………

きつつき (プロフ) [2021年5月27日 8時] 41番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]

わ〜!!!!!おかえりなさい!!!!!お疲れ様です!!!!!ゆっくりお待ちしておりますのでテスト頑張ってくださいね〜!!!!!( 'ω')و ̑

きつつき (プロフ) [2021年7月18日 7時] 42番目の返信 スマホ [違反報告・ブロック]
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