えすえすおきば

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なんかあんまり納得はいってないけどとりあえず書けたから投げとく

箸レーゼ (プロフ) [2024年7月12日 12時] [固定リンク] PCから [違反報告]

📘と🎧に栞をあげたいだけの話
※🌸が普通に喋る

📘
「ゆ、……行秋、」
あ、ちょっと不自然だったかな。ドキドキしながら彼を見上げると、読んでいた本から顔を上げて不思議そうな視線を寄越していた。優しい、大好きな声が「どうしたの」と紡ぐ。
「渡したいものがあって」
「渡したいもの?」
首を傾げた行秋に、うなずきながら小包を見せる。本当はわざわざラッピングしなくてもいいようなものだったけど、すぐに反応が返ってくると私の心臓がもたない気がしたからこうなってしまった。渡す側にも心の準備というものが必要なのである。
「喜んでくれるかは、わからないけど……」
「これは――本の栞かい?」
「うん。行秋、読書が好きでしょう?だから、と思ったんだけど……どう、かな」
恐る恐る彼の顔色を窺う。目を丸くした行秋が、ばっとこちらに向き直って口を開いた――
「どうもこうも、すごく嬉しいよ!しかもこの押し花、君がわざわざ手作りしてくれたんだろう?宝物になったよ」
心配する必要はどうやらなかったらしい。色白な彼の頬がほんのりと上気していた――その喜びようといったら、今にも手元の栞にキスでもしそうな勢いである。しかも「宝物」とまで言ってくれた。よかった、喜んでもらえた……!それだけでもすごく嬉しくて幸せだったのに、気がついたら私は暖かい腕の中に閉じ込められていた。
「ゆっ、ゆくあき、?」
「ありがとう。僕のことを考えて用意してくれたことが、何よりも嬉しいよ」
――その間、君は僕のことで頭がいっぱいだっただろうからね。
耳元で囁かれたその言葉はあまりにも不意打ちで、私の体温を上げるには十分すぎるものだった。

🎧
ぱたん、と本を閉じる音がした。アルハイゼンが私に気づいて読書を中断した音である。
「……どうした」
「ううん、ただ……その本、いいの?読んでる途中なのに」
次に続きから読もうと思ったときに、わざわざページを探すことになるのではないだろうか。彼が私のためにそうしてくれているのは分かっているし、もちろん嬉しいことだけど、私もよく読書をするから少し気になってしまうのだった。
私の言葉が意外だったのか、少し目を瞠ってから彼は口を開いた。
「問題ない。……そもそも読んでいないからな」
「読んでない!?なんでまたそんな……」
「君がいるからだ」
いつも通り言葉が足りてなさすぎて私にはさっぱり伝わっていないが、まぁアルハイゼンの中で完結しているようだからそういうことなんだろう。私が理解する必要はない。ただ、――せっかく持ってきたプレゼントを渡すタイミングを失ってしまったのはちょっと残念ではある。
「そ、っか。うぅん、――んん、」
「……言いたいことがあるなら言えばいい。渡したいものがあるならそう言えばいいだろう」
「えっ、わ、わかってたの?」
びっくりしてそう言うと、ふっと彼の口元が緩んだ。今日は機嫌がいいのか、わかりやすく笑顔だ。
「君は、君が思っている以上にわかりやすい人間だからな」
なんだ、それじゃあ、私がどうやって渡そうかなとかたくさん悩んでたのは意味がなかった?ちょっと面白くない感じだけど、受け取ってもらえなかったり迷惑顔されたりするよりかは何百倍もいい。私は隠す必要がなくなったそれを、ずいっとアルハイゼンに差し出した。
「渡したいものってね、これだったんだ」
「……栞、か?ああ、――本を読んでいる途中だ何だと言っていたのはこれか」
さすが、察しが良いようで私の説明の手間が省ける。使ってくれるかな、と不安になりながら彼を見ると、なんと早速本に挟んでいるではないか。
「こういうのは、……悪くないな。ありがとう」
長い指が、愛しむように花の表面を撫でる。あなたのことを考えながら選んだ花だ、とは、さすがに気恥ずかしくて言えなかったけど――なぜだか、言葉にしなくてもその気持ちは十分伝わっている気がした。

箸レーゼ (プロフ) [2024年7月12日 12時] 1番目の返信 PCから [違反報告]
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